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<コラム>ZIONには夢がある――友人代表・庄村聡泰が綴る【Journey of A Countryman】ツアー道中記
北海道・十勝の古民家を改装して作ったスタジオ“White House”を拠点とし、ほぼすべてのバンド活動をDIYで行うZION。2月1日に2ndフルアルバム『Countryman』をリリースし、同作を引っ提げた【ZION TOUR 2025 Journey of A Countryman】が2月8日、北海道・札幌cube gardenにてスタートした。
追加公演を含む全10公演中、現時点で5公演が終了し、ツアーも折り返し地点まで進んだところで、その全公演に物販スタッフ(!?)として帯同し、一部の楽曲では舞台上でパフォーマンス共演も披露している、元[Alexandros]のドラマー、庄村聡泰による道中記を交えたコラムを公開。個性豊かなメンバーが集い、独自の活動を繰り広げるZION。彼らの生き様を、誰よりも近い距離にいる友人が綴る。
Text:庄村聡泰
「『バンドのツアーをバンドとは別のミュージシャンの視点からレポートする』って、めちゃくちゃ面白いと思うんだよね。そんなの読んだことないし。サトヤスの視点からZIONの今をレポートしてもらいたいんだ。物販にも立って盛り上げてもらってさ。んで、物販だけじゃなくてちょっとステージにも立ってもらいたくて。新しいプレイングマネージャーの形、みたいな。面白くない?」
こちらは昨年末、久方ぶりに会って二郎食って語らった際に「ツアー決まったじゃんか。どうせ人足りてねえんだろ? 俺でよけりゃ何でもやるよ」と軽いノリを装いつつ、実は本気でZIONの仲間に入れて欲しいと思っていた俺の問いかけに対するみっちゃん(光村龍哉)からの返答である。「あ、それ超おもろい、超新しい」と即座に俺も思った。

どういった経緯で俺がこうして今ツアーの全日程に帯同することとなったのかについては、いつかの何らかの機会にてさらに事細かにじっくりしっかり笑いや涙(?)なんかの要素も交えながらご説明差し上げるとして、である。先頃発表となったエクストラ公演となる4月24日の神田スクエアホールを含めれば全10公演、そのうち2月16日の広島セカンドクラッチまででちょうど半分の日程を消化、すなわち折り返しというところまでは来ている今日この頃。こちらはここまでを共にしたワタクシZION友人代表(で、いいすよね?笑)庄村聡泰の視点による【ZION TOUR 2025 Journey of A Countryman】中間報告書的なナニガシである。ちなみに現状のご当地グルメトップはラーメン二郎仙台店とラーメン二郎朝倉街道駅前店が競っており、ラーメン二郎朝倉街道店での訪問、実食を経て、めでたくみっちゃんと俺は現存するラーメン二郎全45店舗を制覇したこととなった。Journey(旅)の醍醐味ですわね。
旅といえば道中、みっちゃんは「いつかこんなツアー、やってみたかったんだよね」なんてことをうれしそうに言っていたのだが、読者の皆様にはここであらためてツアー日程を今一度ご確認いただこう。先述の通り全10公演のうちの半分、つまり5本がすでに終了。ではあるが、その5本は2月8日~2月16日までの9日間で北海道~九州までというほぼ日本縦断の移動をしながらの5本である。しかもこちらはワンマンツアーなので各公演の演奏時間は2時間弱。まずはこの日程を無事に駆け抜けたメンバー(と俺も含めたスタッフ陣)の体力と精神力に労いの拍手をお送りいただきたい。言うて俺らもそんなに若くないですからね(笑)。たいち(鳴橋大地)も「可能な限りツアーは車で、みんな一緒で、いろいろ話しながらがいいと思ってるんですよね」なんてことをこちらもうれしそうに言っていたが、他メンバーもそうだし俺もそうだしスタッフ陣の皆様も、そんなバンドの有り様、生き様にこんな思いを抱いているのだと皆様にお伝えしたい。
このバンドには夢がある。
恥ずかしげもなく言い切ろう、ZIONには夢があるのだ。
車中で交わされる他愛もない会話が、いつの間にやら真剣な音楽談義やバンドの今後の展望へと切り替わり、それが車窓の景色と共に動いていく様、そんな会話の端々に挟まれるタバコやコーヒー。先のみっちゃんとたいちの発言通りの、バンドワゴンを地で行くという、夢。
そんな会話を続けながらの会場入り。一服を挟んでのサウンドチェックで交わされる音の会話。特に息を呑むほどに美しかった瞬間は初日の札幌。みっちゃんが爪弾くアルペジオの一瞬の隙間に自然と差し込まれるけいちゃん(櫛野啓介)のオブリ、息を呑み、漏れた溜息の深さでようやく自分がどれだけ長く息を止めてその刹那に立ち会っていたのかという事実に気付く。
それではここからメンバー個々に、俺が見ている夢を綴ろう。
後方ではたいちがドラムをチェック。持ち前の明るさに加え、ZION唯一の関西人というたまらんキャラでありながらもライブの前日には必ずスタジオで個人練習に打ち込むという努力家の一面も持ち合わせる。彼のドラミングは振り下ろされる腕の機動の鋭さや逞しさとは裏腹の温かく、柔らかで、ふくよかなタムとキックの鳴りが秀逸。これまた「めちゃくちゃいい音してる。楽器と演者が愛し合ってる。相当叩き込んでるな、あのキット」なんて独り言を漏らすと、「そうだね。SAKAEってもっとハイファイな音だと思ってたんだけど、たいちのキットでたいちが叩くとあったかい音になるんだよね。ZION結成時からずっと大事に使ってる」なんてみっちゃんが返してくれました(笑)。ライブ中のエモーショナルな顔つきと叩き方のカッコ良さにも痺れてます。鳴らす音はデカくてロッキンだけど、そこに持ち前の優しさをも滲ませることができるドラマーという、夢。

その上に乗るのがベースのしんちゃん(佐藤慎之介)。常時涼しげな表情と飄々とした立ち居振る舞い、駆るベースはプレベと今時使ってるヤツなんて初めて見たぞなバイオリンベース(ポールマッカートニー愛用でお馴染み)、なのにも関わらず、そんな彼のプレイが縦横無尽に指板を駆け回る超攻撃型ベースラインなのがたまらん。なおかつピックも指もめちゃくちゃに上手くてコーラスも上手くて作曲も上手い(それが『Countryman』収録にて晴れて作家デビューとなったご機嫌ファンクチューン「Petit Revolution」であるが、こちらのライブにて挟まれるたいちのドラムソロがまためちゃくちゃにいいのだ)。そして手紙も上手い(ZION名物。是非とも体験していただきたい。笑えるんだよなあ)。攻守揃った剛腕ベーシスト兼ほっこりテガミストだけど、みっちゃんけいちゃん曰く何ならギターソロもさらにはカレー作りまでもがメンバー内で1番上手い最年少という、夢。

そして、ある意味ではしんちゃん以上に飄々としている様にも見える長身ロン毛(俺の大好物である)のさっち(吉澤幸男)。『Countryman』では彼が作曲に携わった割合が最も多く、何なら俺がZIONで1番好きな『SUN'n'JOY』3曲目の「New Moanin’」も彼の手によるもの。普段はギターとキーボードの中間的な音作りで曲の雰囲気を演出するフレーズを担う、言わばレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドなプレイスタイルなのだが、そんなさっちがライブ中、タガを外して暴れ狂いながらギターを弾きまくるとそのノイジーでサイケデリックな音に凄まじいうねりが込められ、場内に途轍もないカタルシスを生んじまうところがたまらん。メンバーで唯一パンク、ハードコア、アバンギャルドにどっぷり浸かった出自ならではのバンドの起爆剤でありながら映画やお笑いなどにも造詣が深い、ギャップ萌えとサブカルの化身みたいな人でもあるという、夢。

ギャップ萌えで言うと、そんなしんちゃんさっちと一見飄々としている様に見える2人に対してのけいちゃんがまたたまらんのだ。一目見れば分かるし一言口を開けば強烈に匂い立つのがその兄貴感で親分感でボス感でオス感で漢感で組長感(笑)。バンドのありとあらゆる挙動に対して常に鋭い眼光を光らし、ドスの効いた一言で場を纏めるリーダー的存在。実際にZIONの拠点を十勝としたのも彼がきっかけであり、上記のスター性溢れまくるメンバーを揃えたのも彼である。プレイスタイルは曲間至るところで先述のオブリを光らせつつ(それこそドスのように笑)、みっちゃんと極上のハーモニーを聞かせるコーラスもさることながらではあるが、同時に彼はスライドギターの大名手でもある。インスト曲「Innipi(N)」でギターを泣かせる際のカッコ良さと言ったら…(溜息)。どこまでも伸びる絶品スライドギターで強面リーダーの威厳の裏の涙を覗かせるという、夢。

そんなけいちゃんとも俺とも随分長い付き合いになるみっちゃんの諸々については割愛するが、俺が初めて彼と出会った15年前からずっと、みっちゃんは自身が追い求める“面白いもの”について正直で誠実だ。そして、その追い求める“面白いもの”に対する純度の高さと放たれるアイデアの角度は年々研ぎ澄まされる一方で、こちら側(それは彼以外のメンバー、スタッフ、聴衆の皆様、すなわちこれを読む、あなた)としてはそれ自体がもうめちゃくちゃに面白いという段階まできている。でなけりゃこんな面白いバンド組んでこんな面白い活動して俺にこんな面白いことは依頼しないし、それを俺が面白がることも、ない。だから仲間になりたいと思った。10年以上前には「夢1号」なんて楽曲も発表している彼ではあるが、いまだにそちらはひたすらに面白いほうへと航路を変えず進行中なのだろう。オモロ思考に輪をかけて研ぎ澄まされまくるセクシーな佇まい、フロントマン然とした立ち居振る舞い、艶やかなアルペジオ、躍動するカッティング、そして圧倒的な歌声という、夢。

さらに俺の視点で本当に極めてめちゃくちゃな夢を言うと、このバンドはツェッペリンのジョン・ボーナムがドラムでフーのジョン・エントウィッスルがベースでレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドとブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのライ・クーダーがギターでボーカルが光村龍哉みたいな、それこそ夢の超スーパーバンド/グループみたいに感じる瞬間があるのだ。ライブ観てるとマジで時たまそう感じる。俺はこのバンドとの旅でそんな大それた夢まで見るようになっちまったのだ。
夢見る5人と同時に夢を見させてくれる5人でもあるZIONは、先述の通り現在ツアーの真っ最中。後方にたいちを鎮座させ4人が横並ぶという実に堂々たるフォーメーションにてライブハウスのあの距離感空気感の中でびりびりと音楽を轟かせまくっている。誰の顔つきを追っても手元を追っても足元を追ってもめちゃくちゃに面白く、それぞれに違うプレイスタイルを精一杯ZIONという地にぶつけ、毎回に異なる化学反応を心から楽しんでいる。具体的な曲目やライブならではのアレンジについてはあえて一切触れないで書いているのだが、これだけ書けば伝わるだろう。

このバンドには夢がある。
恥ずかしげもなく言い切ろう、ZIONには夢があるのだ。
ツアー後半戦は3月2日から。夢見るあなたのご参加、心よりお待ち申し上げております。
ロックバンドに夢、見たくないですか?
なんて【ZION TOUR 2025 Journey of A Countryman】開催中のためそちらに全力を注いだ文章となってはしまったが、ZIONはツアーのエクストラ公演である4月24日の神田スクエアホールを終えてから2週間強の5月11日にビルボードライブ大阪、そして5月17日にはビルボードライブ東京での公演を控えている。そこでは今ツアーとまったく異なるセットリスト、アレンジにてまた我々に新たな夢の形を見せてくれるに違いない。みっちゃん、アレンジ大好きだからなあ…(笑)。
くどいようだが何度でも言う。
このバンドには夢がある。
恥ずかしげもなく言い切ろう、ZIONには夢があるのだ。
ビルボードライブで夢、見たくないですか?