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<インタビュー>『東京国際映画祭』フェスティバルソング「Desire」で話題の19歳シンガー、Hibiki

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Interview / Text:ふくりゅう

 日本発のポップカルチャーに世界から注目が集まる2024年。グローバルでの活躍が期待できる注目のシンガーが現れた。アジア最大級の映画祭『第37回東京国際映画祭 / TIFF2024』フェスティバルソング「Desire」を歌うHibikiだ。

 九州在住、2024年4月から大学へ進学した彼女。高校時代、さまざまなオーディションやコンテストに参加し、昨年末に放送されたTV番組ではBTSのメンバー、JUNG KOOKの「Seven」を歌唱し、驚異の歌唱力の高さで話題となった逸材だ。

 2024年10月23日にリリース、コライトで手掛けたデビュー作「Desire」は、全編英語詞によるジャージークラブを用いたアッパーなダンスチューン。高揚するサウンドとともにアンチや炎上をテーマにした、〈I know you are just a hater(あなたが ただのアンチだって知ってる)〉というリリックを、エモーショナルかつ伸びやかな歌声で解き放つ。意志の強さを感じられる眼差し、巧みなボーカリゼーションから力強い人間像が浮かび上がってくる。

 『第37回東京国際映画祭 / TIFF2024』は、10月28日から11月6日まで10日間にわたって開催。日本発のコンテンツがグローバル・マーケットで脚光を集める昨今。新しい才能、Hibikiの名が世界へ轟く日は近いかもしれない。事前情報一切なし、謎のベールに包まれた彼女に話を聞いてみた。媒体初インタビューである。

どこを見ても山という環境

――九州のどんなところで生まれたのですか?

Hibiki:大分寄りの福岡で、めちゃめちゃ田舎でした。どこを見ても山という環境で。一番近いコンビニまで徒歩50分ぐらいかかります。

――それは本当に遠い。ちなみに高校時代はどんな感じだったんですか?

Hibiki:部活は合唱部に入って、全国大会に二度出ました。花道部にもいて、九州で5位になったり、市長さんの前で“自分たちの住んでいる市内をどう活性化させるか?”を考えてプレゼンで発表して優勝するなど、いろんな活動をやっていました。

――おおお、それはすごいですね。活発な活動に目覚めたきっかけはあったのですか?

Hibiki:中学3年生の頃に今通っている大学を知って、活動をアピールする入試があることを聞いて、もともと勉強ができるタイプではなかったのでこれしかないと思って(笑)。

――なるほど。

Hibiki:大学は友達が起業していたり、学生団体を立ち上げたり、面白いことを実行する子がほとんどなんです。先生も元国連の方がいらっしゃって、SDGs自体を作ったときの裏話が聞けたりするんですよ。

――大学ではどんなことを学んでいるのですか?

Hibiki:サスティナビリティ観光学です。簡単にいうとSDGsや観光による地域開発などです。

――幼稚園や小学校、中学生の頃はどんな子だったんですか? 山を走り回っていた?

Hibiki:走り回っていました(笑)。友だちと遊ぼうってなったら山しかないので。山登りが遊びみたいな。

――ある種、最高な環境ですね。

Hibiki:そうですね。小学校が全校生徒27人しかいなかったので、みんなで遊んでいました。そのなかでも私は、先生に言わせれば変な子だったみたいです(苦笑)。

――あはは(笑)。歌など、エンタテインメントを好きになったのも早かったんですか?

Hibiki:はい、音楽は小さい頃から大好きで。2歳からエレクトーンの音遊びをやっていて、3歳から本格的にエレクトーンを始めました。自分で音楽がやりたいって言ったらしいんですよ。

――良い話ですね。意識的に好きになったアーティストは?

Hibiki:お父さんが車で曲を流していて。そのときに、スパイス・ガールズの「ワナビー」という曲が流れて、一緒に「イエイ!」みたいな感じで歌っていました。




Spice Girls - Wannabe (Official Music Video)


――英語は?

Hibiki:保育園の頃から英会話教室に通っていて、遊び感覚で英語は楽しんでいました。ただ、中学から高校までは学校の勉強の英語がダメで。ついていけませんでした。今頑張っています(苦笑)。

――耳がいいから歌の英語もいけるんですね。

Hibiki:英語自体には長く親しんでいたので、発音は若干ネイティブっぽく喋れますね。

――楽器はエレクトーン以外だと?

Hibiki:中学生の頃に吹奏楽部に入って、フルートとパーカッションを3年間掛け持ちしていました。人数が9人しかいなかったので曲によってパートを変えていました。音楽はずっと大好きだったんです。楽器を弾いている人に憧れがありました。中1の頃にDREAMS COME TRUEさんのオープニング・アクトに吹奏楽部で出させていただいて。

――なんて良い経験を。

Hibiki:素晴らしい体験でした。やっぱり音楽いいなあって。

――スパイス・ガールズさんから始まって、どんな音楽遍歴なのですか? 

Hibiki:中学時代はSuperflyさんだったり、MISIAさんだったり。高校になって洋楽にハマりました。中2の頃に2週間だけカナダにホームステイする機会があったんです。学校にチラシが届いていたんですよ。でも、旅費などけっこう高いじゃないですか?

――そうですね。

Hibiki:特別に裕福な家庭ではなかったんですけど、お母さんが「広い視野を持つ経験をしてほしい!」と言ってくれて。

――ありがたいですね。

Hibiki:それが初めての海外となりました。その頃、エド・シーランさんの「シェイプ・オブ・ユー」が流行っていて。やっぱり英語っていいなって思ったんですよ。異文化の人とコミュニケーションも取れるし、何より音楽がカッコよくって。当時はYouTubeで音楽を楽しんでいました。

――最初に買ったCDは?

Hibiki:アリアナ・グランデさんの『マイ・エブリシング』かな。「バン・バン」や「ブレイク・フリー」が出た頃で、それを延々と聴いていました。

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憧れのままで終わらせたくはないなって

――自分でアーティストやシンガーになってみたいと思ったきっかけは?

Hibiki:もともと歌うことはずっと大好きで。ふと歌を習ってみたいなと思ったときがあって。趣味でももう少し上手くなりたい、みたいな。高校時代に合唱部をやりながら、冬ぐらいからボーカルレッスンをスクールで受けて。ステージで歌うことが楽しいなと思うようになりました。それで、これが仕事になったらいいなって。

――高校生ですか。最近ですね?

Hibiki:最近ですね。それでオーディションやコンテストを受けるようになって。そんなきっかけから今につながります。

――実行力、一歩踏み出すことの大切さを感じますね。

Hibiki:受かるにしろ受からないにしろ、音楽活動の視野が広がったことが印象深いですね。自分の歌を良いって言ってくれる人がだんだんと増えていくことで自信がついてきました。

――バンドをやったりはしなかったんですか?

Hibiki:もめるのが嫌いで(苦笑)。

――あはは(笑)。ちなみに、シンガーとしてのロールモデルや憧れはいますか?

Hibiki:デュア・リパさんですね。誰も真似ができないような声だったり、ちょっと曲の中にレトロ感があったり。グラミー賞でのパフォーマンスが素晴らしくて憧れました。デュア・リパさんは語尾の余韻の表現力が素敵なんです。あと、曲で言うとZEDDさんかな。【GMO SONIC】で人生初のフェスに行って最高でした。でも、知ったのは最近で。田舎にいたので本当に知らなかったんですよ。今はYouTubeやSpotifyで調べるようになりました。タイラさんやサブリナ・カーペンターさんも好きですね。移動中ずっと聴いていて。




Dua Lipa - Levitating Featuring DaBaby (Official Music Video)


――そんななかで、歌唱表現など自分らしさについてどんなところにこだわっていたりしますか?

Hibiki:最近発見したんですけど、感情を込めて歌うと自分の持っているテクニックをより発揮できるんですよ。自分の解釈する歌詞の世界に入り込んで歌うことを大切にしています。低音が武器だと思っていて、低音を活かせるようなテクニックもついてきたので。

――カラオケもよく行ったりしていた?

Hibiki:カラオケが実は地元になくて。一番近いカラオケが大分に行かないとなかったんです。車で40分とか。福岡に行こうとすると2時間かかるかな。

――そうだったんですね!

Hibiki:歌の練習もスピーカーとか持っていなかったので、スマホでYouTubeを大音量で流しながらしていました。イヤホンも持っていなくて。

――自分なりのセンスで上達してきたんですね。自分で曲を作ったり歌詞を書いたりすることに目覚めたのは?

Hibiki:書いてみたいなって思いつつも、なかなかうまくいかなくて。なので、最近ですね。コライトすることで歌詞の奥深さなどに目覚めていきました。歌詞は本当に日本独特ですよね。面白みを感じています。

――10月23日にリリースしたデビュー曲「Desire」はどうやって生まれた曲?

Hibiki:プロデューサーのMitsuさん、hitoさんと宇宙語(※適当に歌詞をメロディーに当てはめる意)で1時間ぐらいで、ざっくり作ったデモを改めてコライトチームで聴いたら「いいじゃん!」ってなって。すぐにみんなでフル尺を作りました。

――「Desire」の歌い出し、〈I know you are just a hater(あなたが ただのアンチだって知ってる)〉というフレーズはかなりのパンチラインですよね。どうやって生まれた?

Hibiki:デモ音源の時点で力強い曲になっていたので、宇宙語で歌ったときに、ちょっとヘイターっぽい感じを活かしたいなと思って書けました。仮タイトルから「Desire」にしていて、このワンワードに対してつながる歌詞が生まれてよかったなって。

――ちなみに『第37回東京国際映画祭 / TIFF2024』フェスティバルソングに「Desire」が決まった経緯は?

Hibiki:曲作りを進めていくなか、プロデューサーのhitoさんが「なんかイケる気がする!」って言いだして、プレゼンしてもらったら起用が決まって本当にうれしかったですね。ゼロイチからタイアップが内定するまですごいスピード感でした。

――ちょうど真田広之さんが主演、プロデューサーを務める『SHOGUN 将軍』がエミー賞史上最多の18部門で受賞するなど注目度が高まる良いタイミングですもんね。

Hibiki:フェスティバルソングに「Desire」が決まったこともそうですが、たくさんのニュース記事が掲載されて。驚きました。




第37回東京国際映画祭 予告編 37th TIFF Trailer


――怒涛のスピード感であり展開ですが、着実に一歩一歩道が開けていますね。Hibikiらしさというものは掴めるようになりました?

Hibiki:最初はプレッシャーに感じることもありましたけど、自分の強みが見えてきたり、だんだんと自覚できるようになってきました。成長できているなって。

――今後、どんなアーティストになっていきたいですか?

Hibiki:アジア版のデュア・リパさん的存在になりたいなって思いつつ、歌うのが小さな頃から好きで音楽大好きなので、そんな思いを憧れのままで終わらせたくはないなって思っていて、次は誰かの憧れになれたらなって。

――歌や音楽は文化や言語、国や国境を超えていけるものですもんね。

Hibiki:今通っている大学でも、いろんな国の方がいて。言語問わずイケてる曲は人気だし、刺激を受けています。私は寮にいるんですけど、めっちゃおもしろくて。共同キッチンなので英語、中国語、ミャンマー語が聞こえてくる、みたいな。それこそ嗅いだことのないスパイスの香りとか日常にあって。

――良い経験ですね。曲の幅が広がりそう。ちなみに、表現者として努力をされていることってありますか?

Hibiki:歌詞に対する自分なりの歌い方を大事にしていきたいですね。磨いていきたいです。

――今ってなんでも情報に溢れている世の中だから、もしかしたらいろいろ制限されていた幼少期の体験って個性を育むうえで大事かもしれないですね。

Hibiki:今思えば貴重な経験だったなと思います。それこそ「ネトフリって何?」って感じだったので(苦笑)。最近、ようやく環境が整ってきたので、今はいろいろ調べまくっていますね。

――両面あることが強みになりますよね。次なるステップ、ステージを楽しみにしています。

Hibiki:ありがとうございました!!!

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