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<インタビュー>JABBERLOOP MELTEN&MAKOTO×bohemianvoodoo 木村イオリ&山本拓矢 公演開催記念座談会

インタビューバナー

Interview & Text: 森朋之 / Photo: Shintaro Oki(fort)

 JABBERLOOPとbohemianvoodoo。00年代からインストバンド・シーンで活躍している両バンドが、2025年新春、ビルボードライブ横浜に登場する。

 ビルボードライブ横浜に初登場となるJABBERLOOPの公演は1月5日。ベストアルバム『NOW』のツアー・ファイナルだ。そしてbohemianvoodooは1月13日に【New Year concert2025】と銘打ったスペシャル・ライブを行う。

 2つの公演に先がけ、JABBERLOOPのMELTEN(Key.)、MAKOTO(Tp.)、bohemianvoodooの木村イオリ(Pf. / Key.)、山本拓矢(Dr.)の座談会をセッティング。お互いのキャリアや音楽観、ビルボードライブ横浜での公演に向けた意気込みなどを語り合ってもらった。

――JABBERLOOPとbohemianvoodooの交流が始まったのはいつ頃でしょう?

MAKOTO:だいぶ昔だよね。

MELTEN:そうだね。イオリ(木村)とbashiry(bohemianvoodoo)は、JABBERLOOPが横浜の小さいクラブでやってたときから来てくれてて。たぶん行きつけのクラブだったからだと思うんですけど。

木村イオリ:長者町のBar MOVEですね。たぶん18年くらい前で、bohemianvoodooを結成する前です。

MELTEN:拓ちゃん(山本拓矢)は途中加入なので後から知り合ったんですけど、ボヘの他の3人は結成前からつながりがありますね。

山本拓矢:僕は世代的に少し下なので、(プレイヤーとして)現場に出る前にライブをよく見てたんですよ。SOIL&“PIMP”SESSIONSやgrooveline、urb などもそうですけど、JABBERLOOPは同じようなシーンから出てきた印象があって。

MELTEN:だいぶ恐れ多いですけど、京都から東京に出てきた頃は確かにgroovelineとよく一緒にやってましたね。

山本:MELTENさんの演奏を初めて聴いたのは、渋谷PLUGの夜中のセッションだったんですよ。当時は金髪だったんですが……

MELTEN:ハハハ(笑)

MAKOTO:PLUGで月に2回、オールナイトのセッションをやってたんですよ。たぶん2007年とか2008年くらいかな。

MELTEN:そうそう、ジャズファンクとかクラブジャズのシーンというか。

MAKOTO:「そのあたりのジャンルでやろうと思ったら、あのセッションには顔を出しておいたほうがいいよ」っていう。その界隈の人たちが集結していたし、そこでいろいろと刺激や情報を得ていました。

MELTEN:PLUGかThe Roomでしたね、当時は。そうか、あのとき拓ちゃんも観てたんだ。

山本:はい。僕はまだ学生だったので、JABBERLOOPは「先にデビューしている大先輩」という感じでした。その頃はエレクトロニカだったり、クラブミュージック志向で、こっちのシーンにくるとは思ってなくて。接点を持ててよかったです。


――木村さんはJABBERLOOPに対してどんな印象を持っていたんですか?

木村:さっきも言ったように、初めてJABBERLLOOPを見たのはbohemianvoodooを始める前で。ジャズという音楽を軸にして、これだけ人を踊らせて盛り上げてるバンドがいるんだ? すげえな、と思ってましたね。自分もこういう感じでやってみたいというのもありました。

MAKOTO:おぉ。

MELTEN:普段こういう話をすることもないので、なかなか恥ずかしいですね(笑)

MAKOTO:最初の頃はライブハウスよりクラブで演奏するのがずっと多かったんですよ。クラブに通い詰めていたわけではないし、メンバーそれぞれに音楽のルーツがあるんですけど、踊らせる音楽をやりたいと思っていて。クラブって、お客さんとの壁がないんですよ。ステージもないし、同じ高さで演奏することを楽しみながら、クラブカルチャーを吸収してパフォーマンスにつなげられたらなと。SOILみたいなすごいバンドもいたし、この流れのなかで自分たちも表に出られないかなというのは考えてましたね。

MELTEN:SLEEP WALKERもそうですけど、MONDO GROSSOのメンバーがやってるバンドは別格でしたけどね。SOILはロックフェスに出たり、quasimodeは王道のクラブジャズという感じだったり。そんななかでどう個性を出していくか、日々考えながら活動していた時期ですね。レコーディングのときもクラブミュージックの音源を参考にして、あえてバンドらしくないアレンジにしたり。

MAKOTO:U.F.O.(United Future Organization)とかを研究したりね。ライブのときもDJみたいに曲をつなぎたくて、“つなぎしろ”を入れたりもしてました。

――なるほど。MAKOTOさん、MELTENさんは、bohemianvoodooに対してどんなイメーがありましたか?

MAKOTO:最初からすごく好きですね。アルバムを出すごとにブラッシュアップされているんだけど、ブレてないところもしっかりあって。それは尊敬に値するところだなと思ってます。

MELTEN:自分たちも初期の頃から“メロディ”というキーワードがよく出てくるんですが、メロディを重視しているバンドというのは、ボヘとの共通点なのかなと。ボヘのメロディはすごくドラマティックだし、クラブジャズのフォーマットに捉われてないというか、時代の移り変わりをしっかり捉えているのもすごくいいなと思います。あとはbashiryのギターですよね。当時はギタリストがいるバンドが少なかったし、それがボヘのサウンドを象徴しているのかなと。特にガットギターですね。

MAKOTO:哀愁というか、メランコリックな感じがあるからね。


――木村さん、山本さんはbohemianvoodooの音楽的なコア、変わらない部分をどう捉えているでしょう?

木村:まずはドラム、ベース、ギター、ピアノないしキーボードという編成ですよね。ギターかピアノがメロディを取るというのも軸になっているのかなと。そこを守ろうとしているわけではないんですが、自然とそうなっています。

――昨年リリースされたアルバム『CROSSING』も多彩なバンドサウンドとメロディラインを堪能できる作品です。

MELTEN:そうですよね。日本語のタイトルの曲(「華火夜景」「雨晴」)は日本らしいメロディで、これまでのbohemianvoodooにはなかった感じなのかなと。他にもポストロック的なサウンドの曲もあったり、楽曲構成やミキシングを含め、いろいろな面が出ているアルバムだと思いますね。

MAKOTO:自分も「華火夜景」が印象的に残ってますね。メロディはもちろん、ビートがすごく気持ちよくて、新しいボヘを感じました。他にも新しいなと感じる曲がありましたけど、やっぱりボヘらしさもしっかりあって。

MELTEN:イオリのピアノ、拓ちゃんのドラムもそうですけど、音から人間性が伝わってくるのもいいですね。


――代表曲の一つ「Cradle」のセルフカバーも収録。bohemianvoodooにとっても大事な曲ですよね?

木村:全曲大事なんですけど(笑)、「Cradle」はずっと演奏してますからね。あまり演奏しなくなる曲もあるので、そういう意味では特別な曲なのかもしれないです。長く演奏してきたなかでプレイやアレンジも変わってきてるので、(『CROSSING』に収録されたバージョンも)面白い感じになってるんじゃないかなと。

山本:「Cradle」の原曲のテイクは僕ではないので、加入した最初の頃は完全に再現しようという感じがあって。しばらく経ってから、そろそろいいかな、と……。



――ドラマーとしての個性を出すようになった?

山本:というより、こういう解釈もあるかな?というくらいですね。前提として、演奏にエゴを出さないというのがあるので。

MAKOTO:名言ですね。

MELTEN:確かに我を通すようなプレイはしないけど、拓ちゃんのドラムはすごく存在感があって。曲に惹きつけられるんですよね。

MAKOTO:そう、すごく曲が入ってくるんですよ。

MELTEN:曲の理想の形が共有できてるんでしょうね。話し合っているというより、意識のなかでそれができているのを感じる。

木村:話し合いはまったくしないですね(笑) 自然とそうなっているんだと思います。


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――そしてJABBERLOOPは今年、ベストアルバム『NOW』を発表。代表曲の再録を中心にした作品ですが、原曲と変化している部分もかなりあるのでは?

MAKOTO:そうですね。オリジナルの音源を録ったときも(曲を)一生懸命に身体に入れようとしていたんですが、ライブで演奏するなかで自然と変わってきて。自分を含めてメンバーのプレイもかなり違っているし、そこを含めて、まさに“今”を閉じ込めたアルバムだと思います。レコーディングもスムーズでしたね。やり慣れているのもあるし、気負いなく演奏できたので。

MELTEN:アプローチは曲によって違うんですけどね。レコーディングのために結構アレンジを変えた曲もあるし、「シロクマ」などは「変える必要はないかな」と。作ったのはだいぶ前だし、今演奏すれば原曲との違いは勝手に出るんじゃないかと思ったんですよ。ドラムもサポートドラマーの橋本現輝ですからね。

木村:「シロクマ」の変えてほしくないですね(笑) あのアレンジで覚えてしまってるので。JABBERLOOPは海外のライブが多いですけど、向こうのお客さんもめっちゃ踊ってるじゃないですか。

MAKOTO:そうなんだけど、ずっと同じアレンジでやってると「このままストレートに勝負するのも芸がないかな」と思うこともあって。

MELTEN:「シロクマ」のBPMは146なんですが、「一つ落として、145でやってみよう」とか(笑) そうすると、やっぱりノリが出ないんですよ。

山本:なるほど(笑)

木村:20年分の積み重ねがありますからね。


――いろいろなトライ&エラーを繰り返しているんですね。

MAKOTO:そうですね。いろいろやりましたね(笑)

MELTEN:『NOW』でいうと、唯一の新曲「Another Sky」でも新しいことを試していて。

山本:ギターが入ってますよね。

MELTEN:そう、橋本孝太に弾いてもらったんですよ。昔はシミュレーション的にギターを入れても「なんか違うな」という感じだったんだけど、今はしっかりやれるようになって。

MAKOTO:「Another Sky」はMELTENが主導してくれたんだけど、「ビジョンがあるんだったら、どうぞ」という感じでしたね。そこはメンバーを信じるというか、議論するよりもどんどん前に行こうと。

MELTEN:作ってるときはメンバーの反応がイマイチだったんですけどね(笑) 自分としてはかなり自信があったから、「あれ?」っていう。完成したときに「すごくバケたね」と言ってくれたし、ライブでもほぼ毎回やってます。

MAKOTO:途中の段階では「音が足りなくない?」みたいに思ってたんですよ。ギターが入って、ミックスの段階で「こういうことか」と。

MELTEN:20周年記念アルバムを謳ってるし、新曲を入れないわけにもいかないですからね。


――bohemianvoodooの制作はどんな感じで進むことが多いですか? もちろん試行錯誤もあると思いますが。

木村:そうですね。1曲作るのにかなり時間がかかるんですよ。なかには2~3か月かかる曲もあって。

山本:ありますね。納得いかないとお蔵入りになりますし。

MAKOTO:メインで曲を作ってるのは?

木村:俺かbashiryが多いですね。デモ音源を作るんですけど、そこからみんなで捏ねる時間があって。

MAKOTO:バンドらしいね。

MELTEN:アレンジやディレクションできるメンバーがいるけど、そのうえでバンド的な作り方もやっている。すごくいいなと思うし、リスペクトですね。

――セッションを繰り返しながら、楽曲が完成するタイミングはどうやって見極めるんですか?

木村:それはもう自然と。全員が同じタイミングで来るんですよね。

山本:言葉にするわけではないんですけど、「今のテイクは良かった」という。

MELTELN:いちいち口に出さなくてもわかる。

木村:そうですね。ある程度仕上がってくると「次のライブでやってみようか」ということもあるし。

山本:なのでレコーディングの段階ではかなりできあがってる状態になっていて。

MAKOTO:なるほど。そこは自分たちとは違うかもね。

木村:4人とも演奏にエゴを出さないバンドだから、アンサンブルがしっかりしていないと成立しないんですよ。

MAKOTO:それが曲としての完成度につながってるんだろうね。

MELTEN:ボヘのライブは圧倒的な安定感があるけど、曲作りの段階でしっかり構築されてるんですね。

山本:自分たちのやり方もあるかもしれないけど、シーン全体の流れもあると思うんですよね。Souliveをすごく聴いてた時期があるんですけど……

MAKOTO:ジャムバンド・ブーム中核のひとつだよね。

山本:彼らも以前は長めのソロ演奏を取り入れてたんですけど、「長いソロをやる必要がなくなってきた」みたいなことを言ってて。アレンジと演奏の関係も変化しているし、自分たちもその流れのなかにあるのかなと。

木村:確かに最初のミニアルバム『bohemian bazaar』(2008年)はソロが長いかも。でも、だんだんとエゴが削れて、アンサンブルを重視するようになってきたんでしょうね。

山本:それはたぶん、歴史的に繰り返されていることでもあると思うんですよ。バップがあって、ビバップがあって、クールジャズがあって……という流れを自然と繰り返しているんじゃないかなと。最近の若い世代はテクニックが加速しているから、またプレイヤーの時代が来るかもしれないと思ったりもします。

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――JABBERLOOP、bohemianvoodooは2025年1月にビルボードライブ横浜でそれぞれ単独公演を行います。JABBERLOOPの公演は1月5日。アルバム『NOW』を引っ提げたツアー・ファイナルですね。

MAKOTO:ビルボードライブ横浜のライブは今回が初めてで。『NOW』のツアーのなかで唯一の着席の会場なので、自ずとセットリストも変わってくるのかなと思ってます。

MELTEN:海外のライブが多いんですけど、『NOW』の収録曲をかなり演奏しているんですよ。極論、『NOW』の曲だけで強い打線を組めるくらいの手ごたえがあって。

MAKOTO:『NOW』の収録曲は座りの会場にも合うんですよね。さっき「ソロ演奏が短くなってる」という話がありましたけど、曲によっては尺を決めず、会場の高まりやお客さんの雰囲気によって、ある程度自由に演奏するところもあって。それは自分たちの楽しみでもあるんですよね。

MELTEN:熱量によって「行くときは行く」という感じもあるので。メンバーの誰かがフィーチャーされる場面もあると思います。

MAKOTO:誰かをフィーチャーすることで、他のメンバーの演奏も輝きはじめるんですよ。アンサンブルや決まりごとも大事ですけど、決まりごとを取っ払ったときの自由さだったり、そこで出てくるプレイもあるので。もちろんお客さんにも楽しんでほしいし、唯一無二の空間を作れたらなと思ってます。

――年明け早々の公演ですからね。

MELTEN:景気よくやりたいです(笑) ツアーファイナルですけど、2025年のスタートでもあるので。

――そしてbohemianvoodooの公演は1月13日。タイトルは“New Year concert2025”です。

山本:ビルボードライブ横浜は開業直後から定期的に出させてもらっているんですよ。「この会場だから来ました」というお客さんもいらっしゃるし、あの場所だからやれることもあると思っていて。僕らも楽しみですね。

木村:前回のビルボードライブ横浜公演は、アルバム『Aromatic』リリース10周年記念ライブで、その前はアルバム『CROSSING』のリリースライブだったんですよ。今回はベストアルバム的なセットリストになるんじゃないかと思ってます。新しい曲にもトライしているので、聴き応えのあるライブになるんじゃないかなと。


――新曲が聴けるのは本当に楽しみです! 新作の制作も始まってるんですか?

山本:リリースの予定を決めてから作ることはあまりないんですよ。曲ができてきて、「そろそろ出す?」という感じなので。

MAKOTO:でも、曲は作ってるんですよね?

木村:そうですね。さっきの話じゃないですけど、「ライブでやってみようか」という曲もあるので。出し方は決まってないですけどね。アルバムではなくて、配信で1曲出すかもしれないし、まだわからないです(笑)

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