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Billboard JAPAN 2024年年間チャート発表、Creepy Nuts/Snow Man/Mrs. GREEN APPLEが首位
ビルボードジャパンの2024年年間チャートが決定した。本特集では総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”、総合アルバム・チャート“Hot Albums”、“JAPAN Hot 100”と“Hot Albums”のポイントを合算したアーティスト・チャート“Artist 100”、そして昨年9月に発表開始となった世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”などの年間チャートを解説とともに発表する。
日本のアーティストの海外進出が進む中、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今回年間チャートとしては初公表となる、日本を除く世界200以上の国々で聴かれている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”を含む12冠を達成。
そして、ダウンロード数を集計したアルバム・チャート“Download Albums”ではNumber_i『No.O -ring-』、急上昇中のアーティストを抽出した新人チャート“HeatSeekers Songs”ではこっちのけんと「はいよろこんで」、“ニコニコ動画”上におけるVOCALOID曲の人気を測るチャート“ニコニコ VOCALOID SONGS”では吉田夜世「オーバーライド」がそれぞれ首位を獲得した。
※集計期間:2023年11月27日(月)~2024年11月24日(日)
▲ 「Bling-Bang-Bang-Born」×TV Anime「マッシュル-MASHLE-」Collaboration Music Video / Creepy Nuts
2024年の年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が首位を獲得した。
本楽曲はTVアニメ『マッシュル-MASHLE-神覚者候補選抜試験編』のオープニング・テーマ。2024年1月7日にリリースされると、1月31日公開チャートで首位を獲得し週間チャートで13連覇、通算19回の首位を獲得した。各指標別の順位は、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画が首位、カラオケは2位という結果に。他を寄せ付けない圧倒的な強さで2024年を制した。また、2024年の年間チャートでは“JAPAN Hot 100”以外に、“Download Songs”、“Streaming Songs”、“Hot Animation”、“Top User Generated Songs”の他、世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”など計12のチャートで首位に。2023年の年間チャートを制したYOASOBI「アイドル」と同様に、国内外でのヒットを達成した。そのほか、Creepy Nutsはドラマ『不適切にもほどがある!』の主題歌である「二度寝」が59位、アニメ『ダンダダン』の主題歌「オトノケ」が92位にチャートイン。「オトノケ」は10月4日に配信リリースされたばかりだが、8回のチャートインで年間100位圏内に食い込んだ。
続く2位はtuki.「晩餐歌」。当時中学生だったtuki.が自身初のデジタルシングルとして9月29日にリリースした楽曲で、10月11日に14位で“JAPAN Hot 100”に初登場した。その後も、ストリーミングを中心にポイントを増加させ、2024年1月24日公開チャートで総合首位を獲得、1年間52週にわたってトップ25位以内を守り続けた。
▲ 「幾億光年」MV / Omoinotake
そして3位はOmoinotake「幾億光年」。ドラマ『Eye Love You』の主題歌で、1月24日に配信がスタートすると1月31日に“JAPAN Hot 100”で98位に初登場。ドラマの放送が進むにつれて、13位→13位→8位→7位と少しずつ順位を上げ、4月3日と10日公開チャートで2週連続2位を獲得した。毎週の“JAPAN Hot 100”で首位を獲得することはなかったが、放送終了後も8月末までトップ10を維持し、年間ではダウンロード6位、ストリーミング3位、ラジオ2位、動画10位を獲得した。
2024年の特徴の一つはトップ10に今年の楽曲が増えたことだ。昨年は、トップ10内に2023年リリースの楽曲はYOASOBI「アイドル」とスピッツ「美しい鰭」の2曲だったが、2024年はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、Omoinotake「幾億光年」、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」の3曲に増加。週間で500万回、1,000万回を超えた楽曲を過去3年間で比較すると以下の通りとなりストリーミング市場の成長が感じられる結果になった。
◎週間で500万回を超えた曲数
2022年 74曲(のべ589回)
2023年 72曲(のべ584回)
2024年 72曲(のべ664回)
◎週間で1,000万回を超えた回数
2022年 13曲(のべ40回)
2023年 7曲(のべ62回)
2024年 8曲(のべ69回)
※カッコ内は、同一曲が複数週達成した場合の、のべ回数(例:楽曲Aが5週達成した場合は5回とカウント)
もう一つの大きな特徴として、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」はアメリカが先にヒットしたことが挙げられるだろう。「Bling-Bang-Bang-Born」がリリースされてから現在に至るまで、どの国で視聴されたかを見てみると、最も多いのが日本で約60%、次がUSで約7%、韓国が約3%となっている(ルミネイト調べ)。そして、それぞれの国で最もストリーミング数が多かった日付を調べると日本は3月8日、USが1月23日、韓国が1月25日と日本以外のほうがピークが早かった。日本でのヒットが海外に広がったのではなく、海外で先にヒットし、それらが日本でも報じられて、日本国内におけるストリーミング数のピークが継続するという効果が見られた。その結果、Creepy Nutsのストリーミング数は、国内外の合計で3.6億回(2023年)から21.2億回(2024年)へと大きく増加。日本国内の再生数も 3.2億から14.1億と約7倍に増えたが、日本をのぞく世界での再生数も4,400万から7億という成長を見せた(ルミネイト調べ)。
日本の楽曲の注目度が上がり、同タイミングで世界中が盛り上がるようになった2024年。さらに2025年5月には、【Music Awards JAPAN】の開催も予定されており、より多くのアーティストが世界へと広がることを期待したい。
Text by 高嶋直子
- 2024年 年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”
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1位Bling-Bang-Bang-BornCreepy Nuts
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2位晩餐歌tuki.
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3位幾億光年Omoinotake
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4位アイドルYOASOBI
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5位ライラックMrs. GREEN APPLE
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6位ケセラセラMrs. GREEN APPLE
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7位唱Ado
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8位怪獣の花唄Vaundy
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9位青と夏Mrs. GREEN APPLE
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10位ダンスホールMrs. GREEN APPLE
インタビュー抜粋
「俺らも音楽で生活できるようになった!」みたいな気持ちがまだあるくらいなんで、世界で聴いてもらえる曲を作る予定ではまったくなかった。ほんまに、自分たちの“吐き出したいもの”とか、自分らの“溜め込んだ表現の解放”なんです。(R-指定)
また音楽に特化したような生活の仕方に戻った今となっては、前くらいの“無責任さ”みたいなのが戻ってきてるなっていう感じはありますね。よくないものはよくないまま表現して。その勇気も、いま一度持てた感じがする。(DJ松永)
▲ 「One」MV / Snow Man
2024年の年間Billboard JAPAN総合アルバム・チャート“Hot Albums”で、Snow Manの『RAYS』が首位を獲得した。
Snow Manの4thアルバムとなる『RAYS』は、初週にCDセールス1,106,693枚を記録。3rdアルバム『i DO ME』に続いて、初週でミリオンを突破した2作目のアルバムとなり、自己最多のアルバム初週セールスも達成した。また、2ndアルバム『Snow Labo. S2』は、2022年の本チャートで首位を獲得しており、Snow Manにとって今回が2回目の首位獲得となっている。集計期間内において、CDセールスでミリオンを突破したのは本作のみとなっており、堂々の年間総合アルバム・チャート首位となった。
▲ 「米津玄師 6th Album「LOST CORNER」クロスフェード」
総合2位にチャートインしたのは、米津玄師『LOST CORNER』。CDセールス508,846枚で5位、ダウンロード数33,267DLで3位を獲得している。本作は、8月21日にリリース後、2024年8月28日公開(集計期間:2024年8月19日~8月25日)の総合アルバム・チャート“Hot Albums”で二冠を達成して1位に登場。その後もCDセールスは8週、ダウンロードは11週連続でトップ10をキープしていた。要因としては、テレビ番組で特集が組まれたり、収録楽曲についての対談が放送されたこと、新曲「Azalea」がリリースされたことなど、話題が続いたことが挙げられるだろう。なお、米津は、2024年の年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”に「さよーならまたいつか!」(21位)、「KICK BACK」(56位)、「Lemon」(63位)と3曲を送り込んだ。
K-POPアーティストによるトップ20の作品を見ると、2020年3作品、2021年6作品、2022年5作品、2023年11作品と、増加気味の傾向だったが、2024年は8作品と減少。一方で、SEVENTEENは『17 IS RIGHT HERE』(3位)、『SPILL THE FEELS』(5位)、『SEVENTEENTH HEAVEN』(13位)と3作品をチャートインさせている。2023年にコロナ禍があけ、ライブ・エンタテインメントが活況を迎えており、来日公演も増えている昨今。そんな状況の中でSEVENTEENは、ファンダムが活性化していると考えられる。
今回、『No.Ⅰ』『No.O -ring-』と2作品がトップ10にチャートインしているNumber_iの存在感も大きい。Number_iの強さは、CDセールス、ダウンロード数共に多いことだ。実際に、アルバム『No.Ⅰ』がCDセールス8位、ダウンロード4位で総合6位、ミニアルバム『No.O -ring-』がCDセールス14位、ダウンロード1位で総合8位となっている。そして、「GOAT」「BON」は、総合ソング・チャートでトップ100にチャートイン。『第75回NHK紅白歌合戦』の初出場を掴んだのも頷ける成果だ。
宇多田ヒカルのベスト・アルバム『SCIENCE FICTION』は9位にチャートイン。宇多田は、過去の本チャートにおいて、2016年以降にリリースされたオリジナルアルバムが全てトップ20にチャートインしている。今回、トップ20で20年以上のキャリアを持つアーティストは、宇多田ヒカルのみだ。『SCIENCE FICTION』はCDセールス328,496枚で13位、ダウンロード数33,752DLで2位と高順位であることから、安定した支持率を持っていることが伺える。
計52週の集計となった2024年の年間チャート。トップ100のうち92作品が集計期間内に発売された作品だった。そんな中、集計期間外にリリースされたMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』(38位)のチャートイン回数は、最多の52回となっている。その他にも、YOASOBI『THE BOOK 3』(55位)、Vaundy『replica』(78位)など、集計期間外にリリースされた作品のチャートイン回数も多く、継続的にポイントを積み重ねて、ロングヒットに繋がった。
Text by Tatsuya Tanami
- 2024年 年間Billboard JAPAN総合アルバム・チャート“Hot Albums”
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1位RAYSSnow Man
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2位LOST CORNER米津玄師
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3位17 IS RIGHT HERESEVENTEEN
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4位THE VIBESSixTONES
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5位SPILL THE FEELSSEVENTEEN
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6位No.ⅠNumber_i
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7位GIANTStray Kids
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8位No.O -ring-Number_i
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9位SCIENCE FICTION宇多田ヒカル
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10位+Alphaなにわ男子
コメント
この度はSnow Manの4th Album『RAYS』がBillboard JAPAN Hot Albums of the Year 2024を受賞させていただき、大変嬉しく思います。
自分達の作品を受け取っていただき、音楽に触れてくださったみなさま、また制作に関わっていただいた心強いスタッフのみなさまに本当に感謝しています。
4th Album『RAYS』はデビューしてから4年間に磨いた力、頂いた応援を音楽に昇華させた、いわばデビュー後のSnow Man第1章の集大成とも捉えられる、かなり思い入れの強い作品です。挑戦的でありながらも常にファンのみなさんの存在を近くに想像しながら制作をしました。そんな大切なファンのみなさんに聴いていただき、また嬉しい感想も沢山いただいて胸がいっぱいです。
2025年はグループとしてデビューから5周年を迎え、デビュー日の1月22日はベストアルバムを発売することから始まります。また、ファンのみなさんとの時間を増やせるよう絶賛計画中なので是非楽しみに待っていていただけたらと思います!
▲ 「ライラック」MV / Mrs. GREEN APPLE
2024年の年間Billboard JAPANトップ・アーティスト・チャート“Artist 100”で、Mrs. GREEN APPLEが総合首位を獲得した。
本チャートは、総合ソング“JAPAN Hot 100”と総合アルバム“Hot Albums”のポイントを合算したアーティスト・ランキングだ。Mrs. GREEN APPLEは、2024年の年間“JAPAN Hot 100”に17曲、“Hot Albums”に1作がチャートイン。5か月連続でリリースした「ライラック」(5位)や「コロンブス」(49位)をきっかけに、新規リスナーを獲得し、2018年リリースの「青と夏」(9位)や、「点描の唄 feat.井上苑子」(19位)などが再び聴かれたことで、1年間を通じてほぼ毎週10曲以上が、“JAPAN Hot 100”に入った。その結果、“Artist 100”の各指標別順位では、ラジオ、ダウンロード、ストリーミング、動画、カラオケといったCD以外の全てで首位となり、2位以下に大差をつけて年間を制した。
▲ 「新しい恋人達に」MV / back number
続く2位は昨年から4ランクアップのback number。ストリーミングとカラオケを中心に支持を集め、“JAPAN Hot 100”に10曲(アルバムは0作)が入り、2位に食い込んだ。“JAPAN Hot 100”では2024年リリースの「新しい恋人達に」(45位)や「冬と春」(72位)から、2011年リリースの「花束」まで幅広い楽曲がチャートイン。各指標別の順位では、カラオケとストリーミングが2位、動画12位、ダウンロード15位、ラジオ17位という結果で、昨年につづいてカラオケでの人気の高さを見せつけた。
3位は、昨年本チャートを制したYOASOBI。昨年の年間“JAPAN Hot 100”と同じ「アイドル」「勇者」「夜に駆ける」「群青」「怪物」「祝福」の6曲がロングヒット、そして“Hot Albums”には1作が100位圏内を獲得した。各指標別の順位は動画とストリーミングが3位、ダウンロード4位、ラジオ5位、カラオケ7位、CDセールス81位という結果で、オーディオとビデオともにストリーミングで大きな支持を獲得した。
そしてトップ10内に初登場したのは今年の年間“JAPAN Hot 100”を制したCreepy Nuts。“Hot Albums”にチャートインした作品はなく、“JAPAN Hot 100”でもチャートインは3曲に留まったが、「Bling-Bang-Bang-Born」の圧倒的な強さで7位に食い込んだ。また2024年1月1日にデビューしたNumber_iは、12位に。ダウンロード2位、CDセールス3位、動画4位、ラジオ11位、ストリーミング21位という結果となった。
1位 YOASOBI(37.9%)
2位 Ado(36.8%)
3位 Creepy Nuts(33.3%)
4位 米津玄師(32.2%)
5位 King Gnu(24.8%)
※集計期間:2023年11月27日~2024年11月24日(ルミネイト調べ)
※カッコ内は、世界における日本のストリーミング数(オーディオおよびビデオ)のシェア
2024年は、アニメを通じたグローバルヒットの他、海外でのフェス出演や、ミーガン・ジー・スタリオンと千葉雄喜や、MILLENNIUM PARADEとラウ・アレハンドロ、Tainyといった、海外アーティストとのコラボも話題となった。7月に経済産業省が発表したレポートでも、日本の音楽は“多様性”と“蓄積”と表現されており、それらは海外展開において強みだと述べられている。楽曲のみならず、ヒットの仕方も一層多様化した2024年。2025年は、どのような新しいシーンが生まれるのか楽しみだ。
Text by 高嶋直子
- 2024年 年間Billboard JAPANアーティスト・チャート“Artist 100”
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1位Mrs. GREEN APPLE
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2位back number
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3位YOASOBI
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4位Vaundy
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5位Official髭男dism
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6位Ado
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7位Creepy Nuts
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8位米津玄師
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9位King Gnu
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10位あいみょん
インタビュー抜粋
とてもありがたいです。驚いて少し涙腺にきました。(藤澤涼架)
今年はたくさん曲をリリースしたので、それらがたくさんの方にきちんと届いているのが純粋にありがたいです。(若井滉斗)
僕は昨年、作詞家チャートと作曲家チャートで年間1位をいただいたからこそ、この1年間はとてもいい意味で自分が作るもの、自分たちが面白いと思えるものを信じて活動できました。その楽しかった年にこういった評価をいただけたのがうれしいです。(大森元貴)
▲ 「Bling‐Bang‐Bang‐Born / THE FIRST TAKE」 / Creepy Nuts
2024年の年間Billboard JAPAN総合アニメソング・チャート“Hot Animation”で、TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』オープニング主題歌であるCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が1位に輝いた。
アニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』の初回放送直後の1月7日に配信がスタートした同曲は、1月17日発表チャートで11位を記録し初登場。そこから順位を上げていき、3周目の1月31日発表チャートでは初の首位を獲得。以降も勢いを維持し、最終的に7月10日発表チャートまで実に24週にわたって首位をキープし続けた。なお、この記録は、本チャート2023年上半期を制した米津玄師「KICK BACK」(TVアニメ『チェンソーマン』オープニング・テーマ)、2023年年間1位を獲得したYOASOBI「アイドル」(TVアニメ『【推しの子】』オープニング主題歌)の21連覇を更新する、当チャート歴代1位の連続首位記録となる。
指標別に見ると、「Bling-Bang-Bang-Born」はダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケの5指標で1位を記録。CDセールスは集計対象外の作品であるため加算されなかったものの、殆どの指標のトップを独占する形となった。また、この曲のポイントはストリーミング、ダウンロード、動画再生の3指標における圧倒的なポイント獲得数だが、ストリーミングはMrs. GREEN APPLE「ライラック」の1.6倍、ダウンロードは2位のYOASOBI「アイドル」の2.5倍、動画再生は「ライラック」の2倍以上ものポイントを獲得。アニメ総合としては2位以下に1.7倍以上のポイントを獲得し、堂々と首位に輝く形となった。
▲ 「アイドル」MV / YOASOBI
2位には、2024年上半期と同様にYOASOBI「アイドル」が登場。2023年年間チャートで当チャート含む6冠を達成した本楽曲だが、その人気は2024年においても健在で、一度もトップ10から脱落することの無い安定した成績を通年で残し続けた。また、3位のMrs. GREEN APPLE「ライラック」(TVアニメ『忘却バッテリー』オープニング・テーマ)は、4月17日に4位で当チャート初登場を果たすと、その後もトップ10内を維持し続け、7月17日~10月16日の期間は14連覇も果たすというチャートアクションを見せた。
トップ10を見ると、2023年9月~2024年3月にかけて放送されたTVアニメ『葬送のフリーレン』より、2つのオープニング・テーマ(YOASOBI「勇者」とヨルシカ「晴る」)、King Gnu「SPECIALZ」(『呪術廻戦』「渋谷事変」オープニング・テーマ)やキタニタツヤ「青のすみか」(『呪術廻戦』「懐玉・玉折」オープニング・テーマ)など、トップ3の楽曲も含めてロングヒットが多く登場していることが印象的だ。
また、トップ20内にはGEMN「ファタール」(TVアニメ『【推しの子】』第2期オープニング主題歌)や優里「カーテンコール」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第7期第2クール オープニング・テーマ)、そしてCreepy Nuts「オトノケ」(TVアニメ『ダンダダン』オープニング・テーマ)と2024年下半期にリリースされた楽曲が複数登場している。中でも「オトノケ」は10月9日に当チャートに9位で初登場し、2周目には2位、3周目以降は首位をキープし続けている。「Bling-Bang-Bang-Born」のようにロングヒットとなっていくのか、今後の動きに注目したい。
Text by Haruki Saito
2024年の年間Billboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”で、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が首位に輝いた。
同曲は、TVアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期「神覚者候補選抜試験編」オープニング・テーマに起用された楽曲。中毒性のあるリフレインが特徴の同曲は、アニメのタイアップのほか、TikTokでのダンスチャレンジが国内外で話題を集め、世界規模でのヒットとなった。1月7日に配信リリースされ、1月10日公開チャートで78位に初登場。その後徐々に順位を上げ、通算7週の首位を記録し、累計349,667DLで上半期に続いて首位を獲得した。なお、累計DL数は2位に約2.2倍の差をつけており、年間総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”でも首位を獲得。2024年を代表する楽曲として強い存在感を見せており、12月31日に放送される『第75回NHK紅白歌合戦』に初出場することも決定している。
▲ 「オトノケ」MV / Creepy Nuts
また、Creepy Nutsは年間DLソング21位にTVアニメ『ダンダダン』オープニング・テーマの「オトノケ」(67,905DL)がチャートイン。10月4日のリリース以降、トップ5圏内を死守しており、今後どれほどのDL数を積み上げていくかも注目していきたい。
TikTokを中心に活動する15歳のシンガーソングライターtuki.の「晩餐歌」は累計158,870DLを売り上げて2位を獲得。2023年7月にサビ部分がTikTokで公開され、同年9月に正式に配信がスタート。音源リリース前からカバー人気が高かった同曲は、10月11日公開チャートで5位に初登場。11月8日公開チャートで62位まで落ちこむも、11月6日に優里とのコラボ動画が公開されたことで21位にランクアップを見せ、その後もコンスタントにDL数を積み上げた。上半期チャートでマークした4位から順位を上げ、年間の2位を飾った。
▲ 「唱」MV / Ado
2024年上半期Download Songsで2位だったAdoの「唱」は、累計158,578DLで年間3位に。同曲は、2023年9月8日から11月5日まで開催されたユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンイベント【ハロウィーン・ホラー・ナイト】内の「ゾンビ・デ・ダンス」テーマ・ソングで、今年開催された同イベントでも再びコラボレーションした。2023年9月6日に配信リリースされ、通算6週の首位をマーク。リリース後の2023年後半と、『第73回NHK紅白歌合戦』で披露された後の2024年1月にポイントを積み上げたことが決め手となり、2位にも迫る勢いで年間3位を獲得した。
累計144,836DLを獲得した米津玄師の「さよーならまたいつか!」は年間4位を記録。同曲は、米津玄師がNHK連続テレビ小説『虎に翼』のために書き下ろした主題歌だ。リリース初週の4月17日公開チャートで1位に初登場し、11週連続でトップ10圏内をキープ。9月までのドラマ放送期間中にも地道にDL数を積み上げた。
年間JAPAN Hot 100のトップ20に7曲を送り込んだMrs. GREEN APPLEは、「ライラック」が累計134,966DLで5位にチャートイン。週間チャートで首位に届くことはなかったものの、4月17日公開チャートで4位に初登場して以降、常に20位圏内を死守している。他にも「ケセラセラ」が98,204DLを売り上げて、12位にチャートインした。
2023年の年間Download Songsで首位を獲得したYOASOBI「アイドル」(102,816DL)は11位に、12位だった「勇者」(92,755DL)は13位に、それぞれチャートインしており、今年も依然として人気の高さを示した。
近年のトレンドであるアニメやドラマとのタイアップ楽曲が上位の多くを占めたほか、Number_iやTravis Japanなどのボーイズ・グループ、tuki.やAdo、こっちのけんとなどの若手ソロ・アーティストの活躍が目立つ結果となった。
Text by Yutaro Takahashi
▲ 「BON」MV / Number_i
2024年の年間Billboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で、Number_i初のミニアルバム『No.O -ring-』が累計35,219ダウンロード(DL)を売り上げて、首位を獲得した。
2024年5月27日にリリースされた本作は、6月5日公開チャートで2位以下に10倍以上の差をつけて堂々の首位デビュー。その後もトップ30圏内を維持し、7月初旬の大型メディア露出が後押しし、7月10日公開チャートで通算2週目の1位となった。10月23日公開チャートではトップ10に返り咲き、11月24日までの集計対象期間中その勢いをキープした。
さらに、Number_iは、デビュー・アルバム『No.Ⅰ』を年間4位に送り込んだ。9月23日に発売されると、28,203DLという好スタートで10月2日公開チャート1位に初登場。わずか9週で累計30,108DLを売り上げて、年間トップ5入りを果たした。
▲ 「SCIENCE FICTION Trailer」
2024年“Download Albums”上半期チャート首位だった宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』は、累計33,752DLで年間2位に。デビュー25周年を記念した自身初となるオールタイム・ベストアルバムで、4月10日に発売。初週に11,531DLをマークし、5週連続首位と圧倒的な強さを見せると、下半期も地道にポイントを積み上げてトップ50圏内を死守した。
僅差の累計33,267DLで年間3位に続いたのは、米津玄師による通算6枚目のスタジオ・アルバム『LOST CORNER』。13,287DLを獲得して、8月28日公開チャートで首位デビューを果たすと、その後も約3か月にわたってトップ20圏内を維持し、その人気の高さを証明した。
トップ5以下は、2023年にリリースされたタイトルが続いた。上半期2位だったKing Gnuによる4thアルバム『THE GREATEST UNKNOWN』は累計26,913DLで年間5位に。2023年11月29日に発売されると“Download Albums”2週連続首位となり、収録曲「SPECIALZ」「逆夢」「カメレオン」などのロングヒットとあいまって、年間チャートでも上位に食い込んだ。
2023年12月に発売されたAdoの自身初となるカバー・アルバム『Adoの歌ってみたアルバム』は、累計25,224DLを獲得して6位となった。9位には、今年7月発売の2ndオリジナル・アルバム『残夢』(15,014DL)もチャートインし、Number_i同様に、トップ10に2作品を送り込む結果となった。
その他、“Download Albums”年間トップ10では、YOASOBIの第3弾EP『THE BOOK 3』(16,346DL)が7位、Travis Japanの1stアルバム『Road to A』(15,641DL)が8位、そして年間トップ・アーティスト・チャート“Artist 100”を制したMrs. GREEN APPLEの5作目のフルアルバム『ANTENNA』(14,635DL)が10位につけた。
Text by 岡田
コメント
Number_iです!
この度、僕たちのミニアルバム『No.O -ring-』が、ビルボードジャパンさんの2024年 年間ダウンロード・アルバムチャートで首位を獲得しました。ありがとうございます!
本当にたくさんの人に聴いていただいて、とても嬉しいなと思っております。
これからも、より多くの方々にNumber_iの音楽を届けられるように頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします!
2024年の年間Billboard JAPAN総合ストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が1位に輝いた。
TVアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期「神覚者候補選抜試験編」オープニング・テーマである同曲は、アニメ初回放送終了後と同時の1月7日に配信がスタート。集計最終日となる日曜リリースであったこともあり、集計初週となった1月10日公開チャートでは圏外だったものの、その翌週1月17日公開チャート以降は30位→4位→1位とめきめき上昇。1月31日公開チャートから6月19日公開チャートまで、じつに21週にわたって当チャート首位をキープし続けた。この記録は2024年年間チャートでは最長となる連覇記録であり、歴代でも史上4位の長さになる。
「Bling-Bang-Bang-Born」のチャートアクションで特筆すべきなのは、その“独走っぷり”だ。同曲が3月20日公開チャートで達成した週間再生数24,945,758回は、2024年度中で最多の週間再生回数に。また、2024年度チャートにあたる計52週分、各週ごとで集計圏内となった楽曲の再生回数を抽出して多い順に並べ替えてみると、トップ17までがすべて「Bling-Bang-Bang-Born」になる。同様の作業を2023年のデータでおこなうと、昨年当チャート首位を長らく独占していたYOASOBI「アイドル」はトップ13までの独占となる(これは、同曲リリース前に当チャート首位を守っていたOfficial髭男dism「Subtitle」の成績が非常に好調であった影響もある)ため、「Bling-Bang-Bang-Born」が、特に当年度のストリーミング市場において、リリース後から長期間にわたり独走状態を続けていたことがわかる。
▲ 「晩餐歌」MV / tuki.
2位はtuki.「晩餐歌」に。同曲は、当チャート首位を獲得したのは1度のみ(2024年1月24日公開チャート)であるが、当年度のうち計49週でトップ20入り、そのうち計36週がトップ10圏内と安定して上位を記録し続けていたことで、年間でも上半期と同じ順位をキープした。続いて、Omoinotake「幾億光年」が登場。同曲も「Bling-Bang-Bang-Born」と同じく今年1月にデジタル・リリースされた楽曲で、主題歌に起用されていたドラマ『Eye Love You』の、特に中盤以降からの盛り上がりと同時にチャートを駆け上がっていった。こちらは当チャートでは首位未達であるものの、計25回にわたるトップ3入りを達成。上半期チャートでの7位から、年間では3位へ浮上している。この2曲は、「Bling-Bang-Bang-Born」とはある意味対照的に“安定した成績を長期にわたって保った”というパターンであるが、上位に大きな変動が起こりにくく、「急上昇曲によって順位が入れ替わったあと、そのまま全体の再生数が減少していく」という流れが起きやすい当チャートでは、この“安定した成績”という部分が大きなアドバンテージになるのだ。
▲ 「Dear」MV / Mrs. GREEN APPLE
そして4位に「ライラック」を送り込んだMrs. GREEN APPLEも、今年のストリーミング・ソング・チャートを象徴するアーティストの一組だ。昨年2023年は活動再開後初のオリジナル・アルバム『ANTENNA』をリリース、同アルバム収録の「Soranji」「ケセラセラ」を含む計10曲を年間トップ100へ送り込み、トップ100圏内で最も多くチャートインしたアーティストであったミセス。今年はフィジカル作品のリリースこそなかったものの、1月の「ナハトムジーク」を皮切りに、4月からは「ライラック」「Dear」「コロンブス」「アポロドロス」「familie」の5か月連続リリースをおこなうなど、デジタル・シングルを多数リリースした一年(加えて年内、2024年年間チャートの集計期間後には新曲「ビターバカンス」もデジタル・リリースした)となっていた。当年は、「トップ100圏内で最も多くチャートインしたアーティスト」という肩書きは同じくであるが、2024年リリースの新曲ほとんどと、「青と夏」「ダンスホール」などの代表曲をあわせ、計17曲と前年より多くの楽曲を上位に送りこむ結果に。彼らは今年度中、のちに映画化もされたコンセプチュアルなFCツアー【Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR "The White Lounge"】や神奈川・Kアリーナ横浜での計10日間にわたる定期公演【Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”】などライブも精力的におこなっており、ここで披露された旧譜楽曲が度々当チャートで盛り上がりをみせたことも、この結果に影響を与えていると考えられる。
当年の総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”の指標別ポイントシェアをみると、現在と同じ6指標(CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケ)での集計となった昨年2023年度と比較して、ストリーミング指標で稼いだポイントが全体の70%以上を超える楽曲は79曲→84曲と増加、80%以上に絞ると35曲→45曲とさらに増えており、音楽市場におけるストリーミングの存在感がいっそう増していることがわかる。当年は、世界規模でストリーミング指標をトリガーにチャートを駆けのぼった「Bling-Bang-Bang-Born」(他にはKing Gnu「SPECIALZ」、ILLIT「Magnetic」など)、そして新曲やライブをトリガーに、旧譜も芋づる式に盛り上がりをみせたMrs. GREEN APPLE(他にはback numberなど)と、ストリーミングの持つ“自由さ”――国やリリースタイミングにとらわれない盛り上がりが際立ったチャート結果になったと感じる。より「世界展開」を目標に掲げるアーティストが増えてきた今、ストリーミングの重要度はこれからもますます上がっていくに違いない。昨年と大きく様相が変化した当チャートを、来年度はだれのどんな楽曲がかき回していくのか、今から楽しみだ。
Text by Maiko Murata
▲ 「LOVE TRIGGER」MV / Snow Man
2024年年間Billboard JAPANシングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”で、Snow Manの『LOVE TRIGGER / We'll go together』が1,300,889枚を売り上げ首位に輝いた。
本チャートは、2023年11月27日から2024年11月24日までのサウンドスキャンジャパンの販売枚数データを累計したもの。本作は2024年2月14日にリリースされた10枚目のシングルで、初週1,224,902を売り上げ2月21日公開チャートで首位を獲得。そして累計セールス数では1,300,889枚を達成し、2024年を制した。また、2位も同じくSnow Manで、7月31日に発売された11thシングルの『BREAKOUT / 君は僕のもの』がチャートイン。初週で1,088,373枚を売り上げ、8月7日公開チャートで首位を獲得、年間累計では1,155,430枚を売り上げた。
Snow Manは、これまで『D.D. / Imitation Rain』(Snow Man vs SixTONES名義)、『KISSIN' MY LIPS / Stories』『Grandeur』『HELLO HELLO』『タペストリー / W』『オレンジkiss』『Dangerholic』の7作でミリオンを達成していたが、初週で突破したのは2024年リリースの『LOVE TRIGGER/We'll go together』と『BREAKOUT/君は僕のもの』が初めて。2024年に入って初週ミリオンを立て続けに達成するという、快挙を成し遂げた。
▲ 「LOUD」MV / INI
3位はINI『THE FRAME』が、獲得。6月26日にリリースされた6枚目のシングルで、自己最多初週セールスとなる812,184枚を売り上げ、7月3日公開チャートで首位となった。そして累計期間中は880,979枚を売り上げ、年間3位につけた。また、INIは5位に『THE VIEW』もチャートイン。10月30日に発売された7thシングルで、フラゲ日時点でハーフミリオンを突破。集計期間中に849,042枚を売り上げ5位となった。
4位はAぇ! group『≪A≫BEGINNING』。5月15日に発売されたAぇ! groupのデビュー・シングルで初週782,835を売り上げ5月22日公開チャートで首位、累計853,994枚を売り上げ年間4位となった。昨年のシングルCDセールス数と比較すると、2023年は上位100曲の合計が28,818,904枚だったのに対し、2024年は32,562,195枚と374万枚多いという結果に。コロナ禍を経て2022年以降、オーディオ(アルバム、シングル)は売上、枚数ともに前年比を上回っている(SoundScan Japan調べ)。年間の売上動向は、毎年2月に発表される予定だ。
Text by 高嶋直子
2024年年間Billboard JAPANアルバム・セールス・チャート“Top Albums Sales”は、Snow Man『RAYS』が1,183,100枚を売り上げ首位に輝いた。
本チャートは、2023年11月27日から2024年11月24日までのサウンドスキャンジャパンの販売枚数データを累計したもの。Snow Manは、2022年 年間TOP Albums Salesで『Snow Labo. S2』が1位となっており、2年ぶりに首位に返り咲いた。
▲ 「EMPIRE」MV / Snow Man
本作は、2024年10月30日にリリースされた4thアルバムで初週に1,106,693枚を売り上げて、ミリオンを達成した。そこで、1stアルバム『Snow Mania S1』から本作までのタイトルを対象に、発売1週目から10週目までの累計売上枚数の動向(図1)を見ていく。
『Snow Mania S1』から2ndアルバム『Snow Labo. S2』にかけて、全体的に売上枚数は増えており、1週目以降の伸び方も似ている。そして、3rdアルバム『i DO ME』は、スタートダッシュが過去2作品に比べて早く、2週目から5週目も安定して売れている印象だ。さらに今回の『RAYS』は4作品の中でも初週売上が多く、傾向的に10週目には、累計売上120万枚近くまで達成する可能性がある。
そして2位には、SEVENTEEN『17 IS RIGHT HERE』が603,227枚を売り上げてチャートイン。トップ10を見てみると、SEVENTEENは他にも『SPILL THE FEELS』(4位)、『SEVENTEENTH HEAVEN』(9位)の2作品を送り込んだ。トップ20では、Stray KidsやENHYPEN、TOMORROW X TOGETHER、TREASURE、IVE、JINなど、K-POPアーティストのタイトル9作品がチャートインした。
▲ 「SEVENTEEN (세븐틴) BEST ALBUM '17 IS RIGHT HERE' Highlight Medley」
K-POPが軒を連ねる中、米津玄師『LOST CORNER』(5位)、Number_i『No.Ⅰ』(8位)、『No.O -ring-』(14位)、宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』(13位)、King Gnu『THE GREATEST UNKNOWN』(16位)といった、年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”に楽曲がチャートインしている日本人アーティストも登場。その中でも米津玄師は、総合ソング・チャートに3曲を送り込んでおり、両チャートで存在感を放っている。
また、2024年は2023年と比べてトップ10の販売枚数が、8,227,186枚から8,397,300枚と微増。一方で2023年は3作品がミリオン達成となったが、2024年は1作品のみとなった。現状、2024年1月以降の全アルバムの累計売上枚数は前年比94%と減少、累計売上金額は前年比101%と増加しており、平均単価が上がる一方で、売れている作品が少なくなってきている。来年はこの傾向が加速するのか、状況を覆すアーティストたちが登場するのか、注目したい。
Text by Tatsuya Tanami
▲ 「ケセラセラ」MV / Mrs. GREEN APPLE
2024年の年間Billboard JAPAN作詞家チャート“Top Lyricists”にて、大森元貴が1位に輝いた。
本チャートは、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にチャートインした楽曲を作詞家別にランキング化したもの。年間1位を獲得した、Mrs. GREEN APPLEのフロントマンを務める大森元貴は、CDセールス以外のダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケの5指標でトップを記録。いずれの指標においても、ひときわ目立ったポイント数を獲得しており、特にストリーミング指標においては2位以下に92万ポイント以上の差をつけている。
今回の加算対象となった楽曲をさらってみると、「ライラック」「ケセラセラ」「青と夏」など、長期にわたって“JAPAN Hot 100”にチャートインし続けてきた楽曲が並んでいることがわかる。“Streaming Songs”で18週連続首位を獲得した「ライラック」は累計3億回再生、「ケセラセラ」は累計4億回再生、「青と夏」は累計7億回再生を突破している。楽曲の新旧を問わず、ストリーミングにおける圧倒的な強さを見せた。Mrs. GREEN APPLEは、17曲が2024年の年間Hot 100にチャートインしており、いずれもCMや映画、アニメなどのタイアップ曲となっている。コンテンツとの相乗効果や精力的なライブ活動、コンスタントな楽曲リリースにより、ストリーミングをメインに動画やカラオケなどの幅広いチャネルで聴かれたことで、ファン層を拡大させ、人気が定着していったと言えるだろう。なお、大森元貴は2024年の年間作曲家チャート“Top Composers”でも、昨年に続き2連覇を達成している。
2位には、back numberのフロントマンである清水依与吏が、2023年年間作詞家チャートでの5位から浮上してチャートイン。2021年8月配信リリースの「水平線」、2013年6月リリースの「高嶺の花子さん」などのロングヒット作品が、主にストリーミングとカラオケの指標において継続的にポイントを積み上げた。加えて、フジテレビ系月9ドラマ『海のはじまり』の主題歌で、2024年7月15日に配信リリースされた最新シングル「新しい恋人達に」が“JAPAN Hot 100”で通算2週の首位を獲得するなど好成績を残している。また、当チャートで2023年の年間2位を記録したYOASOBIのAyaseは3位に。2023年に各チャートを席巻する大型ヒットとなった「アイドル」は2024年でも高順位を維持した。他にも、アニメタイアップ曲として2023年9月にリリースされた「勇者」やリリースから4年以上が経過してもなお“Hot 100”や“Top Streaming Songs”に登場し続けている「夜に駆ける」「群青」が、特にストリーミング指標において大きく貢献した。
▲ 「群青」MV / YOASOBI
また、2024年に大きなジャンプアップを見せたのが、6位のR-指定だ。彼がMCを務めるCreepy Nutsが今年1月にリリースした「Bling-Bang-Bang-Born」は、“JAPAN Hot 100”で通算19回の首位を、世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”で通算24回の首位を獲得した。そして同曲は、“Top Streaming Songs”チャートイン38週目で累計再生数5億回を突破しており、この記録はYOASOBI「アイドル」に続いて史上2番目の速さでの達成となった。同曲が爆発的かつ持続的なヒットとなったことが、R-指定が6位に躍り出た要因と言えるだろう。
CDセールス指標でトップを飾った秋元康は10位にチャートインした。週間シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”で1位を獲得した、SKE48「愛のホログラム」とAKB48「恋 詰んじゃった」に加え、初週ハーフミリオンを達成し2位を記録した櫻坂46「自業自得」などを発表。ラジオ指標でも4位をマークしており、2023年の年間および2024年上半期で記録した10位をキープした。
Text by Yutaro Takahashi
▲ 「ナハトムジーク」MV / Mrs. GREEN APPLE
2024年の年間Billboard JAPAN作曲家チャート“Top Composers”にて、大森元貴が2年連続となる1位に輝いた。
本チャートは、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”の中から作曲家にフォーカスしたランキングだ。2023年年間“Top Composers”、そして2024年上半期“Top Composers”でそれぞれ1位を獲得した大森元貴。指標別に見ると、大森元貴はストリーミング1位(上半期1位)、動画再生1位(上半期1位)、ラジオ1位(上半期3位)、ダウンロード1位(上半期2位)、カラオケ1位(上半期1位)、CDセールス100位圏外(上半期100位圏外)を記録。上半期で首位だった指標はそのままに、さらに成長を見せていることが見える結果となった。また、大森元貴は本チャートでは23年12月27日発表分から年間チャート集計対象最終週である2024年11月27日発表分まで、じつに49週連続で1位を獲得し続けている。
大森元貴がフロントマンを務めるバンド、Mrs. GREEN APPLEは1月以降「ナハトムジーク」「ライラック」などを含む多くの配信シングルをリリース。その全てが“JAPAN Hot 100”に複数週チャートインし続け、1年を通して聞かれ続ける楽曲を手掛ける彼の力量が改めて分かる結果となった。2024年 年間“JAPAN Hot 100”を見ても17曲がチャートインしており、新譜も旧譜もまんべんなく聞かれているという強みが見て取れる。
▲ 「高嶺の花子さん」MV / back number
続いて、2023年年間“Top Composers”で5位、そして2024年上半期“Top Composers”で3位を記録した清水依与吏が2位に登場。指標別に見ると、ストリーミングとカラオケで2位、ダウンロードと動画再生で9位、ラジオ13位、CDセールス100位圏外を記録している。彼がフロントマンを務めるback numberは、7月に配信リリースした「新しい恋人達に」が“JAPAN Hot 100”で首位を獲得し、「高嶺の花子さん」「水平線」といったロングヒット曲と共にチャートインし続けている。
上半期で2位を記録していたAyaseは年間3位に登場。2024年を通してアニメ『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』のエンディング・テーマ「UNDEAD」を含む4つの新曲をリリースしたYOASOBIは、アメリカで【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2024】への出演や単独公演の開催でも話題に。“JAPAN Hot 100”だけでなく”Global Japan Songs excl. Japan”にもチャートインし続けている「アイドル」やデビュー曲「夜に駆ける」を筆頭に、長期的に愛されるロングヒットを数多く生み出している点は特筆すべきストロングポイントと言えるだろう。
トップ10を見てみると、2023年年間“Top Composers”にチャートインした作曲家の多くが今年も登場している中で、Creepy NutsのDJ松永が6位に登場している。世界規模のヒットとなった「Bling-Bang-Bang-Born」や、現在チャート上位を走り続けている「オトノケ」に牽引される形となった。また、惜しくもトップ10入りは逃したものの、12位には「晩餐歌」がヒットしたtuki.がチャートイン。2025年は本チャートにおけるニューカマーの活躍にも注目していきたい。
Text by Haruki Saito
▲ 「はいよろこんで」MV / こっちのけんと
2024年の年間Billboard JAPAN“Heatseekers Songs”で、こっちのけんと「はいよろこんで」が1位に輝いた。
“Heatseekers Songs”は、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”を構成するデータのうち、ラジオ、ダウンロード、ストリーミング、週間動画再生数を集計し、その中から急上昇中の新人アーティストを抽出したチャートだ。
1位の「はいよろこんで」は、こっちのけんとが2024年5月27日にデジタル・リリースした楽曲。2024年7月3日公開の“Heatseekers Songs”で初の首位を獲得し、翌週7月10日公開の総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では19位と、初のトップ20入りを果たした。サビの「ギリギリダンス」というフレーズと、サビにフィーチャーしたダンスがTikTokを中心に注目を集め、公式TikTokでDa-iCEやTHE RAMPAGE、NiziU、RIIZEなどアーティストとのコラボダンス動画が公開されると、楽曲の人気が加速。“JAPAN Hot 100”トップ10入りも常連になったほか、11月にはストリーミング累計再生数が1億回を突破した。10月にリリースされた次作「もういいよ」も“JAPAN Hot 100”へチャートインしているほか、大晦日には『紅白歌合戦』への初出場が決まっており、今後も目が離せない存在となるだろう。
▲ 「鬼ノ宴」Lyric Video / 友成空
上半期1位の友成空「鬼ノ宴」は、年間では2位をマーク。「鬼ノ宴」は、2023年11月に自身の公式TikTokに投稿された1分強のデモバージョンが話題となり、2024年1月10日に正式にデジタル・リリースされた。リリース同日に公開されたリリック・ビデオは、〈始月曜〉を「はじマンデー」、〈帰日曜〉を「かえサンデー」と読ませるフレーズや、日本画風のイラストを用いた映像が関心を集め、現在5,500万回再生を突破している。リリースから2週間後となる2024年1月31日公開の“Heatseekers Songs”では14位に初登場し、今年は通算3回の首位を獲得した。“JAPAN Hot 100”では、“Heatseekers Songs”にて首位を獲得した2024年2月21日公開チャートで90位に初登場。徐々に順位を上げていき、2024年3月13日公開チャートにてトップ20入り(20位)を果たした。なお友成空は、年間チャートでは同楽曲のほか、5月リリースの「睨めっ娘」も20位に送り込んでいる。
3位に続いたのは福岡出身のスリーピースバンド=マルシィの「ラブソング」。2023年9月27日にデジタル・リリースされたあとはTikTokをきっかけに注目を集め、2023年11月1日公開の“Heatseekers Songs”で首位を獲得。そのまま連覇記録を伸ばし、前年2023年の年間“Heatseekers Songs”でも19位に登場していた。その後も連覇記録は伸び続け、当チャート歴代1位の通算首位記録および連続首位記録となる16連覇を達成(2024年度の集計に含まれるのは、6連覇目にあたる2023年12月6日公開チャート以降の成績)。長期にわたる人気を証明した。
1位のこっちのけんとを代表に、2024年の“Heatseekers Songs”はソロ・アーティストがトレンドだった。首位であった新しい学校のリーダーズをはじめ、グループのアーティストが多かった2023年の年間トップ20と比べてみると、ソロ・アーティスト楽曲のチャートイン数は2024年は12曲、2023年は5曲という結果に。その中でもシンガー・ソングライターの楽曲が9曲と、“ネクストブレイク”という観点では、自身で楽曲やコンテンツ制作をするアーティストの動きが活発であったことが、今年の特徴と言えるだろう。また、TikTokなどの動画プラットフォームをきっかけに注目を集めた楽曲やアーティストも非常に多く、これらの活用は、特に新人アーティストの楽曲の広がりにおいて見逃せない要素だといえる。2025年はどんなアーティストが頭角を現すのか、引き続き注目したい。
Text by 熊谷 咲花
コメント
こっちのけんとです。
この度は身の丈以上の輝かしい賞を頂戴し誠に光栄に思います。
ありがとうございます。
今後はこの賞に見合うアーティスト、人間性になれるように尽力いたします。
お楽しみに。
2024年の年間Billboard JAPAN UGCソングチャート“Top User Generated Songs”で、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が1位に輝いた。
本チャートは「歌ってみた・踊ってみた」動画など、YouTubeで公開されているユーザー生成コンテンツ(UGC)のみを集計したチャートだ。「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』のオープニング・テーマで、主人公のマッシュルが踊る「BBBBダンス」チャレンジが国内外でバズを生んだ。1月17日公開チャート(集計期間:2024年1月8日~1月14日)で11位に初登場し、翌週に2位、翌々週から22週連続でトップに(首位獲得週は計25回)。著名人やプロダンサー、キッズダンサーたちが踊る動画やVTuberによる「歌ってみた」、キャラクターに扮したアニメ映像など、幅広い世代が参加した様々なジャンルの二次創作が数多く生まれた。
上半期3位だったYOASOBI「アイドル」は順位をひとつ上げて2位に。TVアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌で知られる同曲は、惜しくも週間1位はなかったが、2023年12月6日公開分から集計最終週の53週にわたってトップ15をキープする強さを見せた。アイの声を担当した声優・高橋李依によるカバーやテレビ企画で鈴木愛理が見せたフル歌唱、ヒカキンver.のミュージック・ビデオらは、どれも1,200万回以上の再生回数を誇る。
▲ 「人マニア」 / 原口沙輔
続く3位は原口沙輔の「人マニア」。2023年8月にリリースされた、自身初のVOCALOID楽曲(※)で、壁際にスマホを立てて始まるMVと同じ構成で作成された二次創作物が多く投稿された。緑仙やそらる、ローレン・イロアスらによる動画が人気を博し、集計期間中に計6回1位に輝いた。
Ado「唱」、Kanaria「酔いどれ知らず」、ピノキオピー「神っぽいな」、Kanaria「KING」などトップ3に続くこれらは、昨年の年間チャートでもトップ10に入っていた楽曲だ。年間1位だった「アイドル」も含めて9曲が今年の上位20曲に入るという、変わらぬ人気の高さを証明した。
▲ 「GOAT」MV / Number_i
今年の上半期では、20曲のうち、アニメや静止画で構成されたオリジナル動画は18曲、公式MVで本人が顔出ししているものは、Number_i「GOAT」とKing Gnu「SPECIALZ」のみだった。その数は年間でも変わらず、11位のしなこ「しなこワールド」と20位のGEMN「ファタール」の2曲のみ。どちらもダンスが特徴的な楽曲なのだが、後者に関しては「踊ってみた」よりもアニメーション作品が多く作られているのが印象的だ。ビートと2人の掛け合いがテンポよく進む観点から、映像の切り替えや声色の移り変わり、ひずみといった映像加工は作品としても映えるため、VTuberや歌い手たちの創作意欲を高めたことだろう。
「Bling-Bang-Bang-Born」しかり、「アイドル」しかり、ラップや転調、ハイトーンが効いた難易度の高い歌唱曲は引き続きUGCコンテンツにおいて重要な要素と言える。海外ではギターサウンドやシンプルなビートの繰り返しがトレンドだが、日本のUGCではバリエーション豊かなサウンドとボーカリゼーションを好む傾向があり、それらは今後も続きそうだ。
Text by Mariko Ikitake
2024年の年間Billboard JAPAN “TikTok Songs Chart”で、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が1位に輝いた。
本チャートはTikTok上における楽曲人気を示したものだ。上半期に続いて年間でもトップに立った「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』のオープニング・テーマで、主人公のマッシュルが踊る「BBBBダンス」チャレンジが国内外でミーム化した。1月17日公開チャート(集計期間:2024年1月8日~1月14日)で5位に初登場し、1月31日公開分から9週連続でトップ、集計期間内に計10回もの首位に輝いた。両腕と腰を左右にひねる代表的なダンスを、一般ユーザーのみならず、NiziUやRIIZE、&TEAM、千葉雄大、INI、TOMORROW X TOGETHER、FANTASTICS from EXILE TRIBE、チョコレートプラネットら多くの著名人も挑戦。学生集団で踊るginjiroのシリーズやBasement Gang、REAL AKIBA BOYZといったダンスグループの投稿もたくさんの視聴数を獲得し、現在までに380万件以上の楽曲使用が確認されている。アニメのキャラクターを使用した投稿もあり、ユーザーとの親和性の高さも相まって、年間首位の座についた。
続く2位のShinonome「Athletic Meet "Heaven and Hell"」は運動会の曲としても知られる「天国と地獄」をもとにした曲で、TikTokではおなじみの定番曲。躍動感あふれるリズムから、バラエティからフード系などジャンルを問わない投稿に多く使用された。
▲ 「Giri Giri」MV / KOMOREBI
3位のKOMOREBI「Giri Giri」も今年TikTokで非常によく耳に・目にした一曲だ。MATHEUS、SAM、MAXI、YUTA、DJ OTAからなる5人組ヒップホップ・ユニットが5月17日にリリースした本曲は、ピンチな状況でも踊ればハッピーというニュアンスの「#ギリハピダンス」が注目を集め、6月のチャートイン後、計7回もNo.1に輝いた。森三中の大島美幸とガンバレルーヤの音楽ユニット“MyM”とコラボした動画は1,554万回以上再生されており、ILLITやBE:FIRST、ENHYPEN、こっちのけんと、RIIZEといった人気アーティストとのコラボも相次いだ。現在までに約15万件以上が投稿されている。
▲ 「Magnetic」MV / ILLIT
『紅白歌合戦』の初出場が決まっているK-POPガールグループ、ILLITの「Magnetic」(4位)は、軽いポップサウンドと両手を使った特徴的なダンスがユーザーの関心を集めた。3月以降、本人たちのダンス動画がたくさん投稿、ダンスの解説動画も多く投稿・視聴され、5週連続首位を記録した。同じく紅白初出場が決まっている、こっちのけんとの大ブレイク曲「はいよろこんで」は、6月19日に14位に初登場、翌週に8位にジャンプアップ後、集計最終週までトップ10内を維持。意外にも週間1位に輝くことはなかったが、最高位2位を記録して、年間9位についた。両曲ともストリーミング再生やYouTube再生回数が高く、前者はストリーミング2億回、後者は1億回を突破と、今年を代表するヒット曲だ。
そのほか、BMSG所属のラッパー・edhiii boiが昨年11月にリリースした「おともだち」(5位)や<正面で見ても横から見ても下から見てもいい女で困っちゃう>のパートが有名な乃紫「全方向美少女」(6位)は、上半期トップ10に続いて年間でも上位に入った。
今年もTikTok上ではダンスが特徴的な楽曲が上位に集まったが、難易度が高いものより、簡単に真似できて、あまり全身を使わない振付が多くなっている傾向にある。また、「かわいいだけじゃだめですか?」が8位に入ったCUTIE STREETや、「最上級にかわいいの!」が注目を集めた超ときめき▽宣伝部(▽=ハートマーク)、「わたしの一番かわいいところ」や「NEW KAWAII」が人気を博したFRUITS ZIPPER、きゅるりんってしてみてなど、“かわいい”を全面に押し出した新人アイドルグループの存在も今年のTikTokを語る上では欠かせない。自己肯定感は若年層やTikTokユーザーの多くを占めるとされる30代が非常に注目する永遠のテーマであり、フリルやリボン、カラフルな衣装に身を包む女性アイドルには女性からの高い支持が集まっているのも確か。「全方向美少女」しかり、最高な自分を自分なりに発信するプラットフォームから、従来のアイドルグループのイメージとはまた違う“令和の女性アイドルグループ”が今後も増えていくことが予想される。
Text by Mariko Ikitake
▲ 「オーバーライド」 / 重音テトSV[吉田夜世]
2024年の年間Billboard JAPAN“ニコニコ VOCALOID SONGS”で、吉田夜世の「オーバーライド」が1位に輝いた。
本チャートは、2022年12月7日からスタートしたニコニコ動画におけるVOCALOID曲の人気を測るチャートだ。オリジナル動画や二次創作動画などの動画再生数や動画総数、コメント数、いいね数などのデータにBillboard JAPANが独自開発した係数に乗じて上位20位までのランキングを生成している。
2024年の年間チャートを制した「オーバーライド」は、吉田夜世が2023年11月29日に投稿した楽曲。アップテンポで軽快な曲調に加えて、多くのミームを取り入れた歌詞が話題になった。タイトルの「オーバーライド」は、古いデータやソフトを新しいものに置き換えることを意味するIT用語とされている。この楽曲を使った二次創作動画がまさに「オーバーライド」のように次々と投稿され、その盛り上がりがオリジナル楽曲とのシナジー効果を生み出した。「オーバーライド」は2024年1月10日公開分のチャートで初登場して以来、常にトップ20入りを維持し、2月28日公開分以外はすべてトップ10入りを果たしている。ポイントではオリジナルと二次創作の両方が1位を記録し、合計で2位の約1.6倍という大差で年間首位に輝いた。
2位のサツキ「メズマライザー」は、VOCALOID歴代2位の速さ(約14日)でニコニコ動画で伝説入り(合計100万回再生)を果たした楽曲。曲名の「メズマライザー」は「催眠術をかける人」を意味する英単語で、楽曲制作のサツキとMVを手掛けたアニメーターのchannelが制作する際、「催眠術」というテーマのみを共有して作り上げたという。このため、国内外のファンの間で作品の考察が話題になった。上半期チャートでは投稿からわずか5週で6位にチャートインし、その後もトップ10圏内を維持し続け、安定した成績で年間の2位を飾った。
▲ 「混沌ブギ」 / jon-YAKITORY
続いて3位は、jon-YAKITORY「混沌ブギ」。2023年8月に投稿された同曲は、盛り上がる曲調とポップなMVが相まって絶大な人気を集めた。ニコニコ動画ではjon-YAKITORYにとって初の伝説入りを記録し、YouTubeでの再生回数も2024年12月6日時点で4,800万回を突破している。
そして、原口沙輔が「人マニア」「イガク」の2曲を送り込み、それぞれ4位と5位にチャートイン。「人マニア」は本チャートで史上最多の18週連続で首位を獲得した楽曲で、年間UGCソングチャート“Top User Generated Songs”でも3位を獲得した。一方、2月23日に投稿された「イガク」は【ボカコレ2024冬】の<TOP100ランキング>で1位に輝き、本チャートでも通算19週でトップ10を果たしている。
2023年の年間チャートと比べて、キャッチ―な音作りと一見相反するような「考察要素」が盛り込んだ楽曲が上位を占める結果となった。しかもこれらの楽曲への考察は国境を越えて話題を呼び続けている。コロナ禍で中止されていた初音ミクの世界ツアー【MIKU EXPO】が再開するなど、海外でのボカロイベントも活発化しており、来年にはボカロ楽曲のさらなるグローバル展開が期待される。また、各楽曲に使用されている音声合成エンジンを見ると、トップ20にチャートインした楽曲のうち、初音ミクを使用したものが最多の8曲を占めており、彼女がボカロ文化の象徴であり続けていることがうかがえる。一方、トップ10に限ると重音テトを起用した楽曲が5曲を占めており、特にトップ5では4曲が重音テトを採用している。ボカロシーンにおいて2024年は、重音テトの年とも言えるだろう。
※2024年6月3日(月)~2024年9月1日(日)分はニコニコ動画のサービス停止に伴うデータ連携の不備のため集計対象外となっております。
Text by ian li
上半期に続き年間チャートも1位ということで、驚きつつも嬉しい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます!
来年も再来年も、その先もずっとオーバーライドで盛り上がっちゃって下さい!
▲ 「Bling-Bang-Bang-Born (Live at 国立代々木競技場 第一体育館)」 / Creepy Nuts
2024年の年間Billboard JAPAN“Global Japan Songs Excl. Japan”は、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が1位を獲得した。
“Global Japan Songs Excl. Japan”は、世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化したチャートだ。「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』オープニング・テーマに起用された楽曲で、中毒性の高い楽曲やオープニングのシュールなダンス・アニメーションが、ショート動画プラットフォームを中心に話題を集めた。グローバル・ジャパン・ソングスでは歴代最多となる19週連続、通算24度の首位を獲得し、年間でも堂々の首位に輝いた。
トップ5は上半期と変わらず、YOASOBI、King Gnu、imase、藤井 風と今年、海外ツアーを成功させたアーティストたちが並んだ。また、トップ20にチャートインしたアーティスト15組のうち11組が今年、国外でライブを行った。ライブによって現地ファンのエンゲージメントが高まったことが、各国でのストリーミング数の安定につながったと考えられる。
▲ 「WOKE UP」MV / XG
下半期にトップ20入りを果たしたのは、XG「WOKE UP」、Vaundy「踊り子」、Creepy Nuts「オトノケ」の3曲だ。「WOKE UP」は、6月6日公開チャートで19連覇中だった「Bling-Bang-Bang-Born」を抜き、自身初の首位を獲得。その後、通算9度の1位に輝いた。またXGは、7月26日にリリースした「SOMETHING AIN'T RIGHT」も2週連続で首位をマーク。当チャート初の複数楽曲で首位を獲得したアーティストとなった。なお、これまで当チャートで複数楽曲が首位を獲得したことがあるアーティストは、XGとCreepy Nuts(「Bling-Bang-Bang-Born」「オトノケ」)の2組のみである。Creepy Nutsにとって自身2曲目の首位獲得楽曲となった「オトノケ」は、チャートインわずか7週で年間トップ20に食い込んだ。
「踊り子」は、6月末にNewJeansのメンバーがカバーしたことで注目を集め、主に韓国でストリーミング数を伸ばした。韓国では日本楽曲のカバーが人気を集めており、今後この流れが韓国以外でも活発化するのか注目だ。さらに下半期は、ゲーム『ペルソナ3 リロード』のサウンドトラックであるLotus Juice / 高橋あず美「It's Going Down Now」が3週連続で首位を独走。こっちのけんと「はいよろこんで」は、MVのパロディや考察、ダンスチャレンジなどさまざまなUGCが盛り上がり、15週連続でトップ10をキープした。
上半期に引き続きアニメタイアップがトップ3を死守したものの、下半期に躍進した楽曲たちを見てみると、グローバルに楽曲が広がるきっかけは必ずしもアニメタイアップだけではないことがわかる。また、グローバルでのヒットを牽引する国や地域も、楽曲によってさまざまだ。2025年はどんな日本の楽曲がどんな国でどんな形でヒットするのか、ますます注目したい。
Text by Mika Fuchii
世界各国でヒットしている日本の楽曲をランキング化した “Japan Songs(国別チャート)”。2024年の年間チャートで、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が5か国で首位を獲得した。
「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期 神覚者候補選抜試験編のオープニング・テーマに起用された楽曲で、2024年1月7日にリリースされた。同アニメのオープニング内のダンスがTikTokを中心に国内外で話題を集め、世界規模でのヒットとなった。2024年3月21日&28日公開チャートでは、当時の集計対象国の9か国すべてで1位に輝いた。その後は韓国とタイ以外の7か国でトップ10圏内を死守し、年間の集計においては、フランス、イギリス、ブラジル、南アフリカ、アメリカの計5か国で首位を獲得する結果となった。
▲ 「死ぬのがいいわ」 / 藤井 風
藤井 風は、インドで「死ぬのがいいわ」、タイで「満ちてゆく」が、それぞれ年間の首位を獲得。タイでは「満ちてゆく」が32週連続で1位をキープし、インドでは「死ぬのがいいわ」が年間で通算51回の1位を記録し、アジア圏での根強い人気を示した。特にタイにおいては、年間のトップ3を藤井 風の楽曲が占めている。
▲ 「ベテルギウス」MV / 優里
韓国では、上半期に続き、優里「ベテルギウス」が1位をマーク。同曲はSEVENTEEN、TREASURE、Kep1erら人気K-POPグループのメンバーがカバーしたことで韓国内でも人気が上昇した。シンガポールでは、YOASOBIの「アイドル」が首位を獲得したほか、3位に「夜に駆ける」、8位に「群青」、10位に「勇者」がそれぞれチャートインした。今年、自身初のアジアツアーを開催したことが、東南アジアでの人気の高まりに繋がったと言えるだろう。
Text by Yutaro Takahashi
Creepy Nuts
Mrs. GREEN APPLE
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