Special
<インタビュー>iri ドラマ『スカイキャッスル』主題歌の最新曲「Swamp」に武道館公演、海外ライブ――“初めて”続きの近況を語る
Interview & Text:森朋之
iriの新曲「Swamp」が話題を集めている。
ドラマ『スカイキャッスル』主題歌として書き下ろされた「Swamp」は、彼女の代表曲「Wonderland」のサウンド・プロデューサー、ESME MORIと再タッグを組んで制作。ヒップホップとロックが共鳴するトラック、凛とした強さを感じさせるボーカル、〈そばにいるほどが 痛め合う 感情を〉という生々しい歌詞がひとつになった刺激的なこの曲は、彼女にとっても新機軸と言えるだろう。
10月7日放送の『CDTVライブ!ライブ!』への出演を控えるiriにインタビュー。2024年3月に行われた東京・日本武道館ライブ、「Swamp」の制作、今後の活動ビジョンなどについて聞いた。
初の武道館は
“自分にとっても特別なライブ”
――まずは8月末にリリースされたライブ映像作品『iri LIVE at 武道館』について聞かせてください。今年3月に行われた自身初の日本武道館公演を収録した作品ですが、iriさんにとってはどんなライブになりましたか?
iri:自分にとっても特別なライブでしたね。緊張感もあったし、ライブの時間が限られているなか、曲を選ぶのはけっこう難しくて。シンプルに「こんなに曲を作ってきたんだな」と思ったし、ひとつの節目でもあり、今の自分を見てもらいたいという気持ちもあって。みんなで一緒に楽しむというより、グッと集中していた感覚が強かったんですが、そういうライブを共有できたことはうれしかったですね。
――ライブのなかで特に印象に残っているシーンは?
iri:集中し過ぎていて、あまり記憶が残っていないんですよ(笑)。緊張もあったし、あっという間に終わったというか……。なので(『iri LIVE at 武道館』の)映像を観て、「こういうライブだったんだな」って確認した感じですね。自分のなかでイメージしていた通りの映像だったので、「思ったようなライブができたんだな」と。
世の中にあまり存在していないことをやりたかった
――そして新曲「Swamp」も話題を集めています。ドラマ『スカイキャッスル』主題歌として書き下ろされた楽曲ですが、制作のプロセスはどのようなものでしたか?
iri:ちょうどツアー中(6月から7月にかけて行われたライブハウスツアー【iri Live House Tour 2024“Run”】)だったんですよ。作り方自体はいつもとそんなに変わらなかったと思いますね。自分でギターのフレーズを録音して、「こういうテンションの曲にしたい」とESME MORIくんに伝えて、ブラッシュアップして、歌詞を書いて。
――イントロのエレキギターのフレーズが核になっているんですね。当初はどんなサウンドをイメージしていたんですか?
iri:地上波のドラマの主題歌を担当させてもらうのは初めてだったので、「難しそうだな」と思っていて。自分のなかで「こういうイメージでやりたい」「これがかっこいい」と思っても、映像と合わせたときにどうなるか?ということもあるので。ドラマサイドからも「こういう曲でお願いします」というお話があったんですが、自分のモード的には、今の女性アーティストがやっていないこと、世の中にあまり存在していないことをやりたかったんですよね。聴いてくれた人が「かっこいい」「面白い」と興味を持ってもらえる曲がいいなと思って、ロックなテイストに自分のルーツであるヒップホップの要素を入れながら作っていきました。
――確かに、エレキギターのロック感とヒップホップのビート感が融合していますよね。ストリングスの使い方もそうですが、ちょっと懐かしい雰囲気もあって。
iri:そうですね、今っぽい懐かしさというか。ESME MORIくんと何度もやりとりしながら作ったんですが、かなり時間がかかりましたね(笑)。BPMも細かく試して。ESME MORIくんとはタイアップ曲を一緒に作ったこともあるんですけど、そのたびに苦労をかけてしまって。ただ、結果的にいい曲ばかりだし、それまでのiriにはなかった曲ができることも多くて。「Swamp」を作っているときも、「がんばっていい曲にしよう」と話していました。
――ESME MORIさんとは代表曲「Wonderland」もコライトしているし、iriさんのクリエイティブには欠かせない存在。iriさんにとってはどんなアーティストですか?
iri:彼は作詞、作曲、編曲はもちろん、自分で歌も歌うんですよ。トラックメイカー、ミュージシャンとしても素晴らしいし、歌い手の感覚もわかっているから、共有できるものがたくさんあるんですよね。相手のことをよく見ているんですよ。一緒に曲を作る人の良いところを引き出すのがうまいし、かっこいいだけじゃなく、血の通った音楽を作れる人だなって思っています。
――なるほど。「Swamp」の歌詞については、どんなテーマがあったんですか?
iri:ドラマの原作(韓国ドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』)を観て、そのなかで感じたことを基にして書きました。ドラマの大きいテーマとしては“家族” “親子の愛情”なのかなと思っていて。親子の歪んだ愛情というか、そういうところがメインになっていますね。自分自身が子供のときに感じていたことだったり、大人になってそのことをどう思うか?ということだったり。私は親になったことがないからわからない部分もあるんですが、「子供の頃、お母さんはこんなふうに思っていたんだろうな」ということも考えましたね。
――iriさん自身が“子供の頃に感じていたこと”というのは?
iri:たとえば「ピアノをやりなさい」とか「大学は行ったほうがいい」とか。「みんなこうしているんだから、あなたもやりなさい」みたいなこともあって、それに抗うこともあったんですよ(笑)。「私は子供の頃にやらせてもらえなかったから、あなたにはやってほしい」みたいな気持ちもあっただろうし。
――それは多くの人が体験していることですよね。
iri:そうですよね。成長するにつれて、「良かれと思って、愛情を持って言ってくれていたんだな」とわかってきて。受け入れるところもあるし、大人になった今でも「あれはおかしかった」ということもあるっていう。
――音楽の道に進むというのは、自分で決めたこと?
iri:はい。音楽の学校には行きたくなかったので、自由に自分で学ぼうと決めて。親に「大学は行きなさい」と言われて、一応行きましたけど(笑)。
リリース情報
関連リンク
「Swamp」の反響は?
――ドラマ『スカイキャッスル』は9月26日に最終回を迎えました。「Swamp」の反響はどうでしたか?
iri:ドラマをきっかけにiriの音楽を知ってくれた方も多いみたいです。もともとライブに来てくれている人が「地上波ドラマの主題歌になってる!」って喜んでくれていたりすると、がんばって作ってよかったなと思いますね。あと、ライブのロケ地が私の地元(神奈川県逗子市)に近いんですよ。ドラマを観ていて「あそこだ」って(笑)。ちょっと不思議な感じですね。
――「Swamp」のミュージックビデオも、ドラマ『スカイキャッスル』の世界観とつながっていますね。
iri:「Swamp」のMVは、「Wonderland」のMVを撮ってくれた新保拓人さんにすごく久しぶりにお願いしたんです。内容についてはこちらで作り込むことはなくて、基本的にはお任せしたくて。「Swamp」のMVも同じだったんですけど、自分が小さくなったり大きくなったりして、それは自分が子供のときのイメージも含まれているのかなと。ドラマに寄り添っているわけではないけれど、確かに共通しているところもありそうですね。
――MVで弾いているギターは、普段から使っているものですよね。
iri:ライブでも弾いていますね。ギブソンのマローダーなんですけど、楽器屋さんで見つけて「すごくかわいい」と思って。最近は曲を作るときもエレキギターを弾くことが多いような気がしますね。
Swamp / iri
――最後に、今後の活動について。11月には韓国のフェス【WONDERLIVET 2024】に出演。11月23日に大阪・グランキューブ大阪 メインホール、28日には東京・東京ガーデンシアターでワンマンライブ【iri Presents ONEMANSHOW "East/West"】が行われます。
iri:今年初めて韓国でライブをやったんですよ(2024年4月6日開催の【iri Asia Tour 2024 in Seoul】)。そのときはワンマンライブだったんですけど、フェスではどんな感じになるのか想像できないです(笑)。海外でのライブはもっとやりたいですね。アメリカやヨーロッパにも行ってみたいし……がんばります。11月のワンマンの内容はこれからですね。「Swamp」はフェスで何度かやったんですけど、ワンマンではまだやったことがなくて。みんなで一緒に歌えたらいいなと思っています。少しずつ会場が大きくなっていて、やれることも増えているので楽しみですね。
――この先の新曲も楽しみです。今のiriさんの音楽的なモードはどんな感じですか?
iri:若干、迷っているところがあるんですよね。ヒップホップもやりたいし、アコースティックもやりたいし、ファンキーな曲もやりたいという感じで、方向性が多すぎて(笑)。「Swamp」はパンチのある強い曲なので、「次は柔らかい曲を作ろうかな」と、今は思っています。
リリース情報
関連リンク
iri LIVE at 武道館
2024/08/28 RELEASE
VIXL-460 ¥ 6,050(税込)
Disc01
- 01.STARLIGHT
- 02.Sparkle
- 03.Corner
- 04.ナイトグルーヴ
- 05.半疑じゃない
- 06.Watashi
- 07.渦
- 08.Keepin’
- 09.Telephone feat.5lack
- 10.飛行
- 11.Shade
- 12.はじまりの日
- 13.hug
- 14.Coaster
- 15.friends
- 16.Run
- 17.24-25
- 18.Wonderland
- 19.rhythm (EN)
- 20.会いたいわ (EN)
- 21.brother (EN)
関連商品