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<インタビュー>山崎まさよし デビュー30周年イヤー突入で思う、自身に求められていること・追い続けていくこと
Text & Interview: 小松香里
30周年イヤー突入となるデビュー日の9月25日にニューシングル『フリト』をリリースした山崎まさよし。表題曲「フリト」は9月上旬に最終回を迎えた26年ぶりの地上波連続ドラマ主演作となるMBSドラマフィル『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』のオープニング主題歌だ。ウキウキするように弾むピアノが印象的なウォームな手触りの楽曲で、タイトルには山崎がドラマで演じた料理研究家・三ツ矢先生の愛犬の名前を冠している。わけなんてないけれど君が好きという気持ちをベースに、この先もずっと一緒にいたいという気持ちが描かれたシンプルなラブソングだ。
1997年に公開された初の主演映画『月とキャベツ』のテーマ曲「One more time, One more chance」がヒットし、音楽活動と同時に俳優としても一躍注目を浴びた山崎。『フリト』のこと、久々のドラマ出演のこと、デビュー30周年を迎える心境など、様々なことを聞いた。
──デビュー30周年イヤーのキックオフ作品となる3年ぶりのシングル『フリト』の表題曲は主演ドラマ『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』のオープニング主題歌です。山崎さんが演じた三ツ矢先生の愛犬、フリトの名前をタイトルにしたのはどうしてだったんでしょう?
山崎まさよし:タイトルがなかなか思いつかなくて、僕も犬を飼っているということもあって、「フリト」っていうタイトルが一番しっくりくると思いました。
──ドラマの主軸は料理研究家の三ツ矢先生とそのコラム連載を担当する雑誌編集者・石田のラブストーリーですよね。
山崎:そうですね。結構フリトがキーになっていて。曲の中では「フリト」や「石田くん」っていう具体的なワードは出てきませんが、その方が客観的に聞いてもらえていいのかなと思ったんですよね。僕は映画やドラマで芝居をやった後に主題歌を作るっていうケースが多いんですが、今回は結構しんどかったですね。僕ももう三ツ矢先生と同じくらいの年齢なので、腰が重くなってるところがあって。曲自体がなかなかできなくて、事務所の最高顧問に叱咤されて、絞り出すようにして作った感覚があります。〈君が好きやん〉っていう歌詞だったり、ところどころ関西弁がありますが、意図せず出てきたところがあって。三ツ矢先生は関西弁なのでいいかなと。
──ウォームな手触りのほっこりとしたサウンドですが、どんなイメージがあったんでしょう?
山崎:追い込まれてたっていうこともあって、なんでこういう曲になったのかあまりよくわかってないんですが、今思うと照れ隠しっぽさを感じますね。三ツ矢先生は男性が好きな役なので、最初は「どういう風に演じたらいいんだろう」という戸惑いがあって。曲にしてみると素直にそういう部分が出てきた気がしますね。
──〈愛情は不思議 うまく説明できないけど〉っていう歌詞からも戸惑いは感じますよね。
山崎:ありがとうございます。そういう気持ちを全部犬になすりつけてる感じがする曲ですよね(笑)。僕は家族があまり相手にしてくれないと犬に「どうなん?」って話しかけてるんです。「フリト」にはそういう感じが無意識に出ているかもしれないです。ただ、うちの犬とフリトは全然違いますけどね。フリトはデカかった。ひょっとしたら俺より顔大きいんちゃうかな。うちのは柴犬なので中型犬で。かわいいですけどね。いつも僕の近くで寝てますね。
──最後の〈空を見上げたら 虹を見つけた 虹を見つけた〉という歌詞にはどんな思いを込めたんでしょう?
山崎:虹は多様性を表すので、最後は〈虹を見つけた〉という歌詞にしました。あと、ドラマの撮影中にまさに空を見上げたら虹を見つけたんです。それもあってこの歌詞を書きました。
──久々にドラマに出てみて、特に印象に残っていることというと?
山崎:昔ドラマに出た時は、スタジオ撮影だったこともあって、スイッチングでカメラ2~3台で撮影していたんですが、『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』はロケだったので主にワンカメなんですよね。しかも切り替えしで撮ることが多かったので、時間が結構かかって。昔はビデオでしたが、今はデジタルですし。あと、昔は次に何をやるかとか俺がさっき何をやったかっていうことをずっとノートに書き続ける記録する係の方がいたんですが、今はいないんです。だから録音担当の方に「俺さっきどんなセリフ言いましたっけ?」って聞いたりして。慣れないことが多くて戸惑ったんですが、石田くんを演じた酒井大成くんや三ツ矢先生の昔の恋人の薫を演じた丸山智己さんはそういう今の撮影環境に慣れているので、かなり助けてもらいました。
──出演して良かったと思うことはどんなことですか?
山崎:何度かドラマを見直してるんですが、なかなか良いドラマだと思うんですよね。相手が女性であれ男性であれ関係のないラブストーリーになっているのが良いんでしょうね。三ツ矢先生が薫に「また一緒にパリで暮らそう」って誘われて、「ごめん。パリには行かれへん」って言うシーンが好きですね。
若い頃は自分ひとりでやってる気持ちでいましたが、全然そうじゃなかった
──山崎さんというと、最初のヒット曲である「One more time, One more chance」は初主演映画『月とキャベツ』のテーマ曲で、『月とキャベツ』の後も何作品も映画やドラマに出演されています。俳優としての活動にはどんな想いがあるんでしょう?
山崎:ずっと役者の方法論は持ってないんですよ。誰にも方法論を聞いたことないですし、ワークショップに行ったこともないです。毎回オファーをいただいて、お受けするかどうかを考えて決めていますが、『月とキャベツ』の篠原哲雄監督からお声がけされたら出るようにはしています。演技に対して自信もへったくれも全然ないんですけど。
──『月とキャベツ』以外にも『影踏み』や『ハピネス』といった篠原監督作品に出られていますが、篠原監督に役者としての山崎さんの魅力について話してもらったことはありますか?
山崎:聞いたことはないですね。『月とキャベツ』は篠原さんにとって初の長編映画で、ロケハンも一緒にやってるんですよね。反響がすごく大きくて、「あんなにたくさんの人に『見ました!』って言われることなんてあるんだ?」と思いました。大杉漣さんにも「見ました」って言ってもらえて。あの映画によって僕の俳優としてのキャリアが始まりましたよね。
──シングル『フリト』の2曲目にはTOYO TIRES『すべてのトラック物流に携わる人たちに“感謝を伝えるプロジェクト2023”』Web Movieテーマソング「世界の果てまでありがとう」が収録されています。〈紆余曲折 世知辛い時代だけど 愛という名の花が咲いているから 走り続けるよ〉とか〈味方ばかりじゃないけれど 待っててくれる誰かの笑顔のため 走り続けたい〉という歌詞があって、長年活動しているからこその心境を感じたんですが、どう思いますか?
山崎:そうですね。僕、全国ツアーで47都道府県ほとんどをまわっていると思うんですよ。そういうことが反映されているのかなと思っています。
──〈生きてるだけで 丸もうけだぜ〉という歌詞もありますが、20代とかではなかなか出てこない歌詞なのではないかと。
山崎:そうですね。この年齢になってそう思うようになりましたね。〈オブリガード〉とか〈シェイシェイ〉とか、いろいろな国の言語で「ありがとう」を伝えた歌詞にもなっています。
──30周年というと率直にどんなお気持ちなんでしょう?
山崎:「ようやってこれたな」って思いますね。このご時世、こういう職業を10年続けるのもすごいですけど30年って……だからもう辞めてもいいですか(笑)。
──いやいや(笑)、10月からファンクラブの特別ツアーもスタートしますし。
山崎:30周年ってデビューからってことですけど、僕はデビュー前からCMソングを作ったり、楽曲提供をしたり、スタジオミュージシャンをやったりしていたので、音楽活動を始めてからはもっと経つんですよね。だからもうええかなって(笑)。今52歳ですけど、もうおじいちゃんの歳じゃないですか。需要があるのはありがたいですけど、60歳になったら辞めてやりますわ(笑)。
──(笑)。今の音楽活動の楽しみというと?
山崎:昔はシンガーソングライター然としてたくて、頑なに自分ひとりで曲を作っていたんですが、「世界の果てまでありがとう」も人と一緒に作っているところがありますし、マネージャーにもどういう歌詞が良いか聞いたりしてるんですよね。トリオバンドをやっていたんですが、そのメンバーが2人とも南のほうに行ってしまって、簡単にヘッドアレンジみたいなことができなくなってることもあって、周りの人に頼らせてもらっています。あと、体力的な問題もありますね。
──続けてきて良かったと思うことというと、どんなことがありますか?
山崎:ファンの方が付いてくれているというのは大きいです。若い頃は自分ひとりでやってる気持ちでいましたが、全然そうじゃなかった。ひとりの力じゃ続けられなかったと思います。
──一貫して普遍性の高いスタンダードな楽曲を突き詰められている印象がありますが、それはデビュー当初から意識していたことだったんでしょうか?
山崎:「普遍性が高い」とは昔言ってもらえたことがありますが、オリジナルと普遍性って両極とも言えますよね。だから、オリジナルを作るっていうことへのこだわりと「普遍性って何だろう?」っていう疑問のせめぎ合いを一定期間続けてた気がします。若い頃は「オリジナルを作りたい」って思ってそれを追究してたけど、やがて体が持たなくなるんです。しかも、オリジナルって言っても結局誰かの真似なんですよね。一方、普遍っていうのは難しくてどこかから降ってくるものなので、どこかのタイミングから差別化して考えていくようになりました。「普遍って何だろう?」って考えても本当にわからないので、スタッフに「こんなのはどうですか?」って相談するようになったところもあるんだと思います。
リリース情報
『フリト』
2024/9/25 RELEASE
<完全生産限定盤(CD+500ピースのジグソーパズル)>
PDZN-1240 5,500円(tax in)
<通常盤(CDのみ)>
UPCH-20679 1,650円(tax in)
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ファンクラブツアー情報
【YAMAZAKI MASAYOSHI LIVE FOR BOOGIE HOUSE TOUR 2024】
10月4日(金)名古屋 ボトムライン
10月12日(土)広島 WAKOゲバントホール
10月13日(日)高松 festhalle
10月18日(金)福岡 DRUM LOGOS
11月1日(金)新潟 LOTS
11月25日(月)仙台 Rensa
11月27日(水)札幌 PENNY LANE 24
12月6日(金)大阪 Zepp Namba
12月13日(金)東京 Zepp Haneda
チケット:全席自由7,700円(税込、整理番号付き)
※当日ドリンク代別途必要
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