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<インタビュー>井上苑子「剥き出しで駆け抜ける1年にしたいです!」10周年記念アルバムや活動休止決断の全貌語る



<インタビュー>井上苑子「剥き出しで駆け抜ける1年にしたいです!」10周年記念アルバムや活動休止決断の全貌語る

 2025年いっぱいをもって、歌唱を伴う活動を休止することが発表された井上苑子。そんな彼女のデビュー10周年記念10000字インタビューをここにお届けする。活動休止を決断するに至るまでの全貌から始まり、このたびリリースされるベストアルバム『Inoue Sonoko BEST -#27-』の話を軸に、小学5年生からスタートした彼女の波乱万丈な音楽人生について。そして、イベント満載の10周年への意気込みや、涙ながらにファンへの想いも語ってくれているので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

Interviewer:平賀哲雄

心の中では「私はクロマニヨンズだ!」と思って歌っていたりするから(笑)

--音楽活動開始から16年、メジャーデビューから10周年。今、自分ではどんなアーティストになっているなと思いますか?

井上苑子:根本的には子供の頃から何も変わっていないなって。音楽をしているとかしていないとか関係なく、きっと何をしていても私はこういう人間になっていたんだろうなと思う。でも、自分を表現するのは音楽という手段がいちばん楽しかったし、嬉しいものだったからそれを選んだんだろうなと思います。私はやりたいこと、思ったことに対してまっすぐに突き進むタイプなんですけど、長続きさせるのが難しい性格で、昔から「そこはなおしたほうがいいぞ」と言われていて(笑)。そんな自分が執念というか、執着心を持って音楽だけは長く続けられたんですよね。

井上苑子

--音楽にはずっと夢中になれたと。

井上苑子:そんな自分が今回初めて音楽活動を休むという選択をして。音楽が人生になっていたんですけど、それを切り離して考えなきゃいけないというか、音楽を始めてから16年目にして初めて音楽=人生じゃなくなってしまったような気がする。休むことになって、来年から何をしたらいいか分からなくって。もちろん音楽活動はまた再開するつもりでいるんですけど、ライブ=人生になっていたところもあったので、それが出来ないって思うと……目標がなくなっちゃうというか。

--音楽活動をしていく中で毎回のライブが目標になっていて、そのライブでファンと会って生きている実感を得ていた身からすると、それがない人生は想像しづらいですよね。

井上苑子:そうなんですよ。だから、何をしたらいいんだろうと思って(笑)。でも、歌の不調が原因でお休みするので、また音楽活動を始める為のお休みなので、人生=音楽を続ける為に休むと考えなければいけないなと。あんまり落ち込んでもよくないなと思っているので、落ち込んではいないんですけど、ファンの人たちのことを考えるとすごく申し訳ないなとも思うし、早く復帰したいなという気持ちもあるし……複雑ですね。

--長く音楽活動を続けていれば誰もが通る道ではありますけど、よく決断できましたね。騙しだまし続ける人もいるじゃないですか。

井上苑子:騙しだましやろうと思っていたんですよ。けど、それも出来なくなったというか、ずっと自分を騙せていなくて。近年はライブでまったく思い通りに歌えていなかったから、ライブが終われば落ち込むし。騙しだましがもう出来ないと思って。それがいちばんツラくて、休むという決断に至ったんですよね。

井上苑子

--今年の3月18日に【井上苑子10周年はじまるよライブ in shibuya eggman】を観させてもらって、泣いて笑ってあらゆる感情を剥き出しにして歌っている姿が印象的だったんですけど、あれはそういう状況もあってこそだったんですね。

井上苑子:うん。ここ数年、ずっとあんな感じなんですよ。自分が思ったように歌えないから、なんでこんなにお客さんが喜んでくれているのか正直分かんないというか、私はその状況を素直に喜べなくて。「ごめんなさい」と思いながら向き合っちゃっていたというか……。でも、全力ではありました。それは間違いないんですけど、こんなに応援してくれているからには、もっと質の良いライブをお届けしたいって思うじゃないですか。だから、騙しだましで歌うのはやめて、きっぱり休んで、自分も自分にストレスが溜まらない状態にしてあげて、また歌が歌えるようにしたいなと思ったんです。

--でも、泣いて笑って喚き散らかして、それでみんなも泣いたり笑ったりしている光景は、すごく特別な音楽空間だなって。本人からしたら自分のコントロールが効かなくてそうなっている部分もあるんだろうけど、その姿を見せても「これは良いライブだ」と捉えられる空気感になっているのは、井上苑子とファンの長年の関係性があってこそだろうし、そこの物語まで見えてグッと来ましたけどね。

井上苑子:ずっとこの感じでやっているので、今残ってくれているファンの子たちは、この井上苑子をずっと受け止め続けてくれている人たちなんですよね。

--パンクバンドみたいでよかったですよ。パンクバンドだったらあれだけ感情剥き出しのライブのほうが正解だとも思いますし(笑)。

井上苑子:実際、心の中では「私はクロマニヨンズだ!」と思って歌っていたりするから(笑)。高校生のときからロックやパンクはずっと好きなんで、気持ちはどちらと言うとそっち寄りなのかなと思っていて。そういうバンドのライブを観に行くのも好きだし、そういう人たちのまっすぐさとか嘘つかない感じとか生き方もすごく好きなので、私も人間的にはそういうタイプなんだろうなって。だからこそ「不調なところも全部曝け出してやってやる!」と思っていたんですけど、勇気がなくて「不調だ」って言えなくて。で、涙が出ちゃうみたいな。

--その状態でずっと活動していくのは、心苦しさもあるだろうし。

井上苑子:そうです。皆さんに申し訳ないし、それで「もう限界かも。1回、活動を止めたほうがいいかも」と思って。まぁでも、止めたとて辞めるわけではないので。いったん休んで、そこからさらにステージアップできたらいいのかなって。休んでいるあいだも曲づくりは全然できるし、いろいろ考えることもできるし、本当に充電期間だと思って前向きに休みたいと思っています。

--あと、あの日のライブのMCで「今はキラキラ系の曲を歌うのが恥ずかしい」みたいな話もしていたじゃないですか(笑)。

井上苑子:ハハハハ!

井上苑子

--そもそも、井上苑子はどういう曲を歌いたくて、音楽生活をスタートさせたんですか?

井上苑子:そもそもは、めっちゃキラキラ系でよかったんです! 小中学生の頃は絢香さんやいきものがかりさんが好きだったので。だけど、成長するにつれて、かつてのマネージャーさんがバンドマンだったこともあって、すごく多感な高校生の時期にバンドのライブをよく観に行くようになったんですよ。それで、バンドにすごく憧れを持っちゃって。で、あんな発言をしてしまったんですけど(笑)。

--では、ポップスとロック。どっちも井上苑子が持っている属性ではあるんですね。

井上苑子:本当にそうなんです。どっちも持っている。でも、ルーツはポップスですね。だけど、ロックに惹かれている。なので「復帰したらどうしようかな。復帰作はどんな音楽がいいかな」って今から考えています。アルバムもそうなんですけど、私は幅が広いので。SUPER BEAVERさんに曲をつくっていただいたときも、バンドサウンドながらも、ちょっと井上苑子に寄せていただいてキラキラ感も増し増しにしてもらったんですけど、それが自分の中ではいちばん自分らしい気がします。ただ、もう「君が大好き」とか「チュッチュ」みたいなフレーズは歌えないかも(笑)。これは年齢の問題です!

--女子中高生がそれを歌うのは自然だけど、それをこの先も同じテンションでは歌えないということですよね。

井上苑子:そうそう! 新曲で「チュッチュです」みたいなことはできない(笑)。

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  1. back numberさんの片想いソングがめっちゃ好きで、自分はそれの女性版になりたいと思っていて
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back numberさんの片想いソングがめっちゃ好きで、自分はそれの女性版になりたいと思っていて

--例えば、大塚 愛さんをデビュー当時から取材させてもらっているんですけど、彼女も「この歳になって「さくらんぼ」をあのまま歌うのはもうムリ。一児の母にもなった大人が女子高生の制服着て歌うようなもんだ」と、ジャズっぽいオシャレなアレンジに変えて歌っていた時期があって。

井上苑子:そうですよね! その話が聞けて嬉しいです!

--でも、今はオリジナルの「さくらんぼ」も逆に楽しんで歌えるようになっていたりもしていて。

井上苑子:なるほど! そのフェーズにもいきたい!

--なので、井上苑子はちょうどその転換期にいるんでしょうね。

井上苑子:たしかに! 今、気持ち的にも、どう見られているのかとかも、すごく微妙な年齢だし。若いのか、大人なのか、人によって見方が違うじゃないですか。だから、自分でもどんな自分でいたらいいのか分からなくなるんですけど、今の10周年のタイミングでのライブでは、そういう若い曲もめちゃくちゃ割り切るというか、楽しんで歌いたいと思っています! でも、この先が心配だなと思っていたので、今の話を伺えてめっちゃよかった!

--今回リリースされる10周年記念アルバム『Inoue Sonoko BEST -#27-』。本作に収録されている自身の歴代楽曲を振り返ると、どんな感慨を持たれたりしますか?

井上苑子 アルバム『Inoue Sonoko BEST -#27-』<

▲アルバム『Inoue Sonoko BEST -#27-』

井上苑子:こんなにいろんな曲を歌わせてもらっていたんだなぁって実感しますね。本当にバラエティ豊かだし、めっちゃ可愛らしい曲もあれば、ロックな曲もありますし……つくっていたときのことを思い出したりすると、よく頑張ったなぁって(涙を滲ませる)。マジで泣きそう。……すみません、ティッシュもらいます。

--その涙は、何を思い出して溢れた涙なんですか?

井上苑子:……こうなるって分かっていたら、違う選択もあったのかなと思うし、後悔もあるし。でも、めっちゃガムシャラだった。売れたくてずっと活動していたから。小学校5年生から事務所に入って、メジャーデビューしたときは高校3年生だったから、結構長く居させてもらっていたんですよね。だから「もうちょっと結果を出さなきゃダメだ」と焦っていたし……その頃のことを思い出すと「もうちょっと上手くやれたのかなぁ」と思ったり、でも「頑張ったなぁ、全力だったなぁ」とも思ったり、様々な気持ちが込み上げてきますね。

--でも、どの道を選んでも「こうしていれば」と思うように人間はなっているじゃないですか。だから、選ばなかった道のほうに対して後悔することもあると思うんですけど……

井上苑子:でも、何回繰り返しても、こうなっていた気がします!

--結局(笑)? それは性格的に?

井上苑子:性格的に!「この人の期待を裏切れない」とかそういうところに重きを置きがちだったので。最近、そういう部分はなくなったんですけど、当時はマネージャーさんとかが「こうしてほしいと思っているんだったら、私はそうなるべきだ」と思っていたし、いちばん近くにいてくれる人を喜ばせたかったから。なので、結果、自分の意思でその道を選んでいたから、どうしたってこうなっていたと思うんです。今回も自分で休むという選択をしましたし、また面白い人生になっているなという感覚もなきにしろあらずです。これまでもこれからも面白いと捉えようと思えば、全然そう捉えられる。自分の中では休むことも新しいことをしている感覚ではあるので。いつも「次はどうする?」しか考えていなかったんですけど、それが初めてなくなるわけですから、その未知の世界で私は何を思うのか、何をするのか。そこはすごく楽しみですね。

--休業すらも楽しもうと思えているのなら、よかったです。

井上苑子:でも、ファンのみんなのことは置いていかないように、ファンクラブはずっと動かしたりとか、SNSもやっていようと思うし。暗い感じでお休みしているつもりはないので。

井上苑子

--先程、小5で事務所に所属することになったと話していましたが、どんな経緯で入ることになったんですか?

井上苑子:大阪の音楽スクールに通っていたんですけど、そこに事務所の社長が見に来たんです。で、その日に会議室に呼ばれて「歌って」と言われて。よく憶えていないんですけど、私は動じずにすぐ歌ったらしいんですよ。そんなに上手くはなかったみたいなんですけど(笑)、その度胸が買われて入れてもらえることになったんです。それまでずっと芸能界に憧れていて、正直に言うと歌手だけを目指していたわけじゃなくて、新聞の番組表に「これとこれを私は観る!」って○付けていたようなめっちゃテレビっ子だったから、どんな形でもいいから芸能界に入りたかったんです。

--で、小5から曲はつくり始めていたんですか?

井上苑子:事務所に入ってすぐ「つくろうよ」と言われて。母がコーラスとかボイストレーナーとか音楽の仕事をしているので、母にいろいろ教えてもらいながら曲をつくって。で、小6から中3まで路上ライブをやって、そんな中で「東京じゃなきゃ意味ない」と思って上京して、芸能コースのある学校に入って、そこにはいろんな子がいて「もっと頑張ろう!」とハングリーになって。マネージャーさんにいろんなライブに連れて行ってもらって「自分はどうやって楽器を弾けばいいのか」とか「見え方をどうするか」とか覚えて、それでライブをやりつつ配信していたら、その配信を観ていたユニバーサルミュージックの方が声をかけてくれて、高3でメジャーデビューできました。

井上苑子

--そして、井上苑子の歌は同世代の学生中心にたくさんの人に聴かれるようになっていきました。その当時はどんな心境だったんですか?

井上苑子:メジャーデビューするちょっと前ぐらい、それこそ配信とか無料ライブとかやっているときに「同世代の子たちがめっちゃ来るようになったな。有難いな」と思っていたら、メジャーデビューしてそれがもっと一気に増えていって。大人にはそういう狙いや戦略があったんだと思うんですけど、私自身はそんなことを考えたこともなくて、純粋に片想いの歌が、ラブソングが好きで歌っていたら、そういう状況になっていたんですよね。back numberさんの片想いソングがめっちゃ好きで、自分はそれの女性版になりたいと思っていて。そしたら、それを同世代の子たちが好いてくれたから嬉しかったですね。あと、中川大志さんや平祐奈さんが出演していたキラキラ系の映画の主題歌「メッセージ」を歌わせてもらったり、ドラマのタイアップも若い次世代スターの俳優さんが出演している作品が多かったので、その影響も大きかったんだと思います。

--同世代のポップアイコンになっていきましたよね。

井上苑子:【GirlsAward】とか【関西コレクション】とかファッションショーにも出せさせてもらっていましたし。関コレなんてお客さんとしてめちゃくちゃ行ってたんで! その関コレのステージでまさか自分が歌うなんて思ってもいなかったから、嬉しかったですねぇ。にこるん(藤田ニコル)も同じ時期にバァ~って駆け上がっていて、同じイベントに出させてもらうことも多くて。それまでギャルという存在に会ったことがなかったからすごく楽しかったし、いろんな人と出逢えて純粋に面白かったですね。

井上苑子

--その時期に「ラブソングと言えば、井上苑子」みたいなイメージも出来上がっていって、自信もついていったと思うんですけど、そのイメージが次第に自分を縛る要素になっていくことはなかったんですか?

井上苑子:いやぁー、そこが上手くいかなかったんでしょうねー(笑)! そこがね、私の自我がすごく出ちゃったところで。口では「いいですよ。次もラブソングやりましょう」と言っているのに、心が追いついていかなくて。めっちゃバンドが好きだったんで、聴く曲も全部バンドになって、それで「うわぁー!」ってライブしたいなと思うようになって。でも、それが言えないからスタッフさんとのやり取りも表面的になっていってしまった。自分自身は商業アーティストだと思っていたんですよ。映画で例えるなら、小劇場で上映しているコアな自主制作映画とかではなくて「売れなきゃ意味がない」みたいな、そういう商品だと思っていたので、本音なんて言っちゃいけないと思っていたし、言わないのがプロだと思っていたし、私はユニバーサルの方も含めてスタッフさんたちのことが好きだったから、余計なことを言って困らせたくなかったんですよね。

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私が何かあげられたらと本当に思っているので……みんなの味方でいてあげたい

--ゆえに自分の中の衝動を押し殺してしまうことにもなったと。

井上苑子:それで何が好きだったか分からなくなってきちゃったというか、たぶん頭がパンクしていたんですよね。で、もうすでにいろいろ決まっているのに「やっぱりこの世界観とこの曲は合わないと思う。ティザー映像もジャケ写もイメージと違う!」みたいなことを言い出しちゃったりとか、結局そういうことが起きるようになっちゃって。それで「でも、これはもう依頼しちゃってるから変えられないよ」「じゃあ、これの何がいいのかもうちょっと教えてもらっていいですか。私には刺さってないです」みたいなやり取りを泣きながらしちゃって……結果的にみんなを困らせてしまった。

--要するに商業アーティストではなかったということですよね。ちゃんと自我もあるし、意見もあるし、自分が表現したいものを表現したかった。クリエイティヴ脳としてはそれが健全なんだけど、それまで言うことを聞いていた苑子ちゃんが急に「違う!」と言い出したから、みんな困っちゃったっていう。

井上苑子:そう! いまさら言うなよ!っていう。でも、そのときは頭の中がパンパンだったから「これじゃダメなんだー!」と思っていたんですけど……いざつくってもらったらティザー映像もジャケ写もめちゃくちゃ良かったんですよ(笑)。大好き! だから「私は何が不満だったんだ?」みたいな。

--ただの面倒くさい奴になっちゃった(笑)。

井上苑子:そのとおり! 本当に申し訳なかったです! それが今回の『Inoue Sonoko BEST -#27-』にも収録されている「ファンタジック」なんですけど、楽曲はもちろん映像もアートワークも最高なので、改めてチェックしてみてください(笑)。

井上苑子

--そのあとはどうなっていくんですか?

井上苑子:そのあとは、メジャー3rdアルバム『白と色イロ』をリリースして……コロナ禍に入ったんですよね。それが22歳ぐらい。で、その翌年に『ハレゾラ』というミニアルバムを出して、ユニバーサルとの契約終了。という流れだったので、急に静かになってしまったというか、ポカーンって感じで。でも、なるべくしてそうなったんだろうなと思います。私自身のメンタルも「今、絶好調なのに、なんでこんなことになってしまったんだ!」って感じでもなかったし、たしかに集客も減ってはきていたので、どうしてもメジャーにしがみつこうみたいな気持ちでもなかったんです。私、片想いはイヤなんですよ。

--これだけ片想いの歌を歌ってきておいて?

井上苑子:両想いがいいです(笑)。でも、実家みたいな存在の事務所であるつばさレコーズ所属であることは変わりないし、より自分らしく活動できるとポジティブに捉えてはいたので、コロナ禍の途中ぐらいからそういうモードで活動している感じですね。

井上苑子

--今、ファンは自分の中でどんな存在になっていますか?

井上苑子:ファンの人はどんどんどんどん家族になっていっています。のこのこズという名前のある家族みたいな。大きなお家の中でみんなと一緒にいる仲間っていう感じがして。私の原動力でもあれば、精神安定剤でもある。音楽で繋がった人たちなんですけど、今や音楽だけで繋がっている関係じゃないと思っていて。ファンクラブイベントも2曲ぐらい歌って、ひたすらしゃべったり、ゲームしたりしているし(笑)。あと、みんなの人生を結構知っちゃっているんで……(涙を溢れさせながら)それが嬉しいし……みんな、しあわせでいてほしい人です。

--そこまで想える存在になっているんですね。

井上苑子:みんな、DMで相談してくれたりするんです。私は返事しないんですけど、一方的に送ってくるんですよ(笑)。でも、全部読んでいるから、その子たちの心情をめっちゃ知っている状態でライブやリリイベで会っているので……例えば「今、仕事がツラくてもうやっていけないです」というDMが来てたら、ちょっとでも私が力になれたらいいなと思って歌ったり話したりしているし、例えば「友達との関係が上手くいっていない。頼れる人がいない」という状態で私にDMを送ってきているんだとしたら、私しか頼れる人はいないだろうし、私が何かあげられたらと本当に思っているので……みんなの味方でいてあげたい。そういう存在です。だから、私も頑張れる。みんなが元気でいられるように、私も元気でいたい。

--めちゃくちゃ純粋な関係性じゃないですか。ちっとも商業アーティストじゃないですよ。

井上苑子:商業アーティストだと思っていたんですけど、私の目からしか見ていなかった曲たちが「このファンの子にはこういう風に刺さっているんだ?」と分かったりする瞬間がたくさんあって。そういうところでもすごく救われてきたし、この曲がその子の拠りどころになっている曲なんだと思ったら、私もその曲の捉え方がめっちゃ変わるし、この曲のおかげでその子と出逢えたんだと思ったら、私の中でもすごく大事な曲になるし。あと、商業アーティストという言い方はよくないけど、みんなで作戦会議して、大人も歌う私もどっちもめっちゃ本気だったから、そうやって誰かの心に刺さる曲になっていったんだろうなとも思いますね。

--その結果、かけがえのない家族とも呼べる仲間がたくさん増えていった。そう考えると、井上苑子が自身の音楽人生を素晴らしいストーリーにしてみせたとも言えますよね。

井上苑子:ありがとうございます。

井上苑子

--そして、10周年記念アルバム『Inoue Sonoko BEST -#27-』には、その井上苑子の音楽人生が乗っかっている。

井上苑子:めっちゃ乗っかっていますよ。声色で「このとき、こんなことあって、こんなことを思っていたな」って分かりますし。本当にこれまでの私をまとめたので、ここからどうなるかはまだ分からないけど、10年間やらせてもらえたのはファンの皆さんがあってこそなので、私にとってはもちろん、皆さんにとっての記念でもあるようなアルバムになったんじゃないかなと思います。

--あと、このアルバムを曲順通りに聴いていって、DISC2のクライマックスに「右足」が入っていて、剥き出しの井上苑子を感じられるのは秀逸だなと思いました。

井上苑子:DISC2のいちばん最後の「点描の唄(ソロVer.)」は、人生の中でこんなにラッキーなことはないぐらい本当に良いご縁があって、Mrs. GREEN APPLEさんと歌わせてもらった曲のソロバージョンなんですけど、私の中ではボーナストラックなんですよ。なので、本編の最後は「右足」なんです。「右足」は初めて「何も繕わずに、本当に心の中を書こう」と思って。それまではスウィッチを入れて恋の歌とか書いていたんですけど、この曲は日記みたいにそのときの気持ちをバァーって書いて、それをSUPER BEAVERの柳沢亮太さんに送って修正してもらって、曲にしてもらったんです。だから、当時の自分の感情がもろで映し出されていたし、いつ歌ってもその気持ちになれるんですよね。そのときどきの悔しい気持ちってテーマが違うじゃないですか。今の私だったら「思い通りに歌えない」という悔しい気持ちがめっちゃ乗っかる。だから、今の私の想いとも重なるんです。そんな風にどんなツラいときでもそばにいれてくれる大事な曲ですね。

--そんなアルバムも出る10周年。7月20日に【いのうえ夏祭り2025~みんな、愛し10年!~】、秋には【井上苑子10th Anniversary Tour ~10年前は高校生。大人になったね~】の開催も決まっています。どんな1年にしたいと思っていますか?

井上苑子:剥き出しで駆け抜ける1年にしたいです! もう休むと発表しているので、不調であることを公開してからのライブってめちゃくちゃ怖いんですけど……ただミスっただけでも「あ、不調だからか」って思われそうだし(笑)。だからこそ、あんまり飾らずに剥き出しで自分らしくやれたらなと思います。あとは、記念すべき10周年のベストアルバムの曲ばっかりをやるツアーにするので、もうこんなにてんこ盛りの井上苑子のライブをやることは今後ないだろうと思うぐらい、てんこ盛りにしてやろうと思っていますので、自分自身もどうなるのか。果たして井上苑子は全部歌いきることができるのか! 本当にサバイバル! 本当に障害物競走(笑)。でも、それを楽しもうと思います。バンドメンバーもいるし! なので、みんなも楽しみにしていてください!

井上苑子

Interviewer:平賀哲雄

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2016/03/16

[CD]

¥3,972(税込)

だいすき。
井上苑子「だいすき。」

2015/11/04

[CD]

¥1,222(税込)

♯17
井上苑子「♯17」

2015/07/01

[CD]

¥1,834(税込)

♯17
井上苑子「♯17」

2015/07/01

[CD]

¥2,343(税込)

赤いマフラー
井上苑子「赤いマフラー」

2014/11/19

[CD]

¥1,019(税込)

線香花火
井上苑子「線香花火」

2014/07/02

[CD]

¥1,834(税込)

センチメンタルシックスティーン
井上苑子「センチメンタルシックスティーン」

2014/01/29

[CD]

¥1,047(税込)

運命線ビリーバー
井上苑子「運命線ビリーバー」

2013/09/25

[CD]

¥1,047(税込)

ソライロブルー
井上苑子「ソライロブルー」

2013/04/10

[CD]

¥1,047(税込)