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<コラム>Creepy Nuts/櫻坂46/yamaら、【Clockenflap 2024】に出演した日本のアーティスト7組の現地ストリーミング再生回数の推移を考察【STREAMING WATCH】
アーティストの海外公演やイベンドがストリーミング再生数に与える影響を考察するシリーズ“STREAMING WATCH”。第1弾は、現地時間11月29日~12月1日、香港 セントラル・ハーバーフロントにて開催された香港最大級の音楽フェス【Clockenflap 2024】に出演した日本のアーティスト7組(ena mori、Creepy Nuts、Cody・Lee(李)、櫻坂46、TURTLE ISLAND、toe、yama)の、出演前後における現地でのストリーミング再生回数の変化を考察する。
グローバルな音楽データ分析ツール「CONNECT」を使用し、各アーティストの香港におけるストリーミングデイリー再生回数(集計期間:2024年11月15日~12月5日)を抽出した。各アーティスト間に実数の差があるため、集計開始日である11月15日の再生回数を基準にし、その変化率の推移をまとめた。
まず、Creepy Nuts、櫻坂46、yamaの再生回数の推移は以下の通り。
Creepy Nutsは元々相対的に高い再生回数を記録している影響か、出演日(11月29日)に約14%増を記録し、それ以外はほぼ横ばいの結果となった。yamaは出演日(12月1日)に約39%増を実現し、その後の約1週間もフェス開催前を上回る再生回数を保ち続けている。
櫻坂46は現地メディア露出の影響か、フェス開催前の11月25日から再生回数が増加傾向にあった。出演当日の30日にはピークとなる108%増を記録し、その後は減少したものの、フェス開催前よりも約50%以上多い再生回数を維持している。
興味深いことに、櫻坂46は11月23日・24日に千葉・ZOZOマリンスタジアムで【4th YEAR ANNIVERSARY LIVE】を開催していた。同公演期間中、日本での再生回数が増加した一方で、香港では約10%減少した。また、韓国、台湾、インドネシア、フィリピンなど日本周辺の各国/地域でも同様の微減傾向が見られた。同公演では海外ファン向けにチケット販売を行っていたことを考えると、この2日間における海外での再生回数の減少は、海外ファンが来日したことが原因ではないかという仮説が立てられるだろう。
上述の3組よりも高い増加率を示したのは、ena mori、Cody・Lee(李)、toeの3組だ。ena moriは出演前と比べて最大約8.3倍の再生回数を記録し、Cody・Lee(李)は約6.1倍、toeは約5.5倍という結果となった。これら3組はフェス後も約2倍以上の再生回数を確保している。
7組の中でも異例とも呼べる爆発的な増加を記録したのはTURTLE ISLAND。下記の図が示す通り、出演日である11月30日に出演前と比べて約29.6倍の再生回数を記録し、その後も約3倍以上を維持し続けている。
最後に、比較対象として【Clockenflap 2024】各日のヘッドライナーであるエール、セントラル・シー、ジャック・ホワイトの再生回数の推移を見ていく。
エールとジャック・ホワイトは最大で約6倍以上の増加を記録し、フェス後も微増傾向を維持している。一方、セントラル・シーは爆発的な増加こそ見られなかったものの(最大約92%増)、フェス後の下降幅が小さく、約50%増をキープしている。
今回の【Clockenflap 2024】における日本のアーティスト7組とヘッドライナーのストリーミング再生回数の推移を比較することで、現地でのライブ・パフォーマンスがリスナー層の拡大や再生回数に与える影響が明らかになった。特に、TURTLE ISLANDやena mori、Cody・Lee(李)のような爆発的な増加は、新規リスナーの獲得に直結する現象と考えられるだろう。一方で、Creepy Nutsや櫻坂46のように、元々現地で比較的高い知名度を持つアーティストは安定した再生数を維持しながらも、メディア露出や現地ファンの動向がさらなる影響を与えていることも興味深い。
しかし、実数や全体のシェアから見れば、日本のアーティストの海外での再生回数はまだ成長の余地が大きい。フェス出演の勢いを維持し、継続的に再生回数をキープすることが、日本のアーティストの今後の課題となるだろう。今後、本シリーズ“STREAMING WATCH”では、引き続きストリーミング成長の要因を考察していく。
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