Special
<インタビュー>Uru 新曲「プラットフォーム」に託した、変わらない“愛”――アニメ『永久のユウグレ』が導いた確信とは

Interview & Text:沖さやこ
Uruの新曲「プラットフォーム」が、パッケージ盤に先駆けてデジタル・リリースされた。同曲はTVアニメ『永久のユウグレ』のオープニング・テーマとして書き下ろされた楽曲で、昨年リリースされた「アンビバレント」の系譜にある爽快なアップナンバーだ。
『永久のユウグレ』はAI技術が発展した未来を舞台に、永い眠りから目覚めた主人公、姫神アキラが、かつての恋人に酷似したアンドロイドであるユウグレと旅を重ねながら、新しい愛の形を模索するという本格ラブストーリー。Uruはその物語から「どんな形でも愛は愛。人を想う気持ちは変わらない」という確信を得て、それをストレートに楽曲に落とし込んだという。音楽性を広げ続けている彼女は、どのような背景から同曲を制作したのだろうか。メールインタビューで答えてもらった。
作る曲、歌う曲は幅広くありたい
――Uruさんは2013年より活動をスタートさせ、2016年のメジャーデビュー以降コンスタントに数多くの作品を発表されています。Uruさんの制作の原動力になっているのはどんなものでしょうか?
Uru:音楽が好きで触れていたいというのと、何かを作りたいという気持ちが大半なのかなと思います。普段の生活で何かを観たり聴いたりしたときに心が動かされると、それが音楽のほうへ向いて、そのときの感情を音として形にしたり、いつか歌詞として使うかもしれない言葉をメモしています。
――2024年から制作に重きを置いた活動を続けているとのことですが、この期間で新たにチャレンジしていることなどはありますか?
Uru:わたしにはバラードのイメージがあると思うのですが、作る曲、歌う曲は幅広くありたいなと思いながら制作をしています。「わたしらしさ」「Uruらしさ」みたいなものを意識していた時期もあったのですが、今は無理にその枠に入る必要はないなと思いながら自由に作っています。歌詞の世界観もイメージにとらわれずにいろんな歌詞を書いていきたいなと。とはいえ、俯瞰で見たら結局どれもわたしらしいのかもしれないですけどね(笑)。
――「自分らしさにとらわれない」という思考にシフトしたきっかけはあるのでしょうか?
Uru:もともといろんな曲調の楽曲を歌いたいという思いはあって、みなさんにバラードで親しんでいただけるようになったことがとてもうれしかったのと同時に、わたしの違う側面、声色や雰囲気の変化も感じられる曲調も聴いてほしいなと思うようになりました。こんな曲も歌っているんだよーと知ってほしい願望でしょうか。つい最近、アップテンポですごく好きな曲ができたんです。それはもしかしたらこれまでのわたしのイメージにはないものかもしれないので、世に出ていくのが楽しみです。

根底にあるものはきっと、
時代が変わっても変わらない
――そしてTVアニメ『永久のユウグレ』のオープニング・テーマである最新曲「プラットフォーム」がデジタル・リリースされます。ドラマ、映画、アニメ、CMなど数々のタイアップ曲を書き下ろしてきたUruさんですが、アニメタイアップならではの工夫などはあるのでしょうか。
Uru:映画もドラマもアニメも、タイアップ先によって作り方の差別化はしていなくて、その作品が持つテーマとかメッセージ性に沿うことや、タイアップ作品の方のリクエストを大切にしながら制作しています。そうすると、どんな方向のどの作品も根底にあるものはつながっていたりするんだなと思ったりしています。なんて、わかった気になっています(笑)。ただアニメは過去シリーズがある場合も多いので、それがたくさんの方に親しまれている背景も鑑みています。
――『永久のユウグレ』という作品にはどんな印象をお持ちになりましたか?
Uru:多様性や愛の形、AIの発展など、今の社会の課題や特色がアニメの中に点在しているので、これから先の未来を想像しながら脚本を読ませていただきました。“エルシー”という結婚に代わる新しい愛の形や、AIの技術の発展のメリットとデメリットなどを考えたりもしながら、そんな時代でもずっと失われないのは「誰かを大切に想うこと」や「愛する気持ち」なんだろうなとも思いました。
――「どんなかたちでも愛は愛。人を思う気持ちは変わらない」という結論に至ったポイントとは?
Uru:性別や年齢、昔からのしきたりにとらわれずに素直な感情を優先していい社会になった場合、たとえそれが今までと違ったとしても、違うのは形だけだと思いました。「根底にあるものはきっと時代が変わっても変わらないんだ」ということを、アニメのストーリーから汲み取れた気がします。登場人物たちの真っ直ぐな愛情を曲にしたかったのと、オープニング・テーマなので視聴者のみなさんがこの気持ちを明るく前向きに受け止められる楽曲にしたくて、デモの段階から四つ打ちで疾走感、爽快感があるポジティブなものをイメージしていましたね。
――そんな楽曲を「プラットフォーム」と名付けたのはなぜでしょうか。
Uru:「変わらない土台」や「基盤」を表現したかったんです。ITの分野でも使われる言葉なので、アニメと親和性があってしっくり来ました。デモの段階からこのタイトルに決めていたので、タイトルに導かれながら歌詞を書いたという感覚です。

リリース情報
関連リンク
“ポップな曲”だからこそできる表現
――とても爽やかで軽快なアレンジに仕上がっていると感じました。アレンジを担当なさったのは、2024年2月にリリースされたUruさんのシングル曲「アンビバレント」のアレンジャーである田中隼人さんです。同曲はTVアニメ『薬屋のひとりごと』1期 第2クールのオープニング・テーマに起用され、「プラットフォーム」は田中さんと二度目のタッグになりました。
Uru:田中さんは「アンビバレント」をUruの楽曲としても、アニメのオープニング・テーマとしてもとても素敵に仕上げてくださったので、今回もお願いしました。爽快で前向きで、疾走感も感じられるアレンジをお願いすると、デモの雰囲気をとても大切に継承してくださっていると同時に、リクエストを超えるアレンジが返ってきて、聴かせてもらったときはとても感動しました。デモで「ラララ」で歌っていたボーカル素材をそのままトラックとして使ってくださったり、遊び心もあって、聴いていて楽しい曲に仕上げていただけてうれしかったです。
アンビバレント / Uru
――Uruさんにとって、ポップな楽曲だからこそ表現できるのはどんな物語や感情でしょうか?
Uru:バラードにすると重たくなってしまいがちなものも、ポップな曲調だとサラッと届けることができるので、伝えたいけど恥ずかしいとか、でもよく聴いてみたらちゃんとした想いやメッセージを伝えてる、みたいなそういう感じですかね。わたしが歌うポップな曲は、まっすぐな感情を歌った曲が多いかもしれません。最近はポップなサウンドでちょっとひねくれたというか、素直になれない、裏側を読んでほしい、みたいな曲も作ってみたくなっています(笑)。
――「プラットフォーム」の歌詞には大切な人を遠くに連れ出すようなニュアンスもありつつ、相手を“支える”や“守る”など、自分自身が相手の羽を休める場所であるという表現が多いことも印象的でした。
Uru:歌詞は主人公の姫神アキラの視点で書きましたが、内容は普遍的なことだとも思っています。例えば大切な人が大変な状況にあるときには、自分といるときだけは心穏やかに過ごしてほしいと思ったり、早くその状況を脱せるように支えたくなったりすると思いますが、アキラは特に「守りたい」「支えたい」という気持ちが強くて、それが自分の使命でもあるかのように強く相手を思う気持ちが伝わってきたので、歌詞にも反映しました。
――実際に『永久のユウグレ』の放送をご覧になっていかがでしたか?
Uru:タイアップ曲を書かせていただいたときはいつも、実際に映像と合わさったときや初回の放送の際にとても緊張するので、今回もドキドキしながら観ていました。オープニング映像の裏に流れている「プラットフォーム」を聴いたときは、この曲の歌詞がアニメの映像によってさらに魂を吹き込まれたような、歌詞に出てくる“僕”がより現実的になった感覚がありました。ストーリーが進むにつれて、さらにこの曲と作品の距離が近くなっていくといいなあと思います。アニメの世界ではありますが、もしかしたら現実世界でもこの先こんな展開があり得るかもしれないな……と想像しながら観るのが楽しいです。
――「プラットフォーム」のミュージックビデオはmino(NANON CREATIVE)さんが監督を務め、俳優の上坂樹里さんが出演されています。様々な形や色が登場する映像に仕上がりました。
Uru:〈丸、三角、四角、平行四辺形/愛の形はいくらでもあるんだ〉という歌詞のように、MVにもいろんな形や色の物体がCGで浮かんでいて、それらを上坂さんが見たり聞いたり触れたりしているところが、すごくこの曲の核を表してくれているなと感じます。愛の形は本当にいくらでもあるし、ひとつの愛の中に様々な形の感情が集まったものが愛情だと思うので、心の中を可視化するようなMVにしていただけてとても感謝しています。
プラットフォーム / Uru
――サビの歌い出しがとてもキャッチーでキュートなので、Uruさんが「プラットフォーム」をライブでどのようにパフォーマンスをされるのかも気になります。
Uru:「プラットフォーム」も「アンビバレント」同様に四つ打ち感があって手拍子しやすくリズムにのりやすい曲だと思うので、ライブでもみんなと一体になってリズムを感じられたらいいなと思います。「アンビバレント」もまだライブで歌ったことがないので、「アンビバレント」と「プラットフォーム」ときょうだい感のある2曲を一緒に歌えたらとても楽しそうだなと思っていますね。
――11月26日には『プラットフォーム』のパッケージ盤がリリースされます。カップリング曲には「愛」というバラードの新曲と、恒例のカバー曲シリーズとしてキリンジの「エイリアンズ」が収録されています。
Uru:「愛」は「プラットフォーム」と少し関わりのある曲なんです。少し前の時代を感じるような懐かしいメロディで、悲しみよりも愛しさや喜びが強く感じられる曲になったと思っています。キリンジさんの「エイリアンズ」は独特の雰囲気とメロディが大好きで昔からよく聴いている楽曲です。たくさんのアーティストの方がカバーしているので、わたしもいつか歌ってみたいと思っていました。実際に歌ってみると音域が広かったり、どのようなテンションで歌うかなど迷う箇所もありましたが、大好きな曲を歌わせていただけてうれしかったです。
――2025年も残り2か月半となりましたが、2026年の活動はどのように進めていきたいと考えていらっしゃいますか?
Uru:去年から今年にかけてずっと集中して制作に取り組んで、今年に入ってからその楽曲を順番にみなさんの元に届けることができてとてもうれしいです。実はまだ制作中の楽曲もいくつかあるので、今年のうちに完成させてみなさんに届けられる準備をしたいですね。来年はそれを実際にみなさんと同じ空間で共有できたらうれしいな……と想像を膨らませながら、日々精進していこうと思います!

リリース情報
関連リンク
関連商品






























