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<コラム>『ライオン・キング:ムファサ』楽曲を一挙紹介、手がけるのは天才音楽家リン=マニュエル・ミランダ
Text: 村上ひさし
ファン待望のディズニー新作映画『ライオン・キング:ムファサ』が遂に公開された。2019年の『ライオン・キング』の前日譚となる“はじまり”の物語が描かれる本作。超実写版と謳われる美しい映像と、誰もが共感させられる“兄弟の絆”が話題だが、音楽面でも大きな注目を浴びている。音楽を手掛けているのは、『モアナと伝説の海』(2017)、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)、実写版『リトル・マーメイド』(2023)など、ディズニーのヒット作を立て続けに担ってきたリン=マニュエル・ミランダ。【グラミー賞】、【トニー賞】、【エミー賞】、【ピューリッツァー賞】に輝き、【アカデミー賞】にノミネートされる奇才が、心を揺さぶるミュージカルナンバーを本作のために書き下ろしている。さらに“ゴッドファーザー・オブ・ザ・ライオン・キング”ことレボ・Mも新曲を提供。以下、アルバム『ライオン・キング:ムファサ(オリジナル・サウンドトラック)』の収録曲を順に紹介していこう。
1.「NGOMSO」
映画のオープニングと同時に、まず一番に耳に飛び込んでくるのが、この曲「NGOMSO」だ。1994年のアニメーション版から、ステージ版、前作の超実写版と、多くの『ライオン・キング』作品に関わってきたレボ・Mの歌声が高らかに鳴り響く。今や『ライオン・キング』に無くてはならない彼の歌声が、哀愁とノスタルジーを呼び覚ます。南アフリカ出身のレボの力強くも情感溢れる声を耳にするだけで、すぐさま人類の原風景ともいえるパノラマティックな大自然が目前に広がるのだから驚かされる。南アフリカのコサ語と英語を交えて歌われる。
2.「遥かなミレーレ」
本作の主役ムファサの母アフィアと父マセゴによるデュエットナンバー。まだ見ぬ豊かで平和な“約束の地・ミレーレ”に思いを託して歌われる。まろやかな歌声を聴かせるのは【トニー賞】でミュージカル女優賞にも輝く実力派のアニカ・ノニ・ローズ。ディズニー・アニメーション『プリンセスと魔法のキス』(2010)では主人公ティアナの声を演じていた。一方のキース・デイヴィッドも同じく『プリンセスと魔法のキス』でドクター・ファシリエを演じていた間柄。日本語版では和音美桜と吉原光夫がデュエット。二人の柔和な声がたっぷり癒してくれる。
3.「ブラザー/君みたいな兄弟」
本作の監督バリー・ジェンキンス(『ムーンライト』(2016))いわく「私たちが最初に書いた曲」だとか。ムファサ(アーロン・ピエール/尾上右近)とタカ(ケルヴィン・ハリソン・Jr./松田元太)が兄弟のようにじゃれ合いながら、とびきり躍動感溢れる歌を交互に披露する。この曲の中で、彼らはひとっ飛びに成長。前半は幼少時代の子役によって歌われるが、終盤には現在の姿になった彼らの声が登場する。ムファサ役のアーロン・ピエールは、ジェンキンス監督のドラマシリーズ『地下鉄道〜自由への旅路〜』(2021)にも出演していた旧知の仲。タカを演じるケルヴィン・ハリソン・Jr.は、バズ・ラーマン監督作『エルヴィス』(2022)でB.B.キングを演じていたほか、学生時代には音楽を学んだこともある。アフロビーツを取り入れた演奏とコーラスが、陽気なバイブスを生み出しアップリフティングに盛り上げる。
4.「バイバイ」
元々の脚本にはヴィランによるナンバーは含まれていなかったそうだが、リン=マニュエル・ミランダたっての希望で実現したのがこの曲。冷酷な敵ライオンのキロスをマッツ・ミケルセンが怪演しながら、おどろおどろしく歌い上げる。日本語版の渡辺謙の表情豊かな歌にも圧倒される。幼い頃からディズニー映画の大ファンだったというリン=マニュエル・ミランダならではの、如何にもディズニー・ヴィランらしい音作りが為されている。
5.「一緒に行こう」
アフロビーツが軽やかに取り入れられ、スキップしながら行進する南国ムード満載のナンバー。サラビ役のティファニー・ブーン(『ミッドナイト・スカイ』(2020))は、オーディションの最中に歌も歌わなければならないと知り、一旦諦めかけたそうだが、意を決して挑戦。伸び伸びとした美しい歌声を聞かせてくれる。
6.「聞かせて」
セリーヌ・ディオン&ピーボ・ブライソンの名曲「美女と野獣」などを聞いて育ったリン=マニュエル・ミランダとしては、ディズニーらしいロマンティックなディエットソングを作らずにはいられなかったそうだ。アーロン・ピエールとティファニー・ブーンが秘めたる気持ちを伝え合う。エルトン・ジョンが歌ってヒットした1994年のアニメーション版『ライオン・キング』からの「愛を感じて」の旋律も聞こえてくる。
7.「裏切りの兄弟」
タカの胸中の葛藤が、赤裸々に激情と共に吐露される。映像なしで歌だけを聞いていると、まるでケルヴィン・ハリス・Jr.がミュージカルの舞台に立ち、歌っているかのような臨場感で迫ってくる。タカのやるせない辛い思いがひしひしと伝えられ、胸が張り裂けそうな痛みを体現する。
以上、エルトン・ジョン&ティム・ライスが築いた『ライオン・キング』の世界観とサウンドスケープを引き継ぎつつ、新たな感動を届けてくれる『ライオン・キング:ムファサ』。今やディズニー音楽の新たな担い手となったリン=マニュエル・ミランダのサウンドが大きな魅力であるのは間違いない。ちなみに声優として前作に引き続き、セス・ローゲン、ドナルド・グローヴァー、ビヨンセらも出演。『ライオン・キング』にインスパイアされたビヨンセのアルバム『ライオン・キング:ザ・ギフト』に参加した彼女の愛娘ブルー・アイビー・カーターも、シンバの娘キアラ役で出演する。
リリース情報
『ライオン・キング:ムファサ(オリジナル・サウンドトラック)』
CD発売中/デジタル配信中
UWCD-1133 3,300円(tax in.)
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