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<コラム>Eveがメジャー4thアルバム『Under Blue』で描く“青”の世界――収録曲の魅力を徹底解説

インタビューバナー

 

Text: 柴 那典

 2024年11月27日、Eveがメジャー4thアルバム『Under Blue』をリリースした。

 YouTubeチャンネル登録者数は508万人を超え、今年行った初のアジアツアーは各地で大盛況と、ネットカルチャーのみならず今の日本のポップ・ミュージックを代表するアーティストとなったEve。前作から約2年8か月ぶりとなる新作は、その魅力の核にあるものを示すような一枚だ。

 なぜ、Eveの音楽への支持はここまで大きく広がっているのか? そのアーティストとしての本質はどこにあるのか? 新作のモチーフになっている“青”をはじめ、いくつかのキーワードから新作の内容を紐解き、解説していきたい。

 まず挙げられるべきはEveのポップソングが持つ抜群の“爽やかさ”だ。伸びやかで優しいハイトーンの歌声で、軽やかなメロディを歌う。一面に広がる青空のような心地よさを感じさせてくれる。

 新作の収録曲では「ティーンエイジブルー」がまさにそういう曲だろう。TVアニメ『アオのハコ』EDテーマとして書き下ろされた楽曲は、高校の部活動を舞台にしたアニメの“青春”というテーマとも呼応するような爽快感を持っている。



 TVアニメ『小市民シリーズ』OPテーマに書き下ろされた「スイートメモリー」も“青春”の曲。透明感あるサウンドデザインに、エモーショナルなメロディが胸の高まりをもたらす。アニメの世界観やキャラクターとマッチした楽曲の魅力がコラボレーションMVでさらに引き出されている。



 こうした爽やかな“青”を表現するギターロックナンバーの一方で、淡々としたクールなダンスナンバーもEveの音楽の大きな魅力となっている。その象徴がアルバムの1曲目に収められた「lazy cat」だろう。スムースなベースラインとダンサブルなビートに乗せ、色気のある低音のボーカリゼーションで《君の前で 淡々と小心者でいる》《10代ちょっと無駄にして ただ20代ずっと無駄にして》と歌うこの曲。表現されているのは鬱々とした心情なのだけれど、ビートの軽快さと歌の気持ちよさが大きなフックになっている。「逃避行」もそういうタイプのディスコナンバーだ。「虎狼来」も、アルバム終盤に置かれた「さよならエンドロール」もそうだろう。“青”のイメージの中では、いわゆる憂鬱の“ブルー”。漠然とした不安や葛藤を抱えていて、それでもかすかに希望の光が見えている。そういうトーンがアルバムの軸になっている。



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 収録曲全19曲のうち12曲がタイアップという新作アルバム。アニメや映画の主題歌として書き下ろされたナンバーも多いのだが、そのこともあって“ヒーロー”をモチーフにしたファンタジックな楽曲も多い。

 たとえばTV アニメ『僕のヒーローアカデミア』6 期第 2 クールオープニング・テーマとして書き下ろされた「ぼくらの」がその代表だ。TV アニメ『チェンソーマン』第 12 話エンディング・テーマの「ファイトソング」も、『映画 マイホームヒーロー』主題歌の「インソムニア」もそうだろう。




 これらの曲でのパワフルで疾走感あるサウンド、切れ味鋭い歌唱もEveの音楽の魅力の大きな要素だ。「ぼくらの」はヒロアカの物語に寄り添いつつ、Eveなりのヒーロー像を歌い上げた一曲。その一方で、正義一辺倒のヒーローではなくどこかダークで不穏な要素を忍ばせた曲があるのもポイントだ。たとえば「インソムニア」では2番のAメロでドープなリズムに乗せてラップ的なボーカリゼーションで《本音は性根が腐ってんだ 不幸を願っている》と歌ったりする。



 オリジナルのアニメーションMVもポイントだろう。もちろんそれぞれの楽曲はアニメや映画などタイアップ先に寄り添って描かれているのだけれど、MVと共に試聴することで、それをEveオリジナルの世界観として体感できる仕組みだ。たとえば「冒険録」や「Bubble feat. Uta」は、MV自体が異世界ファンタジーの表現になっている。




 前作『廻人』以降、精力的にライブを行ってきたEve。ファンやリスナーの存在もアルバムの大きなモチーフになっているようだ。ライブで高揚感をもたらすようなエネルギッシュな楽曲、目の前の“あなた”に向けた優しく親密な楽曲も、アルバムの大事な要素になっている。

 「花嵐」は、映像盤にもフル尺映像が収録される2023年のさいたまスーパーアリーナ公演のタイトルにもなった曲。ストリングスやオリエンタルな音色を配した、祝福感ある壮大なナンバーだ。一方、そのアンサーソングにも感じられる「花星」はピアノを主体にしたセンチメンタルな楽曲になっている。



 アルバムのラストは繊細なインストゥルメンタルの表題曲「Under Blue」からバラードの「夢に逢えたら」という締めくくりになっている。アコースティック・ギターから始まる優しいメロディの楽曲だ。きっと聴き終えたときには温かな余韻に包まれるのではないだろうか。

 アルバムのジャケットイラストは、これまでもたびたびEveの作品を手掛けてきたイラストレーターのくっかが手掛けている。青空を背景に街を下から見上げた少年の姿も象徴的だ。

 サウンドだけでなく、ビジュアルやアニメーションのMVなども含めた総合的な表現として伝わってくるのがEveの音楽の大きな特徴。“イメージの奔流”とも言うべきその多彩さと没入感が大きな魅力と言っていいだろう。

 

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