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<インタビュー>スターダスト☆レビュー、今までで関わってきた人達への“リスペクト”を込めたニューアルバム『星屑冒険王』とは

インタビューバナー

Interview & Text:黒田隆憲
Photo:興梠真穂


 デビュー45周年を迎えようとしている今なお、スターダスト☆レビューは止まることなく「音楽の冒険」を続けている。前回のツアーでは110公演というライブをこなしながら、4年半ぶりとなるオリジナルアルバム『星屑冒険王』を完成させた。その過程には、AIによる楽曲生成との対峙を通じて再認識した「音楽へのリスペクト」、戦争やコロナ禍を経て感じた社会への思い、そして長年支えてくれた仲間たちへの深いリスペクトがあった。

 <歳の数だけ楽しいことがあるなら この先だって期待しちゃおう>と本作の中でも歌っているように(「冒険王」)、彼らは決して立ち止まらない。時代が移ろい価値観が変わる中で、彼らの音楽が持つ「人間らしさ」こそが、今の時代に響くのかもしれない。スタ☆レビらしさの再構築、そして「届けるべき相手」が明確になったという本作。ボーカル&ギターの根本要が、その制作エピソードについてたっぷりと語ってくれた。

「俺が作るべき音楽は、自分の感性を育ててくれたミュージシャン達への“リスペクト”から作るんだ」

――前作『年中模索』から4年半ぶりの新作ですが、その間にバンドとして、また個人としてどんな変化がありましたか?

根本要:普通、4年半もあれば「その間にじっくり構想を温めて…」みたいなイメージがあるかもしれませんが、僕らはそういうタイプじゃなくて。前作『年中模索』を出してすぐに102公演、その後2022年には『ブギウギ ワンダー☆レビュー』というミニアルバムを作って110公演のツアーをやっていました。そのツアーが去年の5月いっぱいまで続いていたので、本格的にアルバム制作を始めたのは去年の8月か9月くらいでしたね。やっぱりスタレビというバンドは「ライブなしには先に進めないバンド」なんだと、改めて感じました。


――ずっと活動は続けていたのですね。

根本:ライブがないと食っていけないですからね(笑)。でも正直に言うと、アルバムを作るのって本当に大変なんです。特に僕らみたいに何十枚も作ってきたバンドだと、アイデアも尽きるし「本当にいいものが作れるのか?」っていう自信もなくなる。でもアルバムがないと、大好きなツアーができないから「何とか形にしよう」と頑張るんです。

それで、なんとかモチベーションを上げようと。そんなとき、うちのマネージャーが「AIで曲を作れるサイトがある」と教えてくれたんです。なんなら、それをパクろうかと(笑)、試しにそのサイトに行って「大人っぽい」「フュージョン」「コーラスあり」などキーワードを入れたら、たった20秒くらいでそれっぽい曲が、歌詞も含めて出てきたんです。それがけっこういい曲で、しかも今っぽい。ただ、どうしても腑に落ちない部分があって。



――それは、どんなことでしょう?

根本:「この違和感はなんだ?」と、そして気づきました。そこに“リスペクト”を感じなかったんです。それっぽいものではあったけど、元になった音楽への愛情が感じられなかった。それで、次のアルバムの構想が見えたんです。「俺が作るべき音楽は、自分の感性を育ててくれたミュージシャン達への“リスペクト”から作るんだ」と。僕らが音楽を始めたのは、大好きなミュージシャンに少しでも近づきたいから。そのリスペクトなしには語れないんです。

AIを否定するつもりはないし、AIが作る曲でも楽しめる人はたくさんいると思います。実際、良く出来た曲でしたからね。でも、僕にとっての音楽は「愛情から始まるもの」。それを、逆の意味でAIに気づかせてもらったわけです(笑)。


――そこでアルバムの方向性も見えてきたわけですね。

根本:改めて「スターダスト☆レビューとは何か?」を考えました。40年以上、ともに歩んできた仲間、脱退したメンバーや亡くなったスタッフ、支えてくれたミュージシャンたち……そういう人たちへの感謝やリスペクトを込めたアルバムを作りたいと思ったんです。

前作『年中模索』では佐橋佳幸くんにプロデュースをお願いしたり、それ以前もいろんな方の力を借りてスタ☆レビを作りましたが、今回は自分でプロデュースしようと考えていたんです。僕がやりたかったのは「スタ☆レビの再構築」。ミュージシャンは絶えず新しいものを作ろうと、時には過去を否定して原動力にします。でもその過去さえも肯定したうえで、今の僕らだからこそできる音を作る。そう決めたら、1週間で十数曲、一気に書き上がりました。



――アレンジャー陣も、いつものメンバーに加えてスタ☆レビと縁の深い人たちですね。

根本:前回に続き佐橋佳幸くん、うちのバンドの添田啓二くん、そこに加え、「埼玉の音(笑)」を作ろうと、初参加の根岸孝旨くんを始め、埼玉出身の身内のミュージシャンたちを総動員したんです(笑)。歌詞を手伝ってくれた馬場俊英くんも埼玉出身だし、JAYWALKの杉田裕くんも長年一緒にやっている仲間。そういう「昔からスタ☆レビを知ってる」ミュージシャンたちと作ることで、よりスタ☆レビらしいサウンドを再構築したかったんです。

そして「このアルバムを誰に届けるのか」が明確であったことも大きかったですね。全国でライブをやっていると気づくんです。ここにいるお客さん達は、心からスタ☆レビの音楽を楽しんでくれている。まずは「その人たちに今のスタ☆レビの音を届けたい」と思ったんです。そんなライブに足を運んでくださるお客さんの存在こそが、僕にとって最大のモチベーションになりました。


――なるほど。

根本:40年以上続ける中で、僕らの「器」も見えてきた部分もありますよ。僕らはユーミンさん(松任谷由実)やサザン(オールスターズ)、小田和正さん、山下達郎さんにはなれないし、それぞれのアーティストに、それぞれのやり方がある。僕らは毎年欠かさずツアーをやりながら、まずは僕らの音楽を待っててくれている人に届けることが大切だと思ったんです。


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  1. 「音楽が日常の一部になるような環境を作れたら嬉しいです」
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「音楽が日常の一部になるような環境を作れたら嬉しいです」

――アルバム曲で最初にできたのは、「冒険王」だったそうですね?

根本:はい。さっき言ったように、今回のアルバムでは「スタ☆レビを再構築する」という意識がありました。単純に、デビューした1980年代と今のスタ☆レビ、何が違うのか?と言えば「年齢」です。

20代の僕らが思い描いていた未来と、70歳が見えてきた今の僕らが考えることは、かなり違います。特に年齢的なことはマイナスに捉えがちだけど、だからこそ「僕らと一緒に年を重ねてきた人たちに向けて、まだこんな面白いことがあるんだよ」と伝えようと思ったんです。その思いが「冒険王」というタイトルに繋がりました。


――<歳の数だけ楽しいことがあるなら この先だって期待しちゃおう>というフレーズが印象的でした。

根本:ずっとこのキーワードを温めていました。スタ☆レビの80年代はどちらかというと「おしゃれなサウンド」のイメージがあったんです。でも、根っこは埼玉の、それも都会的とはいい難いバンドで、決して奇抜な音や誰もやったことのない音楽を目指してきたわけでもない。昔から、ひたすら気持ちのいい、ミドル・オブ・ザ・ロードな音楽を大切にしてきました。それがこの歳になって、気張らず自然に語れるようになったんです。



――つまり王道のポップミュージックということですね。<背中のチャックを上げてくれ>というフレーズも好きです。年を重ねた自分をユーモラスに描写しつつも、「それでもやれることはまだある」という気概が伝わってきます。

根本:スタ☆レビって、自分たちを笑いながら前に進んでいくっていうスタンスなんです。先日も大阪で【飲酒運転撲滅ライブ】をやったんですけど、もう18回目なんですよ。今回も最年長として出演しトリを務めたんですけど、お客さんに「俺たちが最年長だから、みんな拍手を頼むよ! でも、耳が遠くなってるから、いつもより大きめで!」ってアドリブで歌ったら、めちゃくちゃ盛り上がりました(笑)。


――あははは。マッチ(近藤真彦)が出演しているACのCMみたいですね。

根本:そうそう、あのパクリです(笑)。僕は本当に音楽しかやってこなかった人間なんです。それが仕事になって、今もこうして音楽を続けられているなんて、まるで夢みたいな話。しかもありがたいことに、大好きなライブを、ちょうどいい規模感で自由に音楽を楽しめているんですよ。

本当に毎日でも歌っていたい。3月から始まるツアーも全国で150本くらいやる予定なんです。よく「ライブって大変じゃないですか?」と尋ねられるけど、全然大変じゃない。ただただ楽しいだけだよ(笑)。もちろんこの先、体力的にしんどくなっていくのかもしれないけど、今のところまだまだ大丈夫だし、今後も無理なくできるところまでやりたいと思っています。


――年齢を重ねることで見えてくるもの、新たにできることもありますよね?

根本:そう、最近見つけたんです。例えば今回のツアーでは、今まで機材の関係で行けなかった小さなホールにも行こうと思ってるんです。今までは「この会場だと機材が入らないので無理ですね」と言われたホールも、「じゃあ機材を減らせばいいじゃん?」って(笑)。それで、アカペラとアコースティック編成のセットも考えました。

60を過ぎるとバンドを取り巻く状況も見えて、ついスタイルを固めてしまいがちですが、僕らはまだ発展途上だと思っているんです。できることはまだまだあるし、やれることは全部やってみたい。このくらいの知名度だからこそ、自由に動ける。それがスタ☆レビの「強み」なのかもしれないですね。


――「去年の9月ごろから一気に楽曲を作り始めた」と先ほどおっしゃっていましたが、今作にはコロナ禍で考えていたことが反映された曲も多いですよね。

根本:もちろんコロナの影響もありましたが、それ以上に大きかったのは戦争ですね。ウクライナやイスラエルの情勢を見て、この21世紀になってもなお、国同士が土地を奪い合い、人の命までも奪い合うようなことが続いている。その現実に強い違和感を覚えました。そんな時代に、自分なりの平和のメッセージを伝えたいと思ったんです。

ミュージシャンって、基本は夢想家ですから、大げさなことを言ったり、理想を語ったりするのが好きなんですよ(笑)。音楽で世の中を変えられるとは思っていないけれど、でももし、僕らの音楽が誰かの心に小さな平和の灯をともせたなら、それが希望につながるかもしれない。そんな風に、人々が少しでも温かい気持ちになれたら、人との争いも減っていくんじゃないか……そんな思いがいつもあるんです。



――コロナ禍を経た今だからこそ「ありふれた奇跡」のような、何気ない日常の中の幸せの大切さを歌おうと思ったのでは?

根本:確かに。「ありふれた奇跡」は、僕の家の何気ない話をもとに書きました。でも、実は僕らの人生って、日常の中に小さなありふれた奇跡がいつも起こっているんです。 誰の人生にもドラマがあって、すべての人に「語るべき物語」があります。「豊かな人生」ってよく言うけど、それは誰かが与えてくれるものではなくて、自分で作り出していくもので、誰もがそれぞれ違った視点で語れるはずだし、その中に自分しか体験していない面白さや感動があるはずなんです。


――例えば「Mystery of Love ~囚われの愛~」には、スティーヴィー・ワンダーの「Don’t You Worry ’Bout a Thing」のオマージュが含まれています。先ほど、過去の音楽へのリスペクトのお話をされましたが、「こういう音楽があるんだよ」と次の世代に伝えていきたい気持ちもあるのでは?

根本:間違いなくありますね。僕はよくファンの方に言うんですよ、「スタ☆レビの音楽だけ聴いてるのはもったいないよ」と。僕らはたくさんの音楽を聴いてきたからこそ、今のスタ☆レビの音楽がある。だから、いろんな音楽を聴いてほしいし、それによって新しい発見があるかもしれないし、今まで気づかなかった新たなスタ☆レビの魅力にも気づいてくれるかもしれないですからね。

先ほどのAIの話に戻りますが、僕の苦手な音楽は「過去の音楽に対するリスペクトが感じられないもの」です。僕は偉大なアーティストたちから受け継いだものを、次の世代に伝えていきたいんです。もちろん、過去に捕らわれない新しい音楽もどんどん生まれています。でも、僕自身はその音楽が何に影響を受けて、どう表現しようとしたのかは、とても大切なポイントになります。


――確かに。

根本:それから、日本の音楽状況はテレビやパブリシティが中心に作られるので、どうしても”売れている人”にスポットが当たりがち。もちろん、それは当然のことだけど、話題性の少ない音楽や、水面下の面白いミュージシャン達が埋もれてしまうことも多いんです。

僕らスタ☆レビはありがたいことに、いつの間にか大好きなライブをあちこちで出来るようになりました。そこに感謝しつつ、僕らと同じように頑張っているバンドと一緒にジョイントライブをしたり、あちこちで彼らを紹介したりしているんです。責任感と言うと大げさだけど、40年ライブをやってきたバンドとしては「このバンドも聴いてほしい」とか「こいつら、凄くいいんだよ!」って思ったら、ちゃんと伝えていきたいんです。そういう気持ちが、以前よりも強くなりましたね。年齢的なものなのかもしれませんけど。



――60歳を超えて、他にも考え方の変化はありましたか?

根本:20年ほど前に僕らは自分たちの事務所を作ったのですが、それはとても大きな変化でしたね。独立することで、音楽業界の中の自分たちのポジションやするべきことが見えてきました。そのうえで、たとえば公共性みたいなものも含めて「人のためにできることがあるんじゃないか」と考えるようにもなったんです。そのひとつがチャリティライブ。僕らはツアーで全国にお邪魔しているので、東日本大震災の時や去年の能登半島地震の時は、すぐに支援ライブに切り替えて義援金を募り届けました。

去年の8月には輪島市、能登町、珠洲市の三か所に行ったのですが、本当に壊滅的な状態で愕然としました。その中で、珠洲市に小さな会館だけが残っていて、そこで僕らは歌わせてもらったんです。ボランティアの方々や地元の人たちが集まってくれて、音楽が少しでも気持ちの支えになればと歌ってきました。その後、また台風の被害もあり、本当に心配しています。街の人たちが皆さん語っておられましたが、「この状況の中、日本中から支援が届いている。自分たちはひとりじゃないんだ」という言葉。やっぱり、僕らは支え合ってしか生きていけないんです。スタ☆レビは音楽で、少しでもそんな人たちに寄り添えればと思っています。


――それでは最後に、3月から始まるツアーについて聞かせてください。

根本:今回のアルバムに合わせて【スターダスト☆レビュー 45周年ツアー2025~27 「星屑冒険王」】と銘打ったツアーが3月から始まります。通常のホールツアーだけでなく、先ほどお話したアカペラ&アコースティックと、数か所の野外ツアーも含めて150公演くらいを予定しています。スタレビのモットーは「観たい人が観たい時に、観たいだけ観られる」というリンカーン大統領みたいな言葉です(笑)。言わば「ノー・ソールドアウト」、需要を供給が上回る珍しいバンドです。いつでもおいでくださいね。

ライブって、行く人は何回も行くけど、行かない人は全然行かないでしょ。それって、結局行かないとその魅力がわからないってことなんですよね。だから僕らは出来るだけ門戸を広げ、全国各地に行って観たい人にお見せしたいんです。そして、僕らのライブだけじゃなくて、音楽が日常の一部になるような環境を作れたら嬉しいです。


――音楽が日常の一部になるような環境、とてもいいですね。

根本:先日も、高知県の土佐清水という町でライブをやったんです。街の人に「この町はライブなんてなかなかやらないから、お客さんが半分でも入れば成功ですよ」と言われたのですが、実際は嬉しいことに完売していて、むっちゃ盛り上がったいいライブでした。

大都市なら人口も多いし、アリーナやドームもある。でもそんな場所に住んでいる人ばかりじゃないですからね。それなら僕らがその街に行けば、観たいと思ってた街の人たちがライブを体験できる。チケット代に加えて交通費まで払って遠征するより、僕らが動いたほうがずっと合理的じゃないですか。そうやって、もっと多くの人に音楽を届けたい。大きな会場だけでなく、スタ☆レビとしては、お客さんとの距離が近い場所で演奏する機会をもっと増やしたいです。次回は、是非あなたもスタレビ体験してみてくださいね。


スターダスト☆レビュー「星屑冒険王」

星屑冒険王

2025/02/26 RELEASE
COCP-42442 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.ゴールデンタイム・ヒーロー
  2. 02.星屑兄弟
  3. 03.ナントとカナルの物語
  4. 04.ありふれた奇跡
  5. 05.はっきりしようぜ
  6. 06.立ち止まれば南平台
  7. 07.冒険王
  8. 08.恋はドドンパで
  9. 09.Mystery Of Love~囚われの愛
  10. 10.渇いた朝
  11. 11.やっぱり会いたいよ
  12. 12.You Can Change My Life-愛が生まれた-

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