Special
<鼎談>音楽ライバー3名が語る、Pocochaで広がる新しい音楽の可能性――Pococha×ヤマハ連載vol.2
Interview & Text:黒田隆憲
Photo:Shintaro Oki(fort)
Pocochaとヤマハがタッグを組み、新世代アーティストimaseを迎えた応援プロジェクト『みんなの演奏会』がスタート。オンラインとオフラインを融合させた新たな試みとして、多様な演奏者がimaseの書き下ろし楽曲に挑戦し、大規模なアンサンブルを実現する。
初心者~上級者まで経験を問わず、音楽に携わるすべての人々が、Pocochaの温かいコミュニティとヤマハの確かなサポートのもと、一つの楽曲でつながるプロジェクト。imase本人とともに、各楽器パートに数名ずつ、総勢120名以上の演奏者が参加。その模様はスペシャルムービーとして公開される予定だ。
本連載では、このプロジェクトに関わるさまざまな演奏者や関係者にインタビューを実施。今回は、Pocochaで活躍する3名の音楽ライバーに、ライブ配信を通じて感じている音楽の魅力や、『みんなの演奏会』への意気込みを語ってもらった。(https://www.pococha.com/ja-jp/news/gi3xxvhc9hf)
それぞれのPocochaとの出会い
――まずは、みなさんがPocochaを始めるまでの経緯を聞かせてもらえますか?
ななちゃんねる:私は5歳からバイオリンを習い始めて、中高・大学・大学院と、ずっと音楽漬けの生活を送っていました。熊川哲也さんの専属オーケストラに抜擢され、全国ツアーに参加したこともありますし、室内楽やブライダル演奏も担当してきました。バイオリンの指導も長く続けていて、これまで200人以上の生徒に教えています。
クラシックの世界は、「間違えてはいけない」というプレッシャーが常にあるんです。指揮者に集中し、眉間にシワを寄せて演奏するのが当たり前。そんな環境に息苦しさを感じることもあったのですが、知人からPocochaを勧められたんです。「ななちゃんねるさん、絶対向いてると思うよ」って。
――それがきっかけとなって配信を始めたのですね?
ななちゃんねる:はい、2年半前に勢いで(笑)。アプリをダウンロードして、よく分からないままボタンを押してみたら、思った以上に楽しくて。クラシックの演奏は、「楽しむもの」というより「正確に演奏するもの」という意識が強かった。でも、Pocochaを始めて、「楽しんでもいい」と気づけたんです。それは自分にとって、ものすごく大きな変化でしたね。

むちこ:私もななちゃんねるさんと同じく5歳からピアノを始め、高校・大学と音楽漬けの日々を送っていました。昨年の3月に大学を卒業したものの、大学院に進むかどうかすごく悩んでしまって。ずっと音楽を学んできたにもかかわらず、どれだけ努力しても才能の差を感じてしまい、自分の居場所がわからなくなっていたんです。
クラシックの世界では、才能のある人ほどどんどんチャンスをつかんでいきます。でも、その中間にいる人たちは、ひたすら練習を続けるしかないんです。そんな環境にいるうち、「私が音楽をやる意味ってなんだろう?」と考えるようになっていきました。今の時代、動画サイトを開けば一流の演奏が無料で聴けるわけじゃないですか。そうなると、自分が演奏を続ける意味を見失いかけてしまって。
――なるほど。
むちこ:そんなとき、ライブ配信アプリの存在を知ったんです。クラシックの枠に閉じこもっていることに行き詰まりを感じていたので、「やってみようかな」と軽い気持ちで始めてみました。それが今から2年前です。配信をしてみると、少人数だからこそリスナーとの距離が近く、直接「むちこさんのピアノが好き」と言ってもらえる機会もあって、それがすごく嬉しくて。こんな形で音楽を届けられるんだ、と新しい可能性を感じました。
そのアプリがサービス終了してしまい、新しいプラットフォームを探していたときにマネージャーさんから、「Pocochaなら、配信に対してリスナーからの応援が報酬という形でもらえるよ」と勧められたんです。趣味で終わらせるのではなく、音楽を続けながら収益化できる可能性があるなら挑戦してみたいと思いPocochaに移ったのですが、Pocochaではリスナーと一緒に音楽を楽しめる。そうした交流を通じて、「音楽はもっと自由でいいんだ」と実感するようになりました。

――こうさんはいかがですか?
こう:僕は去年の7月まで、プロのギタリストとして活動していました。昼はレッスン、夜はライブ、その合間に楽譜制作と、ほぼ休みなく働く日々だったのですが、仕事帰りに事故に遭い、握力が5キロまで落ちてギターが弾けなくなってしまったんです。当然リハビリが必要になり、仕事は全てストップ。生徒も減り、貯金も底をついて、正直かなり厳しい状況に陥りました。そんなとき、ライバーをやっている後輩から「Pocochaをやってみませんか?」と声をかけられて。「自分のペースで演奏できるし、リハビリにもなると思いますよ」と言ってもらったんです。最初は半信半疑でしたが、「これが新しい道になるかもしれない」と、思い切って始めてみました。
――Pococha歴は2ヶ月だそうですね。実際にやってみてどうでしたか?
こう:思った以上に楽しくて驚きました。ステージとは違い、自分のペースで演奏できるのが大きな魅力です。「今日は手の調子が悪いから少し喋ろう」とか、その日のコンディションに合わせて調整できるのも助かります。リハビリのつもりで始めたものの、視聴者のリアクションや応援コメントが想像以上に嬉しくて、気づけばどんどんのめり込んでいました。

―― 皆さん、Pocochaでは主にどのような活動をしているのですか?
ななちゃんねる:私は「リスナーの休憩所」になれるような配信を意識しています。ランキングやアイテムにはあまりこだわらず、とにかく気軽に立ち寄れる空間を作りたくて。演奏をじっくり聴いてほしいというよりも、リスナーさん同士が自然とつながれる場所になればいいなと思っていますね。
コメント欄もそんな雰囲気で、「今日、庭で野菜が採れたよー」みたいな日常の雑談が飛び交っています(笑)。私はそこにBGMを添えるような感覚ですね。リクエストも受け付けていますが、あらかじめ用意したリストを見ずに「これ弾ける?」といきなり聞かれることも多くて。そういう即興の対応も楽しみのひとつになっています。
むちこ:私は比較的「正統派の演奏枠」に近いかもしれません。リクエストに応えつつ、自分が弾きたい曲も織り交ぜながら演奏しています。知らない曲も、楽譜さえ取り寄せられれば可能な範囲で対応するようにしています。特にヤマハの『ぷりんと楽譜』がすごく便利で、よく活用していますね。
クラシック畑の人間なので、始めたばかりの頃はポップスはあまり詳しくなかったのですが、リスナーさんのリクエストをきっかけに新しい曲を知る機会が増えました。最近は昭和の曲にハマっていますし、逆に「今まで知らなかった曲も、むちこさんの配信がきっかけで好きになった」というリスナーさんもいて。そういう相互作用が生まれるのも、配信ならではの魅力だなと感じています。
こう:僕の配信は基本的にギター演奏がメインですが、歌もたまに歌っています。もともと仕事でも歌う機会はありましたが、基本はギタリストなので、やっぱり演奏の時間が長めですね。あまりお喋りが得意じゃないので、話すより弾くほうが自然かも(笑)。
Pocochaを始めて一番驚いたのは、全く面識のなかった人たちが僕を応援してくれることでした。ライブハウスではバックバンドとして演奏することが多く、主役になることはほとんどなかったんです。でも、Pocochaでは僕の演奏そのものを楽しみにしてくれる人がいて、全国のリスナーとつながれる。それがすごく新鮮で、純粋に嬉しかったですね。
ななちゃんねる:私はPocochaを始めてから、自分が楽しんで弾くことが何より大事なんだと気づきました。最初の頃は、自分のアーカイブを見返してみると、「全然楽しそうじゃないな」と思ったんですよ(笑)。そこからはもっとリラックスして弾こう、と。その方が、聴いている人も楽しいはずだと思うようになりましたね。
むちこ:クラシックの演奏会って、どうしてもお客さんは音楽関係者が多くなるんですよね。どのコンサートに行っても似たような顔ぶれがですし、「あの人がコンサートに来てくれたから次は自分が行かなきゃ」みたいな、ある種の義務感もあって……。そういうところは閉鎖的だなと感じることもありました。
でも、Pocochaで演奏するようになって、新潟から東京まで私のコンサートを聴きに来てくれた方がいたり、九州から応援してくれる方がいたり。配信をきっかけにクラシックに興味を持ってくれた人が、実際に足を運んでくれるんです。そういう新しいファンとの出会いは本当に嬉しいですね。

演奏を通じてつながるって素敵なこと
――今回のヤマハさんとPocochaさんの応援プロジェクト『みんなの演奏会』で、imaseさんの課題曲を皆さんで演奏することになりますが、曲の印象や感想はいかがですか?
ななちゃんねる:すごくパワフルでエネルギッシュな曲だと思いました。普段はオーケストラでセカンドバイオリンを担当しているのですが、今回はファースト。音域が高くて驚きました(笑)。ポップスを配信で軽く弾くことはあっても、こうして本格的に練習し、みんなでひとつの作品に仕上げる機会はなかなかないので、新しい挑戦になっていますね。
むちこ:自然と体が揺れるようなノリのいい曲ですが、クラシックを専門にしてきた私にとって、スウィングするリズムが最初は難しく感じました。とにかく音源をたくさん聴いてリズムの捉え方を掴むようにしています。ピアノは全体のリズムを支える重要なパートなので、その役割をしっかり果たせるよう準備を進めていますね。
imaseさんは自分とほぼ同世代。全然違うフィールドで活躍されているけど、同じ音楽に携わっている人として親近感を抱いていました。なので、今回こうやって音楽という形で関われることにとても驚いていますし、嬉しく感じています。
こう:imaseさんは動画サイトなどに気軽に楽曲を発信している「新しい世代のアーティスト」と言うイメージがあります。今回の曲はポップでノリが良く、抑揚のある構成やキメのフレーズが印象的ですね。ただ、実際に弾いてみるとかなり難しい(笑)。僕が担当する予定のパートは、基本的にずっとカッティングをし続けるんです。プロとしてさまざまな現場で演奏してきましたが、それでも弾きごたえのある曲ですね。

――いろんな世代やジャンルの演奏者が集まって一緒に演奏するのは、とても楽しそうですよね。
こう:そうなんです。スペシャルムービーの撮影本番では、知り合いのライバーさんも何人か参加するので、久しぶりに会えるのが楽しみですね。Pocochaを通じて知り合った人たちと、実際に顔を合わせて共演できる機会は貴重だなと。何より、大人数での演奏はなかなか経験できることではないので、どんな仕上がりになるのかワクワクしています。
ななちゃんねる:普段は配信でしか見ていなかったライバーさんと、直接会って演奏できるのはとても新鮮です。まだ参加メンバー全員は把握していませんが、演奏を通じてつながるって素敵なことだなと。さまざまな楽器が加わることで、どんな音楽が生まれるのか想像するだけでワクワクします。クラシックの世界では大編成の演奏はよくありますが、今回はジャンルを超えたアンサンブル。新しい発見がたくさんありそうで、とても楽しみです。
むちこ:ピアノは基本的にソロの演奏が多いので、大人数でのアンサンブルに参加できるのは嬉しいです。それに、こういう大規模な演奏会って、オーディションがあったり、プロ同士のつながりでメンバーが決まったりすることが多いじゃないですか。今回はPocochaを通じて、さまざまなバックグラウンドを持つプレイヤーがたくさん参加しています。これまでの合奏とはまったく違う、新しい形のアンサンブルになりそうで、今から本番が待ち遠しいです。

――最後に、今後Pocochaを通じて挑戦したいことや目標についてお聞かせください。
ななちゃんねる:ライバー同士のコラボをもっと気軽にできるようにしたいです。例えば、「こうさん」とギター×バイオリンのセッションをしたり、「むちこさん」にピアノで伴奏してもらったり。リアルタイムでのセッションが増えれば、リスナーさんも一緒に楽しめる場になると思います。それに、コラボすることでリスナーさん同士の交流も広がるし、配信の魅力ももっと増していくはず。
こう:ギターとバイオリンの組み合わせ、めちゃくちゃ面白そうですね!
むちこ:そこにピアノも加わると、新しい響きが生まれそう。
ななちゃんねる:演奏を届けるだけでなく、みんなが一緒に音楽を楽しめる空間を作ることが、私の目標です。Pocochaなら、そんな新しい音楽体験がどんどん生まれる気がしています。
こう:僕は、まずは事故前のテクニックと収入を取り戻すこと。それが最優先ですね。そのうえで、Pocochaを活かしながら、より自由な音楽活動ができるようになれたらと思っています。
これまでは、昼にレッスン、夜はライブ、その合間に楽譜制作や練習……と、ほとんど休みなく動いていました。でも、Pocochaなら自分のペースで演奏しながら収入を得られるし、しっかり睡眠時間も確保できる。そうすれば、もっとクリエイティブな時間も増やせるはず。これまでとは違う、新しい形の音楽活動を築いていきたいです。
むちこ:私はクラシック音楽をもっと身近なものにしたいですね。「クラシックって敷居が高いものだと思っていたけど、実はすごく面白い」と感じてくれるリスナーさんが、Pocochaを通じて増えてきたのが、とても嬉しくて。
今後はオンラインだけでなく、実際の演奏会など、オフラインの場でもクラシックを身近に感じてもらえる機会を作っていきたい。私は音楽と福祉を結びつける活動にも力を入れたいと思っていて。特に、発達障害を持つお子さんたちへの音楽教育には、大きな可能性があると感じているんです。言葉を超えて心をつなぐツールとして、音楽の力をもっと広げていけたらいいなと思っています。

『みんなの演奏会』企画概要
誰かに演奏を聴いてもらえたとき。仲間と演奏する時間を分かち合えたとき。 音楽を続けるからこそ出会えるよろこびや、 そこで生まれるつながりの力を Pocochaとヤマハは信じています。
音楽を愛し、演奏を楽しむすべての人の その背中を少しでも押せるように。 これからも大好きな音楽を続けていける力になれるように。 Pocochaとヤマハによる応援プロジェクトです。
<スペシャルムービー・メイキングムービー公開時期>
2025年3月6日(木)20:00