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ベートーヴェン~第九特集

ベートーヴェン~第九特集

 日本では、12月になると各地でベートーヴェンの第九が演奏され、近年では参加型の第九コンサートも人気を博している。今まで聴いたことがない方へ、第九の魅力をお届けする。

ベートーヴェン第九の人気の秘密

 もともとオペラの序曲という意味合いしかなかった交響曲だが、ハイドンによって交響曲の形式が確立され、古典派以降 数多くの作品が誕生した。

 ハイドンは104曲もの交響曲を遺し、モーツァルトは41曲。そんな中、ベートーヴェンは9曲。それまで作曲家というものが、宮廷に依頼されて数多く曲を書くという存在だったのを、作曲活動とは自己表現、自己実現の一つであり、高い芸術性を持ったものであるという流れに変えたのがベートーヴェンだと言われている。短いフレーズを何度も繰り返し、緻密に組み立てられた建造物ともいうべき作品は、今も色褪せることなく斬新なアイディアに満ちている。中でも交響曲に声楽を取り入れた点や、トロンボーンやピッコロという新しい楽器を取り入れたという点など、第九の果たした役割は大きい。

日本で年末に第九が演奏されるわけ

 そもそも合唱団、ソリスト、オーケストラと構成人数が多い第九は、世界を見渡しても、さほど演奏機会は多くなく、それはベートーヴェンの母国であるドイツも同様である。 だがそんな中、日本で年末=第九が定着した理由は、出演者数の多さ。集客に悩んだ交響楽団が、「出演者数が多いとその家族や友人などが聴きにきてくれて、お客様も増えるのではないか」と考えたのが発端であると言われている。曲調も華やかで、歓喜の歌と別名が付けられるほど歌詞の内容も新年にふさわしいことから、日本中のコンサートホールに浸透し現在に至っている。

第二次世界大戦後と第九

『ベートーヴェン:交響曲選集』
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 歴史的名盤として名高いのがフルトヴェングラー指揮による1951年バイロイト祝祭ライブ録音盤。そもそもバイロイト祝祭劇場は、作曲家ワーグナーの作品を上映するためだけに作られたが、唯一 ワーグナー以外で演奏が許されているのがベートーヴェンの第九である。フルトヴェングラーが初めてバイロイト祝祭劇場で指揮をしたのが1931年。その後、第二次世界大戦の影響で本祝祭は中止せざるを得なくなる。戦時中のフルトヴェングラーは音楽の伝統を守るため亡命することなくナチスドイツにとどまり続け、またヒトラーがフルトヴェングラーの指揮を敬愛していたこともあり、終戦後、ナチス協力者として演奏禁止処分を受ける。その後の裁判で、無罪判決を得て音楽界へ復帰し、またバイロイト祝祭も晴れて再開されることになった再開記念演奏が、本録音である。無音に限りなく近い弱音から始まった第一楽章に、走り抜けるかのような第二楽章。第四楽章では、感情を爆発させたかのような歓喜の歌。どんな思いで彼が指揮をし、観客は耳を傾けていたのか。第九を知る上ではかかせない作品。

ベルリンの壁崩壊記念コンサート

『ベートヴェン:交響曲第九番~ベルリンの壁記念コンサート~』
ベートヴェン:交響曲第九
~ベルリンの壁記念コンサート~

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 大きな歴史の節目に立ち会ったという意味では欠かせないもう一枚がベルリンの壁崩壊直後の1989年12月25日に行われた記念コンサートでのライブ録音。指揮はレナード・バーンスタインで、オーケストラはバイエルン放送交響楽団を中心に、東西ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連による混成メンバーで結成された。第四楽章の合唱歌詞「Freude=歓び」を「Freiheit=自由」に置き換えて演奏され、衝撃を呼んだ。

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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー バイロイト祝祭管弦楽団 バイロイト祝祭合唱団 グレ・ブラウエンスタイン イーラ・マラニウク ヴォルフガンク・ヴィントガッセン ルートヴィヒ・ウェーバー ヴィルヘルム・ピッツ「ベートーヴェン:交響曲第9番≪合唱つき≫」

ベートーヴェン:交響曲第9番≪合唱つき≫

2012/12/26 RELEASE
KICC-1053 ¥ 3,143(税込)

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Disc01
  1. 01.交響曲第9番 ニ短調 Op.125≪合唱つき≫ 第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ (モノラル)
  2. 02.交響曲第9番 ニ短調 Op.125≪合唱つき≫ 第2楽章:モルト・ヴィヴァーチェ (モノラル)
  3. 03.交響曲第9番 ニ短調 Op.125≪合唱つき≫ 第3楽章:アダージョ・モルト・エ・カンタービレ (モノラル)
  4. 04.交響曲第9番 ニ短調 Op.125≪合唱つき≫ 第4楽章:プレスト-レシタティーヴ おお友よ、これらの音ではなくて-歓喜よ美しい神の閃光 (モノラル)

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