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<コラム>注目度急上昇のグレイシー・エイブラムス 日本デビュー作『ザ・シークレット・オブ・アス』で開花した“ファンとの一体感” 初来日公演にも期待

インタビューバナー

Text: 辰巳JUNK

 日本の人気、なんと800%増。グレイシー・エイブラムスの上昇が凄まじい。2025年2月にNetflixのリアリティシリーズ『オンライン ラブ』の配信がはじまると、主題歌となったグレイシーの「アス feat. テイラー・スウィフト」も話題に。せつなくとけあう音色で視聴者を夢中にさせていき、音楽ストリーミング再生を823%も増加させた。ショートフォーム映像視聴にいたっては、3,553%もの増加が見られたという。

 4月に控えた初の来日公演も即完売したグレイシーは、今年世界で一番ブレイクした歌手と言えるだろう。2024年に<最優秀新人賞>とともに初の【グラミー賞】ノミネートを受けたグレイシーは、ツアーをともにしたテイラー・スウィフトとコラボした同曲で今年も【グラミー】にノミネートされた。クールで上品なボブヘアを目印にファッション面での注目も集まるなか、シャネルのアンバサダーにも就任している。


 絶好調のグレイシーは、1999年米カリフォルニア生まれ。父親は『スター・ウォーズ』シリーズを手がけた映画界の重鎮J・J・エイブラムス。しかし、今や彼女の存在から監督の存在を知る子も珍しくなくなっている。

 25歳にして【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック・アワード】の<ソングライター・オブ・ザ・イヤー>、そして<ハル・デイヴィッド・スターライト賞>の授与が決定したことからもわかるように、グレイシー・エイブラムスの特技は曲づくりだ。

 8歳からピアノをはじめた彼女は、これまでも影響力のある実力派だった。たとえば、2021年に大ヒットしたオリヴィア・ロドリゴのデビュー曲「ドライバーズ・ライセンス」は、グレイシーのEP『Minor』から影響を受けた作品。オリヴィアに影響を与えた初期の作風は、具体的で告白のような会話調の歌詞を特徴としたサッドガールポップだ。2023年にリリースされたデビューアルバム『Good Riddance』では、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーのもと、生ける伝説ブライアン・イーノとの共作も果たしている。

 そんなグレイシーが大成功を遂げたのが、このたび日本版デラックス・エディションが発売された日本デビュー作品となる2ndアルバム『ザ・シークレット・オブ・アス』。コロナ禍が明けたのち、新天地ニューヨークで得た自信を反映するかたちで、これまでより明るめなフォークポップになっている。

 リリシズムにも変化が見られる。ルームメイトの親友、オードリー・ホバートと共作されたこともあって、サッドな歌にユーモラスでドラマチックな魅力が足されているのだ。たとえば「リスク」で歌われるのは、恋してはいけない相手めがけて突き進む状態。ミュージック・ビデオでは酔っ払ってやらかす様が演じられている。


 会話調の魅力も進化している。ラッパーのドレイクも驚嘆させた三部構成の「アイ・ニュウ・イット、アイ・ノウ・ユー」では、元恋人への感情がつのって声を荒げる場面もありながら、三回にわたってビートが変調し、最後はオードリーのやさしいバックコーラスと昇華する。

 真のブレイクスルーを授けたのは、デラックス版に収録された「ザッツ・ソー・トゥルー」。あらたな恋を楽しむ元恋人への苛立ちをヒートアップさせていく内容で、オードリーと屋上で笑って泣きながら書いた一曲だ。

 「ザッツ・ソー・トゥルー」は、発表前からヒットだった。TikTokで「ちら見せ」ビデオが投下されると一気にバズっていき、コンサートで9割の観客が合唱するほどの人気を博していった。ついにリリースされると、UKチャートで8週間ものNo.1ヒットを達成し、アメリカでもポップラジオの頂点に立った。


 『ザ・シークレット・オブ・アス』の成功は、かねてより知られるファンとの特別な関係のたまものだ。音楽をあまり聴かないようにしていた制作中、グレイシーが取り込んだのは、イヴ・バビッツなどのフェミニズム作家の著作。オードリーとつくりあげた多くの楽曲の裏テーマとは「お互いの刺激的な面を助長しあう美しき友情」へのオマージュである。

「ツアーで伝えたいのは、自分がクレイジーだと感じるときこそ、一人で抱え込むより人と分かち合ったほうがいい場合があるってこと。アルバムのタイトル『The Secret of Us(私たちの秘密)』にかけて言えば「Us(私たち)」を「私とオーディエンス」にしたい。今回のツアーは、私にとって本当に特別。この世界観には、恋愛のさまざまな瞬間が詰まっていて、愛と欲望に満ちた部分もあれば、怒りでいっぱいなときもある。こんなに演奏するのが楽しみなことはなかった。このアルバムの核となるのは、コミュニティだから。」『Interview』インタビューより

 親友との赤裸々な会話をかたちにした『ザ・シークレット・オブ・アス』は、ライブでファンと一体になるために制作されたアルバムとも言える。大盛り上がりを見せた米欧の公演では、サッドガール時代のトレードマークであったリボンを真似してつけるファンが名物化しているという。

 4月8日に東京・Zepp Hanedaで予定される日本公演は完売済みなものの、直前となる3月29日にロサンゼルスで行われる【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック・アワード】への出演も控えている。また、セレーナ・ゴメスらとの楽しいラブソング「Call Me When You Break Up」も上昇中だ。この絶好の機会に、グレイシー・エイブラムスの世界を体験し、彼女と「私たちの秘密」を分かち合ってみよう。


グレイシー・エイブラムス「ザ・シークレット・オブ・アス (デラックス) ジャパン・エディション」

ザ・シークレット・オブ・アス (デラックス) ジャパン・エディション

2025/03/14 RELEASE
UICS-1411 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.フェルト・グッド・アバウト・ユー
  2. 02.リスク
  3. 03.ブローイング・スモーク
  4. 04.アイ・ラヴ・ユー、アイム・ソーリー
  5. 05.アス feat.テイラー・スウィフト
  6. 06.レット・イット・ハプン
  7. 07.タフ・ラヴ
  8. 08.アイ・ニュウ・イット、アイ・ノウ・ユー
  9. 09.ゲイヴ・ユー・アイ・ゲイヴ・ユー・アイ
  10. 10.ノーマル・シング
  11. 11.グッド・ラック・チャーリー
  12. 12.フリー・ナウ
  13. 13.クロース・トゥ・ユー
  14. 14.クール
  15. 15.ザッツ・ソー・トゥルー
  16. 16.アイ・トールド・ユー・シングス
  17. 17.パッキング・イット・アップ
  18. 18.アイ・ラヴ・ユー、アイム・ソーリー (ライヴ・フロム・Vevo) (日本盤ボーナス・トラック)
  19. 19.アイ・ニュウ・イット、アイ・ノウ・ユー (ライヴ・フロム・Vevo) (日本盤ボーナス・トラック)
  20. 20.フリー・ナウ (ライヴ・フロム・Vevo) (日本盤ボーナス・トラック)
  21. 21.ザッツ・ソー・トゥルー (ライヴ・フロム・レディオ・シティ・ミュージック・ホール) (日本盤ボーナス・トラック)

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