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<インタビュー>shallmが放つ“どんな感情でも寄り添えるアルバム”とは――1stフルアルバム『charme』
Interview & Text:村上麗奈
Photo:興梠真穂
19歳のボーカリスト・liaが作詞、作曲を手がけるバンドプロジェクトshallmが、10月9日に1stフルアルバム『charme』をリリースする。
TVアニメ『姫様“拷問”の時間です』オープニングテーマ「まっさかさマジック!」をはじめ、2023年9月からリリースしてきた10曲を含む、計13曲を収録した今作。あくまでもバンドサウンドでの表現にこだわりつつ、キャッチーな楽曲からバラードまで、表情豊かな楽曲が揃った。
今回は、liaにインタビューを決行。メジャーデビュー後に変化した音楽との向き合い方や、『charme』に収録される新録曲について話を訊いた。
「心の中で暴動が起こった感覚みたいなのがあった」
――今回リリースされる1stアルバム『charme』には、2023年9月リリースの「センチメンタル☆ラッキーガール」以降のシングル曲が収録されています。「センチメンタル☆ラッキーガール」リリースから今までの約1年の活動を振り返ってみて、どんなことを感じますか?
lia:「センチメンタル☆ラッキーガール」でメジャーデビューさせていただく前は1人での活動が中心だったんですが、メジャーデビューしてからは人と関わることが増えたり、タイアップで作品と関わる機会があったり、ライブにも出るようになったり、人や作品とのかかわりが増えたなと思います。聴いてくれる方も増えたので嬉しいですね。
――約1年で10作とハイペースでリリースをしてきていますが、それに伴うせわしなさは感じましたか?それとも「もっといけるぞ!」といった感じ?
lia:10作の中にはメジャーデビュー前に作っていた曲もたくさんあったので、自分的にはせわしなさはあまりなかったです。来年はもっと飛ばしていきたいですね。
――メジャーデビュー以降、様々なタイアップやイベントへの出演など、初めての経験も多かったと思います。活動や音楽制作において、考え方の大きな変化などはありましたか?
lia:最初は自分が作りたいものを作る、自分のための音楽というのが主軸としてあったんですが、メジャーデビューしてからは「他人に届く音楽ってなんだろう、自分とは違う価値観の人にも届く音楽ってどんなものだろう」ということも考えるようになりました。タイアップ曲だったら元の作品を見てその主人公になったつもりで書いてみたりと、いろんな方法を試して試行錯誤しながら曲を作るようになりましたね。他人の人生を自分に憑依させて曲を作るのは、タイアップをはじめてから楽しいと思えるようになった経験でした。
――今作はシングル曲10曲と新録曲3曲という構成ですが、1stフルアルバムを制作するにあたってタイトルはどのように決めましたか?
lia:セルフタイトルにしたいなと思っていて。タイトルになっている「charme」はバンド名shallmの語源になっており、読み方が同じなんです。セルフタイトルだけど綴りは語源のものにするというのはすぐに決まりましたね。というか、このタイトルしか思いつかなくて。1stフルアルバムの重さに、なんの言葉を当てはめたらいいのか分からなかったんです。
【shallm】 1st Full Album『charme』アートワーク撮影メイキング
――改めて収録曲を聴くと、バラエティに富んだ作品が揃いつつも、あくまでもバンドらしさを重要視しているように思います。liaさんがバンドサウンドに重きを置く理由を教えてください。
lia:バンドサウンドが好きだからですね。元々ボーカロイドの音楽が好きで、その中でもカゲロウプロジェクトに惹かれてバンドサウンドの格好よさを知ったんです。言い方が難しいんですが、バンドって生き物っぽいというか、車に乗せてもらっている感じがあって、そこに魅力を感じています。自分の中では、「これが私です」という形で曲を出すのではなく、バンドとして曲を出すことに意味があるのでバンドプロジェクトという形にしています。
――バンドの魅力を知ったきっかけがカゲロウプロジェクトだったんですね。ちなみに、ボーカロイドに興味を持つきっかけになったのはどの曲なのでしょう?
lia:家族が聴いていたのがきっかけで、最初に聴いたボカロ曲は「炉心融解」でした。この曲を一番初めに聴いた印象は、「なんだこの声は、誰が出せるんだ」と驚いて。それからボーカロイドの存在を知りました。それまでは親がマイケル・ジャクソンやビートルズといった洋楽をかけていたので洋楽ばかり聴いていたんですけど、そこから一気にハマりました。
――ご家族みなさん音楽が好きなんですね。
lia:そうですね。私も小さいころからカラオケに行くのがすごく好きで。最近、初めて私をカラオケに連れていってくれたときの話を聞いたんですけど、「もう帰りたくない!」って泣き出すくらい気に入ったらしくて。そこから幼少期は何度もカラオケに連れて行ってもらいました。
――幼少期から歌うのが好きだったんですね。さて、話題をアルバムに戻しますが、今回収録されている楽曲の中で作るのに特に苦戦した楽曲や、印象に残っている楽曲を教えてください。
lia:リード曲の「暴動」は完成させるのに苦労しました。リード曲を作ろうと思って作った曲だったんですが、他の曲が点として散らばっている中、それらをまとめられるような1曲にしたかったので、自分の中でハードルが上がってしまいましたね。なので途中まで作ってはやり直すのを何回も繰り返して、残骸みたいなのがたくさん残りました。その曲たちもどこかで完成させられたらいいなと思いますね。
――「暴動」はどんなテーマで書き進めた曲なんですか?
lia:この12曲をどうやってまとめようかと思ったときに、私が音楽をしようと思ったきっかけってなんだろうと思い出していて。音楽に触れた瞬間に、心の中で暴動が起こった感覚みたいなのがあったんですよね。その瞬間を逃さないでほしい……って自分に対しても、聴いてくれる人にも伝えたくてこの曲を作りました。何度も書き直しましたし何が正解か分からなくなったときもあったんですが、初めてリリースした「夢幻ホログラム」をはじめ私の曲は自分や社会と戦っている歌詞も多いですし、自分がやりたいと思ったことはやろうという思いで書きました。
- 「どんな感情のときにも寄り添えるアルバム」
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「どんな感情のときにも寄り添えるアルバム」
――「stardust」も今回の新録曲ですね。
lia:「stardust」は元々たくさん作っていたデモのひとつで、ライブでもずっとやっている曲なんです。出す機会を伺っていた曲でもありますね。ちっぽけな命みたいな、そういう世界観の曲を作りたいなと思っていた曲なので、星屑の中の一人というのをイメージして曲名も「stardust」にしました。米津玄師さんの「砂の惑星」をイメージしている曲でもあるんですが、「砂の惑星」の全てが綺麗すぎて、自分の作ったものに一喜一憂しながら制作していたらすごく時間がかかってしまいました。
――曲や歌詞を書かれるときは、「stardust」のように他の方の曲をイメージしながら書くこともあるんですか?
lia:結構あります。「この曲が自分の曲だったらいいのに」という気持ちで作っているというか。歌詞も、「この歌詞すごい、自分の歌詞だったらいいのにな」みたいな(笑)。私、歌詞を分析するのが趣味といってもいいくらい好きなんです。普段、スマホを見たくないときに音楽を聴くことが多いんですけど、聴いていると気になって結局スマホで歌詞を調べちゃうんですよね……(笑)。それで「ここストーリー繋がってるんだ……!」とか思いながら聴いています。
「stardust」ミュージック・ビデオ
――歌詞を見て分析するのがお好きとなると、それを活かしてご自身で歌詞を書くのも楽しめるのでは?
lia:そうですね。悩みすぎて嫌になっちゃったり、納得できなかったりしたこともあったんですけど、今ではすごく楽しく歌詞を書けています。
――制作時は歌詞よりも曲を先に作ることが多いですか?
lia:最近は歌詞を考えながらメロディーを作っています。昔は本当にメロディー先行で作って、あとから歌詞を考えていたので、すごく悩んでいたし文字数も合わないしで迷うことが多かったんです。ただ、最近は自分に合うやり方を見つけられているなと思います。
――制作の際はギターを使っているのですか?
lia:はい。一時期、トラックを全体的に作ってから歌詞を書くということもやったことがあるんです。でもどうしても、音数が多いほど言葉が出てこなくなってしまったんですよね。シンプルなコードだけの方がいろんな選択肢が浮かんでくる気がするので、今はギターで作るのに落ち着きました。
――活動をしていく中でそういった曲作りの変化などもあると思いますが、アルバムとしてまとめていく段階で、1年前にリリースした曲を俯瞰して聴き返してみてどんな感想を抱きましたか?
lia:ずっとボカロが好きなんだろうなという感じはしますね。でも最近の曲は前よりも全体的に曲の音域が低くなったかもしれないです。自分の中で格好いいブームというか、格好よくなりたい時期がきているんですよね(笑)。だから低くなってるのかなと思います。ちょっと低くすることで控え目な感じを出して格好よくしたいのかもしれないです。
――面白いですね。さて、「閃光バード」も新録曲です。バラード曲で、他の楽曲とは声の出し方も違う印象を受けました。
lia:6か月連続リリースをしていたとき季節にちなんだ曲を作っていたのですが、他の季節はあるのに夏の曲がないなと思ったんです。私、暑いのは好きじゃないんですけど、夏は綺麗な記憶があるので好きで。どうしても夏の曲を作りたくなったので、夏休みの曲を作ろうと思って作りました。
――夏の曲なのにバラードというのは少し意外でもあります。歌声が他のバラード曲とはニュアンスが違うように聴こえますが、レコーディングはいかがでしたか?
lia:この曲は一番繊細な歌い方をしました。本当に聴こえるのかなと思うくらいの声量で録ったりしていて。バラードは好きなんですが今まであまり出してこなかったので、そういう意味でも挑戦になった曲だと思います。あとは曲順にもこだわっていて。アルバムの中盤には結構バラード曲が続いているんですけど、その流れに入れるのではなく、一旦アップテンポに戻してからまたちゃんとこの曲を聴いてほしいという思いがありました。そういう部分も挑戦になっていますね。
――改めて、初のアルバムとして『charme』が完成しましたが、どんな作品になったと感じていますか?
lia:まずはやりきったなと思います。私、好きなアルバムがあって、RADWIMPSさんの『RADWIMPS 3〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』というアルバムなんですけど、無人島に持っていくっていうテーマっていいなと思っていて。私はカメレオンみたいなアーティストになりたいと常々思っているんですが、無人島にこれ1枚持っていけば大丈夫みたいな、どんな感情のときにも寄り添えるアルバムを作れたらいいなと思っているんです。今作もいろんな気持ちに寄り添えるような曲が集まっているので、是非いろんな曲を聴いてほしいなと思います。
――2025年3月1日には3rdライブが開催される予定です。意気込みを教えてください。
lia:すごくライブがしたくて。本当に「やってやるぞ!」って気持ちです。もうやる気満々。今までのライブよりも間隔が空いているので、その分違う一面を見せられたらなと思っています。
――初ライブは緊張したと過去のインタビューでもお話されていましたが、イベント等に出演する機会が増えている今、ライブの際の緊張の仕方などは変化しましたか?
lia:やっぱり緊張してしまうんですが、始まる前はだんだん大丈夫だと思えるようになってきました。なので今のところは緊張しすぎたりもせず、大丈夫だろうという思いでいます。本当に、ただただやる気満々という感じです。
――1stアルバムのリリース後の展望、目標を教えてください。
lia:やはりたくさんライブをしたいなと。アルバムを作っている期間はあまりライブができなかったので、どんどん人に伝える場所を作っていきたいなと思っています。。
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