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<インタビュー>川後陽菜 & YONAKA Bandがファッションと音楽で紡ぐ、自由な表現とグローバルな視点

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Interview:岡本貴之
Photo:辰巳隆二

 川後陽菜 & YONAKA Bandが、1stミニアルバム『YONAKA』を6月25日にリリースする。

 ファッション・ブランド『YONAKA』も手掛けるボーカルの川後とLAND MUSICのプロデューサーでありベーシストの和田直希を中心に、2023年9月にデビューシングル「ふたつの影」で活動開始して以降、スウェーデンの DJ、Manse とのコラボ曲「When the Night Ends」、ガールズグループMADEINとのコラボ曲「UNO - YONAKA Ver.」と、グローバルな視点を持った先鋭的な楽曲を発表してきた彼ら。

 その一方で、2月に発表された最新曲「いつかの卒業」では、ピュアな心象風景と日本ならではの様式美を描いている。1stミニアルバム『YONAKA』には、そんな音楽的な試行錯誤とチャレンジを経て導かれた答えがあるようだ。ファッションとデザイン、音楽のセンスを集約させようという川後陽菜 & YONAKA Bandのコンセプトについて二人に訊くとともに、4月1日に東京・有明アリーナにて開催されるフェス【LANDCON】出演への意気込みを語ってもらった。

次のステップに行くための卒業

――川後陽菜 & YONAKA Bandの新曲「いつかの卒業」は、すごくドラマティックでスッと胸に沁みてくる良い曲ですね。

川後:ありがとうございます!

――この曲はどんなきっかけで生まれたのでしょうか?

川後:もともとは和田さんが持っているストックの中に、まだ歌詞がない状態でこの楽曲があったんですよ。その曲をだいぶ前に一度、聴かせていただいたことがあって、あるときにあらためて聴かせてもらったんです。そうしたらやっぱりめちゃくちゃ良い曲だったので、この曲を歌いたいと思ったんです。

和田:本当は去年の夏にほかのアーティストの曲としてリリースする予定だったんですけど、ボツになっちゃって。でも、自分ではめちゃくちゃ良い曲だなと思っていたんですよね。そうしたら川後が「あの曲を歌いたい」と言ってきたんです。

川後:最初に聴いたときは、本当に中高生の夏休みの青春曲みたいな感じだったんですよ(笑)。なので、今の私には合わないかなとは思っていたんですけど、曲自体がすごく良かったし、2月にリリースするなら卒業シーズンというのもあるので、私の年齢に合うような卒業ソングにしたいなと思いました。


いつかの卒業


――どんな世代の気持ちにも重なる普遍的な曲に聴こえました。川後さんはどんな思いで“卒業”というテーマを歌ったのでしょうか?

川後:最初に出来上がった曲を聴いたときは、学生の卒業を思い出していたんですけど、よくよく考えてみたら、私自身も乃木坂46のメンバーとして活動してきて、卒業コンサートがあったりとか、いろんな場面で次のステップに行くための卒業があったんですよね。でも、それは例えば卒業コンサートとか卒業式という形上のタイミングとか決まりきった数字とかじゃなくて、次のステップに行ったときに「あのとき卒業していたんだな」みたいに気づくことがあると思うんです。この曲は、そういう気持ち的な意味の“卒業”を感じることができるのがいいなと思っていて。私にとってもアイドル時代を経て、川後陽菜 & YONAKA Bandとしてソロでデビューして、「新しい場所に行けたな、卒業できたな」という気持ちがすごく湧き出る、自分自身にスッと入ってくる楽曲だなと思います。

――リリースされてからファンの方の反響はどう感じていますか?

川後:今までリリースした曲の中で一番、ファンの方からの感想が多いですね。今までの曲が誰かとのお別れとか、結構悲しいテンションが多かったんですけど、「いつかの卒業」は私がもともとアイドルだったというのもあって、ファンの方はその卒業を見届けた身としてのエモさがあって、「川後ちゃんの卒業を思い出した」という声があったり、曲と重なりやすい部分が多いのかなって。それと今までの歌よりもフェイクとかが入っているので、そういう歌唱の部分にも注目してもらえて、うれしい反応がいただけた感じです。



――歌唱のことでお訊きしたかったんですけど、「いつかの卒業」は〈そのときが〉という箇所の節回しとか、フォークソング的なニュアンスを感じました。三拍子で抒情的な曲というのは「ふたつの影」にも言えるんですけれども。

川後:はいはい、そうですね。

――こういう歌い方ってどこから来ているんですか?

川後:これは完全に“和田さん節”ですね(笑)。ちょっと独特な和田さんの得意技な感じがします。

和田:三拍子は異常に多いですね(笑)。三拍子の中でボーカルのリズムを崩すのがめっちゃ好きなんですよ。僕は山崎ハコさんとか五輪真弓さんとか、ああいう音楽がめちゃくちゃ好きだったので、そのルーツが出ていると思います。

――なるほど、謎が解けました(笑)。「いつかの卒業」の話に戻りますが、元Mrs. GREEN APPLEのドラマー、山中綾華さんがレコーディングに参加していますね。どんなつながりからの参加ですか?

和田:僕自身、バンドでボーカルをしていたからよく分かるんですけど、川後はバンドのしっかりしたサウンドの中でも負けないぐらい、声の抜けが良いんですよ。そう考えたときに、バンドの中でちゃんとパートナーになれるような、そんなに年齢も遠くなくて、音楽的にしっかりしている人がいると、もっと成長するんじゃないかと思っていて。それでXで見つけた山中さんのことを川後に相談したんです。

川後:「どう思う?」と言われて、もちろんやってくださるならとてもうれしいということで連絡を取ってもらったら、快く承諾いただいて。まず最初はライブからだったんですけど、今回初めて音源に参加していただきました。

――アーティストとして共感するところもありますか?

川後:(山中は)もともと大きなグループのメンバーとしてバンドをやられていた経験があって、バンド脱退後に社労士の資格を取り、働きながらドラマー活動を再開しているのですよね。私も大きなグループでの活動から、次のステップとして今、ソロで歌わせていただいているという経緯があるので、そういう部分は自分自身にも重なりますし、熱量やパワーがすごくて本当にエネルギー溢れる方なんです。最初のライブのときも、初顔合わせのリハからバンドメンバーとも良いグルーヴがあったし、一つのミスもなく全曲すぐに叩いてくれて。今回の「いつかの卒業」に向き合う感じもそうだし、こんなに完璧に音楽に対しての思いがある方と一緒にできるのはめちゃくちゃうれしくて、すごく刺激になっています。できることならYONAKA Bandのメンバーとしてこれからもやってほしいなって、私は思っています。

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実際にバンドになってきた



――「いつかの卒業」ではタイトなドラムプレイが聴きどころにもなっていますよね。レコーディングではいかがでしたか?

川後:かっこよすぎてずっと聴き入ってました(笑)。正直、一発目からすごく良かったんですけど、「もっとこうしたほうがいいですか?」とかいろいろ提案してくださって。それによって刺激もあったし、卒業するときの不安感と次に行きたいワクワク感がドラムでもしっかり音として表現されているから、山中さんのドラムがあることで「いつかの卒業」がより一層良いものになったと思います。

――YONAKA Bandとして理想の音というのもあるんじゃないかと思いますが、そもそもYONAKA Bandという名義で始めるにあたって、どんなことを考えてスタートしたのでしょうか?

川後:もともとはソロのボーカルで、バンドという形をちゃんと決めていなかったんですよね。川後陽菜 & YONAKA Bandとしての初のライブがロサンゼルスだったんですけど、そのときは完全にオケだけでライブをやったんです。そこから作詞作曲しているのが和田さんということで、自分の楽曲を表現できるのは和田さんだなということをまず考えました。それとピアノもあればもっと私の声が活きるなと思って、いつも即興で私の曲をアレンジして弾いてくれているボイトレの先生(橘哲夫)にピアノをお願いしたんです。普段はピアノのお仕事はやっていないんですけど、めちゃくちゃかっこいいピアノを弾いてくれるので。

和田:ボイトレをしたときにいつもビデオを送ってもらうんですけど、それを観たらめっちゃピアノが上手いんですよ。それで川後に「先生誘ってよ」と言って。

川後:それで誘ったら、毎回ライブをやってくれるようになったんです。だから、最初に描いていたコンセプトとまったく違ってきたというか、毎回バンドメンバーも変わるとか、オケのときもあれば生バンドのときもあるみたいな感じから徐々に仲間が増えていって、YONAKA Bandというものが出来上がった感じです。

――概念的なプロジェクトだったのが、文字通りのバンドになってきたわけですね。

川後:そうですね。もともとはアイドルのイメージからガラッと変えたいなと思ったときに、個人名義だけだとあまり変わったように感じないというのがあってYONAKA Bandと名付けたんですけど、実際にバンドになってきたことで私の気持ちも変わってきた、みたいなところもあります。



――6月にリリース予定のミニアルバムのタイトルにもなっていますが、『YONAKA』というのはどんな意味で付けているのでしょうか?

川後:私が『YONAKA』というアパレルブランドをやっているので、アーティスト名を考えるときに、自分の活動の一つのキーワードとしてアパレルもリンクさせたいと思って。和田さんが作る曲も全部、夜とか月みたいなワードが入っているし、和田さんの世界観と私がもともと持っている雰囲気がマッチして“YONAKA”という言葉に収まったんです。

――川後陽菜 & YONAKA Bandのデビューシングル「ふたつの影」は、先ほど話に出たように三拍子でミディアム曲ですが、最初にこういう曲を出したのはどうしてですか? バンドのデビュー曲として、アップテンポな曲を出すパターンもあると思うのですが。

和田:以前活動していたYouplusが解散することになったとき、川後だけが音楽活動を続けていきそうな雰囲気があったんですよ。だから、「みんなが音楽活動を辞めても、私は頑張って続けていくよ」というメッセージのある曲を書いたら、ファンが受け入れてくれるんじゃないかと思って、そういう曲を書きたいなと思ったんです。


川後陽菜 & YONAKA Band | ふたつの影 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


――川後さんの意思表明の曲だったということですね。

川後:そうですね。

――「ふたつの影」「いつかの卒業」とはだいぶテイストが違うのが、スウェーデンのDJ、Manseとのコラボ曲「When the Night Ends」です。この曲の成り立ちを教えてください。

川後:以前からあった「夜が終わるころ」という曲をもとにManseさんに作っていただいた曲です。最初に聴いたときは衝撃的でした(笑)。一応、日本語の歌詞入りの曲を送っているけど、「ここをこう切り取るんだ?」みたいなところが意外で面白かったです。

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一つのファッション・アイコンとしてブランディング

――「いつかの卒業」を聴いてから「When the Night Ends」を聴くと、「いったいどういうグループなんだろう?」と戸惑う人も多いと思うんですよ。

川後:たしかに(笑)。


川後陽菜 & YONAKA Band , MANSE | When the Night Ends 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


和田:これは説明をすると大きく三つあって、一つは今回のアルバムの1曲目に入ることになった理由として、この曲はライブの登場SEとして使っているんですよ。だから、この曲をライブのOvertureっぽい感じとリンクさせたらいいのかなと思っていたんです。もう一つは、もともとLAND MUSICはアロー・ブラックをグローバル・リリースすることから始まったレーベルで、基本的に邦楽というよりは洋楽を出したい会社なんですよね。日本のアーティストも今はYOASOBIさんとか成功されている方もいますけど、僕はインドネシアに10年住んでアメリカに4年住んでいた者として、当時レーベルを始めるときに思ったのは、海外での勝ち方は夜のクラブカルチャー、EDMだろうということで、基本的にはそういう曲を作りたくなっていたんですよ。もう一つは、原曲の「夜が終わるころ」はもともと弾き語りで作ったんですけど、その頃、YOSHIという男の子が亡くなってしまって。

――2022年にバイク事故でお亡くなりになった俳優・ミュージシャンのYOSHIさんですね。

和田:実は彼は、うちでソロアルバムを作ろうと話していて、曲を集めていたんです。その彼が亡くなってしまって、僕は1年ぐらい曲が書けなくなるぐらいの精神的ロスがあって。でも、YOSHIの夢は世界で成功することだったから、この曲をちゃんと英語バージョンで作って世界に届けたいという気持ちもあるんです。ただ、YONAKA Bandの方向性で言うと、最初に出した「ふたつの影」から始まり、そこからEDMの「When the Night Ends」、同じ路線のクラブ・ミュージックとしてMADEINとのコラボ曲「UNO - YONAKA Ver.」をリリースしてきて、やっぱり川後はバンドの音が合うなと思ったんですよね。だから、今のバンドサウンドが一応、たどり着いた答えではあるんですよ。今後EDMを出すとしたら、川後陽菜 & YONAKA Bandじゃなくて、僕名義のプロデューサー・アルバムや海外のDJのフィーチャリングで出していこうと思っていますし、川後としてはちゃんとバンドの人だってイメージをつけていこうと思っています。

川後:「ふたつの影」も最初にリリースしたときのバージョンは、声としては結構甘い感じというか、今と歌い方がまったく違うので、今回新しくレコーディングし直して、今のYONAKA Bandの「ふたつの影」になっています。

――MADEINとのコラボ曲「UNO - YONAKA Ver.」はどういう経緯で実現したんですか?

川後:MADEINさんはレーベルメイトに近い存在です。それで彼女たちのデビュー記者会見でMCをさせていただいて、その後【東京ガールズコレクション】(TGC)でMADEINさんが着るお洋服のデザインをさせていただいたり、『TOKYO RESIDENT』という雑誌に一緒に出たりしたんです。そういうつながりがあるなかで、一緒にTGCでその楽曲を発表しました。


UNO - YONAKA ver.


和田:川後の魅力って、どちらかというとスタイル、ファッションだと思うんですよね。基本的に表現する力が乃木坂46の頃からずば抜けているなというのはあって。それはミュージシャンとしては良い資質だなと思うんですよね。僕はいろんなボーカリストを手掛けてきたなかで、アイデンティティがない人ってあまり好きじゃないんです。でも、そういう人をプロデュースすると、その人の色があって僕とぶつかるんですよ(笑)。

――そういう意味で川後さんはちょっと違う?

和田:川後はそうじゃなくて、いわゆるファッション・カルチャーを背負って歌うというのが今っぽくていいと思うし、音楽的にすごく思い切りできるのがいいなって。それを別の視点で昇華しているのがK-POPだと思うんですよ。K-POPもファッション的で、BLACKPINKの音楽が好きな人もいますけど、JENNIEのファッションが好きとか、LISAのファッションが好きみたいな人もいますよね。音楽といえどもエンターテイメントなのでいろんな感じ方をしてほしいなと考えたときに、川後自身をそういった一つのファッション・アイコンとしてブランディングをしていくうえで、K-POPと絡ませたかったんです。それで川後が洋服を作ったり、僕が音楽を作って表現すると、いい感じにYONAKA Bandっぽくなるのかな、みたいな感じです。

――川後さんがファッションをプロデュースする資質と、和田さんの音楽プロデュース力という、二人のプロデューサーによる表現がYONAKA Bandということですか。

和田:ああ~、そうかもしれない。

川後:今そう言われて、確かにそうなのかもと思いました(笑)。もともとファッションを『YONAKA』で始めたんですけど、せっかく自分が出る側なのに、ほかの誰かを起用してやるというよりは、自分自身も宣伝していきたいとなったときに、YONAKA Bandがあるのは大きいですね。自分の作りたいファッションをステージ上で歌詞に合わせて表現することで、より服も魅力的に見せられるし、私自身の魅力も出せるし、曲自体にも入り込めるので。だから『YONAKA』のブランドイメージとYONAKA Bandの世界観がブレないようにやっています。



――それは試行錯誤してきたなかで、ここにきて答えが出た感じでしょうか?

川後:本当に「いつかの卒業」のタイミングぐらいで出来上がった感じですね。

和田:音源を出すイメージが湧かなかったもんね? どんな音源を出していいか分からなかった。

川後:うん、「やっと」って感じです。

――そうなるとミニアルバム『YONAKA』は、バンドサウンドに寄せた1枚になっているわけですか。

和田:「When the Night Ends」以外は全部バンドでやっています。しかもボーカルとピアノとドラムとベースだけっていう、結構画期的な(笑)。

川後:ギターがいないですからね(笑)。

――ギターを入れない理由ってあるんですか?

和田:良い人がいたら……人重視なので。

川後:出会いがあればね?

和田:今の時代って、めちゃめちゃいろんな音が入っているじゃないですか。そういう音楽も素敵なんですけど、でも1stアルバムはシンプルにメンバーだけで作って、音は少なくてもいいんじゃないかなって。ベース、ドラム、ギター、ボーカルで成立しているバンドはいくらでもいるし、ギターがピアノになっても別にいいのかなって。僕の弾いているベースもフレットレスだったりするので、既存のバンド形態にこだわらなくてもいいと思っています。

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世界中に発信していきたい

――これからレコーディングする曲もあるようですが、現時点でどんな作品になると思いますか?

川後:初めてミニアルバムを出すというのもありますし、『YONAKA』というタイトルになっていることもあって、最初の一歩として「川後陽菜 & YONAKA Bandとは何か」が分かるアルバムになっていると思います。曲は(1曲目以外)全部バラード調なんですよ。

和田:僕の中で音楽はどうしても、つらいときとか寂しいときに自分を支えるものなので、あまりアップテンポな曲を作れないんですよね。だって、曲を見ると「グッド・バイ」「いつかの卒業」とか、大体“さよなら”しているもんね(笑)。「銀河鉄道の夜に」も「When the Night Ends」も“さよなら”だし。

川後:いろんな角度からの“さよなら”している楽曲たちです(笑)。

――『YONAKA』のイメージ通りの曲たちが揃っている?

川後:そうですね、夜に聴きたくなるようなしっとりした落ち着いた感じの作品だと思います。

和田:僕はトム・ウェイツがめっちゃ好きなんですよ。もう自分のど真ん中なので、どうしても夜にバーでウイスキーを飲みながら聴くような曲が好きなんですよね。



――アルバムのジャケット・アートワークはエリック・ヘイズさんが手掛けているそうですね。

川後:楽曲のイメージを伝えつつ、エリック・ヘイズらしさがある感じでお願いしたので、『YONAKA』の「Y」と、エリック・ヘイズが得意な星を掛け合わせたデザインになっています。ジャケット以外にも川後陽菜 & YONAKA Bandのロゴも手掛けてもらっています。

――お話を聞いて、ファッション、デザインと音楽が結びついたコンセプトでほかにはないアーティスト像が見えてきました。今後の活動で目指したいこと、こういう存在になりたいという目標はありますか。

川後:めちゃくちゃ売れたいです。本当に全部良い曲なので、それが届いてほしいという気持ちがすごくあるし、そのためには売れたいなと思います。

――海外へのアプローチについてはどう考えているのでしょう?

川後:デビューのときがロサンゼルスで、去年の12月にロサンゼルスでライブをやらせていただいたり、海外に行く機会も多くて。Manseさんとのコラボもありましたし、エリック・ヘイズさんはニューヨークのグラフィティ・アーティストだったり、わりと海外に目を向けているので、もっとライブをやりたいですね。

和田:僕は音楽がなかったらもう生きていけないってぐらいの10代だったので、やっぱりすごく音楽が大切なんですよね。18歳で会社を作っているんですけど、「なんて生きにくい世の中なんだ」と思って28歳でインドネシアに移住したら、「なんて生きやすいんだ」って、すごく幸せになったんですよ(笑)。それからニューヨークに行ったらまたそう思ったんです。日本では自己主張って結構許されないところがあって、意見が言えなくなっちゃったんですけど、ニューヨークではバンバン言ってよかったり。今はインターネットで海外がすごく近くにあるようで、実はそういう海外の自由さとかってまったく伝わっていないと思うんです。グローバルを意識している理由の一番はそこで、海外で音楽をやるというのは自分たちのためでもあるし、表現の一環というところがあるんですよ。「自由に生きていきたい」みたいな願望が僕の根底に確実にあるんです。

――川後さんをそういう自由の象徴として捉えている?

和田:そういうところはありますね。エリック・ヘイズさんも僕からしたらレジェンドで、手の届かない神様みたいな存在なんですけど、なぜか川後がインスタでフォローされたんですよ(笑)。その後、アット・ザ・ドライヴインのベーシストにフォローされたり、海外の人にめちゃめちゃウケるんです。パリコレに行ったときも、MADEINとかインフルエンサーのなごみちゃんとかと一緒に行ったんですけど、川後が一番撮られていて、それがそのままGetty Imagesに載っていたりするんですよ。そういう日本人って正直、あまりいないんですよね。周りからは「和田さん、こんな人とつながっていてすごい」と言われるんですけど、そういう人はだいたい最初は川後がフォローされて仲良くなっているんです(笑)。だから、もともと僕が思っていた海外で成功したいという夢が実現できるんじゃないかって気になるんですよね。

川後:エリック・ヘイズさんとかにフォローされるようになってから、次から次へとすごい方たちにフォローしていただいているんですけど、以前からよく外国の人に声をかけられるなというのは思っていて。最近、音楽活動でいろんなコラボをしたり、楽曲を作ってもらったり、アートワークを作ってもらったりする機会が増えたから、現実的にちゃんと実感できている感じですね。やっぱりそういう方たちに会うとすごく刺激がもらえるし、その方のゆかりのある場所、国とかでも活動したい気持ちにもなります。実際に楽曲を出したときに聴いてくださっている方が、ブラジルとか思いもよらない国の方だったりするんですよ。

和田:むしろ日本が少ないよね? 例えばロサンゼルスでライブをやったときも、日本じゃありえないぐらいの反応だったと言うんですよ。

川後:来てくださった方たちが全然私のことを知らなかったはずなのに、インスタのメンションとか投稿とかライブ後のフォロワーの増え方とか、海外に行くとすごく反応をもらえてめちゃくちゃうれしいですね。

――ファッション、デザインについても海外に発信していきたいですか?

川後:そうですね。世界中に発信していきたいので、5月にもエリック・ヘイズさんとのコラボレーション・ポップアップをニューヨークで開催しようと思っているんです。今まで海外で販売したことはないので、実際に自分のデザインが海外に行けるかどうかはまだ分からないんですけど、挑戦したいなと思っています。

――直近の活動として4月1日に東京・有明アリーナで開催される、音楽とファッションが融合したフェス【LANDCON】に出演されますね。これはまさに川後陽菜 & YONAKA Bandのコンセプトが存分に発揮できるイベントだと思いますが、どんなステージを見せたいですか?

川後:今までも自分の表現として、ライブをやっている時間が一番自分らしくもあり、音楽に憑依できる場所、表現を自由にできる場所がライブしている時間だなと思っているんです。川後陽菜 & YONAKA Bandとして初めてのアリーナでのライブになるんですけど、会場が広ければ広いほど自分のパフォーマンスが良くなるという自信があるので、今までで一番良いライブができると思っています。

和田:本当に、目に見えないものを大切にしてきたとは思うんですよね。エリック・ヘイズさんにジャケットを頼んだことも、そこが持つメッセージは、ビースティ・ボーイズのジャケットを作った人だからすごいよということじゃなくて、世界を代表するようなジャケットを作った方の持つパワーをお借りしつつ、このアルバムがそういう作品になればいいなという気持ちがあるんです。ライブについては配信ともCDとも違う表現手段で、たぶん川後陽菜 & YONAKA Bandの表現としては一番完成されたものになっていると思うので、ぜひとも観に来てください。とにかくさっきから自己肯定感の高い二人だなと思っています(笑)。

川後:あはははは(笑)。

――YONAKAと言いつつ、明るいお二人でした(笑)。

川後:バンドのメンバー全員そうなので(笑)。曲は暗いけど全然明るくて強いです。よろしくお願いします。

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