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<インタビュー>村口賢一郎(Pococha)×加藤剛士(ヤマハ)が対談 imaseをフィーチャリングに迎えた新キャンペーン『みんなの演奏会』を開催――Pococha×ヤマハ連載vol.1

インタビューバナー

Interview & Text:黒田隆憲
Photo:Shintaro Oki(fort)



 Pocochaとヤマハが、新世代アーティストimaseをフィーチャーした新たなキャンペーン『みんなの演奏会』を始動する。

 地方で音楽と一人向き合い、SNSでの発信を通して知名度を上げてきたimaseが、本企画の象徴的存在として、初心者から上級者まで誰もが挑戦できる書き下ろし未公開楽曲を課題曲として提供。Pocochaの温かいコミュニティとヤマハの最先端技術によるサポートで、imaseの課題曲に合わせて多様な参加者が共に奏でる『みんなの演奏会』を実施する。オンラインを超えたリアルなイベント『みんなの演奏会』としてimase本人とともに各楽器パートごとに数十名ずつ、100名超の大楽団で演奏し、その様子を収録したスペシャルムービーを公開する予定だという。

 連載記事1本目となる今回は、DeNAのPococha事業CMO(最高マーケティング責任者)の村口賢一郎氏と、ヤマハのブランド戦略本部コーポレート・マーケティング部リーダーの加藤剛士氏に、企画に込めた想いを存分に語ってもらった。

音楽を続ける力や、そのなかで感じる達成感や喜びがどれだけ尊いか

――まずは、両者を結びつけるきっかけにもなった、昨年12月のヤマハの企業広告「音楽って、めんどくさい。だから、好き。」の公開の経緯から教えていただけますか?

加藤:ヤマハのブランドプロミスは「Make Waves」。「Waves」は心が震える瞬間やワクワクする体験を指し、音楽を愛し、自ら一歩踏み出そうとする人々を応援する存在でありたいという想いを込めています。このブランドプロミスに基づき、昨年のキャンペーンとして「音楽って、めんどくさい。だから、好き。」というメッセージを掲げました。

 弊社の130年以上の歴史で、広告などにおいては、ライブでの熱狂的な瞬間や発表会での成功した瞬間といった輝いている瞬間を描くことが多かったのですが、昨年、企業広告のメッセージを検討するにあたり、音・音楽に関わる人々のインサイトを調査したところ、実際に音楽の楽しい瞬間は2~3割で、多くはその裏に日々の鍛錬があり、そのプロセスこそが音楽に向き合う上での尊い部分でもあることも、改めて伝えたいと考えました。そこで、「音楽って、めんどくさい。だから、好き。」と掲げ、そうした日常においても、ヤマハは常に身近な存在として応援していくことを伝えたいと考えたのです。


――そのキャンペーンとともに公開した動画には、27組164名の演奏者が出演。ピアノや吹奏楽など、楽器ごとに異なるレベルや経験、背景を持つ人たちが音楽に取り組む様子が収められていました。

加藤:はい。その動画には視聴者の皆さまがご自身を重ね合わせ、「自分もこうだった」と感じられるような瞬間を多く盛り込んでいます。公開直後から非常に大きな反響をいただき、「自分も同じだ」と共感を寄せてくれたことが非常に印象的でした。



音楽って、めんどくさい。だから、好き。 | Full Version - ヤマハ株式会社


――続いて、PocochaではTVCMで「この世界を、もっとフレンドリーに。」というメッセージを打ち出されていますが、メッセージに込めた想いについて教えていただけますか?

村口:Pocochaはライブ配信プラットフォームでありながら、「コミュニティ型ライブ配信」に特化している点が特徴です。ライブ配信には、大規模なインフルエンサーが数千人〜数万人に向けてパフォーマンスを行うタイプと、私たちが提供するような10〜20名程度の同時視聴者と交流するコミュニティ型とがあります。

 現在のネット環境、特に多くの人が集まる大規模なライブ配信では、パフォーマーによる一度のミスが誹謗中傷へと発展するケースもありますよね。しかし10〜20名の小規模なコミュニティでは、相手を否定するようなことはあまり起こらない。むしろ困っている人を支え合う、優しいコミュニティが形成されるケースが多いんです。実際にPocochaは、例えば配信枠の中で、誰かが悩んでいるときには、自然と支え合うような「ユーザーが優しいサービス」としても評価されています。


――小さなコミュニティを大切にしているPocochaだからこそ得られた評価ですね。

村口:昨年実施した広告キャンペーンのコピー「フォロワー100万人もいいけど、ファン10人もかなりいいぞ。」は、このような価値観を体現しています。多くのフォロワーを獲得したり、「いいね」を競ったりすることが主流となっていますが、本当に支えてくれるのは、そうした「数」ではなく、いざというときに応援してくれる少数のファン。私たちは、このような「10人のファン」が支える力こそが本物のフレンドリーさだと信じています。

 また、Pocochaのプラットフォームでは、プロレベルの演奏や歌唱だけではなくても応援されることで「頑張ってみよう」と感じ、達成感を得られる環境を目指しています。「この世界を、もっとフレンドリーに。」というメッセージは、このような応援の力が世界を優しくし、フレンドリーな環境を広げていけると信じているからこそ生まれたものです。


――では、そんな両者によるコラボ企画が始まった経緯について教えていただけますか?

村口:きっかけは昨年開催された、とあるマーケティング・カンファレンスでの出会いでした。ヤマハさんも参加されていたその場所で、私たちは、「魔法の絨毯」で大ヒットした川崎鷹也さんとコラボレーションし、Pocochaの音楽ライバーさんたちと制作したライブビデオを公開していたのです。

 川崎さん自身、その名が知られるようになるまでに長い時間を要し地道な努力を続けてきた方です。その時のスピーチでは、「続けることがどれだけ大変か、でも続けてきたから今がある」とおっしゃっていました。Pocochaのライバーたちも、コロナ禍で聴衆を失ったり、育児との両立が必要だったり、それぞれ諦めそうになる瞬間を味わいながらもライブ配信をし、応援を受けることで続ける力を得ているのです。


――企画を通じ、「続けることの大切さ」を改めて実感したのですね。

村口:はい。そのカンファレンスより前に、ヤマハさんが制作した広告動画「音楽って、めんどくさい。だから、好き。」を拝見し、大きな感動を覚えました。そして今回、再度そのメッセージに共感しました。音楽を続ける力や、そのなかで感じる達成感や喜びがどれだけ尊いかを、私たちPocochaとヤマハさんは共に大切にしている。そう感じたことが、今回の企画に繋がる大きなきっかけとなりました。



【川崎鷹也×ライバー演奏家 - 魔法の絨毯 / FLY HIGH】


――村口さんからコラボ企画のお話があった時、加藤さんはどう思いましたか?

加藤:まず、私たちの活動に注目していただいていることが純粋に嬉しかったですね。お話を伺っていくなかで、Pocochaさんとヤマハには非常に高い親和性があるとも感じました。音楽を通じて世界中の人々の人生を豊かにし、平和をもたらすこと……その目指す先がPocochaさんとは共通していることを確信したんです。

 先ほども少し触れましたが、当社のブランドプロミス「Make Waves」は、人々が心震わす瞬間を表現していて、個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとする人々の勇気や情熱を後押しする存在でありたいとの思いを込めたものです。それをどう実現し、どのようにお客様に届けていくかを、顧客体験として3つの要素に分けています。


――それはどのようなものですか?

加藤:まず一つ目は、自己表現を通して他者や周りにインパクトを与えること。人と人との関係性のなかで「よくやったね」といった反応があることで、表現の意義が生まれます。二つ目は、個人としての成長です。昨日できなかったことが今日できるようになる、自らの演奏に変化や進化を感じられる瞬間がその実感を与えてくれる。そして三つ目が、世界とのつながりです。音楽を通じて、これまで出会ったことのない仲間とつながる経験や、遠く離れた誰かが自分の音楽に共鳴してくれるという体験が、「Make Waves」に結びつくのだと考えています。

 これらの体験を見つめ直すと、Pocochaさんと目指していることは非常に近いと感じます。自己表現を通じて周囲にインパクトを与え、成長し、世界とつながるという点で、私たちは本質的に共通しているのだと。したがって、このコラボはきっとうまく機能し、非常にポジティブなメッセージ発信になるという確信を得ました。


――もちろん、ビジネス面でのメリットも感じたわけですね?

加藤:その通りです。私たちは創業以来、音楽人口の増加と普及を目指してきました。楽器を演奏する人が増えれば、自然と音楽が広がり、ひいては楽器の販売にも繋がります。村口さんのお話を伺いながら、音楽を続ける人が少しでも増え、途中で楽器演奏をやめてしまった方が再び始めるきっかけになるような仕組みを、共に築けるはずだと思ったのです。


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「自分の好きなことや信じていることを諦めないでほしい」

――では今回、本キャンペーンにimaseさんを起用することになった理由や経緯について教えていただけますか。

村口:imaseさんも、地方で一人音楽と向き合い続けてきたというストーリーがあります。世に出した作品が徐々に周囲で評判となり、SNSでの評価を通じて知名度を高めました。この経験から、音楽と向き合う際の孤独や難しさを理解している方だと思います。

 しかもimaseさんはSNSでの活躍もあり、デジタルの世界に精通していることが、今回のプロジェクトに適していると感じました。音楽に挑戦する人々を励まし、次のimaseさんともいえるような人材を育む役割を果たしてくれるのではないかと。さらに、彼のフレンドリーな雰囲気も私たちのブランドイメージに合っていることが、起用の決め手となりました。


――Pocochaとヤマハ、そしてimaseさんと共に今後、どのような企画を考えているのですか?

村口:まず、テーマは「特別な誰かだけではなく、誰しもが輝き、活躍できる場所を提供する」ことです。ダイバーシティ、つまり「多様性」が注目される時代ですが、音楽の世界では、比較的「上手な人が輝く」という土壌があるかと思います。しかし、音楽を愛する気持ちは上手い人も初心者も同様です。上手な人だけがステージに立つのではなく、誰もが演奏の喜びや達成感を味わえる機会を提供したいと我々は考えたのです。


――具体的には?

村口:まず、今回の演奏会に参加していただく方を広く募集し、各楽器パートごとに専用の譜面を提供します。ピアノパートでは、本来の演奏を行う譜面とともに、初心者から上級者まで演奏レベルに合わせた譜面も用意して、参加者の演奏レベルに応じた内容で参加いただけるようにする予定です。この大規模なキャンペーンには、上手な人も初心者も一緒に参加し、全員が成功体験を共有できる場を作ることを目指しています。


――そのなかで、ヤマハさんはテクノロジーを活用してイベントを支援されると伺いました。具体的な方法について、可能な範囲で教えていただけますか?

加藤:これまでの研究成果である楽譜難易度アレンジの技術によって、初心者から上級者まで演奏レベルに合わせた難易度のピアノ楽譜を提供し、どなたも参加できるような協力を行います。

 先ほど村口さんから「特別な誰かだけではなく、誰しもが輝き、活躍できる場所を提供する」というテーマのお話がありましたが、ヤマハではダイバーシティという言葉を、「だれでも」の4文字に集約させています。例えば昨年末、サントリーホールで『だれでも第九』というイベントを開催しました。AIピアノを使い、障がいのあるピアニストがオーケストラのなかで演奏に挑戦する機会を提供し、みんなで一つの『第九』を作り上げることができました。障がいの有無に関わらず、誰もが音楽を楽しむことができる環境を作るための挑戦だったんです。

 今回のプロジェクトでは、村口さんのお話にあったように、音楽を愛するすべての人が技術や経験の差を超えて、共通の舞台に立つ。それを実現させるのが大きなテーマだと考えています。私たちも、ヤマハの技術を活かしてこの挑戦を支援したいと思っています。


――音楽に携わる人々にとって、とても価値のある興味深い試みですね。

加藤:このような取り組みはすべての楽器に対応できるわけではありませんが、私たちにとっても新しい挑戦であり、Pocochaさんの施策を力強くサポートするものになるのではないかと。最終的には、このような活動を通じて音楽人口の拡大や、楽器を諦めかけた人が再び挑戦するきっかけになればと願っています。


――最後に、この企画に対するお二人の思いをお聞かせいただけますか?

村口:この企画を通して、参加者に楽しんでいただくことがもちろん大前提ですが、「自分の好きなことや信じていることを諦めないでほしい」という想いがPocochaの根底にあります。今回の『みんなの演奏会』は、「音楽」がテーマですが、Pocochaのライブ配信は、とにかく自分の個性や好きなことを表現することが重要です。「どうせ自分なんて…」と諦めてしまう人もいるなか、Pocochaのコミュニティは、たとえ10人や20人でも、自分の活動を応援してくれる人がいる場です。この企画を通じて、Pocochaで何かを続けていくことの魅力を感じてもらえたら嬉しいです。


加藤:もちろん、音楽を楽しむ人が増えることが私たちヤマハの願いではありますが、必ずしも楽器を演奏することだけが音楽の楽しみ方ではありません。音楽を聴いたり演奏者を応援したりすることも、音楽を通じてコミュニティに参加する一つの形だと考えています。今後ともPocochaさんと協力し合いながら、ヤマハ単独ではできなかった形で音楽の波(WAVES)を広げ、一人でも多くの方々に「音楽の楽しさ」が伝わるよう頑張ります。


imaseから参加者へメッセージ

 こんにちは、imaseです!Pocochaさん、ヤマハさんの想いに共感して、『みんなの演奏会』に参加することを決めました。ぜひ、皆さん一緒に演奏しましょう!

 大人数で音楽を奏でる楽しさや気持ちよさはなかなか体験することが出来ないと思うので、僕もすごくワクワクしています。演奏して下さる皆さんと一緒に、自分らしく熱を持って奏でる素敵な空間にしたいです。

 今回の楽曲は、「friendly」というキーワードから、友達や仲間について書きました。様々な楽器の見せ場がある、ポップで楽しい楽曲になっています。楽しみにしていてください!




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