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<インタビュー>エリック・ミヤシロ率いる4TRP. Legends、「アイディア自体は高校生の時からあった」
Interview & Text:石沢 功治
Photo:興梠真穂
エリック・ミヤシロ率いる新ユニット「4TRP. Legends」(フォー・トランペット・レジェンズ)の初来日公演が2025年5月に開催される。メンバーはエリックのほか、世界最強のリード・トランペットと呼ばれるウェイン・バージェロン、伝説的なトランペッターのアレン・ヴィズッティ、ボストン・ブラスでの来日が記憶に新しいホセ・シバハの4名で、まさにレジェンドクラスのトランペッターたちだ。今回、エリック・ミヤシロにインタビュー。本ユニットを結成した理由や、メンバーそれぞれの魅力について話を聞いた。
いつか、チェイスのような
ブラス・ジャズ・ロック・バンドをやってみたかった

――世界的なトランぺッター4人が集結する4TRP. Legendsですが、まずはこのプロジェクトを思い付いた経緯を聞かせてください。
エリック・ミヤシロ:アイディア自体は高校生くらいのときから、ぼんやりとありました。ヒット曲「黒い炎」などで知られるチェイスという1970年代初期に活躍したブラス・ジャズ・ロック・バンドがあるのですが、トランペッター4人がフロントなんです(注:ウディ・ハーマン楽団などで吹いていたトランペット奏者ビル・チェイスを中心に1970年に結成、1972年に解散。1974年にメンバーを一新してビルが再結成したものの、同年夏のツアー中に飛行機事故でバンドは消滅)。いつかこういうバンドをやってみたいなと思っていて。
――それが具体的な話になったのは、いつ頃なのでしょうか?
エリック:2年ほど前にKAJIMOTOに移ったんですが、「これからどういったことをしたいですか?」と聞かれて、いろいろ話している中でこのアイディアを出しました。スタッフの方々も乗気になってくださって。だったら会場を押さえたり、メンバーのスケジュールを押さえたりするのに時間がかかるから、ということで動き始めて。3人のトランぺッターが決まったのが1年くらい前で、そこからどんどん内容を詰めてきました。
――こういう機会は滅多にありませんから、3人のトランぺッターの人選については、さぞかし迷われたのでは?
エリック:いろいろ絞っていく中で、「この人とは絶対に演りたい!」と思い、まず決まったのがウェイン・バージェロンでした。5歳上ですが、私からすると世代的にはほぼ同じ感覚ですし、音楽的な部分もすごく似ている。お互いにいろいろなバンドで闘って来たので、戦友のような親しみも感じるんですよね。
――次に決まったのはどなたですか?
エリック:アレン・ヴィズッティです。彼の演奏を見たのは、私が中学3年生のときで、ウディ・ハーマン楽団のハワイ公演でした。彼をフィーチャーした曲があったんですが、クラシックとジャズが融合した感じで、とにかくびっくりして人生が変わった瞬間でした。以来の大ファンで、僕にとってのヒーローなんです。ウェインとは大分以前に一緒に演奏して以来、何度も共演したことがありますし、ホセ・シバハもあるんですが、アレンとは面識はあったものの演奏する機会はこれまでなくて。今回ダメ元で声をかけてみたら「ぜひ!」と快諾してくれて。彼とプレイ出来るのも今回の大きな楽しみのひとつです。
とてもカラフルな音楽になるのは間違いない

――残る1人は今、お名前が出ましたホセ・シバハです。
エリック:前からクラシックで素晴らしい若手がいるという噂は耳にしていて。聴いてみたら南米のコスタリカ出身なので感性が違うんですよね。クラシックを吹いても新しい……歌心があるんです。その一方で、リーキー・マーティンのサポートもやっているので、柔軟性もある。その彼が名門の金管五重奏のボストン・ブラスで来日したとき、先方からぜひゲストでと声をかけて頂いて初めて共演し、意気投合しました。実は、ウェイン、アレンと決まって、最後のひとりは誰にするか、長いあいだ考えていたんです。そんなあるとき、「待てよ、ホセがいるじゃないか!」って。結果、私も含めていろんな歩みを辿って来た4人ですので、とてもカラフルな音楽になるのは間違いないです。あと、3人はオープン・マインドで人柄もとても良い方たちばかりで、それも彼らに声をかけた大きな理由です。
――コンサートではどういった曲を演られる予定でしょうか?
エリック:今それを詰めているところですが、とにかくジャズ、クラシック、ラテンなど幅広いジャンルの曲を演奏する予定です。音楽を聴く人たちの中には、ジャンルによって先入観を持ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、そういう方達が良い意味で裏切られるようなステージにしたいですね。例えばホセにジャズ系の曲を吹いてもらったり、逆にウェインや私がクラシック系の曲をプレイしたりしたら面白いじゃないですか。
――まさにクロスオーヴァーですね!
エリック:ええ。アレンにいたっては自発的に4TRP. Legendsのために3部構成の組曲を書いてくれたんですよ。こちらから頼んだわけではなかったので、とても嬉しかったですね。もちろんそれも演ります。とにかくソリストとして第一線で世界的に活躍されている3人なので、彼らのアイディアを出来るだけ取り入れたい。私がリーダーではありますが、これをやるぞ、みたいな感じではなく、あくまでも全体の交通整理をするような立場に徹しようと思っています。
――トランペット4管フロントに、ピアノ、ベース、ドラムが加わるわけですが、エリックさんのバンド・アレンジも楽しみです。
エリック:いろいろな表情を持つマルチなアンサンブルにするつもりです。とにかく、世代やジャンルを問わずに幅広い層の人達が楽しめるように、いま一生懸命作戦を練っています。
トランぺッターには共通した性格があって

――ちなみに、4TRP. Legendsというバンド名はエリックさんが考えられたのでしょうか。
エリック:事務所のスタッフと一緒に考えたんですが、あれがいいんじゃないか、これがいいんじゃなかいって、実はすごく悩みました。スタッフも候補をたくさん考えてくれたんですが、中には“〇〇レンジャー”とか、“ピストン・モンスターズ”という案もありましたね(笑)。結局、企画段階のときから私がフォー・トランペット、フォー・トランペットと言っていたのが自分の中で根付いていたので、あえて捻ってた名前にするよりも、ストレートにわかりやすいのがいいのではと思い4TRP. Legendsにしました。
――公演に向けての抱負を聞かせてください。
エリック:良い意味でやってみないとわかりません。ですので今回の第1弾の東京と大阪の公演でどう化けるか、私としても非常に楽しみで仕方がなくて。それに4人が揃った時点でいろいろな話ができるわけなので。
――さぞや盛り上がるでしょうね(笑)。
エリック:楽しいでしょうね(笑)。トランぺッターってセクションでプレイすることが多いので、共通している性格があって……けっこう“群れ”でいくタイプというか、みんなでわいわいやるのが好きなんです。中には俺が、俺が!という我の強い人もいますが、ウェインもアレンもホセもそれぞれがバンドのリーダーですけど、彼らは「こうしよう、その方が楽しいよ!」って上手く導いてくれるタイプのリーダーなんですよね。4TRP. Legendsは今回のショーケース公演をきっかけに、日本はもとより、海外でもどんどんやっていくつもりです。ですので、彼らと楽しく話す中で、新たなアイディアや展望みたいなのも出てくると思っています。
――最後に公演を楽しみにされている方にメッセージをお願い致します。
エリック:とにかくこの豪華なバンドを日本の方が最初に目撃できるというのは貴重だと思います。ぜひ期待してください!
公演情報
【4TRP. Legends SHOWCASE IN JAPAN 2025】
2025年5月25日(日)大阪・サンケイホールブリーゼ
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