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<インタビュー>世界中に愛されるヒットメーカーになりたい――「Bunny Girl」で注目度急上昇中のAKASAKI、その謎多き素顔に迫る【MONTHLY FEATURE】
Interview:Takuto Ueda
Photo:Shintaro Oki(fort)
Billboard JAPANが注目するアーティスト・作品をマンスリーでピックアップするシリーズ“MONTHLY FEATURE”。今月は、現在18歳の高校生シンガー・ソングライター、AKASAKIのインタビューをお届けする。
2023年9月に「曲名ください」というキャプションを添え、オリジナル曲の弾き語り動画を公開、これがTikTok初投稿となったAKASAKI。ほかにも年代やジャンルさまざまな楽曲をカバーしながら、コンスタントにオリジナル曲の弾き語り、いわば“デモ音源”を発表し続けている。
2024年4月には1stシングル「弾きこもり」をリリースし、本格的なアーティスト活動をスタート。7月にTikTokで初公開し、そのバズを受けて10月に正式リリースした4thシングル「Bunny Girl」は、10月9日付のビルボードジャパン総合ソング・チャート“Hot 100”にて40位でデビューした。さらに11月13日時点では6位までランクを上げるなど、SNSでのバイラルにとどまらない広がりを見せている。
きっかけは父親のギター
――2022年、16歳の頃にギターを始めたのが音楽活動の始まりなんですよね。そもそもギターに触れたきっかけは?
AKASAKI:恥ずかしい話なんですけど、その頃にスマホを親に没収されてしまった時期があって。父がギターをやっていて、家に常にギターがある環境だったので、その手持ち無沙汰だった時期になんとなく触ってみた、みたいな感じでした。
――ちなみにスマホを没収されたのは何故?
AKASAKI:決まりごとを破っちゃったりして…。
――ペナルティですね(笑)。それ以前はテニスをやっていたとか。アウトドアなタイプでしたか?
AKASAKI:どちらかといえばそうでした。
――家庭内ではどんな音楽が流れていましたか?
AKASAKI:父はロックな音楽が好きだったので、そういうのがずっと流れていました。少し古い曲が多かったです。ガンズ・アンド・ローゼズとか。あと、グリーン・デイとかも流れていました。
――AKASAKIさん自身が能動的に聴いていた音楽はどんなものでしたか?
AKASAKI:YOASOBIさんとか、本当に王道のJ-POPですね。良いなと思った曲をひたすら聴いているタイプでした。
――ギターを始めて、のめり込むまではすぐでした?
AKASAKI:すぐでした。最初はスマホもないし、暇だから親を驚かせてみるか、みたいな感じで。それで弾いてみせたら、すごく褒められたんです。友達にも同じことしたら褒めてもらえて、それが快感になって、たくさん練習するようになりました。
――弾いたのはカバー?
AKASAKI:そうです。瑛人さんの「香水」とか、優里さんの「ドライフラワー」とか、その当時に流行っていた曲をカバーしました。
――そして2023年、当時17歳だった頃にTikTok投稿を開始。これはどんな流れでやろうと思ったのでしょう?
AKASAKI:ギターを始めて1年ぐらい経った頃から、コードを弾きながら適当に鼻歌でメロディーを乗せてみたりするようになって。それに歌詞をつけたら自分のオリジナルになるんじゃないかと思って、すごく短いフレーズでしたけど曲を作り始めたんです。そこから「音楽を仕事にしたい、今の時代はSNSをやるしかないよな」と思って、弾き語りの動画をTikTokに上げてみたのが最初のきっかけでした。
――11月4日にリリースされた最新シングル「今夜は君と」は、TikTokの初投稿で弾き語りが披露されていた楽曲。つまり、初めて作ったオリジナル曲ですよね。
AKASAKI:はい。「今夜は君と」は下校中にメロディーを思いついて、それにコードをつけました。
――どんなプロセスで曲作りをすることが多いですか?
AKASAKI:曲によるんですけど、ほとんどメロディーから作り始めますね。
――特に影響を受けていたり、自分の理想像に近いと感じるアーティストはいますか?
AKASAKI:なんとなく影響を受けているかもしれないのがVaundyさんです。幅広い音楽を取り込んでいくスタイルで、以前からかっこいいなと思っていました。
――活動を始めた当初、こんなアーティストになりたいという将来像はありましたか?
AKASAKI:正直に言っちゃうと、それこそVaundyさんみたいにマルチなアーティストになりたいと思っていました。でも、最初はとにかく曲をリリースしたいなって。明確な目標があったわけじゃないんです。
――約1年間、活動を続けてきて、何かしら手応えを感じた瞬間はありましたか?
AKASAKI:やっぱり「Bunny Girl」をリリースしたときで、周りの反応を見て「もしかしたら…」と思いました。ずっと「まだまだだな」と思っていたので、そこで初めて自信を持つことができましたね。ただ、活動を始めた頃から視聴者さんのコメントはずっと見ていて、モチベーションにもつながっています。「有名になりそう」と言ってもらえたりしたときは「この人のためにも有名になろう」と思ったり。「これで売れたら激アツ!」みたいな気持ちでやっていました。
キャッチ―で分かりやすい言葉を
――2024年4月、1stシングル「弾きこもり」をリリース。この曲をデビュー曲に選んだ理由は?
AKASAKI:シンプルに“バズったから”です。初めてオリジナルでバズった曲だったので、フルを作ってリリースしました。
【AKASAKI】弾きこもり / Hikikomori(Lyric Video)
――具体的にはどんな反響が届いていましたか?
AKASAKI:ポジティブな感想もあれば、ネガティブなコメントもあって。前向きに頑張ろうという気持ちではあったんですけど、ちょっとアンチみたいな人たちに対しては「見とけよ」って感じでした。
――制作はどんなふうに進めましたか?
AKASAKI:この曲もメロディーから考えて、適当に歌っていて心地いい言葉を乗せながら歌詞を作っていきました。あまり僕自身のことを歌詞にすることはなくて、頭の中で想像を膨らませて作詞することが多いんですけど、この曲はアンチに対して物申している部分もあるので、そういう意味では自分のことを歌った曲でもあります。
――曲に代弁してもらっているというか。
AKASAKI:普段、なかなか言わないことも歌詞にはすっと入れるができるので、そんな感じですね。あまり日常では使わない言葉も入っていたり。
――7月リリースの2ndシングル「波まかせ」は、レトロな雰囲気も漂うサマーチューン。
AKASAKI:時期的にも夏っぽい曲を作りたいと思っていたので、海辺とか砂浜を思い浮かべながら、夏を感じるコードを探しました。
【AKASAKI】波まかせ / Drifting(Lyric Video)
――ちなみにAKASAKIさんが思う“夏っぽい曲”ってどんなものですか?
AKASAKI:ドライブで聴きたくなる感じですかね。シティポップも好きなので、レトロな車に乗って、サングラスをかけて海沿いを走る、みたいな。けっこうありがちですけど(笑)。
――いしわたり淳治さんが朝日新聞WEBで連載中のコラム『WORD HUNT』にて、この「波まかせ」を紹介されていましたね。
AKASAKI:本当にうれしかったです。
――<コマーシャルに流れるみたいに>という歌詞を取り上げて、老若男女が共感できるモチーフを取り入れることの難しさについて綴られていました。実際、AKASAKIさんがイメージしていた“コマーシャル”は、昔ながらのテレビCMのことだったのか、それとも動画サイトなどの広告だったのか、どちらでしょう?
AKASAKI:でも、僕は昔のテレビCMをイメージしていました。いろんな世代の方に音楽を届けたいと思っているので、なんとなくキャッチ―で分かりやすい言葉を使うことは少し意識しているかもしれないです。
――続く3rdシングル「夏実」も、季節的には夏をイメージした楽曲ですよね。
AKASAKI:これは夏の終わりの切なくて、ちょっとオレンジっぽい感じの曲にしたくて。今までとは違う雰囲気も出したかったので、ピアノを入れてみました。「波まかせ」もそうでしたけど、若干今っぽくない印象というか、この曲に関しては平成初期っぽいサウンドを意識しています。
――作詞はどんなふうに?
AKASAKI:僕は曲名をSNSで募集して決めることがあるんですけど、この曲は歌詞もInstagramで募集して、そこから言葉を持ってきたりしながら書いていきました。あと、ほかの曲もわりとそうなんですけど、特に「夏実」は最初に考えた物語をもとに作っていて、ちょっと悲しい曲になっています。そういう意味でも、フルで聴かないと分からない曲作りは心掛けていきたいなと思っています。
【AKASAKI】夏実 / Kajitsu(Lyric Video)
――この曲は海外からの反響も多かったそうですね。
AKASAKI:いろんな言語でコメントをいただきました。
――そういったところまで届けたいなと思っていましたか?
AKASAKI:あまり海外まで広げようという意識はなかったんですけど、最近はAKASAKIの曲を聴いてくださる海外リスナーも増えてきたので、できるだけたくさんの人に届けられたらいいなと思っています。
「Bunny Girl」で得た自信
――そして4thシングル「Bunny Girl」がいま、ヒットチャートを急上昇中。この曲を作ったきっかけは?
AKASAKI:学校の授業中にすごく良いメロディーを思いついたんですけど、すぐに忘れちゃって。それで落ち込んでいたら、また思い出せたんですよ。早く録音しないとやばいと思って、先生に「お腹が痛いのでトイレに行ってきます」と嘘ついて、トイレにスマホを持っていってこっそり録音したのが最初でした。
――それぐらい手応えがあったんですね。
AKASAKI:「きた!」って感じでした。
――ちなみに降ってきたのはどの部分のメロディー?
AKASAKI:サビです。
――この曲の広がりを最初に実感したのはどんな瞬間でした?
AKASAKI:先に「夏実」のほうがバズっていて、「Bunny Girl」は少しずつ伸びていったので、最初はよく分からなかったんです。でも、自信はあったので、「Bunny Girl」の動画をたくさん投稿して数を打って。なので、良い曲はちゃんと評価してもらえるんだなって自信につながりました。見つかっていないだけで、良い曲って世の中にたくさんあるんだろうなとも思いました。
【AKASAKI】Bunny Girl / バニーガール(Lyric Video)
――「Bunny Girl」は、ビルボードジャパンの総合ソング・チャート“Hot 100”にて、10月9日付で40位に初登場。右肩上がりに推移して、11月13日時点では6位にまで上昇しています。こうしたチャートの結果、バズの反響とはどのように向き合っていますか?
AKASAKI:もちろんランキングに入ることはうれしいです。でも、あまり舞い上がらないようにというか、調子には乗らないようにしています。もし今後、タイアップとかもやらせていただけたりしたら、さすがに「よし!」って舞い上がっちゃうかもしれないですけど(笑)。アニメや映画の主題歌の書き下ろしなどは、いつかはやってみたいなと思っています。
――10月18日には【アカサキをさがせ】と題したリアルイベントを開催。ファンの人たちと交流したり、路上ライブも行っていましたね。
AKASAKI:いろいろ試したかったんです。あの規模感でイベントをやったら、どれぐらいの人が来てくれるか。実際、発見はいろいろあったので、今後もやっていきたいです。ただ、ちょっと悔しい部分もあって。自分のパフォーマンスに満足できなかったこととか。でも、あのイベントをやらなかったら気づけなかったことなので、そこはポジティブに反省点として捉えています。
――ああやって衆人の前でパフォーマンスを披露するのは初でした?
AKASAKI:初めてでした。
――今後、ライブをする機会は増えていくかもしれませんが、そこに対してはどんな想いを持っていますか?
AKASAKI:ライブはどんどんやりたいです。AKASAKIという人間性を知ってもらえる機会でもありますし、そこでしか見れないものを見せていきたいなと思います。だからこそ、ちゃんと準備をして慎重にやっていきたい。
――最新シングル「今夜は君と」についても聞かせてください。先ほど話したとおり、AKASAKIさんが最初に作ったオリジナル曲ですね。何故このタイミングでリリースすることを決めたのでしょう?
AKASAKI:「夏実」と「Bunny Girl」がバズったので、まずはそっちを先にリリースしました。「今夜は君と」は特に思い入れが強かったので、今ならバズの勢いに乗ってたくさんの人に聴いていただけるんじゃないかと思ったんです。
――作詞はどんなふうに進めていきましたか?
AKASAKI:人生で初めて作った曲なので、とりあえず“好き”を詰め込みたいと思って、レトロな雰囲気とか夜の風景とか、いろいろな要素を入れました。
【AKASAKI】今夜は君と / Tonight With You(Lyric Video)
――今後どんな曲をリリースしていこうか、現時点でいろいろ計画を練っていますか?
AKASAKI:そうですね。段階を踏んで、いろいろなAKASAKIを見せていけたらいいなと思っています。
――例えばフルアルバムを作ることになったとき、どんな作品になっていたらいいと思いますか?
AKASAKI:変化が見られるというか、良い意味でAKASAKIが変わろうとしている印象を与えられればいいなと思います。あとは一度、何を言っているのかまったく分からないような歌詞を書いてみたいです。今はたくさんの人に聴いてもらいたいのでバランスを重視してますけど、余裕ができたらそういう曲も歌ってみたい。
――今後、どんなアーティストになっていきたいですか?
AKASAKI:世界中に愛されるヒットメーカーになりたいです。音楽は国境を越えると思うので。言語とか関係なく、本能的に好きになってもらえるようなアーティストになりたいですね。