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<インタビュー>東京ディズニーシー®の新テーマポート「ファンタジースプリングス」をイメージした楽曲を歌うレイチェル・ポッター、元ディズニーキャストが歌手デビューの夢を掴むまで

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Text: Mariko Ikitake
©Disney

 2024年6月にグランドオープンを迎え、連日大盛況を見せる東京ディズニーシーの新しいテーマポート、ファンタジースプリングスをイメージした楽曲「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」。歌詞には冒険と魔法、ファンタジーにときめく思いが込められており、“魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界”を想起させる。

 この曲を歌うのが、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのキャストとしてキャリアを積み、ブロードウェイ俳優やソングライターとして歌手活動もするアメリカ人歌手のレイチェル・ポッター。2008年~2009年に日本に住んでいたこともあるというレイチェルに、日本のディズニーファンたちにたくさんの喜びを届けたこの楽曲について、また、パフォーマンスと音楽における豊かな経験により彼女が夢を叶えた道のりについて話を聞いた。

▶▶「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」作曲家、ネイサン・パジェットのインタビューはこちら

──「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」が日本でとても好評を博しています。この曲の歌唱を担当することになった経緯について聞かせてください。

レイチェル・ポッター:作曲を担当したネイサン・パジェットとはよく仕事をするんです。彼はオーランド在住で、彼からデモの歌入れをよく頼まれるんですよ。今回も彼が書いたこの曲を歌ってほしいと頼まれました。声をかけてもらってとても感謝しています。このプロジェクトに関わっているミュージック・ディレクター/プロデューサーのダン・スタンパーとも、何年も前に仕事をしたことがありました。実は、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのキャストだった頃にいろいろな楽曲をレコーディングさせてもらったんです。それからもう何年も経ちましたが、今でもディズニー関連のプロジェクトに関わらせてもらっていて。今回も何年来の友人から声をかけてもらって実現したので、とても嬉しく思っています。

──ネイサンとは、どうやって知り合ったのですか?

レイチェル:キャストメンバーだった頃にオーランドの共通の友人を通して知り合いました。それから何年も、彼はデモを録るときに真っ先に私に声をかけてくれます。彼が私の声に価値を見出してくれているのはありがたいことですし、幸い、今回の日本のチームも私の声を気に入ってくれて嬉しかったです。

──「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」のどんなところが、ゲストの心を惹きつけていると思いますか?

レイチェル:琴線に触れるメロディーじゃないでしょうか? セリーヌ・ディオンの名曲バラードを彷彿とさせる、オーケストラをバックに高らかに歌い上げられるメロディーに感情を揺さぶられずにはいられないと思います。聴く人にエキサイティングでマジカルな体験をさせてくれる、そんなメロディーを歌うことができて光栄でした。ファンタジーや驚き、ワクワクが詰まったディズニーにぴったりの曲だと思います。パーク内に新しいエリアがオープンし、誰もがディズニーの新たな冒険にわくわくしている、そんな気持ちにこの曲はぴったりだと思います。


──ネイサンから歌唱面に対して、どのような要望がありましたか?

レイチェル:最初にネイサンとダンと私だけでセッションを行い、彼らが何を求めているのか話し合いました。私らしさを出すことも彼らは受け入れてくれて、私なりの解釈を信じてもらえたのは光栄でした。

──具体的にはどういうところに自分らしさが出せたと思いますか?

レイチェル:どんな歌い手にも、その人ならではの声色があります。彼らは、そんな私自身の声色で歌うことを奨励してくれました。ただ、同じ音符を歌うにしても、笑顔で歌ったり、特定の単語を強調したりと、微妙な選択によってトーンが変わります。たとえば「fairy」にアクセントを置くのか、「beginning」に置くのか、といった強弱の付け方など、特定の音符をどう際立たせるかを話し合いました。こうしたひとつひとつの小さな決定が、大きな違いを生んでいきます。

──キャストの仕事もされていたということですが、他国のパークに行ったことはありますか? また、アメリカのパークの思い出を聞かせてください。

レイチェル:キャストとして働いていたフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのことは隅々まで熟知しています。いつか世界のディズニー・パーク&リゾートを全制覇したいと思っています。

ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの一番の思い出は、やっぱりキャストとして働いたときのことですね。アメリカの場合、大学に進学すると、普通は大学の敷地内か近くに住んで学校中心の生活を送ることになります。私は学費を自分で工面しないといけなかったので、大学時代、私の人生はウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート中心にまわっていました。もうやっていないのですが、「Wishes: A Magical Gathering of Disney Dreams」というショーが一番好きでした。ティンカーベルがお城から出てきて、まさにマジカルなショーでした。

カリフォルニアのディズニーランド・リゾートにも行ったことがあります。フロリダのパークと似ているようで違うディズニーランド・リゾートを見るのは魅力的な経験でした。一番のお気に入りはディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パークにあるカーズランドで、アトラクションや、映画『カーズ』を再現したルート66の街並みが最高です。ディズニーでの経験があったからこそ、ブロードウェイのミュージカルやレコーディング、交響楽団と世界中をまわる仕事に繋がったと思っています。

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いろんな扉を叩き続ければ、どれか開く

──ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでアリエルやベル、ニモ役を演じていたそうですが、当時のことをもう少し詳しく聞かせてください。

レイチェル:「Voyage of the Little Mermaid」でアリエルを5年間演じました。ダブルシフトの時は1日に最高で14回も「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌いました。ディズニー・ハリウッド・スタジオで行われたショーで、素晴らしいダンサーや美しい衣装に溢れた、見事なステージでした。

その後、「Finding Nemo: The Musical」にも参加しました。ディズニー映画『アナと雪の女王』のチームによる音楽と、ブロードウェイミュージカル『ライオン・キング』のパペットをデザインしたマイケル・カリーが手がけるパペットが登場する見応えのあるショーでした。歌いながら、演技をしながら、ニモの大きなパペットを操作するのは挑戦的で、それまでとは全く違う斬新な経験でした。アリエルとベルという二人のプリンセスをやった後で、そんな風に演じたので、全然違いますよね(笑)。でも、この経験も大好きでした。

──レイチェルはディズニーのどんなところに惹かれてウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートで働こうと思ったのですか?

レイチェル:純粋に歌う仕事がしたかったんです。パークで働く前は演技の経験はありませんでした。子供の頃から教会で歌ったり、曲を書いたりはしていましたが、正式な音楽教育のバックグラウンドがあるわけではないです。オーディションは、いま思うと恥ずかしいものでしたね。履歴書の書き方さえ知らなくて、(普通はミュージカル界における経験を書くべきところ)「GAPでレジ係のバイト」と書いたんです(笑)。ありがたいことに審査員が私に何か光るものを感じてくれたようで、「Voyage of the Little Mermaid」にキャスティングされました。

──ブロードウェイ時代では、どのようなことを経験しましたか?

レイチェル:最初に手にした大きな役は『ウィキッド』の全国ツアーのグリンダ役の代役でした。それから『アダムス・ファミリー』のウェンズデー役を演じました。ブロードウェイでウェンズデーを演じるのは、クリスタ・ロドリゲスに続いて私が2人目でした。モーティシア役のブルック・シールズと一緒だったんです。ブロードウェイで再演された『エビータ』ではミストレス役でリッキー・マーティンと共演したこともあります。ブロードウェイに立つ間も、私はずっと曲作りをしていて、アーティストデビューを目指して、ナッシュヴィルに拠点を移し、オーディション番組『Xファクター』に出ました。その番組でトップ12まで残ったのがきっかけで、カントリー・アーティストとして活動を始めました。

──ブロードウェイもアーティスト活動も厳しい世界だと思います。くじけそうなときも前を向けるような、背中を押してくれた存在はありますか?

レイチェル:どんなアーティストも、自尊心を強く持つことが大事だと思います。私には幸い、「頑張ってやり続けなさい」と言い続けて応援してくれる両親がいたので、失敗さえも価値があり、自分を成長させてくれるものだと学びました。「自分に与えられる運命ならば、努力さえ続けていればチャンスは必ずやってくる」「いろんな扉を叩き続ければ、どれか開く」と信じて、その信念を失ったこともありません。

当然、40歳になった今は、昔よりも現実が見えるようになりましたが、努力を続ければいつか成功すると信じていたからこそ、学び続けました。失敗したとしても、そこには学びしかありません。躓いて諦めるのではなく、立ち上がって、埃を払って、そこから学び、前に進むだけ。そう考えることで、私はいい結果に繋がりました。

上手く行かなかったら、「こっちのドアを試してみよう」と方向転換をすればいいだけのことです。その諦めない精神、たくましさの糧になっているのは、「私はこれをやるために生まれてきたんだ」という強い信念です。これが私の進むべき道なら、いずれは必ず道が開けるはずだと信じていますから。

──ありがとうございます。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

レイチェル:みなさんが「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」を愛してくださって、すごく嬉しいです。ぜひ日本に行って、この曲に心を動かされた方々に会いたいですし、東京ディズニーシーでファンタジースプリングスも体験したいです。個人的にも大好きな曲なので、この曲がみなさんの心に響いたことが本当に嬉しくもあり、光栄です。私事ではありますが、春に交響楽団と共演したアルバムをリリースする予定です。ディズニーの名曲を含む楽曲をフルオーケストラと新録したもので、「ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス」のサウンドと似たマジカルな雰囲気もあるので、ぜひ私のSNSなどでチェックしてみてください。

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