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<コラム>リンキン・パーク、再始動までの7年間~ノスタルジーを超えた圧巻のパフォーマンスがまもなく日本でも
Text: 近藤麻美
Photos: James Minchin III.
全世界累計アルバム・セールス1億枚以上を記録、2000年代にデビューしたバンドでは屈指の人気を誇り、常に時代を牽引してきたモンスターバンド、リンキン・パークの来日公演が発表された。約7年ぶりのニューアルバム『フロム・ゼロ』は、2024年11月20日公開(集計期間:11月11日~11月17日)のBillboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で初登場2位と、変わらぬ人気と期待の高さを証明。来年2月に開催される来日公演では新作やこれまでの代表曲が余すことなく披露されるだろう。
実に12年ぶりとなる来日公演に向けて注目が集まるなか、息を吹き返した彼らの再始動までの7年間を振り返る。
リンキン・パークは今年8月、ソーシャルメディア上で、謎の100時間カウントダウンを開始した。2017年のチェスター・ベニントンの突然の死以後、ほぼ活動休止状態だった彼らから予告もなく放たれたサプライズに、ネット上では、何かビッグなことが起こるのではないかという推測が飛び交った。そして9月5日、ファンの期待と困惑の中、バンドは再始動を宣言。加えて、新ボーカリストの加入、ニューアルバムのリリース、さらには、それに伴うアリーナ6公演のワールドツアーも発表された。
解決不可能とも思われた、チェスターに代わるボーカルの発掘
リンキン・パークが還ってきた。オリジナルメンバーのマイク・シノダ、ブラッド・デルソン、デイヴ・「フェニックス」・ファレル、ジョー・ハーンに、二人の新メンバー、エミリー・アームストロングとコリン・ブリテンを加えた新体制で復活を果たしたのだ。
左から:ブラッド、フェニックス、エミリー、マイク、コリン、ジョー
再始動までに7年という時間を要したのには、チェスターの死という、あまりにも突然過ぎる悲しい出来事からの回復もあるが、それに加えて、カリスマ的で稀有な才能の持ち主だったチェスターに代わるボーカルの発掘という、解決不可能とも思われる難題があったからだ。
遡ること2018~19年、マイク、ブラッド、デイヴ、ジョーの4人は、ひっそりと集まり始め、多くのミュージシャンたちと協力し、様々なセッションに取り組んでいた。デイヴによると、それはバンドを再開しようとする目的があったわけではなかったようだ。そんな中、エミリーとコリンに特別な親近感を覚えたという。マイクは、彼に最初にエミリーを紹介したいと言ったのは、元ドラマーのロブ・ボードンだったと回想するが、彼女をバンドのボーカリストとして押し込もうとしていたわけではないと明言している。エミリーは当初、メンバーたちが再び創作活動を始めたときに招聘された数人のミュージシャンの1人であったが、議論の中で、彼女を新シンガーとして迎えることは、自然な成り行きだったという。
「大きな転機は、突然ジョーから連絡が来たときだったと思う。僕たちは、自分たちが書いている新しい音楽について話し合った。その時点では12曲ほどあって、エミリーはそのうちの1曲か2曲でリードかコーラスの一部を歌い、2曲でバックコーラスを歌っているだけだった。そこでジョーが『エミリーに全部歌わせてもいいかな?』と言ったんだ。彼はシリアスだった。『彼女の声をリードとしてデモを作ることができるかな? 特定の曲で、曲全体を彼女に歌わせて、どんな感じか聞いてみてはどうだろう?』って」。このジョーの鶴の一声がバンドにもたらした功績は、マイクが後に「エミリーの声を聴き始めたとき、僕の脳は初めてそれをリンキン・パークの曲として受け入れたような気がした」と語っていることからもわかるだろう。
また、ロブの脱退に伴い、新たに迎えたのがドラマーのコリン・ブリテンだが、彼は、様々な楽器を操ることができるだけでなく、パパ・ローチやONE OK ROCKなどとも共作している多彩な才能の持ち主だ。メンバーとは、セッションで出会ってから、作曲やプロデュースを手伝うようになったそうだが、最終的にマイクが「ドラムを叩ける奴が必要なんだけど、それは君がやりたいことかな?」という流れで加入したそうだ。
こうしてみると、すべてがスムーズに進んでいったかのようだが、デイヴは当時を振り返り、「自分の頭の中が100とおりの場所にあった」と答えている。また、マイクも「制作の途中で、ラインナップが流動的になるかもしれない、ボーカリストが複数になるかもしれない、名前が変わるかもしれない、そういうことを話し合っていた」と語っており、ゴールを見据えた活動ではなかったことを告白している。
しかしながら、エミリーとコリンを迎えたことにより、リンキン・パークを復活させるというアイデアが大きく前進したという。「ふたりと一緒に仕事を進めるにつれて、彼らのワールドクラスな才能、仲間意識、そして制作過程を楽しむことができた」とマイクは語る。「バンドがどこに向かうのかを理解するために曲を書いていた。アルバム制作が原動力となり、エミリーとコリンにショーの在り方を教え込む頃には、楽しくなっていた」と作業には十分な時間をかけ、すべてがオーガニックに進んだことを明らかにした。
チェスターのレガシーを表現するエミリー、12年ぶりの来日公演
※今回のツアーにブラッドは不参加
このようにして制作されたのが、8枚目のスタジオアルバム『フロム・ゼロ』だ。チェスターのいない、初めてのフルアルバムがどのような作品になるのか、疑念を持ったファンも多かったと思うが、先行シングル「ジ・エンプティネス・マシーン」を聴いて、それが杞憂に終わったことがわかる。リンキン・パークのDNAを見事に受け継いだこの曲は、マイクのメロディアスなボーカルから始まり、エミリーの破壊的な咆哮へと流れる、正真正銘のバンガーだ。
また、アルバム・タイトルの“From Zero”には2つの意味が込められているという。それは、バンドの最初の名前である“Xero”にちなんだものであると同時に、バンドがこのアルバムで踏み出そうとしている新たな章を意味するものでもある。マイクは、「アルバム・タイトルは、このささやかな始まりと、僕たちが現在歩んでいる旅の両方を意味している。このアルバムは、音的にも感情的にも、僕たちの代表的なサウンドを継承しながらも、新たな生命に満ち溢れた、過去、現在、そして未来についてのものだ。新旧のバンドメンバー、友人、家族、そしてファンへの深い感謝の気持ちを込めて作られた作品だ。僕たちは、リンキン・パークが長年かけて築き上げてきたものを誇りに思うし、これからの旅にワクワクしている」とも語っている。そして、なんと筆者がこの記事を執筆している11月22日現在、当アルバムがUKチャート初登場第1位を獲得したというニュースが飛び込んできた。これは、2003年の『メテオラ』、2007年の『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』、2012年の『リヴィング・シングス』に続く、4作目のアルバム1位となる。
さて、気になるのは新章リンキン・パークのライブだ。筆者は、先に述べたアリーナ6公演ツアーのロンドン@O2アリーナで、そのすべてを観ることができた幸運なファンの一人だが、結論から言うと、予想も不安も吹き飛ばす素晴らしいショーだった。詳細については、当サイトにてライブレポートを寄稿しているので、そちらを読んでいただきたいのだが、ノスタルジーを超えたセットとパフォーマンスは圧巻、ステージとオーディエンスの両方から発するエネルギーは莫大、会場は計り知れない熱気に満ち溢れていた。エミリーは、往年のクラシックソングを、リンキン・パークのトレードマークを崩すことなく、豊富な声のトーンとピッチを操りながら、時にしっとりと、時に獰猛に歌い上げる。彼女の存在は現在のリンキン・パークにとって唯一無二、リフレッシングかつライフギビングだと言えよう。エミリーは、チェスターのボーカル・パフォーマンスに関して、「彼の持つエネルギーと共感性がミックスされた歌声と叫びは、私に大きな衝撃を与えた。彼は今でも私にとってインスピレーションの源であり続けている」と語っている。彼女はチェスターのレガシーを、彼女なりのパッションでもって表現しているのだ。
その新章リンキン・パークがついに『From Zero World Tour』来日公演開催を発表した。最後に日本で公演したのが、2013年の【サマーソニック】だったことを考えると、12年ぶりの来日というだけでも感無量だが、さらに新体制、新しいアルバムの披露記念ということも相まって、期待と興奮が高まる。また、2月11日はマイクの48回目の誕生日ということもあり、バンドにとってもハッピー&スペシャルなショーとなるに違いない。これまで彼らの復活を待ち焦がれた長年のファンも、活動休止中にバンドを知った新しいリスナーも、十分に曲を聴き込んで参加してほしい。シンガロングもコーラスも、そのすべてがリンキン・パークの音楽のあるべき姿を強く、楽しく表現しているのだから。
公演情報
【LINKIN PARK: From Zero World Tour 2025】
2025年2月11日(火・祝)OPEN 16:30/START 18:00
2025年2月12日(水)OPEN 16:30/START 18:00
埼玉・さいたまスーパーアリーナ
公演特設サイトはこちら
VIP GOLD席:88,000円(スタンド指定席(ステージに近い前列エリア)/グッズ付き/VIP専用入場ゲート/物販優先レーン)
VIP SS席:58,000円(スタンド指定席(ステージに近いエリア)/グッズ付き/VIP専用入場ゲート/物販優先レーン)
VIP S席:38,800円(スタンド指定席/グッズ付き/VIP専用入場ゲート/物販優先レーン)
VIP GOLDスタンディング:49,800円(アリーナ前方スタンディングチケット(整理番号付き)/グッズ付き/優先入場)
VIP スタンディング:29,800円(アリーナスタンディングチケット(整理番号付き)/グッズ付き/優先入場)
アリーナスタンディング(整理番号付き):15,800円
SSスタンド指定席(FC限定エリア):17,800円
SSスタンド指定席:17,800円
Sスタンド指定席:13,800円
Aスタンド指定席:8,800円
※すべて税込み、おひとり各日6枚まで。
※VIP席:VIPグッズは当日会場にてお渡しいたします。後日郵送やお渡しはいたしかねますのであらかじめご了承ください。VIPグッズの詳細につきましては後日公演特設サイトにて発表いたします。クレジット決済のみでの販売になります。
リリース情報
アルバム『フロム・ゼロ』
2024/11/15 RELEASE
WPCR-18716 2,860円(tax in.)
関連リンク
リンキン・パーク 公式サイトリンキン・パーク 日本レーベルサイト
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