Billboard JAPAN


Special

<対談インタビュー>syudou ×ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』OPクリエイター陣[渡邉直/tete/NIO]



インタビューバナー

Text&Interview:柴那典
Photo:大城為喜


 TVドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』のオープニング主題歌「あいきるゆぅ」を手がけたsyudouと、オープニングタイトルバック映像を手がけたクリエイター陣への取材が実現した。

 殺し屋コンビのゆるい日常と本格派アクションのギャップを魅力に話題を広めファンを増やしている『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ。ドラマのオープニング映像はアニメーションで制作され、水曜日のカンパネラ「エジソン」やano「ちゅ、多様性。」のMVなどを手がけた映像作家の渡邉直が監修、アニメーションプロデューサーのteteがプロデュース、ビジュアルアーティスト・映像作家のNIOが監督をつとめた。

 疾走感あふれるサウンドに多数のギミックを詰め込んだ楽曲「あいきるゆぅ」、そして60秒という短い時間に多数のクリエイターが参加しインパクト抜群に仕上がったオープニング映像はどのように作られたのか。それぞれの『ベイビーわるきゅーれ』愛と共に語り合ってもらった。

寄せては返すカオスがまさに『ベビわる』

――ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』主題歌の話を受けてのsyudouさんの第一印象は?

syudou:もともと『ベイビーわるきゅーれ』は観ていたし好きな作品だったので、まずシンプルに嬉しかったです。それと同時に、女の子の殺し屋が2人で一緒に住んでいるという実写だけどアニメチックな世界観の作品なので、面白い曲を作りたいと思いました。ただ格好いいとか、ただお洒落というよりは、ちょっと笑っちゃうような、一癖二癖あるような曲を作れたら映像的にも素敵になるかな、と思って作らせていただきました。

――syudouさんは『ベイビーわるきゅーれ』のどういうところに魅力を感じていましたか?

syudou:アニメーションに近い世界観なんですけど、2人のキャストがそこを演出も含めて面白く演じているから、実写で観ていてもアニメーション的な演出に全然違和感がなくて。現実的にはありえないような設定でも、本当にこういう生活をしている人たちがいるんじゃないのかなって親近感を感じるようなところがある。魅力は沢山あるんですけど、そういう現実的じゃないのに身近に感じるところが一番の魅力だと思います。日常に寄り添いつつ、急にサスペンスになる面白さがあるんですよね。

▲『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』第6話 予告

――クリエイターのみなさんは、楽曲が出来上がって初めて聞いたときどんな印象を持ちましたか?

渡邉直:このドラマにドンピシャなトーンの曲で、とても嬉しかったです。ヌケ感もありますし、勢いもありますし、カオス感もある。僕とteteさんで当初話していた、いろんな作家さんが関わってどんどんテイストが変わっていくような映像にもハマるんじゃないかというのが、僕の感想でした。

tete:展開がすごく多くて、アクションっぽい音も聴こえるし、2人のコロコロ気分が変わる感じとか、破天荒な感じとか、そういうのがそのまま音に反映されているような感じで純粋に楽しかったです。お話を聞いたらsyudouさんが『ベイビーわるきゅーれ』のファンということで、すごく納得しました。

NIO:最初に聴いた瞬間に、冒頭の絵が浮かんだんです。お仕事を一緒にしませんか?って聞かれている段階でもう「こういうシーンをしたいです」みたいな話をしてしまった。それくらいやりたいことが芋づる式に出てくるような楽曲という感じでした。

▲『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』オープニング映像

――今回のオープニング映像は監修が渡邉直さん、プロデューサーがteteさん、監督がNIOさんということですが、みなさんはどういう形で映像に携わったんでしょうか?

渡邉直:流れとしては、まずテレビ東京の加瀬プロデューサーから僕に話が来まして。『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』のオープニングを作ることになり、「どんな感じがいいですか?」という話の中で、僕が以前にteteさんとNIOさんとご一緒して作った水曜日のカンパネラの「赤ずきん」のMVみたいな感じがいいということになったんです。そこから座組みをteteさんに相談しました。teteさんにアニメーターやCGクリエイターのみなさんを集めていただいて、具体的な中身のディテール部分の演出をNIOさんにやっていただいた。僕は外側を整えるということをやっていました。

――teteさんはどういう役割でしたか?

tete:納期に向けて逆算してスケジュールを決めたり、NIOさんが挙げてもらった演出コンテをパートに分けて「ここのアニメーションはこのクリエイターさんが合いそう」といった提案をして、監督と話して決めたクリエイターさんにDMして参加していただいたり…とにかくひたすら連絡をしていた感じです。

渡邉直:キャスティングというか、それぞれのパートに合うクリエイターをアサインするという役割ですね。

――NIOさんはどういう形で制作にタッチしたんでしょうか?

NIO:話をいただいたタイミングでは、実写ドラマだけどオープニングはアニメとCGでやりたい、ダンスも取り入れたいという話があって。楽曲のデモもすでにありました。そこからざっくりとした構成というか、1分間の中でどんなシチュエーションがあったらいいかを考えていきました。で、teteさんにアニメーターをコーディネートしていただいたのでそれを決めつつ、ディレクターと言いながら途中で出てくるCGも作りました。

――syudouさんとしてはドラマ主題歌は初めてですが、そのことで意識したところはありますか?

syudou:アニメだからドラマだからというので、そこまで差はなかったです。もともとこの作品がすごく好きでイメージを持っていたので、作り方を変えるということもなくて。ただ、自分で言うのもなんですけれど、世界観的に女性が歌った方が合う気が最初からしていて。ボイスチェンジを使って、女の子っぽい声で喋るパートを沢山入れるっていう手法で乗り切りました。それがいい方向に出てたら嬉しいなと思ってます。

――テレビサイズのバージョンでは、ちさととまひろの2人の会話が冒頭にフィーチャーされていますね。

syudou:冒頭が2人の喋りから始まっているのも、あのドラマの曲を聴き始めた時に男の声から始まったら萎えるなと思って。せめてイントロは女の子に喋ってほしいんで、映画版のシーンを許可をいただいてサンプリングして使いました。そこから俺がいきなり歌って「なんだこれ?」みたいになる感じも映像のおかげでより際立ちましたし、この作品のカオス感にとても合っているなと思って気に入ってます。

――オープニングは60秒の長さですが、短い尺に情報量を詰め込んで、歌詞やサウンドのギミックも含めて納得させるものに仕上げるということはどう意識しましたか?

syudou:まず、その時間で作るっていうのが初めてで。アニメはだいたい89秒なので、そこからさらに30秒短くて。でもサビもちゃんとあってほしいし、しかも自分の声から始まったら嫌なので、いろいろ制約はあったんですけど、逆にそれがあればあるほど、無駄がなく削ぎ落とされた、密度高い曲を作れた気がしました。あとは、やっぱり緩急ですね。短い尺の中で映像を切り替わっていた方が面白いと思ったので。サビから作ったんですけど、あとはもういかに面白くできるか。パートごとに仕掛けを作っていくような作り方をしました。楽しかったです。

――NIOさんは曲を聴いてすぐアイデアが浮かんだということですが、それはどういうものでしたか?

NIO:曲を聴かせていただいた時に、抑揚だったり、スピード感だったり、寄せては返すようなカオスな感じがあって。絨毛みたいな、表面積がすごく大きい曲だと思ったんです。そこから多角的で、どこを切ってもインパクトがあるようなものにしようと考えて。撮影が始まるような場面からスタートするのもそういうところの意識からでした。楽曲自体、1回では理解しきれないところが良さだと思うんです。初手でもインパクトがあるし、何回噛んでも違う味がする。そこがドラマシリーズという何話も続けて観れるものと親和性があると思っていたので、いろんなクリエイターさんのカラーを殺さないままに出しっぱなしにするような作品にしたいという話をした記憶があります。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. オープニングのお気に入りシーンは?
  3. Next >


オープニングのお気に入りシーンは?

――teteさんとしてはどんな風にクリエイターの方々に声をかけていったんでしょう?

tete:日頃からXを見て「いいな」と思う人をリストインしている「気になるリスト」というものがあって。まだ作品を手掛けたことのない人や学生さんも含めて日々更新しているんですけれど、その中からさらに厳選しました。「この人のファンアートを見てみたい」というか、ちさととまひろの2人をこのクリエイターさんだったらどう描いてくれるんだろう?というところに着目して、一緒にお仕事したい人を選ばせていただきました。

――ここまで沢山のクリエイターが混在した作品となると全体の監修は大変なことだと思うんですが、渡邉さんはどういう着地点をイメージしていましたか?

渡邉直:大変は大変なんですけれど、いろんなクリエイターさんとのチームプレイはそこまで苦手ではなくて。それぞれの人が100%そこにパワーを出せるから、より味の濃いものになっていくんです。統率できなくてもいいくらいの感じというか、バランスが悪いのが逆にカオスに繋がっていくところもあるし、そういうものをミックスするのが作品の良さだったりするので。なるべく均さないように、というのを毎回している感じですね。

――syudouさんとしては、実際に映像が出来上がったものを見て、どう思いました?

syudou:まず嬉しかったですね。自分の曲にあれだけ多くの方が関わって作っていただいたという。あと、これはお会いしたらぜひ訊きたかったんですけれど、比較的納期が短めの進行だったじゃないですか。そこはどう工夫していましたか?

NIO:初動を早くするというのは意識していました。お願いした作家さんそれぞれとミーティングの時間を設けてもらって、そこから作っていって。一人が全体を作るとなると時間もかかるんですけど、同時並行で走れるので間に合いました。作家さんがアニメーションを作るスピードも半端なく速かったんですよ。中1日、2日とかでアニメーションが上がってきたり。

tete:打ち合わせの5時間後に初稿が上がったりもありましたね。

NIO:そんなスピードは普通ありえないんですよ。それは何よりsyudouさんと『ベイビーわるきゅーれ』の持つ力ですね。コンテンツとして愛されているからこそという。

syudou:たしかに僕自身も『べビわる』が好きだったからこそ早く動けたというのもありますね。フタを開けたら本当に素晴らしいものになっていた。嬉しかったですね。

――syudouさんの中で、特にお気に入りのシーンはありますか?

syudou:絞りきれないですけど、バイト先の店長を撃つシーンが好きですね。曲の中に銃声をいっぱい入れてるんですけど、テレビドラマのオープニングという枠の中でそれをどう可愛らしく演出するのかなって思ってたら、ああいう感じになっていて。さすがだなって思いました。

――クリエイター陣のみなさんの思い入れのあるシーンは?

渡邉直:僕はNIOさんのCGが一番好きですね。あれがあると締まるんです。あれがこのオープニングを舐められないようにしている大役を担っていると思ってます。

NIO:ゐたみ / itamiさん担当の格闘ゲームの頭突きするシーン、内田清輝・グ弍(PicassoTrigger)さん担当のもぐらたたきのシーンのアニメーションが上がってきた時は「勝った」と思いました。作品の面白さって、差分がどれくらい内包されてるかにあると思うんです。今回の作品も、殺しとゆるさやユーモアの振れ幅があって、それでも成立するのは作家性とかクリエイターとかの力だと思うので。殺しをもぐらたたきになぞらえてユーモラスに破綻なく表現できたり、格ゲーというところで死をちゃんと表現することができたというのが「勝ったな」って思いました。

tete:私はサビに入る前のみたらし三大さんに描いてもらったパートです。もともとの企画としてサビでは踊らせることが決まっていたので、ダンスのアニメーションで有名なクリエイターさんを絶対一人入れたいというのがありました。最初は『週刊少年ジャンプ』での連載が始まるタイミングで忙しいと断られていたのですが、「興味はあります」と仰っていたので、なんとか猛プッシュして「1カットだけでも」と相談したらご参加いただけました。嬉しかったです。

syudou:今回の映像の大変だったポイントってどのへんにありました?

渡邉直:やりたいこといっぱいあったんで、それで最初は苦労しました。ダンスの振り付けにはyurinasia(jABBKLAB)さんというコレオグラファーの方に入っていただいているんです。僕もめちゃくちゃ好きなダンサーの方で、最初からダンスを入れたいって話はあったんですけれど『べビわる』っぽいダンスってどんな感じだろうと思って。聞いたら作品のファンだって言ってくれて、それですごくいい振り付けがあがってきて。そこの初動は大変でした。

NIO:素敵なクリエイターさんばかりが集まったので、自分たちのシーンがひけをとったらどうしようっていうのはありました。あと、みなさんの作家性を活かしていただくために「これをしなさい」みたいな言い方はしないというアティテュードは決めていて。でも「これは違う」ということは伝えないといけない。一応キャラクターデザインは作ったんですけれど、似顔絵として似ていればOKという感じで、基本的に線のタッチとか目の形とかは作家さんに委ねていて。でも、かといってそれを無視していいものではないよっていう。そういうことを丁寧にやり方を考えて伝えるのは結構大変でした。せっかく両思いでやってくださってる方が多かったので、それでもクオリティは担保しなきゃいけないっていうときに、そのバランスみたいなのは考えました。

――取材時点では3話まで放映されているわけですが、ドラマのオンエアをご覧になっての感想は?

tete:映画も好きですけど、ドラマは着飾ってない、演技っぽくない演技が見られるので、彼女たちの生活を覗いているような感覚になるので一番好きですね。深夜に見られるのも嬉しいです。ぬい活もそうだし、ぶつかりおじさんもそうだけど、監督が自由に作っているところが見られて嬉しいし。アクションシーンもちゃんとこだわって撮ってるのも素敵ですね。

渡邉直:実写なんですけど、アニメっぽいドラマだなと思いますし、だからああいうオープニングのトーンがハマったと思います。

NIO:オープニングを作ってしばらく経ってから、『べビわる』って、ファンに愛されてるコンテンツだったんで「受け入れてくれるんだろうか」みたいに、急に不安になったんです。でも初回放送を見て、Xを観る限りファンの方の反応もよくて、ホッとしているという感じです。

syudou:ドラマは毎週見れるのが幸せです。ちょうど3話は「ぬい活」がテーマで。僕が推してる「しゃきぴよ」ってキャラがいるんですけれど、それが全然知名度がなくて、でも僕は好きで。そういう些細なことも思い出させてくれる『べビわる』は素晴らしいなと思ってます。

関連キーワード

TAG

関連商品

露骨
syudou「露骨」

2023/06/28

[CD]

¥3,300(税込)

露骨
syudou「露骨」

2023/06/28

[CD]

¥5,280(税込)

露骨
syudou「露骨」

2023/06/28

[CD]

¥3,300(税込)

露骨
syudou「露骨」

2023/06/28

[CD]

¥5,280(税込)