「この曲、BPM 200ですけど」(岡田)

――ここからは、アルバム『Completeness』収録内容について聞かせてください。まずは、TVアニメのオープニングテーマ「KiLLKiSS」から。
米澤:歌詞、メロディともにキャッチーですぐに覚えられる楽曲です。イントロで流れる長めのストリングスが好きで、ライブだと「次、この曲なんだ」と察してもらえる部分。わかっていても、いざバンドインすると必ず盛り上がるので本当にすごいなと毎回のように感じています。
――2コーラス目ではメロディも大きく変わりますし、演奏もさぞ至難なのでは?
岡田:慣れてきたら大丈夫ですね。この曲、BPM 200ですけど。
――えっ(笑)。
岡田:慣れたら大丈夫です!
米澤:難しいというか「速いな〜」くらい。みんなもう慣れたよね。
高尾:なんなら、いちばん慣れています(笑)。
「KiLLKiSS」(TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」#1 挿入歌)
――自分はいま、とんでもないモンスターバンドを相手にしているのだと、思わず天を仰ぎそうになりました。表裏のリズムが何度も切り替わりますが、この点については?
高尾:私のリズム感を強化する目的で、リズム100本ノックをしたの覚えてる? たしか、めいしゃん(岡田)とゆづ(渡瀬)の3人練習のとき。裏拍部分を100本ノック形式で「もう一回!」「はい、もう一回!」って、何度も練習して。
岡田:少人数練習になると始まりがちだよね。講師の方々が客観的に見てくださるから上達スピードも上がるし、本当にありがたいです。
米澤:ムジカのそういうところ、本当にいいと思う。ちゃんと容赦せず、やるときはやる!
――体育会系と言いますか、たしかに出席者が少ないときほど練習がキツくなりがち、という“部活あるある”を思い出しました。続くは、エンディングテーマ「Georgette Me, Georgette You」です。
米澤:「KiLLKiSS」もそうでしたけど、デモ音源が届いた段階で「神曲降臨」ってグループLINEが盛り上がって。
高尾:そうそう。この曲は特に、佐々木李子が魂を削って歌ってくれているよね。サビ終わりのロングトーン然り、CD音源よりもむしろライブで聴いた方がそれがよく伝わると思う。なので、ぜひライブにお越しいただきたいです!
「Georgette Me, Georgette You」
――高尾さん演奏のキーボードもまた、この曲の要です。
高尾:いや〜、そうなんですよ。アルバムのなかでも最難関曲で。
岡田:あれ、そうなの? 全然そう感じてなかった。
高尾:難しさでいうと、複雑なパッセージよりも感情を込めて弾く方が断然上です。たとえば<ああ 最初から知っていたわ 許されないこと>だと、指先のタッチを変えるようにしていて。「打ちひしがれた人って、どのくらいしか力を出せないんだろう?」なんて考えながら、力の抜き具合を意識しています。それに私も李子とデュエットする気持ちで、キーボードを歌わせようとしています。
米澤:本当に尊敬しちゃう。前にもどこかで話していたけど、いつかグランドピアノでアコースティックバージョンも披露してほしいな!
――いわゆる“Unplugged”企画ですね。今回のインタビューがそのきっかけになれば本望です。あくまで私の解釈なのですが<あなたが触れたわ この傷口に>になぞらえると、キャラクターそれぞれに“傷に触れてきた”相手が思い浮かびそうです。
岡田:どう? 私はすぐ出てくる。
高尾:というか、これはみんな即答だよね!?
米澤:間違いない(笑)。にゃむにとっては、またしても睦ですね。直接的に傷に触れられているわけではないですが、にゃむが勝手にその感覚を覚えている感じ。
岡田:海鈴は、圧倒的に立希ちゃん。#10の冒頭でもひと悶着があって。とはいえ、あのシーンがなければ海鈴は覚醒できなかったし、立希ちゃんの性格から言葉足らずではありましたが、それがむしろ海鈴をハッとさせてくれて。
米澤:「何が言いたいんだよ……」って対抗していたもんね。
岡田:自分で考える余白を与えてくれたのが、本当に立希ちゃんらしいなと。そんな彼女を絶対に信頼している海鈴が、逆に向こうから信頼ゼロだったのも衝撃でした(笑)。
高尾:それはもう傷に触れられまくりだね。祥子はもう“誰が”とかではなく、自分を取り巻く世界のすべてが敵くらいに捉えていそう。でも、傷がある方が逆に心地よかったりするのかな。ムジカは全員が傷だらけで、だけどそれすらも絆に変えていけるバンドだから。
――至言、ですね。
高尾:アニメを観ていて、そんな想いを抱きました。傷口が見えていていいし、あの痛みすら愛おしい……。
――ここからは、#10の挿入歌の2曲についてお願いします。
高尾:「Imprisoned XII」は、重たい歌詞と優しい曲調が衝撃的な曲で。勝手な考察ですが、CRYCHICが#7で再集結して「春日影」を演奏しなかったら、初華はこの歌詞を書いていなかったはず。そうなると、曲自体も必然的に生まれていなかったと思います。
「Imprisoned XII」(TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」#10 挿入歌)
――その通りだと思いますよ。
高尾:それと、祥子のなかでの音楽性の変化が曲の雰囲気に表れているような気がしていて。「春日影」などのCRYCHIC曲を除けば、彼女が長調(=メジャーキー)で曲を付けたのは、この「Imprisoned XII」だけなんです。だから、あの再集結をきっかけに、わずかながら世界に対して心開けたことで、改めて自分の本来の音楽性で作曲ができるようになったんだと受け取っています。
岡田:ファンの皆さんも「この曲だけ少し違う」なんて印象を抱いてくれたらしいよね。アコースティックギターの存在感が大きいのもあるのかな。
――楽曲冒頭、キーボードとアコースティックギターのみ鳴らされるのも、祥子と初華の関係性を暗喩してのことかもしれませんね。とはいえ、ふたり以外のメンバーはどんな心境でこの曲を演奏すればよいのでしょう(笑)。
米澤:不思議な気持ちですよね。でも、これには裏話があって。それぞれに意識を向けたものがあらかじめ設定されているんですよ。

――ほう。
米澤:ドラムのモーションキャプチャをした際に、「にゃむはこちらを向いてください」というような指示もあって。明言こそされていませんが、メンバーが向いている方向にもちゃんと意味があるんだと思っています。
岡田:いま初めて知ったかも! 裏話すぎるね。
――冒頭にあった、“祥子の左右どちらに進むか問題”に近しいものを感じます。もっとお話を聞きたいところですが、4曲目「Crucifix X」の方はいかがでしょうか。
高尾:ムジカ再結成といえば、この曲。あの時点でのバンドの姿が<命の歯車が><回り出す>の歌詞にも投影されているんだと思います。
岡田:私たちらしいサウンドだよね。アニメでは背景のビジョンと重なって、初華ちゃんに悪魔の翼が生えたように見える演出もカッコよかったです。
高尾:私は普段、キーボードとオルガンの両方を使っているけど、この曲はイントロにベートーヴェン「ピアノ・ソナタ 第14番 “月光”」が入っていることもあり、オルガンを多用していて。それ以外でオルガン重視の曲は、バンドの初期曲「Ave Mujica」とかかな?
「Crucifix X」(TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」#10 挿入歌)
――たしかに。
高尾:なので使用楽器の面でも、原点に立ち帰るような意味が込められている気がします。歌詞の話に戻ると、最後の<月の下 顔のないマリア>が引っ掛かっていて。なぜなら……2曲後のタイトルが「顔」。
米澤:わかる。
――(笑)。#13の挿入歌について、まずは「八芒星ダンス」の歌詞の意味、皆さんは理解できましたか?
米澤:サーカスがテーマとは知っていますが…。
高尾:作詞をしてくださるDiggy-MO'さんの世界観、すごいですよね。それがムジカのサウンドと合わさると、本当に呪文のように聞こえてきて。
岡田:文字にすると、パンチがすごいです。八芒星がモチーフなのもなんだかいいですよね。
――八芒星はたしか、完全性や再生。あるいは無限の循環などを意味するのだとか。“完全”という意味では、アルバムタイトルとも重なります。
高尾:本当だ。「KiLLKiSS」でも<‘completeness’>と歌っていたし、完全を意味する言葉が散りばめられることで、作品全体に統一感を感じられますね。
「八芒星ダンス」ミュージック・ビデオ
――今回のアルバム収録曲で見ると、こちらはドラマー的に叩いていて最も楽しそうな楽曲ですが。
米澤:いや〜、もう圧倒的に難しいです。
――強いて言えば、リズムの変則的なBメロが?
米澤:いや、もう全部です(笑)。基本的に叩けはするんです。ただ、全体を通して弦楽器とのユニゾンになるので、絶対に間違えられないという意味での難しさがあって。
リリース情報
アルバム『Completeness』
Ave Mujica
- 2025/4/23 RELEASE
<5,000枚限定生産特装盤(CD+Blu-ray+グッズ)>
BRMM-10915 17,600円(tax in.)
<Blu-ray付生産限定盤(CD+Blu-ray)>
BRMM-10829 10,450円(tax in.)
<通常盤(CD)>
BRMM-10917 2,970円(tax in.)
公演情報
【MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」】
2025年4月26日(土)、27日(日)
神奈川・Kアリーナ横浜
DAY1:Petrichor
DAY2:Geosmin
公演詳細
【Ave Mujica 5th LIVE】
2025年7月26日(土)、27日(日)
千葉・LaLa arena TOKYO-BAY
チケット:
S席(特製グッズ付き) 19,800円(税込)
A席(特製グッズ付き) 14,300円(税込)
一般指定席 8,250円(税込)
公演詳細
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