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<インタビュー>GOOD BYE APRIL「原型から夏の風が吹いていた」佐橋佳幸プロデュースのナイアガラサウンド感溢れる新曲「リ・メイク」について語る



<インタビュー>GOOD BYE APRIL「原型から夏の風が吹いていた」佐橋佳幸プロデュースのナイアガラサウンド感溢れる新曲「リ・メイク」について語る

 2024年はヒグチアイや土岐麻子とコラボシングルをリリースし、共にビルボードライブツアーも敢行。そして、これまでのキャリアを総括するようなポップスを詰め込んだニューアルバム『HEARTDUST』も完成させたGOOD BYE APRIL。2025年の夏も佐橋佳幸プロデュースによる新曲「リ・メイク」で注目を集めるであろう彼らにインタビューを敢行した。

 敬愛するアーティストたちと次々と心地良い音楽を創造している今や、シティポップがリバイバルブームから当然のように聴かれる音楽ジャンルとなった状況に対する心境。大滝詠一「Velvet Motel」カバーや佐橋佳幸と共に完成させたナイアガラサウンド感溢れる新曲「リ・メイク」の制作秘話、諸先輩たちから継承していく音楽のタスキの話など。倉品翔(vo,g,key)、吉田卓史(g)、延本文音(b)、つのけん(dr)の4人揃い踏みで語ってもらった、音楽のワクワクドキドキを届けてくれる12000字インタビュー。ぜひご覧いただきたい。

GOOD BYE APRIL

左から:つのけん/倉品翔/吉田卓史/延本文音

Interviewer:平賀哲雄|Photo:白井絢香

敬愛するアーティストたちとの共演「なんかもう夢みたいです」

--今回、佐橋佳幸さんプロデュースによる新曲「リ・メイク」をリリースするわけですが、2023年春のメジャーデビュー以降、林哲司さん、EPOさん、ヒグチアイさん、土岐麻子さんなど錚々たる面々とご一緒され続けていますよね。

倉品翔:「メジャーデビューしてよかったな」と思うことがいっぱいありますね。

延本文音:憧れの人たちにガンガン会えるし、コピバンしたいと思っていたご本人たちの後ろで演奏できているので……オタ活が捗ってしょうがないですね(笑)。会いたい人に会えているので。

つのけん:「え、会えるんだ?」「本物だ!」みたいな(笑)。

倉品翔:親がいちばんビビってる。「え、知ってる!」って(笑)。

吉田卓史:世代的にね。

倉品翔:本当に音楽的にシンパシーを感じて、それこそ一緒に曲をつくるとか、一緒にライブするとか。1回限りじゃない関係性で皆さんとご一緒させていただけていることが、すごくうれしいです。

GOOD BYE APRIL

▲倉品翔

--皆さん、必然性も親和性もある方たちですもんね。ただ有名な人たちとコラボしているわけではないという。

倉品翔:本当にそうですね。いわゆるメジャーデビューした恩恵として、とりあえず有名な人と絡ませていただくパターンもあるじゃないですか。そうじゃなくて、本当にただ自分たちがオタクみたいに好きだった方たちと、純粋にやりたい音楽を一緒にやれるという、本当にしあわせな一時を過ごさせてもらっている。

--そういう方々がラブコールに応えてくださったわけですもんね。このバンドに魅力を感じていなかったら「スケジュールが合わない」とかいろんな理由で断るパターンもあるわけですけど(笑)、皆さん、GOOD BYE APRILやその音楽が好きだからコラボしてくれている。

延本文音:皆さん、本当に1回きりじゃなくて、その後も頻繁に連絡を取り合っていますし、向こうから「2回目もやろうね」って言ってくれたり、友達みたいに接してくれる方もいたりするんですよ。夜中に音楽の話がしたくて電話してくれたりもしますし(笑)。なんかもう夢みたいです。

吉田卓史:逆に恐縮なんですけどね(笑)。スゴい人たち過ぎて。

延本文音:向こうから「友達と思ってくれていい」って言ってくれる人もいたり。

--そんな中で、2024年には、それぞれコラボシングルを実現した土岐麻子さん、ヒグチアイさんとのビルボードツアーもありました。

延本文音:たのしかったですねぇ!

GOOD BYE APRIL

▲延本文音

▼<インタビュー>GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ「幼馴染み感がある」盟友対談公開! 稀有な関係性やコラボ作『ニュアンスで伝えて』について語る
https://www.billboard-japan.com/special/detail/4353

▼<インタビュー>GOOD BYE APRIL×土岐麻子 時代を繋ぐシティポップ対談実現!コラボ作『ふたりのBGM feat. 土岐麻子』や敬愛するEPOについても語る
https://www.billboard-japan.com/special/detail/4437

倉品翔:コラボシングルをつくっていたときは、ライブで一緒にやれるところまではそんなにイメージしていなくて、純粋に「この曲をこの人に歌ってほしい」と思ってオファーさせていただいたんですけど、自分たちのライブでもご一緒できたというのは、また別の喜びでしたね。ご褒美感がありました。

延本文音:ふたりもすごく楽しんでくれて、楽屋が超うるさかったよね(笑)。もうみんなのおしゃべりが止まらなくて、出番ギリギリまでずっとしゃべってた。

倉品翔:自分たちだけのライブだったらそんなことにならないんですけど、ビルボードツアーは男女で楽屋が分かれていて、女性陣の楽屋がすごく賑やかで楽しそうだなと思っていました。でも、女性陣の楽屋からしたら、男性陣の楽屋もうるさかったらしいです(笑)。

つのけん:男性陣はイツメンなんですけどね(笑)。

倉品翔:いつものメンバーが沸いているだけっていう。

吉田卓史:なんで俺らが賑わってんねん(笑)。

延本文音:土岐さんが不思議がってたよ。「男子楽屋はいつもの楽屋でしょ。なんであんなにうるさいの?」って(笑)。

倉品翔:それぐらい楽しいツアーでしたね。

つのけん:ふたりと一緒につくった楽曲を演奏できる機会というのは、なかなかないのかなと思っていたので、ビルボードライブというすごく素敵な場所で、しかもふたり同時にコラボした曲をお客さんに向けて披露できるというのは、すごくうれしかったですね。

GOOD BYE APRIL

▲つのけん

--たしかに、コラボはしたけど、一緒にライブで披露されたことが一度もない曲って世の中にたくさんありますもんね。

延本文音:タイミングとか合わなくてね。

つのけん:あと、あのタイミングのライブで「どっちか片方だけで」というのも寂しいじゃないですか。でも、ふたり同時に叶えられたのがすごくうれしかった。

延本文音:アイちゃんと土岐さんは初対面だったんですけど、アイちゃんは土岐さんにずっと憧れがあったらしくて、お手紙を贈ったこともあるぐらい大好きだったみたいで。そんなふたりが私たちをきっかけにして出逢ってくれたのもうれしいし、めちゃくちゃ何重にも良いツアーになったなと思います。

--そして、そんな素敵な流れもあった中で、昨年11月にメジャー1stアルバム『HEARTDUST』をリリースしました。自分たち的にはどんな作品になったなと感じていますか?

吉田卓史:こんなにシングル曲が多いアルバムは今までなかったですし、このアルバムをリリースしてから一緒に披露できる過去の楽曲が増えたりして。今まで以上にポップス寄りになったのかな。インディーズ時代の最後にリリースした前作『swing in the dark』だったら、洋楽っぽさに突出した楽曲が多かったし、これまで「ポップスやりたい」と言いながらもいろんなところを辿ってきて、今回のメジャー1stアルバムがいちばん大衆向けと言ったらアレですけど、ポピュラリティの高い作品に仕上げることができたのかなと思いました。

GOOD BYE APRIL

▲吉田卓史

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GOOD BYE APRIL の全てを繋いだアルバム~初の大滝詠一カバー

--それは結果的にそういうアルバムになったのか、意図的にそこを目指していたのか。どっちだったんでしょう?

GOOD BYE APRIL

▲倉品翔

倉品翔:メジャーデビューしたときに意図的にそういう方向は目指していたと思います。ずっと「ポップスやりたい」と言っていたんですけど、元々がロック上がりなので、ポップスのやり方が分からないところからスタートして。自分たちに合うポップスのやり方を探すのにすごく時間がかかったんですけど、メジャーデビューするひとつの意味としては、お茶の間にちゃんと届けたいところがあって。今こそ自分たちなりのポップスを追及しきってみようと思っていたんですよね。そういう意味では、意識してそういう作品づくりはしていました。でも、意外とそれまでに違う方向性でつくっていた作品のノウハウとかも、全部回収できた感じがするんです。ひとつも無駄なくこれまでが活きて、今の自分たちなりのポップスの形にできたのかなって。

--これまでの過程が「すべて必要だった」と思えるアルバムにもなったんですね。

倉品翔:そうですね! これまで自分たちが好きで目指してきたモノの良いところ取りというか。それが最新形になった。

延本文音:This is GOOD BYE APRILだと思います。インディーズの1st、2ndあたりまでの音楽性と、3rd、4thあたりまでの音楽性は結構乖離しているところがあって。それはその当時の届け方というものがやっぱりあったからなんですよね。1st、2ndのときはめちゃくちゃドストレートなポップスをやりたかったんですけど、ポップスって知識もいるし、技術もいるし、しかも届けるフィールドも全然準備ができていない状態だったんです。その中でも試行錯誤してつくったポップス。3rd、4thはサブスクが結構発達してきたのと、コロナ禍もあって、それに加えて自分たちの洋楽を取り入れたいというモードもあったので、そういう色が強いんですけど、その時期はライブで1st、2ndの曲がやりにくかったんですよ。昔の曲が馴染んでいない感じだったんです。でも、このメジャー1stアルバム『HEARTDUST』を出したときに、歴代のすべての曲ができるようになったんですよね。

GOOD BYE APRIL

▲アルバム『HEARTDUST』

--そんな化学反応が起きたんですね。

延本文音:もっと昔の初めて出したミニアルバムの曲とかも、平気でセットリストに入れられようになったんですよ。『HEARTDUST』が全部を繋いでくれるようになったんです。だから、ここに辿り着くまで本当に全部必要だったんだなって。

--皆さんも大好きなシティポップや80'sポップス。そのリバイバルムーヴメントが2020年代に起きてからしばらく経ちましたけど、そうした音楽が今のシーンやリスナーにちゃんと浸透したじゃないですか。そうした背景も関係していたりするんですかね?

延本文音:「ロックが好き」とか「ジャズが好き」という人たちがいるように、今やシティポップが流行りものだからじゃなくて普通に「シティッポップっぽい音楽が好き」という人が増えてきたから、流行りたての頃みたいに、めちゃくちゃリファレンスをはっきりさせないとシティポップって気付いてもらえない。みたいなことは今はもう全然なくて。だから、今はやりやすいよね?

倉品翔:うん。

GOOD BYE APRIL

▲延本文音

延本文音:その括りにも上手いこと入れるし、かと言って過度にシティポップに括られることもない。ナチュラル。なので、流行りたての頃よりは今のほうがいいかもしれない。もっと懐かしい感じのモノと言ったらアレだけど、もっとシティポップっぽいモノが2020年代前半は求められていたと思うんですよ。山下達郎さんっぽさだったり「これがシティポップでしょ!」みたいな。でも、今は雰囲気になったから。

倉品翔:自分たち的にもそういうタームになったよね。2作前とかはもっとちゃんと意識して80'sのサウンドを自分たちなりに昇華してみようとしていたし、そういうサウンドメイクをしていたんですけど、今回の『HEARTDUST』をつくっているときは、あんまりそういうことを考えなくなっていて。純粋に良い曲をつくりたいなと思っていたし、いろんな人に共感してもらえる形にしたいと思っていただけなんですけど、自分たちがこれまでやってきたアンサンブルの重ね方とか、僕の歌い方もそうですし、勝手にそういうフレイバーになっちゃう。

GOOD BYE APRIL

▲左から:延本文音/倉品翔

--それはもうGOOD BYE APRILの個性ですよね。

倉品翔:それが自分たち的にも分かってきたので、ヘンに意識してそこをめっちゃやるということではなく、自然体でやって、自然とそういう好きなものが溢れてくる。

--そんなフェーズに突入したGOOD BYE APRILなんですが、大滝詠一さんの「Velvet Motel」のカバーを最近配信リリースされたじゃないですか。原曲だとストリングスで広がりや奥行きを表現しているパートをコーラスで表現したり、昼のイメージを全体的に夜のイメージに変えていたり、これも今のGOOD BYE APRILだからできるのであろう有意義なカバーだなと思いました。

延本文音:そう感じてもらえたのならよかったです!

倉品翔:2016年ぐらいから大滝詠一さんに自分たちの作品は影響を受けていて。純粋に大滝さんの楽曲が好きだったから、いろんなオマージュした曲をつくったりしていたんですけど、やっぱりナイアガラサウンドって当時のレコーディング技法とか、同時に何人もおなじことをしなきゃいけないとか、やっぱりちゃんとやんないとアレにはなんないと思って。でも、あの大滝さんのサウンドにしかないリゾート感というか、景色はあると思っていて、それはずっと憧れだったから「いつかカバーしたい」と思っていたんですけど、その反面、あの雰囲気を出せない限り、カバーしちゃダメなんじゃないかと。だから、相当難しいだろうと思っていたんですけど、今年、大滝さんのナイアガラ・レコード50周年というタイミングもあって、満を持してチャレンジしてみることにしたんです。

--なるほど。

倉品翔:で、今回、七夕に短冊CD(8cm CD)をリリースすることになったので、そこで大滝さんのカバーをしようと思って、最初は別の曲をやっていたんですけど、自分たちがカバーする意味みたいなものを見出せなくて。そんなときにふと「Velvet Motel」のリズムパターンを変えて、自分たちのコーラスワークとか持ち味を活かしてカバーしたら、本家と全然違う「Velvet Motel」が生まれるかもしれないとピンと来て。そこから舵を切って制作したんです。大滝さんには強い思い入れがあるからこそ、簡単にはカバーできなかったんですけど、これはひらめきがあったからやれたというか。

GOOD BYE APRIL

▲左から:つのけん/倉品翔/吉田卓史/延本文音

延本文音:大滝さんのカバーってありとあらゆる人がやっていると思うんですけど、この「Velvet Motel」をやっている人はあんまりいなくて。でも、私はこの曲がいちばん好きなんですよ。私がSpotifyで検索した限り、西寺郷太さんしかやっていなかったんで。なので、逆にそういう曲にチャレンジしたほうが面白いかもと思ったんです。そしたら、伊藤銀次さんが「大滝さんは、アーティストの本質はカバーをしたときに出ると言ってたんだよ」って私たちに話してくれて。それですごく褒めてくれたから「よかったな!」って思いました。

倉品翔:今思えば、EPOさんのバックでEPOさんの曲を演奏したりして、ちょっとジャズっぽいアレンジとか、あんまり自分たちが今までやってきていない演奏をする機会が結構多くて、それがあったらからコーラスワークも含めてこのアレンジができたのかもしれない。で、歳を重ねたからこそ、こういうアレンジで歌おうと思ったし。だから、きっとこのタイミングだったんですよね。

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佐橋佳幸との新曲制作「佐橋さんがいちばん楽しんではりました!」

--そして、7月2日には、佐橋佳幸さんプロデュースによる新曲「リ・メイク」をリリースします。それこそナイアガラサウンドを彷彿とさせるナンバーとなっていますが、どんなイメージや発想から生み出した楽曲なんでしょう?

GOOD BYE APRIL

▲配信シングル「リ・メイク」

倉品翔:一昨年の冬に「次の夏にリリースする曲を」と思ってつくり始めたデモのひとつに「リ・メイク」の原型があって。最初、イメージしていたのは、16ビートでもうちょっと山下達郎さんっぽい雰囲気だったんですけど。常々、曲をつくるうえでいちばん大事だと思っているのは、景色が見えたり、匂いがしたり、風が吹いていたり、音じゃない何かが聴こえてきてほしくて。それを昔からジャンル感より重視しているんですけど、この曲の原型から夏の風が吹いていたので、自分たち的にも気に入っている曲だったんです。ただ、アレンジの仕方がもうちょっと他にあるかもなと思って、ずっと寝かせていたんですよね。

--なるほど。

倉品翔:で、今年の夏に向けて改めて「どんな曲をやろうか」となったときに、これをビルドアップしたら、いわゆる夏の景色がしっかり見せられるんじゃないかと思って。で、アレンジが結構難航していたところに「佐橋佳幸さんと一緒にやるのはどうか」という話が上がって、結果から言うと佐橋さんが導いてくれたんです。なので、この曲でご一緒できたというのは、この上なくめっちゃよかった。

--すごいタイミングで降臨するものなんですね、神様って。

一同:(笑)

倉品翔:本当にそう思います。

GOOD BYE APRIL

▲左から:吉田卓史/つのけん/延本文音/倉品翔

延本文音:この曲は、土岐さんとのコラボ曲候補に上がっていたんだよね。

倉品翔:結果的に「ふたりのBGM feat. 土岐麻子」になったんですけど、あの去年の7月にリリースする曲をどうするか考えているときにすでにこの曲はあって。これを土岐さんとやる案も当時はあったんですけど、つくりがデュエット向きじゃなかったし、それ以前に「土岐さんとご一緒できるなら、新たに書きたい!」と思って。それで「ふたりのBGM」になったんで、この曲は自然とお蔵入りになったんです。で、いつか、ちゃんと自分たちで歌う曲にしようと思って、1年間寝かせていました。

--初の佐橋佳幸さんプロデュースでの制作はいかがでした?

倉品翔:部活みたいに楽しかったです(笑)。まずは会議室で「ここはこうしたらもっと良くなる」みたいなフランクな会話から始まって。最終的にスタジオに入ったんですけど、佐橋さんは純粋に曲も気に入ってくれていたし、僕らのバンドの嗜好にも共感してくれて「良いバンドだな」と思ってくれていることが実感できたので、制作もすごく楽しかったですね。

延本文音:私たちからしたら憧れの人じゃないですか。それこそEPOさんの曲もそうですし、「このギター格好良いな」と思って調べたら大体佐橋さんでしたし、スキマスイッチの「ボクノート」のアコースティックギターも最高でしたし。

吉田卓史:佐橋さんのギターを耳にしたことない日本人はいないよな。何かしら絶対に聴いたことがある。

つのけん:山下達郎さんの、佐橋さんがギタリストとしてたぶんラストに参加したライブを観に行っていて。そのときが初めて佐橋さんを生で体感した瞬間だったから「うわぁー! 本物だぁ!」と思って。なので、今、こうしてご一緒できたことが信じられないんですよ(笑)。

GOOD BYE APRIL

▲つのけん

延本文音:そういうとんでもない人だから、最初は「佐橋さんだ」と思いつつも、途中から「本当に佐橋さんかな?」と思うぐらい(笑)普通に話しかけてくれて。近所のめちゃくちゃギターが巧いおにいちゃんぐらいの感じで、一緒にやってくれるもんだから本当に楽しくってね。

つのけん:そうね。本当にラフな感じで。やり取りも軽快にどんどん進んでいくんですよ。全部「たのしい、たのしい」で、その楽しさが先行してどんどん進めて完成まで辿り着いた印象がすごくあります。

倉品翔:こまめに電話をくれて、何回も電話で話しました。それで「ここはこうしたら良いと思うんだよね」とか、そういうアドバイスがすごく俯瞰したアイデアというか。自分たちはどうしても当事者だから楽曲を完全に俯瞰できない部分があったんだろうなって思うぐらい。それは目線だけじゃなく経験値からくるものかもしれないですけど、ギターだけじゃなくてメロもそうだし、全体的にすごく俯瞰したアイデアをたくさんいただいたので、自分たちでは想像つかないところまで進化した感じがしましたね。

GOOD BYE APRIL

▲左から:つのけん/倉品翔/吉田卓史/延本文音

--吉田さんは、佐橋さんとご一緒してどんな気持ちになりました?

吉田卓史:めっちゃ光栄でした。もちろんギタリストとしても有名な方だから知っていましたし。小田和正さんの「ラブ・ストーリーは突然に」のイントロとか何回聴いたか分かりませんし。で、今回のレコーディングで僕が使った自分の機材、ピックぐらいなんですよね。ギターもエフェクターもアンプも佐橋さんの私物で。で、アコギもそうだし……全部ですね! 佐橋さんセットを丸々使わせてもらった感じ(笑)。

倉品翔:贅沢すぎますよね。

吉田卓史:61年とか62年とかそこらへんのギターとか、普段使われているES-335とか弾かせてもらったりして。もう音が良すぎて。もちろん楽しかったですし、友達に今回の音源を聴かせたら「めっちゃ音良いね」と言われて。どんな機材を使わせてもらったか話したら「マジでスゴい。当時の音が今聴けてる」みたいなニュアンスの反応をしていたから、「やっぱりそう聴こえるんだな」と思って。レコーディングもスムーズすぎましたし。緊張する部分はいっぱいありましたけど。自分のギター弾いている姿をとんでもないギタリストに見られているんで(笑)。でも、それも含めてめっちゃ贅沢な時間でした! 佐橋さんと倉品と3人でアコギを弾いたりとか、それこそナイアガラサウンドじゃないですけど、あんなんやったことなかったんで。だから「今度から2人だけでも一緒にアコギ録ろう」って倉品と話していたり、まだいろいろ勉強できることはあるよなと思いましたね。あと、佐橋さんがいちばん楽しんではりました!

GOOD BYE APRIL

▲吉田卓史

一同:(笑)

--それはめちゃくちゃミュージシャン冥利に尽きるというか、うれしいですよね。

倉品翔:めちゃくちゃうれしいですよ!

延本文音:リハの時点で「あのギター持っていくよ。あ、あれもいるよね。あれも弾く?」みたいな。

GOOD BYE APRIL

▲左から:延本文音/倉品翔

吉田卓史:俺もレコーディングの数日前に電話ありましたもん。「あれ、持っていくね。あと、あれでしょ。これでしょ」「……自分のレコーディングなんですか?」みたいな(笑)。

延本文音:「これはね、達郎さんにもらったやつなんですよ」とか。垂涎モノだったよね!

倉品翔:今まで佐橋さんが弾いている姿を見てきたギター。それを卓史が弾いてるから「やべぇ!」と思って(笑)。あと、そういうやり取りの中で「本当に良い曲だよね」とかそういう言葉をぽろっと言ってくれるんですよ。佐橋さんもその実感を持って取り組んでくれたことは、本当にうれしかったです。

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先輩たちからのタスキ「こんなにしあわせなことはない!」

--ちなみに「リ・メイク」がいわゆるナイアガラサウンド的なベクトルに向いたのは、そもそもGOOD BYE APRILの中でそういうサウンドを目指したのか。佐橋さんが降臨したことによってそういう方向に向いたのか。どっちだったんでしょう?

GOOD BYE APRIL

▲倉品翔

倉品翔:この曲が元々持っていた夏の風みたいなものを共通認識として佐橋さんも汲み取ってくださって。原型はナイアガラサウンドを目指していたわけではないんですけど、描いていた景色は同じ感じなんですよ。ナイアガラの音楽にも通ずるような、真夏の日差しの白飛びしたような景色は、メロをつくる時点でイメージしていたので。そこから佐橋さんが導いてくれたゴールがナイアガラサウンドだった感じですね。結構がらっと変わったので。

--あの時代をリアルタイムで駆け抜けている方ですもんね。

延本文音:絶対4人だけではこうならなかったと思いますね。4人だけでは出せない領域のスケールが出ているというか。なので、佐橋さんからの贈り物感もあります。エンジニアの飯尾芳史さんやキーボードの斎藤有太さんもとんでもない経験と技を持っている人たちでしたし、ナイアガラの音楽を好きでちゃんと通ってきているベテランの人たちがワクワクしながら携わってくれたので、4人だけでは行けないところへ連れていってもらえたんだろうなって。

--佐橋さんたちもそれを継承してくれる後輩たちと出逢えてうれしかったのかもしれませんね。かつて伊藤銀次さんとキンモクセイ伊藤俊吾さんの対談インタビューを担当したとき、銀次さんも俊吾さんに「遂にこの世代にナイアガラサウンドを継承する人が出てきた」と喜んでいましたし。

▼伊藤銀次×伊藤俊吾 ウキウキミュージック@Billboard Live対談インタビュー ~ナイアガラの遺伝子を持った人たちと共に
https://www.billboard-japan.com/special/detail/2601

延本文音:その記事、読みました!

--GOOD BYE APRILもそういう存在になっているんだろうなって。

延本文音:今日、偶然、銀次さんとリハだったんですよ(※GOOD BYE APRILは、6月24日のライブで伊藤銀次とのスペシャルステージを繰り広げた)。銀次さん、帰り際にそういうこと言ってたよね?

倉品翔:言ってくれていました。

延本文音:銀次さんと話すと面白い話ばかりしてくれて。大滝さんの話とか、はっぴいえんどの結成秘話とか「これ、課金するべきだよな」と思うような(笑)貴重なお話を聞かせてくれるんです。はっぴいえんどは小坂忠さんがボーカルになるはずだったけど、最終的に大滝さんになった話とか詳しく教えてくれて。それで「すごいですね。こうやって巡り会っていくんですね」って言ったら「そうやって僕もGOOD BYE APRILに巡り会えたんだよ」って。うれしかったよね!

GOOD BYE APRIL

▲左から:吉田卓史/つのけん/延本文音/倉品翔

倉品翔:土岐さんもラジオでそのようなことを話してくれていて。8月30日に【LIVE Light Mellow Vol.8】というイベントで、土岐さんと佐藤竹善さんと僕らがライブをするんですけど、土岐さんは僕らと諸先輩方のちょうどあいだにいるから「いろんな世代を繋ぐ存在になるんだろうなと思っていたら、それがすごく可視化されるイベントが組まれました」って。なので、繋いでいただくのに相応しい存在でありたいなとちょうど思っていて。

--音楽はタスキである。それを体現するバンドになってきているんでしょうね。

倉品翔:そうなれたらいいなと思いますね。

延本文音:オタクとしてこんなにしあわせなことはない!

--このまま憧れの人たちに会い続けていったら、いつか壊れちゃうんじゃないですか?

延本文音:もう壊れそうです!

一同:(笑)

延本文音:諸先輩方と会うだけじゃなくて、ちゃんと音楽で関わりを持たせていただいているので、毎回気持ちも引き締まりますね。演奏する曲が難しかったりもしますし、うれしいだけじゃなくプレッシャーもスゴいんですよ。嫌われたくないし(笑)。「あ、こんなもんか」と思われたくない気持ちもあるので。

--ここ2,3年、めっちゃ鍛えられているんじゃないですか?

つのけん:それはありますね!

吉田卓史:関わらせていただけるのは有難いですし、褒められたら「そんなことないですよ」と恐縮しつつもうれしいんですけど、ミスったら終わりですもんね(笑)。

GOOD BYE APRIL

▲左から:吉田卓史/つのけん

延本文音:去年のビルボードライブ東京の稲垣潤一さんと安部恭弘さんと清水信之さんのステージにバックバンドとして参加させていただいたんですけど、自分たちの今までのライブ全部の中でダントツで緊張しました!

つのけん:人生でいちばん緊張しましたね。

延本文音:潰れるかと思った!

吉田卓史:安部さんの曲で俺と倉品がギターソロでハモったりしているところを……たぶん初めて「がんばれ!」と思っただろ?

つのけん:思った(笑)。

延本文音:「ギターソロ、がんばれ!」って(笑)。私も「今日盛大なミスをしたら、もうバンドを続けられない」と思ってましたもん。

吉田卓史:あのお三方の面子を潰すわけにはいかないからな。

延本文音:先輩方から圧をかけられるとかは全くないんですが、「今日酷い演奏をしたら私が勝手にメンタル潰れるかも」みたいな。

吉田卓史:あんなに「ごはん、あんまり食べんとこ」と思ったのは、初めてでしたね。

つのけん:俺も初めてだった。

一同:(笑)

GOOD BYE APRIL

▲左から:吉田卓史/つのけん/延本文音/倉品翔

倉品翔:冷静に考えると、そういうシビれる瞬間は多いですね。作品づくりに関して言えば、しっかりやらなきゃいけないのはもちろん、先輩方に自分たちが染められちゃったらダメじゃないですか。最終的に責任を持つのは自分たちだから、ちゃんと自分たちの作品に仕上げなきゃいけない。それが出来るかどうかというプレッシャーも毎回ありますね。でも、今回の「リ・メイク」もそれが出来た実感はあります。すごくバンドっぽい音で録れたと思うんですよ。アンサンブルもすごく肉体的だし。それはこの4人でずっと積み重ねてきたグルーヴだと思うし、4人で演奏して僕が歌えば、ちゃんと4人の音楽になるということを今回もちゃんと実証できたと思います。それがよかった。

--そんな最新曲「リ・メイク」。どんな風に世に届いていってほしい、リスナーに楽しんでほしいと思いますか?

倉品翔:聴いてくれる皆さんと一緒に歳を取っていける曲であってほしいなと思います。それは自分も歳を取っていく中でいちばん大事にしていることで。今回は曲のメッセージも描いた景色もシンプルなものになったと思うんですけど、だからこそ、皆さんそれぞれの日常の中で、それぞれの輝き方で「今年の夏に聴いたら、また違う聴こえ方するな」と感じてもらったり、そうやって一緒に歳を重ねていける曲のひとつに「リ・メイク」もなってほしいと思うし、夏に夏らしい曲を聴いて、夏の風や匂い、景色を感じ取る気持ち良さを味わってもらえたらなと思います。

GOOD BYE APRIL

GOOD BYE APRIL

Interviewer:平賀哲雄|Photo:白井絢香

GOOD BYE APRIL / リ・メイク (Remake) (Official Music Video)

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