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<インタビュー>Ovall×JBL 国内最重要マルチプレイヤー集団が語る、音にかける思い

インタビューバナー

Text & Interview: 黒田隆憲
Photos: 辰巳隆二

 ジャズ、ソウル、ヒップホップなどを昇華した唯一無二のグルーヴと、洗練されたアンサンブルで日本の音楽シーンに確かな足跡を刻んできたOvallの3人が、JBLの最新ポータブルスピーカー「Charge 6」とワイヤレスイヤホン「Tour Pro 3」を体験。音楽を生業とする彼らは、普段どんなふうに音を聴き、どんな基準でスピーカーやイヤホンを選んでいるのか。使用感やサウンドの印象はもちろん、プライベートや制作現場でのリアルな使いどころまで、ざっくばらんに語ってもらった。さらに今回は、今年6月にリリースされた新作EP『Silent Storm』のこと、そしてJBLのサウンドシステムが導入されたビルボードライブ東京での、単独では実に13年ぶりとなる公演(東京会場では初開催)についても話が及ぶ。メンバーそれぞれが楽曲を持ち寄り、「完全分業スタイル」で構築される現在の制作方法や、各々のキャリアを経た「今のOvall」が、言葉の端々から立ち上がってくる。柔らかな語り口のなかに本質が宿る、濃密なインタビューをお届けする。


OvallにとってJBLとは

――JBLというメーカーについて、みなさんはどんなイメージをお持ちですか?

Shingo Suzuki:僕にとってJBLは、子どもの頃からちょっとした“憧れ”のブランドでした。20歳くらいのときに最初に買ったスピーカーもJBLで、90年代の「Vecchio」シリーズだったと思います。あと、4312の小型モデルも使っていましたね。「JBLで音楽を聴きたい」という思いがあっていくつか購入し、今も実家に置いてあります。帰省するたびに聴いている大切なスピーカーの一つです。


mabanua:JBLには、堅実で歴史のあるメーカーという印象があります。音も過剰な演出がなく、すごく信頼できる。以前使っていたモニタースピーカーも、5万円台くらいの価格帯の中では飛び抜けて良かった記憶があります。実際いろんな場面で「JBLのスピーカーは本当にいい」と話してきました(笑)。用途や世代を問わず使える、「分け隔てのない堅実さ」を感じさせてくれるメーカーですね。


関口シンゴ:僕自身はJBLのモニタースピーカーを使ったことはないんですが、ミュージシャン仲間の評判はすごく良くて、以前から耳にしていました。ソロでライブをする際、たとえばカフェなどの会場にJBLのスピーカーやモニターが置かれていることが多くて、そういう現場では「これなら大丈夫だ」と安心できます。いつも慣れた音の環境で演奏できるので、信頼できるブランドという印象がありますね。


――普段の生活の中で、ポータブルスピーカーを使うことはありますか?

関口:リビングにひとつ置いてあって、キッチンで買い物リストを整理したり、部屋で作業をしたりするときに持ち出して使っています。音楽だけでなく、動画を観るときにもよく使いますね。


Suzuki:僕もリビングに置いていて、ラジオを聴くことが多いです。手軽なのに音質がいいので、使い始めると手放せなくなります。生活に自然と溶け込んでいますね。


mabanua:場所を選ばず、どこでも使っています。イヤホンで聴くと細かく聞こえすぎるし、モニタースピーカーは「仕事モード」になってしまう。その中間的な存在として、ポータブルスピーカーがちょうどいいんです。たとえば仕事が終わった後、音楽をフラットに楽しみたいときにぴったりで、「仕事としての音楽」から解放される感覚がありますね。

――今回お試しいただいたポータブルスピーカー、Charge 6について印象に残ったポイントを教えてください。

関口:こんな小さいのに、ここまで本格的な音が出ることに驚きました。特に低音ですね。側面がしっかり振動して、締まりのある低域が出ていて。小型スピーカーって音量を上げると音が割れたり、薄くなったりしがちですが、それがまったくない。音に「ズシッと感」があって、想像以上でした。見た目もかわいらしくて、ソファの横にさりげなく置いておける感じもいい。主張しすぎないのに、しっかり鳴ってくれるギャップが面白いですね。


Suzuki:音質は低域にしっかり重心があって、安心感のある鳴り方。本体も適度な重さがあって、プロダクトとしての説得力があるなと感じました。JBLのアプリでEQ調整もできたので、気分に合わせて低域を少し抑えて高域を持ち上げたり、好みにカスタマイズできたりするのも魅力です。見た目もスポーティーでおしゃれだし、防水性もあるので、キャンプや水辺にも持って行きたくなりますね。


mabanua:これ、パッシブラジエーターが搭載されているんですよね? 僕、あれが大好きで。愛用しているモニタースピーカーにも入ってるのですが、これは飾りじゃなくて「ガチ」のラジエーターだと聞いてテンション上がりました(笑)。軽量なスピーカーって取り回しはいいけど、音響的にはマイナスなこともある。でも、これはしっかり重さがあって、それが音の安定感にもつながっていると思います。このサイズ感ってちょうど中低域の処理が難しいのですが、そのあたりもすごく整理されていて、音のバランスが非常にいい。ロゴのデザインも細かくて面白いですよね。正面から見るとブラックですが、角度によってオレンジが見える仕様になっていて、JBLらしさが出ていていいなと思いました。


――持ち運べるという点も大きな魅力だと思いますが、そこはどう感じましたか?

mabanua:筐体には指が自然にフィットする「くぼみ」があって、それが持ちやすさにつながっているんです。底面の出っ張りも、片手で持ったときの安定感を高めてくれて、滑りにくい。見た目もちょっとシェイカーを振っているみたいで(笑)、とにかく扱いやすいですね。


関口:四角いスピーカーだと「正面に置いてしっかり聴く」というスタイルになりがちですけど、これは違いますよね。たとえば、ソファにポンと持っていって動画を見るとか、ちょっとしたシーンでも気軽に使える。その自由さは、この丸みを帯びた形状によるところが大きいと思います。音もふんわり広がる感じがあって、使っていて新鮮でした。


Suzuki:僕、さっそくストラップをつけてみたんですけど、これがすごく良くて。見た目もかわいいから外に連れて行きたくなる。ファッション的にも映えるし、機能とデザインのバランスがとてもいいスピーカーだと思います。


――このスピーカーでOvallの楽曲を聴いた印象もお聞かせください。

関口:最近リリースしたOvallのEP『Silent Storm』に「Velvet Dusk」っていう曲があって。ああいう「飛ばし系」というか、「空間系」のサウンド、ギターや鍵盤にディレイがかかって音が広がっていくようなタイプの曲ですが、このスピーカーで聴くと、その広がりがすごく気持ちよかったですね。自分で弾いたギターソロも「お、気持ちいいな」と(笑)。実際にそこに音が鳴っているような、生々しさがあって良かったです。




Suzuki:僕もEPに収録されている中から、「Brainstorm」という四つ打ちのインスト曲を聴いてみました。Ovallの中ではちょっと珍しいダンサブルな曲ですが、このスピーカーで聴くとドラムとベースの押し出しがすごくしっかりしていて。低域だけじゃなくて、高域のキラキラした感じもきれいに出ていて、フルレンジでバランスよく鳴っている印象がありましたね。




mabanua:EPを流してみて、まずは「ミックス、ちゃんとできててよかった〜」という安堵感(笑)。というのも、スピーカーによっては全然違う音に聴こえたりすることもあるので、再生環境によってはいつも不安があるんです。でもJBLのスピーカーって、その点でも信頼感があるというか、「ここでちゃんと鳴っていれば大丈夫だろう」って思える。逆に言えば、JBLでダメだったらミックス見直さなきゃ、っていう「基準」でもあるんですよね。そういう意味でも、Charge 6はしっかり聴かせてくれる。改めて、すごく良い音だと思いました。



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新作EP『Silent Storm』について

――次にワイヤレスイヤホンについて伺います。普段からイヤホンやヘッドホンを愛用されていますか?

mabanua:家の中では、気持ちを整えるためにイヤホンを使うことがあります。あと、ミックスチェックにもよく使いますね。移動中は音楽だけでなく、ラジオやポッドキャストを聴くことも多いです。選ぶポイントは、変な味付けがないこと。JBLのイヤホンは素直な音で、モニター的にも使えるのがいいですね。ノイズキャンセルの作動状況や充電残量がすぐに確認できるのも便利です。


関口:電車に乗ったらほぼ毎回イヤホンを使っています。mabanuaが言ったように、家でもミックスチェックに使うこともありますが、やっぱり一番多いのは移動中ですね。選ぶときのポイントは、とにかく「長時間つけても疲れないこと」。あんまりゴテゴテしていたり、重たかったりするのは避けて、フィット感の良さとシンプルさを重視してます。もちろん音が良いに越したことはないけど、まずは「つけやすさ」が大事だなって思います。


Suzuki:僕もヘッドホンはミックスチェック用で、イヤホンは移動中によく使います。あとは、寝る前にサブスクで映画や動画を観るときにも使っていますね。そういうときって、テレビとかスピーカーよりも、イヤホンのほうが没入できるんですよ。最近の映像作品って音もすごく作り込まれているので、空間の広がりや立体感を楽しむにはイヤホンがいちばん。音と映像に包まれて、作品の「世界に行かせてもらう」感覚というか。夜中に一人で動画観ながら、大音量でその世界にどっぷり浸かるのは、僕もよくやっています(笑)。


――Tour Pro 3について、音質や機能面で印象に残ったことがあれば教えてください。

Suzuki:空間オーディオの広がりがとても自然で、擬似的な奥行きの出方がすごくよくチューニングされていると感じました。この価格帯でこのクオリティは驚きです。ディスプレイ付きの充電ケースも便利で、スマホを操作せずに状態が確認できるのが助かります。僕は古いオーディオ機材も使っているんですが、これならその代わりになる使い方もできそうで、今後いろいろ試してみたいですね。


関口:音質はとてもバランスがよく、EQも簡単にカスタムできて使いやすいです。密閉感とノイズキャンセリングの効き具合もちょうどよく、耳が詰まる感じがしないのも好印象。空間オーディオをオンにすると、まるでスピーカーで聴いているような自然な広がりがあって、移動中にもリラックスして音楽が楽しめました。音に「追いかけられない」感じがあって、包まれるような聴き心地が心地よかったです。


mabanua:空間オーディオは変化が自然で、オフにしても違和感がないのがいいですね。空間オーディオだと音の「温度」がガラッと変わるものもあって、アーティストの意図が崩れてしまうこともあるんですが、JBLは中高域の変化が絶妙で、その心配がない。低域は広がりつつも「音の芯」は残っていて、ロックのようなジャンルでもガッツが失われないのが好印象でした。ジャンルを問わず安心して使える空間オーディオだと思います。



――ケースに外部入力を接続し、そこからイヤホンにBluetoothで音を飛ばせるトランスミッター機能に関しては、どんな印象を持ちましたか?

mabanua:最近飛行機に乗ったのですが、機内の映画って有線イヤホンじゃないと観られないですよね。前の座席に挿すタイプのイヤホンで我慢しなきゃいけない。でも、これがあればBluetoothでそのまま自分のイヤホンに飛ばせる……便利ですよね。iPod用のBluetoothトランスミッターとかもありますけど、それを別で用意しなくていいのが嬉しいです。


関口:長時間のフライトだと、イヤホンをずっとつけているじゃないですか。でも、食事が来たり、毛布をかけてもらったりと、意外とバタバタするんですよね。そのたびにケーブルが邪魔になったり、再生を止めなきゃいけなかったり……それが全部解消されると思うと最高です。しかも、音もいい。


Suzuki:僕が思いついたのはゲーム機ですね。たぶん僕よりセッキー(関口)のほうがゲーマーかもしれないけど(笑)、最近のゲームって音楽もすごいじゃないですか。それを無線で、しかも高音質で楽しめるのは、かなり魅力的だと思います。一度ワイヤレスの快適さを体験してしまうと、音質以外の理由ではなかなか有線には戻れないですし。


――さて、先ほどお話にも出た新作EP『Silent Storm』について、こだわったポイントや聴きどころを教えてください。

mabanua:「Bloom」という曲が、僕にとってはとくに印象深いですね。タイのバンド、KIKIとのコラボがすごく嬉しかった。アジアのアーティストとの共作は、以前、フィリピンのシンガーArmiさん(Uptown Dance)と取り組んだことがあって、今回が2回目です。KIKIとの制作では、タイ独特の空気感というか……欧米にも日本にもない、まったく新しいヴァイブスを感じて。それがすごく刺激的でした。
 「アジアっぽさ」って、あざとく演出するものではなくて、精神的な部分や無意識のなかから滲み出るものがいいなと。たとえば音階やフレーズだけじゃなく、音と音の「間」に表れるニュアンス──そういったものを意識しながら制作しました。最近、東南アジアではシティポップ的なサウンドも流行っていますが、それともまた違って、欧米のインディポップの要素もミックスされていて本当に独自です。そうした「東南アジアならではの色」が、Ovallに新たな刺激を与えてくれたと思います。


Suzuki:前作でもそれぞれの個性が見えていたと思うのですが、今作ではさらに、メンバーのカラーがより大らかに表に出た印象があります。最近は、自分のスタジオで曲を作って、他のメンバーがそこに演奏を加えるスタイルが定着してきていて。その結果、音楽的にもより多彩で、カラフルなアプローチの詰まったEPになりました。
 KIKIが参加した「Bloom」では、Ovallのポップな側面がよく出ていますし、「Brainstorm」は関口が作ったインスト曲で、疾走感のある新しいOvallを感じてもらえると思います。僕が手がけた「Velvet Dusk」と「99」は、より内省的でディープな方向性。短い収録時間のなかで、さまざまなアプローチが展開されていくので、飽きずに楽しんでもらえると思いますし、ライブでどう表現するかも楽しみです。


関口:僕が今回持ち込んだ「Brainstorm」は、最初から「ライブ映え」を意識して作りました。Ovallではテンポの速い四つ打ちの曲は珍しいのですが、ライブで演奏したら絶対盛り上がるだろうなと。しかも、普段はあまりやらない「決め」やユニゾンのパートも盛り込んでみました。そうやって「揃えようとする瞬間」にこそ生まれるグルーヴがあるんじゃないかと思っていて。ライブでは、いつもとひと味違うOvallの緊張感を楽しんでもらえたら嬉しいです。




――今回のビルボードライブ公演についてもお聞かせください。単独公演としては13年ぶり、しかも東京では初めてのワンマン開催が決まった今の心境をお願いします。

関口:おっしゃる通り、ビルボードライブでは13年ぶりの単独公演で、東京でのワンマンは今回が初めてです。メンバー全員、普段からよく足を運んでいるだけに、自分たちがそのステージに立つことに対して自然と気合いが入ります。せっかくの機会なので、ビルボードライブならではの見せ方やアレンジを模索しながら、いま3人でミーティングを重ねています。


mabanua:いつものライブをそのまま持ち込むだけではなく、ビルボードライブだからこそできる特別なアレンジ、ここでしか観られない、この日だけしか観られないステージにしたい。そんな、特別な意識を持って臨もうとしているところです。まさに「特別仕様」のライブになりますね。


Suzuki:僕もビルボードライブにはこれまで本当にたくさんのライブを観に行ってきました。国内外の素晴らしいミュージシャンが立ってきた場所ですし、そこにOvallとして出演できるのは素直にうれしいです。あの空間は音の響きがすごくいいんですよね。低音の鳴りも力強いし、生ピアノもある。サウンド面でも表現の幅が広がるので、Ovallの個性やアレンジを最大限に活かせると思っています。今ちょうど、3人でどうやって形にしていくか、イメージを膨らませているところです。



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