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<コラム>人気ミュージシャンも多数登場 “あなた”のストーリーでもある『RM: Right People, Wrong Place』を観て
韓国のみならず、世界を席巻するK-POPグループ、BTSのリーダーであるRMの初単独ドキュメンタリー映画『RM: Right People, Wrong Place』が、2025年1月3日より全国公開する。「K-POPスターにとって30歳はどのような意味があるのか」――本作で明かされるRMの実直な姿は、未来に淡い期待を持ちながら成長と苦悩を繰り返している私たちの人生の転換期と重なる部分がある。
音楽制作の裏側を知るミュージシャンは彼の苦悩をどう受け取るのか。[Alexandros]のドラマーとして活躍後、現在はスタイリストや執筆業など多方面で活動する庄村聡泰(@shomurasatoyasu)に本作を鑑賞してもらった。本作に出演する著名アーティストたちとRMの交流も見逃せない。
RM。本名キム・ナムジュン。BTSのリーダー。本作『RM: Right People, Wrong Place』は今年5月にリリースされた彼の2ndソロアルバム『Right Place, Wrong Person』制作過程に8か月間密着した音楽ドキュメンタリー映画だ。
Balming Tigerのクリエイティブ・ディレクターであるSan Yawnが総指揮を務める形で韓国内外を問わず多数のミュージシャンを招いて制作された『Right Place, Wrong Person』を劇中のRMは「僕のじゃなくてTeam RMのアルバムだよ」と表現。それはBTSのRM、1人のアーティストとしてのRM、そして30代を迎えたキム・ナムジュン個人それぞれのパーソナリティが時にヒップホップ、時にドリームポップ、はたまたインディーロックにジャズなど、実に多岐にわたる音楽性とそれらを表現するミュージシャンたちの手腕でもって構成されており、本人の今更語るまでもない輝かしいキャリア、スキルでもって完璧に整理され、音楽という形に落とし込まれたある意味では“隙のない”アルバムのように思えた。本作を観るまでは。
左からRM、San Yawn、JNKYRD
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冒頭の赤裸々な告白を受けちらりと浮かんだのは言うなれば親近感にも似た感情。あれ? ひょっとしてRMも我々と同じく「葛藤」しながら生きている……? そんなシーンから始まる本作の臨場感をより高めるのは、あたかも本作の観客一人一人も『Right Place, Wrong Person』に携わるTeam RMの一員であるかのようなカメラワークの妙だ。レコーディング、打ち合わせ、スチールやミュージック・ビデオ撮影、そして打ち上げの風景など、カメラは実に、本当に近い距離感からRMと彼の周りの人々を捉え、それはドキュメンタリー映画の鑑賞というよりは実際にRMと制作を共にしているような体験をさせてくれる。
グループではなく、自分1人が先頭に立って音楽を作ること。その根源的な喜びに満ち溢れている表情、歌詞の表現の細部について思い悩む表情、そして今までのキャリアを経ての自らについての考え。その全てをカメラは克明に映し出す。RMの様々な心情を通すことで、観客は自分自身とも向き合うこととなるだろう。押しも押されもせぬキャリアを持つ彼ですらこんなにも葛藤しながら表現と向き合っている。それを受けて、自分はどう歩もうか、と。
精巧なプロダクションかと思われたレコーディング現場もかなりラフというか、くだけたアットホームな雰囲気であり、RMが狭い部屋に制作陣と肩を寄せ合い楽曲のリファレンスやデモを聴きながらドミ&JD・ベックのスタイルが自身の方向性と近しいことについて興奮気味に話す様や、アルバム4曲目の「Domodachi」に参加した同い年であるLittle Simzのラップのカッコ良さに思わず身体を踊らせる時の笑顔なんかはもう言ってしまえば本当に我々と同じただの音楽好きのそれであったし、仲間と音楽を作ることの楽しさについては[Alexandros]のドラムとして何度も体験させていただいた身でもあるので、なんだかとても嬉しくなってしまった。(それと、現在スタイリストでもある筆者的には日本のブランド、特にメゾン ミハラヤスヒロのアイテムが登場することも嬉しかったです(笑)。)
横ノリのテンポ感、チルなアコギのストロークの上でRMの声が心地よくバウンスするアルバム最終曲「Come back to me」を改めて聴き直しながら、本作鑑賞を経て自分にとってより身近となった『Right Place, Wrong Person』をこれからも大切に聴いていこうと思ったのである。
補足、あるいは蛇足となってしまうかもしれないが、先述のBalming Tiger、ドミ&JD・ベック、Little Simzのほかにも『Right Place, Wrong Person』にはHYUKOHのボーカルでありソングライターのオ・ヒョク、落日飛車(Sunset Rollercoaster)のボーカリストでありリーダー、國國、Silica Gelのボーカルでありキーボーディスト/ギタリストのKim Hanjoo、劇中には登場しない(ドミ&JD・ベックも本人たちは登場していない)がnever young beachなど、普段筆者が愛聴してやまないアーティストが多数参加。アルバム本編を楽しむと同時に、これらのアーティストたちの作品もぜひとも聴いてみてほしい。めちゃくちゃカッコいいんだから。
公開情報
『RM: Right People, Wrong Place』
2025年1月3日(金)より、全国公開
監督:イ・ソクジュン
出演:RM
提供:HYBE
制作:HYBE
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
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https://rmrpwp.jp/
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