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バンド・オブ・ホーセズ 『ミラージュ・ロック』 インタビュー
2004年に米シアトルにて結成、名門インディー・レーベルのサブ・ポップより2006年にデビュー。昨年海外で発売され、米ビルボード・アルバム・チャートにて13位を記録した最新作『ミラージュ・ロック』を始め、前作『インフィニット・アームズ』が、グラミー賞にてベスト・オルタナティヴ・アルバム部門にノミネートされるなど、アルバムごとに変化する表現力豊かな世界観と完成度の高いライブ・パフォーマンスで着実にキャリアを積んできたバンド・オブ・ホーセズ。
2月2日~3日にかけて開催された【Hostess Club Weekender】の為に、3度目の来日を果たしたバンドのフロントマン、ベン・ブリッドウェルとベーシストのビル・レイノルズが、日本では今年1月にリリースされた最新作、大御所プロデューサー、グリン・ジョンズとのレコーディング、さらには幻となった(!)ベンのソロ・アルバムについて語ってくれた。
いいアートと言うのは、どのような形であれ制限が付きもの
??初期の2枚は名門インディー・レーベル、サブ・ポップからリリースされ、前作『インフィニット・アームズ』は自主制作、そして最新作『ミラージュ・ロック』は、メジャー・レーベルからリリースされていますが、現在の到達点に至るまでのサウンドの方向性は、自然な流れだったと感じますか?
ベン・ブリッドウェル:自分がアーティストとして成長していく上で、変化が伴うのは必然的なこと。まずライアン、ビル、そして最後にタイラーが加わり、現在のバンド構成になった。そして制作活動やライブ・パフォーマンスを経て、個々のソングライター、ミュージシャンとしてのお互いに対する信頼感、さらに安堵感が徐々に生まれた。彼らの意見はとても貴重だと感じているし、才能が溢れるメンバーがこれだけ集まっているのだから、それをフル・ポテンシャルまで利用しないのはもったいないよね。サウンド面においても、とても自然な流れで今に至っていると思う。最新作に関して言うと、プロデューサーを務めたグリン・ジョンズが持つクラシック・ロックやルーツ・ロックのバックグラウンドの影響が特に強く表れているね。後は、メンバーがその都度聴いているものが作品にごく自然と投影されて、そのユニゾンによってバンド・オブ・ホーセズというバンドのサウンドは確立される。
??グリンの話が出ましたが、彼の主なプロダクション・スタイルは、アナログでのレコーディングですよね。音がより生々しくなり、アナログ特有のサウンドになるというのは必然的だと思いますが、この方法でレコーディングするという行為のどの部分に惹かれましたか?
ビル・レイノルズ:アナログでの録音は、楽しいけれど様々な制限がある。興味深かったり、いいアートと言うのは、どのような形であれ制限が付きものだと個人的に思ってる。
ベン:俺もクールなチャレンジだと思ったよ。前作『インフィニット・アームズ』やそれ以前のアルバムとも違う新たな制作アプローチで、作品に取り組めたから。
??今作では、まったく違うアプローチを取ろうというのは、最初から決めていたことだったんですか?
ベン:『インフィニット・アームズ』の制作は、すごくハードで、まるで荒ぶる野獣のようだった。
??レコーディングには、随分時間を費やしたんですよね。
ベン:そう。出来上がったものをメンバー内で批判しあっては、バラバラにして、何度もやり直したり…という試行錯誤の連続だった。だから前回とはまったく異なるプロセスを踏むことで、今回のレコーディングは円滑に進めたいと思っていた。前作でのレコーディングの際にバンド全員が感じていた不安を和らげる為に間違えなどにも寛大になり、必要以上に完璧さを求めないことで、生々しくて人間味が溢れる制作環境にしたかったんだ。
??全てライブ・テイクということに不安は?
ベン:彼らはちゃんと楽器が弾けるから平気だったけど、俺には、度を越えた完璧主義者の面があるからきつかったね(笑)。今回のレコーディングでは、自分が安心出来る場所から大きく踏み出さなければならなかった。演奏しながら歌うと、やはり通常のレコーディングと比べて、不完全な部分が出てきてしまう。ライブでは、いつも歌いながら演奏してるじゃないか、と思うかもしれないけれど、それとこれとはやはり違うんだ。これは自分のパフォーマンスを客観的に見てくれたセッションのコーチであるグリンの存在と彼に対する信頼感が無ければ成し遂げられなかったことだと思ってる。
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6人で作りあげた巨大な絵画
??グリンは、ローリング・ストーンズ、イーグルズ、エリック・クラプトンなど様々な大御所アーティストを手掛けていますが、彼と仕事をする上で引け目を感じることは?
ベン:(笑)。彼がプロデューサーを担当してくれると訊いた時は、本当に信じられなかった。なんで俺たちみたいなバンドを手掛けてくれるんだ、ってね。最初の頃はメールや電話でやりとりをしていたから実感があまり湧かなくて、彼が過去に手掛けた作品のこととか色々考えてしまった。でも実際会ってスタジオに入り、レコーディング作業を開始したら、想像していた人物とは全く違って、メンバー全員が感じていた重荷が取れたと思うよ。
??サウンド面においても、彼のプロダクションは壮大なスケールのスタジアム・ロックよりなものが多いですが、その部分での懸念はありましたか?
ビル:グリンという存在を信頼し、彼が下す判断に身を委ねようと決めていたから、その心配はなかったね。彼のことは、6人目のメンバーという風に捉えていたし、自分たちの音楽を通じて、彼に好印象を与えたいと思っていた。プロデューサーとしてパフォーマンスの尺度を果たすとともに、いいテイクが取れたら一緒に喜んでくれたり、何と言うか…一体感があった。今はコンピューターで何でも編集したり出来るので、反応が直に感じられるアクティヴな制作環境は、作品にとっていい影響を及ぼしてくれた。毎回緊張感をもってレコーディングに取り組めたし、今アルバムを聴き返してもそれが自ずと伝わってくる。
ベン:ビルが言ったことに同感だ。俺たち5人によるコラボレーションということには間違いないけれど、グリンとのプロジェクトでもあって、彼がどのようなサウンドを目指していたかというのは、もちろん作品に投影されている。そのゴールへ辿り着くまでのガイドを立派に果たしてくれたと感じてる。もう一生アルバムを作らないわけじゃないし、みんなが想像していたものと違ってもいいと思ってる。重要なのは、6人一緒にこの巨大な絵画を作りあげたということだね。
??前作の前後では、メンバーの脱退や加入が相次ぎましたが、編成は落ち着きつつありますよね。
ベン:俺的には、今がバンド・オブ・ホーセズの完成形だと思ってる。その前にもメンバー変更はあった。彼らがバンドにとって間違っていたというわけではなくて、"正しく"なかったんだと思う。俺は、間違いから学ぶタイプで、この件に関してはいくつかの失敗を重ねてきた。でも今は、バンドとしてしっくりくるし、目指している目的が一致していて、今後もこのまま活動を続けていくことに意欲が溢れている。
??現在のウィルコのメンバー編成みたいですね。
ベン:あ~、言えてるね!時間はかかったかも知れないが、最終的にはここに辿り着けたことに感謝してる。
??では、この新たに築き上げられたバンドとしての結束は、次回作にどのような影響を及ぼしそうですか?
ベン:いい質問だ。『インフィニット・アームズ』を制作していた時は自分達しか信じられなくて、まるで俺たち対世界みたいな心持ちだった。プロデュースを含め、すべてのプロセスをバンドのみで行い、かつ傑作と思えるような作品に仕上げないといけなかった。今回はそのプロセスにグリンが加わり、舵を取ってくれたことによって、新たな道が切り開けたような気がする。この次の作品は、また5人だけに戻るかも知れないし、誰か新たなプロデューサーを起用するか、もしかしたら再びグリンに頼むかもしれない。もちろん、まだ何も確定しているわけではない。でも様々なやり方があって、その長所と短所を体験することによって、視野が広がったことは確かだな。
ビル:僕達のバンドとしてのゴールの一つは、他のメンバーが気に入る曲を書くこと。全員才能溢れるアーティストだから、お互い完成した作品に対して高い基準値を持っているのは明らかだと思う。全員が誇りを持って世に出せる作品を作ろうという想いの相乗効果によって、作品ごとに完成品の質も高くなっていっている。だからこれからも、もっともっといい作品が作っていけるという確信があるよ。
??今までベンが主なソングライターでしたが、今作では他のメンバーも積極的にソングライティングに参加していますよね。
ビル:そうなんだ。今回はメンバー全員参加していて、特に僕は沢山の曲を書いたね。幸運にもグリンがそれを気に入ってくれたから、アルバムにもその多くが収録された。
ベン:グリンだけじゃなくて、みんな気に入ってたぜ!今作では今までにないほど、メンバー全員が曲を書いた。その中でもビルが書いたものがアルバムのイメージに合っていて、かついい曲が多かったんだ。判断基準は意外とシンプルだよ。色々な人が曲を書くと全体的にまとまりがなくなったり、俺の曲も入れてくれよ~、とか波紋を呼んだりもする。でも最終的には、どの曲を選んだら一環したプロジェクトとして成立するのかというのをみんな理解しているんだ。
??メンバー全員で曲作りを行うことはあるのですか?
ベン:やるとしたら、メールでやることが多いね。あるアイディアがあって、正式に披露する前にもっといいものにしたかったり、行き詰った時は、他のメンバーにメールで相談する。気に入ってもらえたらみんなの返事も早いし、いまいちだったら返事が来なかったりもする(笑)。歌詞の場合もあるし、インストゥルメンタルのトラックかもしれない。単にツアー中でメールを見るのを忘れてる時もあるけど…。でも家に帰って聴いてみたら、そこからアイディアが浮かぶ時もある。実は「A Little Biblical」や1stシングルの「Knock Knock」は、そんな風にして作られたんだ。
??今「Knock Knock」の名前が挙がりましたが、あの曲はキャッチーでシングルとしては最高だと思うのですが、他の収録曲と比べるとある意味、異質だなと感じました。
ベン:確かに。今作の為には60曲ぐらい書いたから、この曲に似たようなアップテンポなロック・ナンバーを他に9曲選ぶことも可能だった。でもグリンに、この曲は絶対アルバムに入れなきゃって言われて…。
??アルバムのオープニング・トラックでもあるので、より目立つ上に、アルバムを通して聴いてもちょっと違和感があるな、とずっと思っていて(笑)。
ベン:実は俺もしばらくはそう思ってたんだ。でも今は、部分的に異なる要素が詰まっていることで、結果的に面白い作品が作れたんじゃないかなと感じてる。アルバムの最後に収録されている「Heartbreak on the 101」も、「Knock Knock」を始め、俺たちが今まで作ってきた曲の感じとはまったく違うサウンドに仕上がってる。統一感は無いかもしれないけど、この"遊び"の要素が加わったことにより、バンドの新たな一面を見せることが出来たんじゃないかな。
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アーティストとしての様々な面を見せていくことの重要性
▲「Slow Cruel Hands Of Time」
(Live in Jackson Hole, WY)
??昨年の秋、ウィリー・ネルソンや俳優でもあるジョン・C.ライリーなどと列車でアメリカを巡るツアー【Railroad Revival Tour】が計画されていたそうですが…。
ビル:そうなんだ。とても楽しみにしていたけれど、残念ながらキャンセルになってしまって…。最終的には、僕たちだけで回ったんだ。でもウィリーとは、過去に何度か同じステージに立ったことがあるよ。
??ツアー中に曲作りを行ったりもするのですか?
ビル:ベンは、よく書いてるね。
??バンドによっては、ツアー中だと集中できないと言う人もいますが。
ベン:いいものを書きあげることは、難しいけど。俺の場合は、悪さをしない為にホテルに居残って書いてるって感じだね(笑)。日常的に色々なアイディアは浮かんでくるから、それを書き留めておくことは重要だと思う。それに何でも使わないと錆びちゃうだろ。今思い出したけど、新作に収録されている「Feud」は、南アメリカ・ツアー中にホテルで書かれた曲なんだ。のちに何かの形になる場合もあるし、ならない場合もあるね。
??では話は変わって、先日発売されたばかりのビッフィ・クライロの新作『オポジッツ』にベンが参加してますが、これはどのような経緯で?
ベン:以前北欧で彼らとフー・ファイターズとライブをやったことがあってね。面識はなくて、空港で少し話したぐらいだったけど、ライブを観たらお互い大ファンになった。ある日、彼らのマネジャーから新作に参加しないか、と連絡があったから、もちろんと即答した。俺たちが『ミラージュ・ロック』をLAでレコーディングしていた同時期に彼らもレコーディングをしてたから、スケジュールの問題で実現しないと思っていたんだ。でも俺たちの方が早く終わって、幸運にも彼らはレコーディングを少し引き延ばすことができたみたいで、デッドラインの1週間前にヴォーカルの依頼がきたんだ。ビルは、プロデュースの経験があるから、その時にいたデトロイトのホテル・ルームに小さいながらスタジオを作ってもらって、レコーディングしたんだ。で、それが幸運にも使われたわけ。
ビル:あれはすごく楽しかったね。即興でレコーディングすると予想外のことも起きて面白いしね。後は、マックルモア&ライアンルイスの曲についても話してあげなよ。
??彼らの作品に参加しているのは初耳でした!今、アメリカのビルボード・チャートで大ヒットしてますよね。
ベン:そうそう、アメリカでは普通に生活していたら、1日に一度は絶対聴くほど色々な場所でかかってる。俺が参加したのは、彼らのアルバム『ザ・ハイスト』に収録されている「Starting Over」って言う曲なんだけど、あれも誰かからのメールが形になったものなんだ。自分達とは全く違うジャンルや意外な組み合わせのアーティストと仕事をするのはとても面白いし、いいチャレンジだと思ってるから、オファーが来れば飛びつくよ。あのアルバムは凄く売れてるしね(笑)。ビッフィ・クライロもそうだけど、その点では今ツキが巡ってきているんだ!
??ベンの客演を始め、メンバーのタイラーはソロ作をリリースしたり、ビルはそのアルバムを含め、他のアーティストのプロデュースなども手掛けていますが、バンド以外に創造の場を持つ事は重要だと感じますか?
ビル:もちろんだよ。様々な面で学ぶことが多いからね。
ベン:自分の憧れのアーティストと共演できる場合もある。俺は、ダイナソーJr.のJ・マスキスのソロ・デビュー作にも参加してて、誘われた時は本当に夢みたいだったね。実は、ソロ・アルバムを作ろうと考えたこともあって、ビルにミックスを手伝ってもらって完成はしたけれど、最終的にバンドのビジネス・サイドの人間に「今は、そんなことしてる時じゃない。バンドに専念して。」と言われてしまった。音楽的にバンド以外のことに挑戦する唯一のチャンスだったのに、そんな風に言われてしまうとバンドにいることに息苦しさを感じてしまう。バンドの運営に携わる人が多くなっていくほど、リスクを犯すことが難しくなってくるし、一貫したサウンドの作品を作らないといけないというプレッシャーも増す。それに自分が持っているすべての才能が表に出せないと、アーティストとしての成長が阻まれているような気もする。だから客演やコラボレーションという部分だけでも、色々なプロジェクトに参加して、アーティストとして様々な面を見せていくことは重要だと感じてる。
??TVや映画など、様々なメディアに楽曲を提供していますが、例えば『トワイライト』のようなティーン向けの娯楽映画に使われることに抵抗は?
ビル:『トワイライト』だっていい映画じゃないか~。
ベン:あはは(笑)。
??芸術性より、自分達の音楽をもっと幅広いオーディエンスに届けてくれる有効なツールとして客観的に見ている?
ベン:それはあるね。そういう機会がなければ、俺たちの音楽なんか絶対に聴くことがない人が大半だと思うし。楽曲提供に関して、個人的に抵抗があるのは、政治的なものや何の事業をやっているかよくわからない胡散臭い企業だな。これはバンドを始めた頃に学んだことでもある。もしハリウッド映画に提供したら、家のローンが払えるような曲であっても、自主制作の資金のないような映画に提供することに後ろめたい気持ちは無いね。自分が作った音楽をその作品が描こうとしているクリエイティヴなヴィジョンに使いたいと思ってくれるだけで光栄だから。これはカヴァーについても言えることで、自分の作品に対しての最高の褒め言葉であって、重んじていることの一つだ。
??いずれは、映画のサウンドトラックなどを手掛けてみたいと思いますか?
ビル:もちろん。ニール・ヤングが、サウンドトラックを手掛けたあの映画は、何だっけ?
ベン:あ~、『デッド・マン』?
??ジム・ジャームッシュの。
ビル:そうそう!将来的には、あんな作品を作ってみたいね。
ベン:以前、映画の為にオリジナルの曲を書いて欲しいと言われたことがあって時間をかけて作ったけれど、結局ダメになったことがあって…。色々な人が携わっている大作映画だと、曲を書くというクリエイティヴな面だけではなくて、ビジネス・サイドにも関与しないといけないんだ。映画のプロデューサーなんかとの電話会議や、この歌詞を入れてほしいとか、やっぱりこうして欲しいとか、様々な細かいリクエストにも応じないとダメだし。
ビル:そう。カナダの人たちだったんだけど…。
ベン:かなりの時間を費やして作ったのに、思っていたものとは違うから結局いらないって言われるのはもう嫌だから、俺はこれに関してはちょっと否定的だな。
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"アンダードッグ"が受け入れられる、近年の音楽市場
−−では話は戻って、大型のメディア露出に伴いライブに来る観客などに変化は?
ベン:女の子が来るようになった(笑)!これは、絶対『トワイライト』の効果だね。
ビル:ラヴ・ソングが増えたせいでもあるんじゃないかな。
ベン:でも一番の要因は、俺たちのルックス(大笑)。いやマジな話、昔から女性ファンはいたけれど、やはり若い女の子は増えたと思うね。でも年配の人から小さな子供まで、様々な観客がいると思う。いつ頃から変化したというのは特定できないけれど。とにかく若い女の子が増えたのは事実だね!
−−なんだかすごく面白がっていますが(笑)。
ベン:観察していると興味深いんだ。ファンの女の子と居心地悪そうにしているその彼氏。「彼女のチケット代も払わなきゃいけないし、興味のないライブも観なきゃいけない。」と思ってるんだろうな、って(笑)。
−−客層に関していうと、メディア露出もそうですが、インターネットの普及によって瞬時に様々な音楽が手に入ることが可能になって、ある特定のジャンルを聴くというよりは、自分の好きなものを自由に聴く人口が増えたのは大きいのかなとも思います。
ベン:それはすごく言えてると思うね。アーケイド・ファイアやボン・イヴェールが、グラミー賞を取れる時代だからね。いわゆる"アンダードッグ"も今の音楽マーケット市場で受け入れられている。こういう流れが、一般的に成りつつある事は嬉しいね。
−−名前が出たボン・イヴェール、マムフォード&サンズ、ザ・ルミニアーズなど、フォークを軸としたバンドも最近では、メインストリームで大活躍していますしね。
ベン:タイミングが良かったんだというのは、俺たちも身に染みて感じている。15年前だったら、こんな風には絶対なってなかったと思うから。今の流れを作ってくれたソニック・ユースやぺイヴメントは、20年間ぐらい汚い小さなクラブで演奏を続けて、現在に至っている。アメリカでは、彼らの活動に伴いインディー・バンドがライブを出来る会場やそれを手助けしてくれるプロモーターが増えていったのは間違いない。俺たちみたいに、映画やTVに楽曲提供して活動資金が得られるような道も確立されていなかったから、本当に恵まれていると思っているね。
−−では、音楽史において現在の音楽シーンを言葉で表現するとしたら?
ベン:かろうじて存在してる?
ビル:(笑)。
ベン:物事は、いつでも派生的だと思う。今は特にそうで、とりあえずみんなマンドリンを演奏してみたらいいんじゃない?って感じだろう。ロック・ミュージックは、時代が移り変わっていっても不滅だと思っている。様々なジャンルがある上に、その中でも細分化されているからいくつかの言葉で表現するのは、やはり難しいな。だから相対的なことで言うと、かろうじて存在してる、かな。
−−最後にバンド・オブ・ホーセズは、現代を代表するアメリカン・ロック・バンドになりつつあると思うのですが…、
ベン:ワオ!ホントに?そんなに過大評価しちゃって大丈夫(笑)?
−−特に近年の作品は、カントリーやアメリカーナなどアメリカのルーツ・ミュージックの影響が見受けらますし、実際最近のフェスでは、バンド名がラインアップの上の方へ上り詰めているじゃないですか(笑)。
ベン:でも、そう言ってくれて嬉しいよ!このバンドで演奏するのはもちろん大好きだし、バンドとして成し遂げてきたことにも誇りを持っている。メンバー同士の仲もいい。俺にとっては、それだけで十分だ。それを他の人が聴いて、いいと思ってくれるんだったら、こんなに嬉しいことはないから。
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Live Photo: 古溪一道 l Interviewer: Mariko Okada
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