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<レビュー>GRe4N BOYZ、『ONE PIECE』愛を込めた新曲「天使と悪魔」で見せるアニソン巧者ぶり



コラム

Text: はるのおと
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
©GRe4N BOYZ

 「いやあ『ONE PIECE』ファンでよかった、泣けた」。そんなド直球な感想を抱いてしまう楽曲がアニメ『ONE PIECE』エッグヘッド編のオープニング・テーマとなった。4月6日に配信されたGRe4N BOYZの「天使と悪魔」だ。

 「アニメの主題歌を、アニメに縁の深いアーティストや声優ではなく一般アーティストが担当することで、多くの人が作品に目を向け、アニメファンからも高く評価される」というのが近年では珍しくないのはみなさんご存知の通り。米津玄師やYOASOBIがその象徴的な存在だが、意外性と音楽トレンドがマッチしたCreepy Nuts、かつてメガヒットを飛ばしたアーティスト……Hilcrhyme(ヒルクライム)や最近ではHYもアニメに寄り添った楽曲を提供している。

 そのなかでも2013年の「あいうえおんがく♬」(『LINE OFFLINE サラリーマン』『LINE TOWN』オープニング・テーマ)以降、さまざまな曲調でハイアベレージなアニソンを提供し続けているのがGRe4N BOYZだ。そんな彼らが「熱狂的なファン」だという『ONE PIECE』のアニメ主題歌を担当する(そもそもこれまでも関連楽曲は制作していたが)のだから、事前の期待のハードルは高かったが、「天使と悪魔」はそれを優に上回る楽曲だった。


 ピアノ伴奏に乗せ、〈激しい雨の向こう かかる虹を見た〉という温かな歌声から静かに始まる本楽曲。曲調は作品の舞台となる「未来島」を思わせるスピーディなエレクトロ・ポップをベースに、奮い立つような叫びやエスニックなサウンドをフックとして作品が持つ世界観を演出。緩急を付けながら感動的な大サビへと至るドラマティックな展開からも、『ONE PIECE』らしさを感じられる。

 ただ「天使と悪魔」の白眉は歌詞だろう。アニメ『ONE PIECE』ではこれから世界政府や海軍による大包囲網が敷かれた未来島から、天才科学者Dr.ベガパンクを連れた主人公一味の脱出劇が展開する。そこで描かれる、元王下七武海であるバーソロミュー・くまの凄惨な過去は原作マンガで読者に大きなインパクトを与えた。


TVアニメ『ONE PIECE』
毎週日曜23:15~23:45放送※一部地域を除く
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 ネタバレを避けるため、くまの過去に関する詳しい言及は避けるが、強く優しい好漢だった彼は、やむを得ない事情により身近な人々の誤解も解けないまま世間から「暴君」と称される人間兵器となってしまう。まさに作中でも「悪魔」と呼ばれることになる彼が、そんな状況に自ら歩みを進めたのもすべては娘のボニーのため。くまが「激しい雨」の向こうに見たかったであろう「虹」を期待しながら、娘の成長を見守る日々のなかで抱く、親としての普遍的な思いが「天使と悪魔」では全編にわたって綴られていく。

 どんなものより大切に思う子供への思い、そして今回頻出する「掌」(このワードセレクトもくまを思わせてスマート!)から伝わる温かさといった要素は、作品内に留まらず『ONE PIECE』を読んで大人になった世代にとって共感しやすいもの。エッグヘッド編ではほかにも印象的な要素はいくつもあるが、このテーマの汲み取り方はさすがアニソン巧者らしいGRe4N BOYZといったところ。この先を知っている人、あるいはエッグヘッド編の終わりまで見終えた人は、この柔らかく、温かで、力強い楽曲と一緒に展開される、掌が強調されたアニメーションを涙なしでは観られないはずだ。


 なおエッグヘッド編の後半において、くまの過去と並んで大きな見どころとなる一大イベントについても、Aメロ冒頭で〈たやすい答えは 嘘だと知るだろう デカい声なんかに 負けないと誓って〉と匂わせる。ほかにも「夜明け」や「we are」といった『ONE PIECE』ファンなら思わず反応してしまうようなワードもさり気なく散りばめる小粋な点にも触れておきたい。

 アニメ『ONE PIECE』はこの春から放送時間を土曜深夜に移し、新たなスタートを切った。それに際してGRe4N BOYZの4人にルフィが加わったシルエットのビジュアルが制作されたり、ルフィ達が辿った航海の軌跡を彼らの代表曲「キセキ」を使用して振り返るミュージック・ビデオが公開されたりといった施策が行われている。アニメの仕切り直しの顔となる「天使と悪魔」は、そうしたグッドコラボレーションの結実として充分な1曲だろう。


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