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<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る



<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

 SuGの39日間限定復活ツアー完遂後、新たな世界観の作品を立て続けに発表してきた武瑠。そのひとつの集大成となる、武瑠名義として初のオリジナルアルバム『BIBLE』の完成と、本作を携えたワールドツアーの開催を記念し、今の彼の想いを満遍なく語ってもらう10000字インタビューを敢行した。

 海外への挑戦。自身の音楽思想の変遷。浮気者、sleepyhead、武瑠の3マンライブ【武瑠 18TH ANNIVERSARY LIVE「UST」】の話も交えながら、鬱屈としていた子供が夢を「正夢」にするまでの物語であり、今のおかしくなった社会へのアンチテーゼでもあり、信じるものがない人々への武瑠なりの教典でもある『BIBLE』について。

 そして、奇しくもこのインタビューの最後に武瑠のもとへ届いた「正夢」のMV完成版。それを初めて観た彼の上手く言葉にならない想いもそのまま掲載しているので、アルバムはもちろん、MVとも併せてご覧いただきたい。

Interviewer:平賀哲雄

大規模ワールドツアーへの挑戦「精神的にブーストして乗り越えるしかない」

--2024年末から数多のコラボ含むリリースラッシュがあって、その集大成とも言えるアルバム『BIBLE』がいよいよ完成したわけですが、すでにワールドツアーもスタートしていて、本当に絶え間なく動き続けていますよね。

武瑠:ワールドツアー【武瑠 TOUR 2025 BIBLE】がまず日本から始まって、8月に南米、9月にヨーロッパ、11月に再び日本とまわって、来年1月12日に渋谷・Spotify O-EASTで19周年記念ライブを開催するスケジュールなんですけど、来月からの南米ツアーに関して「ここに来てそんな問題が発生するんだ?」みたいなトラブルもあって。各会場でCDJをレンタルしようとしたら、昨日「やっぱり借りられない」って連絡があって「じゃあ、何の機材ならあるの?」みたいな。ヨーロッパツアーの宣伝をどうするかも決めなきゃいけないし、もうぐっちゃぐちゃです(笑)。違うツアーを3本ノンストップでやるようなもんなんで、大変なことになっていますね。何かに集中しようとすると「あ、これもやんなきゃ。あれもどうにかしないと」みたいな状況がずっと続いています。

--アーティストでありながら、個人事務所の社長でもあるからやらなきゃいけないタスクの量が半端ないんでしょうね。

武瑠:それもあるんですけど、今回は越境のハードルに翻弄されていますね。例えば、各国で流行っているSNSが違いすぎて、そこの労力も半端ないんですよ。日本はインスタを活用することに決めたんですけど、アメリカではTikTokが流行り出していて、逆にTikTok発祥の中国では小紅書(RED)というSNSが流行っていて。だから、それのアカウントも開設するんですけど……最初は10月に中国ツアーもやろうとしていたんですよ。でも、結果的に「中国は来年にしよう」と。わりと無謀な挑戦をしてきたタイプですけど、さすがにこれは自分ひとりでどうにかできる問題じゃないし、マジで中国は来年にしてよかったと今思っています(笑)。行って、ライブするだけじゃなくて、その前後のプロモーションとかもあるし、そこが疎かになったら本末転倒なので。

--各国のプロモーションは、現地のプロモーターに頼んではいるんですよね?

武瑠:イベンターさんがやってくれるんですけど、ここでもジャンルが複雑に混ざった自分の立ち位置というものが「どこのジャンルにアプローチすればいいか、難しい」という状況を招いていて。例えば、去年のメキシコだったらアニソンとかファッションとかジャパンカルチャーが人気だから、その枠で行かせてもらったんですけど、今年はヴィジュアル系のイベンターさんと組んでみたら、去年より全然売れなかったり。だから、ひとつのジャンルに絞っちゃいけないんだなと思ったんですけど、それもやってみないと分かんないから読めなかったんですよね。それで「こっちにも宣伝しなきゃ」って会議をやりなおしたりして。そんなやり取りを各国とやっています。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

--昨今は、AdoやYOASOBIが世界中を飛び回っていますけど、大手の事務所にもレコード会社にも所属せず、これだけの規模感のワールドツアーをやっているアーティストは他にいないでしょうね。

武瑠:だから「もう出来てる」みたいな感じで伝わると違うなと思っていて。ただ無理やり挑戦したくてやっているだけなんで(笑)。でも、去年、ロス、メキシコ、ブラジルの3本やっただけでも、全部帯同してくれるスタッフがいない中でまわったので、めっちゃ大変だったんですけど、精神的キャパが広がったのは明らかで。5月11日のちょっと無茶な3マン(※【武瑠 18TH ANNIVERSARY LIVE「UST」】@恵比寿LIQUIDROOM)とかの支えになりましたね。「あれをクリアーしたんだから余裕でしょ?」っていう。あの3マンもバンドメンバーが毎回変わったり、変則的だったから内部の音のトラブルとかあったんですけど、ブラジルで音止まったりしたのに比べれば大したことない(笑)。

--海外での武者修行で強くなったと(笑)。

武瑠:俺ぐらいの世代の日本人アーティストで、海外3ヶ国での3daysって経験したことないと思うんですけど、今年初めてやるんですよ。8月15日(金)サンパウロ(ブラジル)、8月16日(土)ブエノスアイレス(アルゼンチン)、8月17日(日)サンティエゴ(チリ)。ヤバいじゃないですか(笑)。3日間ずっと飛行機乗って、知らない環境でリハしてライブするって。国内での3daysでもみんなやらないのに。

--レジャーでもありえないもんね(笑)。

武瑠:レジャーでもこんなスケジュール組まないです(笑)。だから、精神的にブーストして乗り越えるしかないんですよね。

--本当にサバイバル。

武瑠:大冒険です!

--そんなワールドツアーの発表もあった、浮気者、sleepyhead、武瑠の3マンライブ。言うならば、ひとり3役を務めた公演になったわけですが、実際にやってみていかがでした?

▼<ライブレポート>武瑠「まだ夢が見たい! 武道館と変わらないぐらいの挑戦です!」SuG、ViViD、Alice Nine.メンバーも集結した18周年記念公演で再び夢を叫ぶ
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/149772

武瑠:本当に総括という言葉が相応しくて。今回のワールドツアーに向かっていく気持ちが大きすぎて、あの日の公演のイメージはあんまり湧いていなかったんですけど、実際にライブをやってみて「今までやってきたことが報われたライブになったな」と思いましたね。これまでの最頂点を出せた手応えがすごくありました。

--一晩で3組のワンマンライブを体感した感覚になれましたよ。衣装も構成もメンバーもそれぞれ違いましたし、ひとつひとつへの熱量も尋常じゃなかった。

武瑠:ステージに立っている人がよく言うんですけど、3曲だろうが、10曲だろうが、ひとつのステージにすべて出し切る感じはほとんど変わらないって。そういう意味では、本当に3回ライブをやった感覚でした。リハも含めると計50曲ぐらい歌ったし、すべてのステージに全部を出し切っていたし、自分でもスゴい公演だったなと思います。ちなみに、浮気者としてのステージで久々にちゃんと踊ったんですけど、1週間ぐらい前に肋骨にヒビが入ったっぽくて。それでレッスンが1,2回しかできなかったんです。で、10年ぶりに踊ったんで、超不安で(笑)。何ならいちばんの山場はそこだったんじゃないかと思うぐらい。でも、当日がいちばんちゃんと踊れて。ダンスの先生にも「いちばん踊れてた!」って褒めてもらえたし、それもあの日の公演の追い風になったんですよね。「俺、やっぱり本番強いな」と思いました。

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「こんな時代でも生き抜ける何かが必要だ」と思ったんです

--その勢いで、sleepyhead、武瑠のステージも最高のライブに仕上げられたわけですね。

武瑠:あの公演はとにかく関わっている人が多すぎて、スケジュールが合わないからリハも1日しか出来なかったんですけど、それでもクライマックスの「正夢」も含め思った通りに表現できて。あと、浮気者の「忘却の空」(SADSカバー)を久々に歌ってみて、浮気者の中でいちばん今っぽいトラックだなと感じたんですけど、それで「忘却の空」のリアレンジをしてくれたハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)さんに「今回のアルバムでも1曲やってほしいな」と思って、ギリギリで最後にバキバキのエレクトロ曲「CHEMICAL TATTOO」を手掛けてもらったんです。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

--あの日のsleepyheadのステージで「これが俺が目指したライブハウスとクラブの融合だ!」と叫んでいましたが、そこは浮気者でも今回のアルバム『BIBLE』でも一貫して体現してきていますよね。

武瑠:自然とあの言葉は出てきたんですよ! そのあとにアルバムを制作していて思ったことがあって、今回の『BIBLE』は新しいか新しくないかで言うと、sleepyheadのほうが新しい音楽はやっていたんですよね。で、今回は自分の原点回帰みたいなところが強かったんだろうなって思いました。なので、sleepyheadからちょっと戻ってつくっていると、あの日のライブをやって、アルバムが完成して客観視して思いました。そういった流れも含めて「ライブハウスとクラブの融合だ!」という言葉が出てきたのかなって。

--たしかに『BIBLE』に向けてリリースしてきた楽曲たちのインタビューでは、よく「平成」というワードが出てきたりしていました。

武瑠:そうですね。戻ろうとしていた。「SLY DEVIL feat.Mek from Saint After Six,BLVELY」とか「悪党 feat.ADE SARIVAN」とか昔のミクスチャーみたいなギターリフを入れている曲も多いし、メイクすることもそうなんですけど、原点回帰感がある。で、作曲者としては、このアルバムを完成させたうえで「また最新の音楽をやりたいな」というモードになっていますね。

--あの日の3マンも言うならば原点回帰ですもんね。そのうえでまた新しい世界へ突き進んでいくっていう。

武瑠:だから、最後の武瑠ブロックでもsleepyhead時代の楽曲は歌ったし、SuG時代の楽曲も歌ったし、完全に原点回帰ですね。このタイミングで、このメンバー(SuGからyuji(g)&shinpei(dr)、ViViDからイヴ/MTR(b)、Alice Nine.からHIROTO(g))でやるんだったらと思って、1曲目は「teenAge dream」にしてみたり。あの頃、同じ事務所で活動していたメンバーが揃ったので、同窓会みたいな感覚もありましたね。そういう意味でも「最新のモノを!」というよりは「1回振り返ろう」というモードだったんだと思いますし、よく集まってくれたなと感謝しています。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

▲アルバム『BIBLE』

--そして、アンコールで『BIBLE』から先行して「正夢」を初披露したわけですけど、あの曲を選んだ理由は何だったんでしょう?

武瑠:『BIBLE』は、あの曲を中心に組み立ててきたようなアルバムだったんです。音楽を始めた理由とか、そこから音楽活動を続けてきた経験とか、それを応援してくれたファンの存在とか、そういうものをすべて肯定してあげる曲にしたくて書いたのが「正夢」だったので、絶対にここで歌うべきだなと。そういうスケジュールを組んで書き上げた曲でもあるので。ただ、メロディ自体は元々書いていたもので、たしか米津玄師くんの「アイネクライネ」のコードとかスケールとかの普遍的な感じと、中島みゆきさんみたいな雰囲気の曲を書こうと思ってつくっていたんです。そのときは「孤独」みたいな仮タイトルだったんですよ。それで歌詞を今の自分の心情に合うように書き換えていくうちに「正夢」みたいなテーマが出てきて。で、テンポを20ぐらい上げて、ビートをドリルっぽくして、matryoshka(マトリョーシカ)の「sacred play secret place」という曲があるんですけど……

--舐達麻がサンプリングして再注目された曲ですよね。

武瑠:そうです。自分が最初に知ったのは『進撃の巨人』のMAD動画だったんですけど、それに使われている音がめちゃくちゃ良くて、そのときは『進撃の巨人』のオリジナル曲だと勘違いしていたんですよ(笑)。で、そのあとに舐達麻がサンプリングで使っていて、そこで「あ、matryoshkaっていうユニットの曲なんだ!」と知って、それから好きすぎてめっちゃ聴いていたんですよね。あと、先日亡くなったJJJの「Eye Splice」も好きでよく聴いていて、そういうクラシックソウルっぽい歌がずっとサンプリングで入っていて、トラップっぽいビートで聴かせる手法の曲を自分もつくってみようと。それに対して元々つくっていた普遍的な曲を合わせたら、本当に今の自分が歌うべきバラードでもあり、少し踊れるテンポでもあり。それが、この18周年をファンのおかげで迎えさせてもらって、音楽人として成人を迎えて最初に表現すべき曲だと思えたんですよね。

--そのタイミングに純度高くハマる楽曲を生み出せたと。

武瑠:ちなみに、JJJの「Eye Splice」を知ったのはファンのおかげなんですよ。前回のアルバム『センチメンタルワールズエンド』がめちゃくちゃ好きで、自分が書いた同タイトルの小説も読んでくれていたファンなんですけど、センスが良いからその子のインスタを見ていたら「Eye Splice」を載せていて。それで「この曲、めっちゃ良いな!」と思ったんです。そういう最近「良いな」と思っていた曲たちの影響と自分が元々書いていた曲、今の感性と伝えたいことが全部マッチングして「正夢」は生まれたんです。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

--その「正夢」を初披露した前後に、今回のワールドツアーを「武道館と変わらないぐらいの挑戦です! どうか一緒に夢を叶える仲間になってください! 信じられるモノがない奴は武瑠を信じろ!」と発表しました。毎回熱いMCは聞かせてもらっていますが、あれほど覚悟を持って突き抜けようとする姿勢になれた要因は何なんでしょう?

武瑠:キャリア的にも、SuGの限定復活が終わって、いろんな蟠りもなくなったし、負債みたいなモノが全部払拭できたような気がして。その前のsleepyheadで活動していた数年間は、かなり憎しみのギアで動いているところがあったし、『meltbeat』も『センチメンタルワールズエンド』もそうだけど、とにかく過去のトラウマやマイナスみたいなものを原動力に活動していた体感があって。それが終わったから「もっともっとグルーヴィーに音楽を楽しむことに振り切ろう」と思って「不道徳」とかつくって、軽やかな気持ちで活動していこうとしていたんですけど、想像以上に世の中がイヤな感じになってきて、最低を更新していく感じでどんどん曇っていって(笑)。そんな社会で自然に生きていて思ったことを書いたら「悪党 feat.ADE SARIVAN」とか生まれてきちゃって。

--社会風刺じゃないけど、今の世の中に対するアンチテーゼ的な姿勢の曲がどんどん生まれていきましたよね。

武瑠:「あれ? もっと楽しくなる予定だったのに」みたいな。それで「こんな時代でも生き抜ける何かが必要だ」と思ったんですよね。ニュースを観ていても「これ、本当かな?」みたいなことばっかり言っているし、ネットはネットでニュースのアンチというか、陰謀論者みたいな投稿がどんどん増えていって、陰謀論もネットの情報でしかなくて信じようがないし。すべてに対して妄信できないなと思ったんです。それで「こんなに何を信じていいのか分からないんだったら、教典をつくろう。小さなお山の大将でもいいから、俺の宗教をつくろう」と(笑)。

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「正夢」MVを観て「これ、自分の人生のまんまなんですよね」

--「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」もそういう趣旨のプロジェクトでしたよね。

武瑠:政府か陰謀論のどっちかじゃなくて、両方信じられないから自分が信じられる範囲の中で活動したいと思って。だから、去年ぐらいから「信じられるものがないなら、俺が宗教になる」みたいな。そのキャッチコピーがいちばんしっくりきて。で、音楽を始めたときもそうだったなと思い出したんです。別に誰のことも信じられないし、だったら自分で信じられるものをつくるしかないって。だから、バンドをやって、音楽をやって、表現ができる権利を勝ち取ろうとした。そういう意味で心が決まった。少なくとも信じてくれているファンの代表でなきゃいけない。いつでもその人たちに恥ずかしくない自分でいなきゃいけないんだなって。そういう気持ちが固まってきたのかなって思うんですよね。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

--で、今は今で世の中がおかしくなったから、自分の中で自然とテーマ性みたいなものがどんどん生まれてきて、それが創作の源となって武瑠なりの教典=アルバム『BIBLE』が完成するまでに至ったということですよね。

武瑠:そうですね。自然とそうなりました。自分は栄養と同じく世の中の悪い空気も摂取している。五大栄養素じゃなくて、六大栄養素みたいになっているんで(笑)、それを無視はできない。この状況で「ただただ楽しい!」みたいな感じは嘘になっちゃうし、その栄養素を使ってつくるとこうなりますよね。世の中、怖いことが多いなと思うし、でもそれこそ無理やり前向きに考えるしかないとしたら、こういう時期に新しいカルチャーとか宗教とかいろんなモノが生まれてきた歴史的背景もあるじゃないですか。パンクとか。それをつくっていけばいいのかなって。コロナ禍以降、新しい音楽とかクラブカルチャーをつくろうとしている子たちが増えている実感もあるし、人気者にならなくても、儲からなくても「これをやりたいんだ!」みたいな動きを本当に久しぶりに見ている感覚もあって。

--たしかに。

武瑠:ちょっとずつ出てきて点在しているんですよね。それこそ平成に憧れていた気持ちみたいなモノがミックスされて、今ある音楽と新しい融合体になって紹介されていって。で、結果的に昔みたいな超派手な服を着ている子たちがいたり、ラップというかハイパーポップらへんの界隈に口ピ(くちにピアス)している人たちが増えてきたり。ストレスがそういう表現になっているのも事実なんで、やっぱりただただ悲観的になるというよりは、それを燃料に変えていく人じゃないといけない。だから、自分の中でもそういう循環をつくろうとしているんだと思います。それが原点回帰とか、ちょっと古いカルチャーを取り入れいれている理由なのかもしれないなと思います。

--そんな状況下だからこそ『BIBLE』を生み出したわけですけど、自分的にはどういう方向を向いたアルバムに仕上がったと思いますか?

武瑠:どこかの方向を目指しているというよりは、やっぱり原点にかえることが大事だったんだろうなと思いますね。sleepyheadは音楽性とかブランディングをすごく大事にしていたイメージがあったんですけど、今回は「思想を伝える」「この歌詞を書く為に」みたいなところが先行していて。それが最初のつくり方に戻った感じなんですよね。とにかく原点回帰。sleepyheadは音楽性の成長を見せたくて「こんなことができるようになっていった」みたいなストーリーを歩んできたけど、そのスキルを手に入れたうえでいったん前のつくり方に戻したのが『BIBLE』。なので、言いたいことや美学を整理する為と「正夢」をどう発表するか……みたいな感じだったんだろうなって。だから、最後に1曲目の「予知夢」を足しているんだと思うし。

--最後に加えた曲なんですね。

武瑠:プロローグとしてつくりました。最初は「不道徳」はじまりだったんですよ。それが元々アルバムタイトルにするつもりだった『深世界』のタイトルとしては正しいけど、なんか『BIBLE』の1曲目としては軽すぎると思ったんですよね。もっともっと根深いところを表現したかったんですよ。なんで「正夢」のマインドになれたのか。その伏線として、もっと16歳の鬱屈としていた感覚の1曲を入れなきゃなと思って。それで「予知夢」を書いているときに並行して「CHEMICAL TATTOO」を書いてもらったんです。ちょっと小さくまとまり過ぎている感じがしたので、もっと逸脱した曲がないといけないと思ったんですよね。で、ハヤシベさんがそういう曲を仕上げてくれたこともあって『BIBLE』が完成しました。

<インタビュー>武瑠「この人生を続ける為には──がテーマだったのかも」アルバム『BIBLE』とワールドツアーへの想い語る

--あと、前作『センチメンタルワールズエンド』は、もうここで終わってしまっても構わないぐらいの世界観を描いた、武瑠くんの人生そのものと言えるアルバムでしたけど、今作『BIBLE』は終わらなかった人生のアルバムになっている印象を受けました。

武瑠:そうですね。ここからの人生みたいな。ファンのみんなが「続けたい」と思わせてくれたんですよね。だから「この人生を続ける為には──」がテーマだったのかもしれないです。前作『センチメンタルワールズエンド』は「いつ終わってもいいや」って感じですけど、今回は続ける為にはどんな気持ちがあればいいのか。そういうことを考えながら悩みながら書いていった感じがします。ちなみに『BIBLE』の発売週に「正夢」のMVを公開するんですけど、完成したモノが今送られてきて。一緒に観ませんか?

--ぜひぜひ!

武瑠:16歳のときの心情をイメージした無菌室の映像から始まるんですけど……7月6日にワールドツアー【武瑠 TOUR 2025 BIBLE】の初日として「PHASE 0 -予知夢-」と題したライブを横浜・みなとみらいブロンテでやったんですけど、その映像を加えたんですよ。

※武瑠「正夢」ミュージックビデオ視聴

武瑠:…………凄いな。

--このMVを観終えた瞬間『BIBLE』が完成したと感じました。

武瑠:たしかに。なんかずっとアルバムが完成した実感はなかったんですけど、この映像が出来て「完成した」感じがしました。

--一大絵巻が完成した感じ。

武瑠:凄いなぁ。…………いやぁ、なんて言葉にすればいいんだろう。「こんなのが出来たから観てくれー!」なんていう簡単な言葉じゃ足りないというか。自分の人生を密接し過ぎていて、なんかちょっと上手く表せないんですけど……説明できない想いを作品にした感じなんで……なんなんだろう、この気持ち。これ、自分の人生のまんまなんですよね。この人生を受け取ってもらったらどうなるんだろう。でも、今まで関わってくれたすべての人たちに観てもらいたい気持ちが強いです。いやぁ……今、本当にこのMVを観て「完成」って感じがしました。

Interviewer:平賀哲雄

武瑠「正夢」ミュージックビデオ

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