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<コラム>LE SSERAFIM『CRAZY』とアメリカ授賞式デビューから見る、まだ見ぬグローバル成功の可能性



コラム

Text:Mariko Ikitake
(P)&(C) SOURCE MUSIC

 “FEARLESS=恐れのない”姿をアイデンティティに掲げるLE SSERAFIMの次なる挑戦は、“CRAZY=夢中”になることだ。「LE SSERAFIMと一緒にただ一度CRAZYになろう」という意味が込められた4thミニアルバム『CRAZY』は8月30日に配信、自分を夢中にさせるものに出会った瞬間のスリルを表現したというタイトル曲「CRAZY」はBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で最高8位を記録した(2024年9月11日公開、集計期間:2024年9月2日~9月8日)。

 4thミニアルバム『CRAZY』は9月14日付の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で7位(3作連続トップ10デビュー)、アメリカ国内で約37,500枚を売り上げて“Top Album Sales”では初登場1位を獲得している。

 タイトル曲は米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でK-POPガールグループの中で今年の最高位となる76位を記録した後、2週連続でチャートインした。3月9日付チャートで「EASY」が99位を記録していたLE SSERAFIMにとって、今回で2作連続チャートイン、そして自己最高位を更新と、アメリカ市場において着実な成長が結果にあらわれた。「CRAZY」は、英国オフィシャル・シングル・チャートで2週連続チャートイン、世界200以上の地域を対象としたグローバル・チャート“Billboard Global 200”でも32位(9月28日付)に入り、日本をはじめ世界中で好調なスタートを切っている。


 LE SSERAFIMにとって2024年は激動の一年だったと言えるだろう。アーティストの誰もが羨むアメリカ最大級の野外音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2024】に、歴代の韓国アーティストの中でデビューしてから最も短い期間で単独ステージに立ったのはもちろん、9月にはアメリカの4大大衆音楽授賞式のひとつ、【2024 MTV Video Music Awards】(VMAs)で<年間最優秀MTV PUSH パフォーマンス賞/PUSH PERFORMANCE OF THE YEAR>を受賞と、世界規模で見ても大きなポイントとなるフィールドを経験した。


MTV VMAs提供

 アメリカの授賞式デビューの場となった【VMAs】では、ポップスターの登竜門とも呼ばれる、本番前のレッドカーペット・イベント“プレショー”で単独パフォーマンスも行い、現地のファンと世界に向けて存在感をアピール。過去にリアーナやアリアナ・グランデ、ニッキー・ミナージュ、今年のホストを務めたミーガン・ザ・スタリオン、そして昨年は現在のヒットチャートのトップを走るサブリナ・カーペンターがプレショーを担当しており、彼女たちの世界的な知名度や活躍ぶりを考えれば、LE SSERAFIMがその仲間入りを果たしたことは特別な意味を持つだろう(ほかにもベックやアッシャー、フー・ファイターズ、ブラック・アイド・ピーズなど、誰もが知るヒットメイカー&のちの【グラミー】受賞者が同じステージに立っている)。

 観客と至近距離のレッドカーペットでパフォーマンスしたのは【コーチェラ】や今年5月~7月に韓国・ソウルと日本4都市で開催されたファンミーティング【LE SSERAFIM FAN MEETING ‘FEARNADA’ 2024 S/S】で先行公開された「1-800-hot-n-fun」と、最新作のタイトル曲「CRAZY」の2曲。前者はジャスティン・ビーバーやレディー・ガガらの楽曲を手がけるプロデューサーのBloodPop®が制作に参加したロックナンバーで、パーティーで騒いで楽しもうとする、自分自身の道を進む独立した女性を漂わせる。レッドカーペットということもあり、縦移動を意識したフォーメーションはこの日のために特別に準備されたのだろう。衣装チェンジしてラグジュアリーモードが増した5人は、メリハリのあるダンスとユニークなコーラスが際立つ「CRAZY」を披露。キャッチーな四つ打ちサウンドと<Da da da da>のパートのレスポンスのよさは、時折映り込むオーディエンスからもわかる。長い手足と顔周りで細やかに動く手のひらに視線が集中、コンパクトさを感じさせないダイナミックなステージだった。



 5人にとって大きなステップアップが続いた今年だが、ここにいたるまでにいくつものステップを踏んできたからこそ掴み取ったチャンスだと言えよう。海外メディアの取材ではHUH YUNJINをメインに、ほかメンバーも英語で話す場面をいくつも見てきた。また、街中でラフに収録した動画や突撃インタビュー風の恒例企画に登場したり、MTVのマンスリー・キャンペーン『MTV PUSH』やアメリカの代表的な朝の番組『TODAY SHOW』、ジェニファー・ハドソンやケリー・クラークソンのトークショーに出演したりと、様々なプラットフォームを介して異なるオーディエンスにリーチしていった活動が功を奏したのではないだろうか。


米国CBS『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』のYouTubeシリーズ『レイト・ショー・ミー・ミュージック』に出演

 今年の【VMAs】は過去4年間で最高となる約408万視聴者数を記録(2回の再放送を含む)。MTVによると、SNS上で6,670万件のインタラクションがあり、歴史上最もソーシャルなエンターテインメント番組になったようだ。世界有数のアワードやフェスでは、地上波やケーブルテレビ、動画配信サービス、YouTube、そしてSNSと、国をまたいだリアルタイム視聴&アーカイブ視聴のダブル発信がスタンダードになっているため、海外メディア(特にアメリカ)との関係性を構築しているLE SSERAFIMの出演機会とその先に待っている効果は、グローバル音楽市場で大きな反響を呼ぶものと期待される。

 【VMAs】の受賞コメントの中に「LE SSERAFIMは、堂々とした5人の女性で構成されています。強靭さと再び立ち上がる力、そして弱さまでも語りながら、希望が込められたメッセージを伝えるグループです」とあったように、強さと弱さが共存する彼女たちは、それを包み隠さず見せていくグループであるのも事実だ。新作を通して、「あれこれ深く考えず、CRAZYにはじけて楽しんでいる私たちを見て、あなたも楽しんで」と言っているようだった。本場の経験を重ねることで彼女たちの見せ方も変わってくるかもしれない。

 「CRAZY」はデヴィッド・ゲッタやピンクパンサレスが参加するリミックスも登場。KAZUHAも唸る高難度のヴォーギング・ダンス(モデルのようなポーズや歩き方、しゃがんで歩くなど独特なダンスのジャンル。ファッション雑誌『ヴォーグ』が由来)で知られるダンサーのDashaun Wesleyが参加したヴァージョンもある。海外アーティストとのコラボレーションは新しいリスナーを引き付ける大きなチャンスになるのは明らかで、クラブやドラァグシーンなど、ダンスポップに馴染みのあるローカル界隈に今回新たにリーチしたことを考えると、次回作の伸びにも期待ができる。

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