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<インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」
Interview & Text:坂本ゆかり
Photo:森好弘
韓国のボーイズグループ・NCTのメンバー、YUTAが11月13日にソロデビュー・ミニアルバム『Depth』をリリースした。『Depth』は、リード曲「Off The Mask」をはじめ全7曲を収録。ロック好きを公言する彼らしさが詰まった作品となっている。10月には5都市9公演のショーケースツアー【YUTA Solo Debut Showcase Tour~HOPE~】をまわり、確かな手応えも感じたようだ。
インタビューでは、ミニアルバムのことはもちろん、尊敬しているというHYDEとの交流や俳優活動、NCT 127のチームとしての活動など、幅広く話を聞いた。
形にできたのは、
すごく大きな一歩だった
――ソロデビュー、おめでとうございます! ソロプロジェクトが動き出したのはいつごろだったのでしょう。
YUTA:以前から曲は作っていたのですが、レコーディングに向けて「アルバムに入れるには、どんな曲がいいかな?」という具体的な準備をはじめたのは、今年の1月くらいです。【NCT 127 3rd TOUR 'NEO CITY – THE UNITY’】をまわりながらやっていた記憶があります。
――11月13日にリリースされた初ソロミニアルバム『Depth』のコンセプトを教えてください。
YUTA:自分の奥底にあったもの……ですね。これまで出せなかったことや、みんなに言えなかったこと、いろいろな気持ちをこのアルバムに詰め込みたかった。実はもっとヘヴィーな曲もあったんですけど、ファンのみんなを置いていきたくなかったから、ひとまずはこの7曲で。今後は徐々に徐々に、アップグレードしていければいいかなと思います。
――ロック好きは公言されていますが、アルバム全編がJ-ROCKというのはちょっと驚きで、「こうきたか」という感じでした。
YUTA:このジャンルだと、また違う自分に出会えるだろうと思ったんです。僕は、ファンのみんなとぶつかり合うのが好きなんですよ。チームの時も、ぶつかり合う感覚のある曲で自分がすごく楽しめていたし。その感覚をロックに落とし込んで、自分の色に変えて、ファンのみんなとステージで楽しめたら自分自身も幸せになれるし、聴いてくれたみんなもハッピーになっていくんじゃないかと思って。
――前々から作っていたという曲も、ほとんどロックなんですか?
YUTA:ほぼロックです(笑)。ロックじゃないものも、J-POPっぽいものが多いかな。
――YUTAさんのロック編歴を教えてください。子供の頃に最初にロックに触れたのは?
YUTA:L'Arc〜en〜Cielさんですね。アニメの主題歌がきっかけでした。そこから、Janne Da Arcさん、lynch.さん、X JAPANさんなどへ。僕らの時代はまだK-POPが浸透する前で、中学生まではバンドを聴いて育って。そこからK-POPを経た今の自分に、J-ROCKを取り入れたらすごく面白いんじゃないかと思ったんです。
――HYDEさんとの交流も知られていますが、HYDEさんとの出会いのきっかけは?
YUTA:僕が、HYDEさんが大好きだというのを知っていた知り合いの方が紹介してくださり、仲良くさせていただいています。HYDEさんは母と同世代なのに、いつも「僕より若いんじゃないかな?」と思います(笑)。年上の方とご一緒する機会も多いのですが、第一線で活躍されている方って、言葉もそうだし、何かを見た時の吸収のしかたがすごく若々しくて、同世代と喋っているみたいな感覚になるんですよね。特にHYDEさんは、お肌もツヤツヤですし(笑)。
――HYDEさんは50歳を過ぎてから、アメリカで新人としてツアーをしたりとチャレンジを続けていますが、YUTAさんとどこかマインドが近いのではないでしょうか。
YUTA:いや、僕よりもマインドは強いんじゃないですかね? なぜ挑戦するのか、HYDEさんにきいたことがあるんです。「日本ではL’Arc〜en〜Cielのhydeの印象が強いから、誰も知らない国に行って1からやりたい」というようなことをおっしゃっていました。僕の場合とは逆だけど、すごく刺激をもらいます。
――プライベートの2人は、どんな話をするんですか?
YUTA:音楽の話はあまりしないですね~(笑)。僕が酔って「シャウトを見せてください」ってお願いするとHYDEさんは優しいからやってくださるんです。で、僕がそれを録音すると「はい、1万円ね」ってお茶目に返してくれる感じです。
――友達みたいなお付き合いなんですね。アルバム『Depth』のお話にまた戻りますが、「BAD EUPHORIA」以外の全曲の作詞と作曲にYUTAさんの名前がクレジットされています。セルフプロデュース・アルバムということでいいんですよね。
YUTA:はい。いろいろな人に助けてもらってできたと思います。
――では、制作のお話をきかせてください。一番最初に作り始めた曲はどの曲でしたか。
YUTA:「Save You」かな。ちょっと爽快な、日本のメロディーを意識した曲を作りたいというところから始まって。日本のトラックメーカーの方たちと一緒に作ったのですが、サビはみんなで歌えるメロディーにしたくて、作家陣みんなで歌い込みながら作りました。作って録り直してを繰り返す日々でしたね。
――リード曲の「Off The Mask」は、どんな感じで?
YUTA:「Off The Mask」がトラックの修正が一番多かったかも。最初のトラックからギターも追加したし、ドラムも強めにして、ブリッジの音も追加して。だんだんテンションが上がっていく感じにしたくて、リモートで話し合いながら修正していってもらいました。
YUTA ユウタ 'Off The Mask' MV
――YUTAさんの作った最初のデモは、どこまでできていたのですか。
YUTA:サビが出来上がっていたくらいですね。でも 「Off The Mask」は、メロディーよりトラック重視で曲を変えていきました。
――作曲家の方と話し合いながら、みんなでサビを歌って?
YUTA:そうなんですよ(笑)。あれ、結構緊張しましたね。たまに変なメロディーになっちゃったりして。
――そういう作業、めちゃくちゃ楽しかったんじゃないですか?
YUTA:初めはすごい緊張しました。いろいろな人がいるし。でも、だんだん楽しくなって(笑)。たまにめちゃくちゃ変な曲も出来上がるんですけれど、それもよい経験でしたね。
――歌詞は後から?
YUTA:はい。メロディーを作ってから。「BAD EUPHORIA」以外のサビは、ほぼ僕が作ったんですけど、メロディーができてから歌詞を詰めました。
ちょっと特殊かもしれないのですが、曲はコンサートをイメージして作ったんです。今回、ショーケースをやってみて「この作り方、合ってるな」と思いました。逆に、もっとコール・アンド・レスポンスでみんなと歌えるところあったのにとか、こうすれば歌ってくれるだろうな、手を挙げてくれるだろうなというところもわかったので、次に活かしたいと思います。
YUTA / 'Off The Mask' Live Sketch Movie
――「Off The Mask」の制作過程で、一番苦戦したのはどんなところでしたか。
YUTA:ブリッジのシャウトが難しかったですね。スクリームに手こずって、何回か録り直しました。韓国の家にはレコーディングブースがあるんですけど、どうしてもちょっと音漏れしちゃう。それを気にすると思い切り歌えなくて、変なクセがついてしまいそうなので、ちゃんとスタジオを借りて練習もしました。
チームのレコーディングとソロのレコーディングが重なっていて。両者では発声が全然違うから、チームの曲を歌ったらシャウトができなくなったり、シャウトするとチームに必要なクリーンな歌声がザラザラしちゃったりして。そこの切り替えが、これからの課題かもしれないですね。
――NCT 127公式YouTubeのレコーディングビハインド映像を見ると、NCT 127は歌入れが速くて驚きます。ソロとチームのレコーディングの違うところってどういうところだと感じましたか。
YUTA:あ~、確かにチームのレコーディングは早いかも。チームの場合は人数も多いし細かくスケジュールが組まれているから、時間内に終わらせなくちゃいけないですからね。でもソロは納得いくまで、とことんやらせてもらいました。その違いはありますね。
――曲作りは韓国と日本のリモートで行ったそうですが、完成までずっとリモートだったのですか。
YUTA:はい。トラックだけでなく、歌も韓国で録音したものを送って、調整したものを確認して。なかなか難しい部分も確かに多かったです。
――今回のレコーディングで大変だったのはどんなところでしたか。
YUTA:全曲を自分で歌うということ。1曲を通して自分の声しかないから、そこに面白みがないといけない。それを普段からやってのけているソロアーティストの方へのリスペクトが上がりました。
――アルバムを1人で作り上げて、今、どんな思いがあるのでしょう。
YUTA:形にできたのは、すごく大きな一歩だった。途中でボツになっていたら、自己嫌悪に陥っただろうな……。たくさんの人に助けてもらいながら1歩踏み出せたことは、僕にとって、すごく大きなターニングポイントになったと思います。
――ショーケースで歌ったのに、CDに収録されていない曲もありました。ということは……「次回作もある」と考えていいのですよね?
YUTA:はい、もちろんです!
――それは、楽しみです! 「ライブを考えて作った」というアルバムですが、10月に5都市9公演のショーケースツアー【YUTA Solo Debut Showcase Tour~HOPE~】を行いました。実際にファンの皆さんを前に歌った気分はいかがでしたか?
YUTA:めっっっちゃ、気持ちよかった!(笑)みんなが気持ちを作って来てくれて、すごく助けられました。感謝です。東京公演はスタンディングもあって、K-POPとJ-ROCKのハイブリッドな感じになったし。(ドラマで共演した)桜田通くんが東京2公演の両日に来てくれて、褒めてくれました(笑)。
YUTA / 'BAD EUPHORIA' Live Sketch Movie
――ライブをやるにあたって、こだわった点というのはどういうところですか。
YUTA:ショーケース全体のイメージは、バットヒーロー。照明、セットリスト、ステージ構成……、全部にこだわりましたけど、僕が「こういうのやりたいんです」と投げると、僕のスタイルや音楽性を理解してすぐに正解を返してくれるスタッフさんがいたからできたと思っています。ありがたいし、素敵な現場でした。
――冒頭にも少し挙げてくださいましたが、ショーケースをやってみて良かった点、次に向けての反省点も見えたと思うのですが。
YUTA:良かったところか……。でも、「できる」と思ったのは、すごいことかも。暴れるつもり満々だったけれど、ダンスをしない僕にどんな反応が返ってくるかはわからなかったから。やってみて、次に繋げられる感覚がキャッチできたのは、よかったですね。
反省点や課題はめちゃくちゃあるけれど、それはまたバンドのみんなとスタッフのみんなと修正して、やりながらスキルを上げていかないといけないなと思います。
――バンドと一緒だったのも、「できる」と思った要因かもしれませんね。
YUTA:バンドと一緒にできたのがすごいよかったです! イヤモニから来るバンドの音がかっこよすぎて(笑)。
自分のやりたい音楽をやって、
そこについて来てくれるファンのみんなと音楽を共有していたい
――ソロ活動といえば、日本では俳優活動もされています。お芝居のお仕事についてはどういうスタンスなのでしょう。
YUTA:僕的にはずっと「音楽が主軸」という気持ちでやってきて、エンターテインメントってどこか繋がっているところがあるから、演技だってそつなくやれると思っていました。でも、あるお仕事で演技の奥深さに触れて、すごく刺激を受けました。ちゃんと演技の仕事にも向き合いたいなという気持ちが強くなりましたね。
――演技から音楽活動にフィードバックできるものもあるんじゃないでしょうか。
YUTA:役になりきった時、入りきった時というのは似ている気がしますね。ゾーンにどっぷり入るというか……。でも僕、まだ行ききってないんですよね……。演技も音楽も、舞台の上で何も考えずに行ききった人たちって、通じるところがあるんじゃないかと思います。
――YUTAさんは、NCT 127のメンバーとして世界で活躍していますが、「世界でエンターテインメントする」ということを当事者はどう考えているのか気になります。ほんの一握りの人しか経験できないことじゃないですか。
YUTA:そうですよね、ありがたいことに、並大抵のことにはうろたえなくなりました(笑)。世界中のファンの方と会って、その反応を見られるのはすごくありがたいです。、いろいろな環境で、その時々で違う出来事があるから、瞬発力や精神力みたいなものはついた気がします。昔は、ファンの方たちの「気」に負けちゃう時もあったんですよ。
――5万人とか10万人とかの前でライブをするって、どんな気持ちなんですか。
YUTA:あんまり緊張しないんですよ、僕。たくさんの方がいらしてくれるのはありがたいです。でも、人数じゃなく、5万人でも1,000人でも、オーディエンスを前に、どういう共鳴を作れるかが僕はステージの面白さだと思っています。
――NCT 127のメンバーとして育まれた自分の「核」ってなんだと思われますか。
YUTA:流されないことかな。チームの場合は考え方や経験もさまざまだし、音楽スタイルや環境も変わったりする。自分はこれが好きなのに、言っちゃいけない雰囲気を感じる時が誰しもあると思いますが、「こういうことがやりたい」、「こういう人になりたい」と目標を掲げることに対して、恥ずかしがらない、流されない気持ちを持つことが大事だと学びました。
――NCT 127は人数も多いし、メンバー間で調整するのも大変そうですよね。
YUTA:チームでは、当然どこかで折れなきゃいけないこともあります。それはメンバー誰もが。でもその中で、各メンバーが絶対に譲れないものはある。そこをいかにプレイヤーとして守りながらチームの作品の完成度を上げるかが大事なんです。
――それぞれに楽しさはあると思いますが、ソロにおいての楽しさとは?
YUTA:全部直で還元されることかな。チームの時より「失敗したらどうしよう」という不安やプレッシャーも大きいけど、その分跳ね返した時の達成感は、チームとはまた別の感覚です。
――YUTAさんは、挑戦することが好きなんですね。
YUTA:いや、タイミングだと思います。韓国に行った時もそうだし、今やるべき、そう思ったんです。
――挑戦を続けていける源は何なんですか。
YUTA:単純に「好き」ということなんですよね。ずっと音楽のことを考えているし、リラックスする時も音楽を聴いているし。それがすごく大事だから、全然苦じゃない。そして「もっとみんなに見せたい」、「もっと完成度を上げたい」って思っちゃう。
――お休みの日も音楽漬けですか?
YUTA:音楽を聴いていますね。外に出ない。ロックを聴いたり、ボーカルレクチャーの動画を見たり。
――仕事に活かそうとして?
YUTA:いや、見たくて見てるんです。だから、リラックスできる。
――趣味が仕事になっている人ですね。
YUTA:そうかもしれないですね。
――イコール天職ってことなんじゃないですか。
YUTA:そうですかね。ありがたいです。
――夢を叶えるって、自分の推進力がないとできないですよね。
YUTA:そうなのかな。僕はずっと言っているんだけれど、本当に周りの方に恵まれてる。「やりたい!」と言うのは僕だけど、足りないところを埋めて、それを上手に形にしてくれるみんなのおかげですね。
――そうさせる力がYUTAさんにあるからだと思いますよ。
YUTA:それこそ、ゾーンに入った俺は結構強い気がします(笑)。
――ゾーンに入る瞬間って、わかりますか?
YUTA:さっき「まだ行ききったことがない」と言ったけど、前兆は感じる時があります。
――ライブはゾーンに入りやすいのでは?
YUTA:うん。でも、最後の最後とかで入っちゃうんですよ。だから、すぐ終わっちゃうの(笑)。中盤までは、「バミリはここか」とか、「水置いとかなきゃ」とか、雑念が多くて入れない。ゾーンに入る条件って、圧倒的な自信と安心感だと思うんです。だから何公演も積み重ねたツアーの終盤の、最後のブロックあたりで入ることが多いのかも。メンバーを見ていても、そう思います。
――日本でのソロ活動が終わった後の予定はどうでしょう。
YUTA:年明けから始まるワールドツアー【NCT 127 4TH TOUR 'NEO CITY - THE MOMENTUM’】の準備です。体調管理もしっかりしないと。
――体が資本ですものね。
YUTA:ほんとそうなんですよ。青汁と酵素ジュースとビタミンをしっかり飲んで、中から整えます。あとはしっかり寝て、加湿をしっかりする。
――体に加えて、メンタルをキープする上で大事なことって何でしょう。
YUTA:難しいな……。「失敗してもいいや。みんながいるから大丈夫」というのが本音です。
――ソロとしての今後の野望はありますか。
YUTA:来年は、フェスに出てみたいですね。サマソニはチームで出たことがあるけど、僕のこのサウンドでフェスに出てみたい。あとは……、やっぱり武道館!
――ロックアーティストとして、ちゃんとしたステップを考えているんですね。
YUTA:HYDEさんを筆頭に、カッコいい先輩たちを見ていますから(笑)。チームの活動もしっかり楽しみながら、自分の活動も頑張ります。
――先輩たちのように40代、50代になった自分は想像できますか。
YUTA:自分のやりたい音楽をやって、そこについて来てくれるファンのみんなと音楽を共有していたいですね。
――世界を舞台に活躍するアーティストに憧れて、韓国に渡る若い子も増えています。先陣を切っているYUTAさんが、後進に伝えたいことはどういうことでしょう。
YUTA:やってみた方がいい。やったら、たくさんのことを経験するだろうし、挫折もするだろうし。僕もそうだったけれど、やってみないとわからないことも多いから。10代で「やりたいことがある」って、当たり前じゃないと思うんです。だから、明確な目標があるなら、ちゃんと計画立ててやってみるのは、いいことだと思いますよ。10代は時間の余裕もあるしね。
――自分の10代に悔いなし?
YUTA:「なし」と言ったら嘘になりますけれど、やらなきゃいけないところをちゃんと繋げられたのはよかったと思います。
――現在、29歳。20代に悔いなし?
YUTA:悔い大あり! でも、学ばせてもらいました。「たくさんの経験があったから今がある」と思いたいですね。男は30歳からだからね! これからです!
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