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<インタビュー>川崎鷹也×武部聡志、オーケストラとの共演で新たな音楽の世界へ
編曲家、音楽プロデューサー武部聡志プロデュースによる、シンガーソングライター川崎鷹也のフルオーケストラ公演【billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】が2025年3月東京、4月兵庫で開催される。このコンサートは2024年6月に行われた【薬師丸ひろ子 Premium Orchestra Concert】に続く武部聡志プロデュースシリーズの第2弾で、松任谷由実の音楽監督を始め、これまで数多くのアーティストのアレンジ、プロデュースを手がけてきた武部が絶賛する川崎の歌声が、フルオーケストラと融合しオーディエンスの心を震わせる。
指揮、編曲は第1弾に引き続き岩城直也が務め、その才能あふれるアレンジで楽曲に新たな息吹を吹き込む。演奏は岩城率いるNaoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)(兵庫はNIPO×大阪交響楽団)。川崎と武部にどんなコンサートになるのかを聞かせてもらった。
(Interview & Text:田中久勝 , Photo:石阪大輔)
曲の底力を認識 オーケストラとの共演について
── 先ほど岩城さんも交えての今回のセットリストや内容を話し合う打合せも同席させていただきましたが、セットリストも意外とスムーズに決まっていって、早くも全体の方向性が見えてきたように感じたのですが。
武部:初めて三人が顔を合わせてのキックオフミーティングような感じだったので、これからもっと練り上げていかなかればいけませんが、 今回はフルオーケストラとのコンサートなので、やっぱり今まで(川崎)鷹也と一緒にやってきたコンサートとは全く違うものになります。 鷹也は去年、僕の45周年記念コンサート(【武部聡志音楽活動45周年プレミアム・オーケストラ・コンサート】/Bunkamuraオーチャードホール)の時に、今回と同じく岩城直也君のアレンジと指揮でバンドとオーケストラをバックに「魔法の絨毯」を歌ってくれましたが、あの時も少し戸惑ってたよね?。
川崎:戸惑いましたね(笑)。
武部:いつもギターを弾きながら歌うことが多いから、特にオーケストラとのコミュニケーションという部分がすごく難しかったのだと思います。
── あの時川崎さんは岩城さんとオーケストラの方を見ながら、ご自身でも指揮をするようにリズムを取っていましたよね?
川崎:そうでしたね。普段、レコーディングやライブ、テレビで演奏する時は僕がリズムを引っ張っているので、そうではない状況で歌わせていただくのが初めての体験で、常に岩城さんを見ながら歌っていました。 しかもあの時はギターも弾いていなくて、そういう機会もあまりないので、マイクだけだとどうしていいかわからなくなるんです(笑)。 でも「魔法の絨毯」を歌った時、岩城さんのアレンジでガラッと変わった雰囲気になっていたので、ファンの方も表情もいつもとは違っていて、驚きもあったと思うしあの曲の新たな部分を僕もお客さんも一緒に体感できたというところは、すごく達成感がありました。
── 武部さんの45周年をお祝いするコンサートであり、大切に歌い続けている「魔法の絨毯」のまた違う一面、表情を感じることができたコンサートでもあったんですね。
川崎:そうでした。あの曲は元々アコギ1本で作った楽曲なので、そこにオーケストレーションや武部さんのピアノが加わることで、「この曲ってこんな表情もするんだ」って改めて思ったと同時に、曲が持つ底力や可能性みたいなものも、あの瞬間に気付くことができました。
正統なポップスを後継するシンガーソングライター 川崎鷹也の魅力
── 川崎さんは武部さんから今回のお話を聞いた時、最初どう受け止めましたか?
川崎:このシリーズの一回目の薬師丸ひろ子さんのステージを観させていただいて、ただただすごいなって思ったし、お客さんも楽しんでいて、僕ももちろん楽しみました。 でも僕があのステージに立つことを想定しながらは観ていなかったので、お話をいただいた時は嬉しい気持ちと、不安な気持ちもありました。 でも2020年にようやくいろんなところに呼んで頂くようになってからの4年間はずっとそんな毎日だったというか、これ大丈夫かな、できるのかなっていう不安を、色々な方に支えてもらいながら消していって、ここまでやってこれたと実感しているので、今回も緊張はすると思います(笑)。 フルオーケストラがどういうものかということを、完全に理解していたわけではありませんが、武部さんがプロデュースして下さるので大丈夫だと思います。
武部:鷹也の声質とクラシックの楽器の相性はいいと思っていました。 ただフルオーケストラの音圧に圧倒されないか心配もありました。そこで若手中心のオーケストラで挑戦するのはどうかと考えたのが今回のコンサートです。
── 武部さんは前回、薬師丸さんとその横綱クラスの名曲たちが、若い岩城さんのアレンジと、やはり若手が揃うオーケストラNIPOの演奏で、どんな化学反応が起こるのか楽しみとおっしゃっていました。 今回は川崎さんと岩城さんとNIPO、若手のコラボをプロデュースすることになります。
武部:新しいムーブメントというのはいつも若い人が起こすので、当然僕らよりも後輩の若い音楽家に期待しているところが大きいです。 それとやっぱり鷹也のことを知らない人に、彼とその音楽を知ってほしいという思いが今回は強いです。 こんな素晴らしいボーカリストがいる、こんなにいい曲があるということを、今まで鷹也のライブを観たことがある人以外の人、クラシック好きでも僕の音楽のファンでもいいし、そういう人に川崎鷹也を体感してもらういい機会だと思っているんです。 ゴージャスなオーケストラのサウンドがその入口になれば嬉しいです。
川崎:ありがとうございます。恐れ多すぎます…。これまで何度か武部さんと一緒にステージに立たせていただいていますが、僕のファンの方の中には、二人で出す音、音楽が好きと言ってくださる方も多いんです。 だから今回は本当に楽しみですし、そこに(岩城)直也さんが参加してくださることでよりゴージャスに、パワフルにもなるのでそこも体感して欲しいです。
── 武部さんは川崎さんのカバーEP『白』(2022)年をプロデュースし、それを携えバンドでのビルボードツアーを行ない、昨年はピアノデュオスタイルでお二人でBillboard Live TOKYOでライブを行ないました。
武部:バンドでライブをやってから、去年ピアノのデュオをやってそこで感じたのは、わずか一年でこんなに成長するんだって驚いて……完全に親目線(笑)。 それだけ色々な場所で色々なお客さんの前で歌ってきたことが経験として確実にプラスになっていることを感じました。 だからピアノデュオの時はどっしり感があったというか、地に足が着いた音楽家になったと感じました。 若いアーティストとの共演は僕にとっても刺激的です。鷹也の勢いや音楽に対する考え方、パフォーマンスなど、全てが新鮮で学ぶことが多いんです。
川崎:ピアノデュオは、武部さんがアドリブを繰り出してくるのがすごく楽しくて。 僕もアコギ一本でやるステージではアドリブをやることが多くて、お客さんの表情を見たり空気感を感じながらステージを作るので、それをビルボードライブというステージで武部さんと2人でできたことが嬉しかったです。 練習してきたものを本番で披露するのではなく、その場でお客さんと一緒になって作っていくあの感覚は、武部さんと2人だったからできたと思うし、どこかヒリヒリした感じというか、緊張感が常にあったあのステージは本当に楽しかったです。
── 武部さんが感じる川崎さんの一番の魅力は?
武部:出会いは2021年にテレビ番組での共演でした。 その時「魔法の絨毯」や「サクラウサギ」を歌っているのを聴いて、すぐにその才能に惚れ込みました。 声質や表現力が唯一無二で、日本の音楽シーンにおいて正統なポップスを後継するシンガーソングライターだと感じました。 声質って本当に大事です。テクニカルな部分は後から身につけられますが、声質や表現力は生まれ持ったものです。鷹也は自分の声の魅力をよく理解し、コントロールして歌うことができるボーカリストです。
── このインタビューを見守ってくださっている岩城直也さんは、川崎さんと昨年共演しましたが、その魅力はどこにあると感じていますか?
岩城:歌声です。もちろん楽曲も素晴らしいですし、歌詞の言葉の選び方も唯一無二だと思いますがそれをどう歌うか、届けるか、表現力も素晴らしいと思います。 歌が“見えてくる”感覚というか…。武部さんも川崎さんの声質をスモーキーと表現していましたが、本当にそこがスペシャルだし、その声質と、歌を届けるんだという意志みたいなもののマリアージュが忘れられないです。
川崎:お二人からそう言っていただけて光栄です。自分の声を活かしながら、常に新しい挑戦を続けていきたいです。
アーティストとしての可能性を広げる オーケストラコンサート
── 先ほど三人での打合せの中でセットリストについて意見を交わしていましたが、川崎さんはご自身でどんなセットリストにしよう、したいなと思って今日の打合せに臨んだんですか?
武部:オリジナル曲はもちろん、カバー曲は鷹也の色合いをそこにどう投影できるかを考えながら選んでいます。 鷹也がギターでリードする曲、オーケストラがリードする曲、僕のピアノがリードする曲、かなりバラエティーに富んだセットリストになるはずです。 そういう意味では色々な川崎鷹也が楽しめるようなコンサートにしたいと思っています。
── 打合せで武部さんから「『君は天然色』はやりたいね」というアイディアが出ていました。
武部:みんなでセットリストを考えていく中で、もう少し明るい曲が欲しいなと思ったのと、オーケストラでやったら素敵だろうなって思ったし、それからは鷹也が他のライブではやらない、 僕か亀田誠治さんと同じステージでしか歌わないという話を聞いていたので、このコンサートでやるべきだと思いました。皆さんも大好きな曲だと思うし、岩城君もこの曲が好きだと言っていたので、これはもうやるしかないなと思って。
川崎:「君は天然色」を松本隆さんのトリビュートアルバム『風街に連れてって!』(2021年)で歌わせていただいてから、色々なところからオファーをいただくようになって。 あのアルバムは亀田誠治さんプロデュースで、武部さんが僕をおしてくれて。人生を変えてくれた曲ですね。お二人への感謝も込めて大事に歌っていきたいんです。 それが僕がカバーを歌わせていただく上でのマナーというか、「君は天然色」を歌って欲しいというリクエストが多かったのですが、お断りしてきました。武部さんと亀田さんがいるところ以外では歌わないということを大切にしてきました。
── このコンサートが川崎さんのキャリアの中でまたひとつ大きな経験になりそうです。
武部:フルオーケストラとのコンサートは、アーティストの音楽人生の中で、いいステップアップのきっかけになってほしいといつも思っています。鷹也にとっても新しい可能性を広げる機会になるはずです。
川崎:僕にとってライブはアウトプットの時間ですが、今回のコンサートはインプットの方が大きくなると思います。 武部さん、岩城さん、そしてオーケストラの皆さんとの共演で得た新しい音楽の可能性を、自分のライブや楽曲制作にも活かしたいです。
── 最後にこのコンサートを楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
武部:川崎鷹也の素晴らしさを、より多くの人に知ってもらいたいと思っています。鷹也の歌声とオーケストラが重なってどのように響き渡るか、とても楽しみです。 クラシックファンの方も、ポップスファンの方もぜひ会場に足を運んでいただき、新しい音楽体験を味わっていただきたいです。
川崎:いつも応援してくださっているファンの皆さん、そして初めて僕の歌を聴きに来てくださる方々、このコンサートを通じて新しい音楽の世界を一緒に体験できることを楽しみにしています。 武部さんと岩城さんのアレンジで、僕の楽曲がどのように生まれ変わるのか、僕自身もとてもワクワクしています。素敵な時間を一緒に過ごしましょう。
公演情報
billboard classics 「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~ produced by 武部聡志
2025年3月31日(月) 東京・すみだトリフォニーホール 大ホールOPEN 18:00 / START 19:00
2025年4月3日(木) 兵庫・ 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 18:15 / START 19:00
出演:川崎鷹也
ピアノ:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
管弦楽:
【東京】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)
【兵庫】NIPO×大阪交響楽団
チケット:
11,000円(税込)
※全席指定、未就学児入場不可
(全席指定・税込)
チケット販売スケジュール:
プレイガイド先行(抽選):2024年12月15日(日)12:00~
一般発売(先着):2024年12月25日(水)10:00~
公演公式サイト:https://billboard-cc.com/kawasakiXtakebe
公演に関するお問合せ:
【東京】キョードー東京 0570-550-799(11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)
【兵庫】キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休)
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