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<インタビュー>ももクロ玉井詩織、ソロアーティストとして向き合ったコンプレックス

インタビューバナー

Interview & Text:Takuto Ueda
Photo:興梠真穂

 ももいろクローバーZの玉井詩織が、ソロアーティストとしてビルボードライブに初登場する。

 2010年5月にシングル『行くぜっ!怪盗少女』でメジャーデビューを果たし、2023年には結成15周年を迎えたももクロ。その“黄色担当”としてアイドル活動を行う傍ら、モデルや役者、バラエティ番組への出演など、活躍の場をマルチに広げてきた玉井は、2023年1月から満を持してソロプロジェクト『SHIORI TAMAI 12 Colors』を始動。12か月連続で様々なテーマの楽曲を発表し、その集大成となるアルバム『colorS』を今年6月にリリースした。TeddyLoid、miwa、志磨遼平(ドレスコーズ)、亀田誠治、TAKURO(GLAY)などバラエティ豊かなクリエーター陣の楽曲提供を受け、持ち前の儚げで切なさが漂う歌声を生かしながら、多彩な表現力で楽曲ごとの世界観を彩っている。

 3月に東京国際フォーラム、6月に大阪フェスティバルホールで行われた【いろいろ】に続く今回のソロコンサートは、親密なクラブ会場が舞台。普段のグループ活動とはまた違った、玉井の新たな魅力に触れられる貴重な機会となる。本公演の開催に向け、これまでのソロ活動における歩みを振り返りつつ、本人に意気込みを語ってもらった。

ずっと自分の声は無個性だと思っていた

――2023年から本格的にソロ活動が始まり、音楽に触れる時間も増えたのではないかと思いますが、そもそもリスナーとしてはどんな音楽を聴くことが多いですか?

玉井:家庭的に音楽を聴きながら育った環境ではないんですけど、テレビっ子だったのでドラマの主題歌はよく聴いていました。特定のアーティストにハマったりするのではなく、幅広く聴いていたほうだと思います。

――特によく聴いていたなと思うジャンルだったりムードを挙げるとしたら?

玉井:どうだろう。でも、季節に合わせた曲を聴くことは多かったかもしれないです。あと、ソロのアーティストさんより、デュオやグループの楽曲をよく聴いていた気がします。コブクロさん、ゆずさん、モーニング娘。さん、ORANGE RANGEさんとか。今は大人になって歌詞を理解できるようになったのでしっとりとしたバラードも聴きますけど、子どもの頃はメロディーが楽しい曲とか、いろんな声がして楽しい曲を聴いていることが多かったと思います。

――当時の流行りにも乗りつつ?

玉井:そうですね。あと、高校時代はワン・ダイレクションさんとテイラー・スウィフトさんをよく聴いていました。英語なので歌詞を全て理解していたわけではないんですけど、メロディーラインに惹かれたりして。テイラーさんに関しては、女性の目線で自分の言葉を紡いでいるスタイルがかっこいいなって憧れていました。ほかにも洋楽はビートルズさんとか、メジャーなアーティストは聴いていました。

――『colorS』には多彩な楽曲が揃っていますが、玉井さんの趣味嗜好に近いなと感じる楽曲はありますか?

玉井:わりと両極端ですけど「泣くな向日葵」と「Sepia」ですかね。「Shape」や「Another World」みたいなおしゃれな曲は、私としては少し背伸びしている感じがあって。今はちょうどいい年齢になったと思うんですけど、昔はそういうタイプの曲に手を出すことがあまりなかったんです。もう少しポップな感じの曲という意味では「泣くな向日葵」が近いと思うし、「Sepia」は分かりやすく王道のバラードで、そういう曲も馴染みがあります。

――実際に「背伸びしている感じの曲」を歌ってみてどうでしたか?

玉井:「Shape」は最初にデモを聴いたとき、すごく難しそうだなと思いました。なので、レコーディングのときは少しドキドキしていたんですけど、歌ってみたら意外としっくりきました。自分では歌の引き出しが少ないほうだと思っていて、そこを広げていきたいという想いも込めたアルバムになっているんですけど、まさに「Shape」は歌っていくなかで出てきた新しい引き出しの一つでした。普段、グループ活動では明るく元気に歌うことを意識しているんですけど、私の声はほかのメンバーと比べると落ち着いたトーンだと思うので、意外とこういう曲が歌いやすいのかもしれないです。

――新しい発見ですね。

玉井:「Shape」も「Another World」もラップパートがあって、そこは落ち着いたトーンで歌うよう意識したし、例えば「Shape」のサビはファルセットも使ったりしていて、けっこう幅があるので、どちらも昔だったら歌えなかっただろうなと思います。グルーヴ感もいつも歌っている曲とは違う気がしますね。


▲「Shape」(from 「いろいろ」-SHIORI TAMAI SOLO CONCERT at TOKYO INTERNATIONAL FORUM- Blu-ray)ライブ映像

――あらためてご自身の歌声を客観視したとき、個性や強みはどんなところにあると思いますか?

玉井:ほかのメンバーがけっこう個性的な声を持っているなかで、ずっと自分の声は無個性だと思っていたので、そこはコンプレックスに感じていた部分でした。でも、だからこそ誰かと歌声を重ねたときにぴったりユニゾンできる声なんじゃないかとも思っていて。無個性というとマイナスに聞こえるかもしれないけど、誰とでもマッチする声という意味では汎用性が高いのかもしれないです。グループの曲ではハーモニーの部分を任されることも多いので。

――もともとはコンプレックスだったんですね。

玉井:私自身、少し聴いただけで誰か分かるような声にはずっと憧れていて。今はメンバーが4人なのですぐに聞き分けられると思うんですけど、例えば6人だった時代は、私の声を認識してもらえるのは一番最後だろうなと思っていました。

――でも、そうやってハーモニーの中に自然と溶け込める透明感は武器でもあると思います。これまで自分の歌声の強みを発揮できたなと思う曲はありましたか?

玉井:最近は事前に歌い分けを決めてからレコーディングするんですけど、昔はとりあえず全員がフルコーラスを収録して、良かった人がパートをゲットしていくオーディションみたいなシステムだったんですよ。特に「仮想ディストピア」は、自分が落ちサビをもらえた曲の中ではとても印象的でした。もともと喉が弱くて、2daysライブをしたりすると二日目の朝にはガラガラになっていたりして、そういう部分でも歌、特に高いキーへの苦手意識がずっとあったんです。でも、「仮想ディストピア」はけっこうキーが高いんですけど、レコーディングでは裏声との切り替えが上手にできた手応えがあって、完成した音源を聴いたら落ちサビのパートをもらえていたので、自分の中の達成感とスタッフさんたちの評価が一致した感覚で、すごくうれしかった記憶があります。

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玉井詩織「colorS」

colorS

2024/06/04 RELEASE
KICS-4153 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.暁
  2. 02.Another World
  3. 03.日常
  4. 04.Eyes on me
  5. 05.Spicy Girl
  6. 06.泣くな向日葵
  7. 07.HAPPY-END
  8. 08.マリンブルー
  9. 09.Sepia
  10. 10.宝石
  11. 11.ベルベットの森
  12. 12.We Stand Alone
  13. 13.Shape
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