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<インタビュー>レジェンド・ギタリストの山本恭司がトリビュート・ツアー前にジェフ・ベックの魅力を語る

インタビューバナー

Interview & Text:石沢 功治 / Photo:汰中沙由香

  ロックバンドBOWWOWのリーダーとして日本のロック黎明期を支えてきたレジェンド・ギタリストの山本恭司。2024年1月にサプライズなメンバーが集結したツアー【Memory of Jeff Beck plus Live Tour 2024】で6会場を周り、好評を得てからちょうど一年が経過した来年1月に、同じメンバーで今度は【Memory of Beck & Jim Live Tour 2025】をタイトルに掲げた全国ツアーを予定している。今回、1月15日のビルボードライブ横浜を含む本ツアーにむけて愛すべきギターヒーロー、ジェフ・ベックそしてジミ・ヘンドリックスについて、それぞれ話を伺った。

ジミ・ヘンドリックスについてのインタビュー記事は近日公開予定。本記事と併せてチェックしてほしい。

──そもそも恭司さんがジェフ・ベックの音楽に最初に触れたのはいつ頃でしょうか?

山本恭司:ギターを弾き始めたのが15歳のときだったんですけど、身近でロックに詳しい知り合いが結構いまして。その中の1人が高校1年生のときにロッド・スチュワートが歌ってるシングル盤「監獄ロック」を貸してくれて、ギターをコピーしたんですが、それが最初ですね。その時の演奏を収めたカセット・テープは未だに持ってますよ。で、そのあとデビュー1作目の『トゥルース』(1968年)や「監獄ロック」の入った2作目『ベック・オラ』(1969年)を聴いて……ギターがスリリングでとにかく惹かれましたね。




──その第1期ジェフ・ベック・グループの『トゥルース』と『ベック・オラ』に続いてリリースされたアルバム群の、国内カッティング&プレス盤が今年から来年にかけて相次いで発売されています。まずは第2期ジェフ・ベック・グループの『ラフ・アンド・レディ』と(1971年)『ジェフ・ベック・グループ』(1972年)が第一弾として7月に発売されました。

山本:『ラフ・アンド・レディ』の「シチュエイション」とかコピーしましたし、高校時代は通称オレンジ・アルバムの『ジェフ・ベック・グループ』も意表を突くトリッキーなソロに魅せられて、いろんな曲のギター・ソロのところをカセットにダビングして、寝るときにかけたりしてました。あと、当時聴いていた他のロック・グループにはない、僕が知らない大人なコードが出てきて(笑)、それも新鮮でしたね。




──そう言えば、昔、LPレコードを買ったとき、メンバー5人の写真が入ったジャケットをみて“あれっ、なんでベックが2人いるんだろう”と(笑)。

山本:僕も思いましたよ。ドラムのコージー・パウエルがベックにそっくりでしたよね(笑)。



──ロッド・スチュワートやロン・ウッドがいた第1期はいわゆる王道的なロックだったのに対して、第2期はソウルやファンクの要素が入っていて、当時のロックでは珍しかったですよね。

山本:ほんとに。まずボーカルが黒人のボブ・テンチでしょ……がらりと音楽性が変ったよね。

──それが、次のティム・ボガートとカーマイン・アピスと組んだトリオBBAの『ベック・ボガート&アピス』(1973年)はストレートなロックに戻ります。

山本:思い返すと、高校時代は第1期や第2期グループもですが、それ以上にBBAをよく演ってたかな。未だに「迷信」や「スウィート・スウィート・サレンダー」は演ってますしね。あとベックがこのアルバムで初めてトーキング・モジュレーターを使って、あれは何だ?って驚いたりして(笑)。




──9月には第2弾で『ブロウ・バイ・ブロウ』(1975年)と『ワイアード』(1976年)、それに『ライヴ・ワイアー』(1977年)の3タイトルが発売されました。特に前者のスタジオ2作品はベックのインスト路線に舵を切ったターニング・ポイント的なアルバムです。

山本:高校を卒業して、ジャズなども教える音楽の専門学校(ネム音楽院=のちにヤマハ音楽院に改名)に進んだんです。入学式のときに先輩方がホストで新入生と一緒にジャズ・セッションをしようとなり……聞いてたらブルース進行だったので、僕も出来るなとそこに加わって、ギターを歪ませてギュイーンって、それこそジミ・ヘンドリックスばりに弾いたんですよ。そしたら先輩に「俺たちはジャズを演ってるんだ」って怒られて(笑)。なんですが、間もなくドリアン・スケールとかを駆使したジャズ系のプレイとロックが融合した『ブロウ・バイ・ブロウ』が出て、自分は時代を先取りしてたんだ! と思った19歳でした(笑)。で、在学中にBOWWOWで先にメンバーに決まっていた2人(斉藤光浩と新美俊宏)とプロデューサーが僕の演奏を学校に見にくるというわけ。それがオーディションだったんだけど、同校の友達にドラムなんかを頼んで──そうそう、ベースはプリズム渡辺健さんでした。で、ほとんど『ブロウ・バイ・ブロウ』の中の曲を演奏して、結果、BOWWOWへの加入が決まったんです。




──そうだったんですか。次の『ワイアード』はどうですか?

山本:「レッド・ブーツ」とか最初のドラムの始まりからすでにカッコいいし、ジャズ・ベースの巨人チャールズ・ミンガス作の「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」なんか 表現も音色もとても生々しく迫ってくるし、途中からオクタヴィアをかけたり……どんどん、どんどん道を切り開いていくなと感じましたね。


──続いて第3弾は『ゼア・アンド・バック』(1980年)、『フラッシュ』(1985年)、『ギター・ショップ』(1989年)が11月27日に、『クレイジー・レッグス』(1993年)のみ12月18日発売です。

山本:『ゼア・アンド・バック』の「スター・サイクル」はカッコいいよね。その2年前の1978年にアルバムに参加しているトニー・ハイマスとサイモン・フィリップス、そこにスタンリー・クラークの4人で来日したときにベックを初めて生で観たんです。次の『フラッシュ』はロッド・スチュワートが歌った「ピープル・ゲット・レディ」は外せないテイクだし、あと『ギター・ショップ』が発売された時期はちょうどL.A.に半年くらい住んでたタイミングで、カセット・テープで購入して車の中で聴きまくりました。中でも「ウェア・ワー・ユー」は、僕の人生の中でギター・ソロを最初から最後まで頑張って完全コピーした最後の曲なんです。この曲も含めて、とにかくこのアルバムのギターは、エコー等空間系の使い方が素晴らしくて、これまで以上に繊細だけどとてもスケールの大きなサウンドへと変化していきましたね。




──そして、最後となる第4弾は『フー・エルス!』(1999年)、『ユー・ハッド・イット・カミング』(2000年)、『ジェフ』(2003年)が来年1月22日に発売予定です。打ち込みが主体ゆえにデジタル・ロック3部作とも言われてます。

山本:デジタルであってもベックはベックですよね。インド音楽のエッセンスを導入した「ナディア」(『ユー・ハッド・イット・カミング』収録)なんか凄いプレイですよね。デレク・トラックスもそれに影響を受けてインドに傾倒した音楽を演ったりして。

──2023年1月に訃報が届いたときはいかがでしたか?

山本:その前からエドワード・ヴァン・ヘイレン(2020年10月6日没)、ゲイリー・ムーア(2011年2月6日没)と相次いで亡くなって……ベックも含めて、これから彼らが70代や80代になって、例えばどんなブルースを演奏してくれるだろうとか、とても期待していたので残念でなりません。

──改めて恭司さんにとってジェフ・ベックの魅力はどんなところでしょうか?

山本:どんどん新しいアイディアを出してくるし、とにかく最後まで進化を止めなかったよね。右手も途中からピック弾きをやめて完全な指弾きになって、ピック弾きでも指弾きでも唯一無二の世界を作り上げたし、フレージングにしろ、トレモロ・アームの使い方にしろ、ハーモニクス奏法にしろ、本当に我が道を貫いて。しかもそのどれもが個性的で誰にも到達出来ないような美しくスリリングな世界を生み出した……他に類を見ない素晴らしいギタリストでした。



──1月15日のビルボードライブ横浜はどんなステージになりそうでしょうか。

山本:さっきも言ったように「迷信」や「スウィート・スウィート・サレンダー」は今年もやるかもしれません。ネタばれになってしまうかもですけど「スウィート・スウィート・サレンダー」はアカペラで始まります。あと、 ベックの曲を演ってもギター・ソロになれば、当たり前ですけどみんなが自分を出そうとします。するんだけれど、そこには自分では抗うことのできないベックからの影響が入ってるわけですよ。例えば「哀しみの恋人達」(『ブロウ・バイ・ブロウ』に収録)。中には“あのソロは完成されているから、崩して欲しくない”というファンの方がいたり、実際にプロの方でもほぼ完コピーして弾く人をみかけたりもします。でも僕はそうじゃなくて、自分なりにベックやあの曲に対するリスペクトを持ちながら、自分のソロでやりたいわけです。僕らの演奏からそのあたりを感じ取って、そして楽しんでもらえたら嬉しいですね!

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