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<対談>GRe4N BOYZ・HIDE×演出家・伊藤今人 ライブの最先端を作り上げる両者が仕掛ける“没入型ライブ”の魅力
Text & Interview: 後藤寛子
今年、GReeeeN からGRe4N BOYZに改名し、新たなスタートを切ったHIDE、navi、92、SOH の4人。全員が歯科医師免許を持ち、医療との両立のため素顔を明かさないまま活動してきた彼らのライブは、いわゆる一般的な音楽ライブとは違い、モーションキャプチャーを駆使した映像主体のものだ。楽曲はツアーごとに違うストーリーに沿って披露され、メンバー自身が冒険に出掛けたり、メンバーがキャラクターに扮したり、その展開はさまざま。現在開催中の【“The CUBE” 〜何処かに広がる大きな声が〜】では、南海キャンディーズの山里亮太が声優を務める“キューブリック伯爵”と謎解き対決を繰り広げる壮大なストーリーを楽しめる。
そんなライブを演出面から支えているのが、エンターテインメント集団「梅棒」を率いる演出家/ダンサーの伊藤今人。オリジナル舞台からミュージカル、2.5次元舞台などで幅広く活躍する彼が、2014年から演出・振付として関わり、GRe4N BOYZのエンターテインメントの一翼を担ってきた。
今年から、イマーシブ=没入型という言葉を含む“イマーシブライブシアター”という名称がつき、さらに進化したGRe4N BOYZのライブ。リーダー・HIDEと伊藤今人の対談で、その歴史と魅力に迫る。
──“イマーシブライブシアター”として、どういうエンターテインメントを目指しているんですか?
HIDE:僕らは顔を出さないというスタイルで活動しているので、ライブも皆さんが想像するライブーーいわゆるバンドがいて、ボーカルがいて……というものとは違っていて。舞台や映画を含めたいろんなジャンルの中間のようなエンタメを目指しています。ライブをやるようになって10年以上経ちますが、ちょうど今、技術と時代的な土壌が合致しだした気がしていて。すごく面白いものができていると自負しております。
──そこに今人さんが演出として関わるようになったきっかけというと?
伊藤今人:僕らがJ-POPと演劇をかけ合わせたような舞台をやっているのを観て、声をかけていただきました。「ライブの中に演劇的な要素があって、物語を観た感覚になれるライブをやりたい」と仰っていて。最初の2、3年は手探り状態だったんですけど、3、4年目くらいから形がバチッと決まって、ダンサーの入れ方なども定まってきましたね。ダンサーの“ひこひこ”という逸材も登場して(笑)。
──お馴染みのパフォーマーさんですね。映像表現を主体としつつ、生身のダンサーも入るのがGRe4N BOYZのライブの大きい特徴ですよね。
HIDE:そうですね。始まった当時、映像の分野とフィジカルの表現が混ざるエンタメはそんなになかった気がするので、僕らとしても新鮮でした。キッズダンサーを入れたり、男女にしてみたり、いろんなパターンをやりましたよね。
今人:そうそう。さいたまスーパーアリーナでは、学校というテーマで先生と子どもたちが大勢登場しましたよね。
──演出側は、どんなことを意識しているんですか?
今人:ご存じのとおり、GRe4N BOYZはメンバーが特別な居方なので、ステージとお客さんが分断されないようにするのが最初のテーマでしたね。ダンサーよりパフォーマーに近い存在だと思ってるんですけど、メンバーのノリをお客さんたちに提示してあげるというか、「こうしたら楽しめるよ」「こう動けばひとつになれるよ」みたいなことを、なるべく短い時間でわかってもらうための手助けを一番の目的としています。
HIDE:すごく有難い存在です!4
今人:ダンサーに対しても、自分たちが気持ちよくカッコよく踊るのではなく、常にお客さんを見て、楽しみながら踊ってほしいと伝えていますね。楽曲以外の時間も含めて、普通のライブとは違う、GRe4N BOYZのライブでしか生まれない特別な繋がりができていると思っていて。その不思議な感覚が、“イマーシブライブシアター”という言葉に落ち着いたということですよね。
HIDE:そうなんです。お客さんも参加することによって楽しんでもらって、通常の音楽ライブとは違う達成感と充実感を生み出せたらなぁ、と。
──毎回、事前に振付を発表して当日にみんなで踊る「ダンサブル企画」も恒例ですよね。
HIDE:ライブが始まる前、会場ロビーのあたりに僕らの分身(着ぐるみ)が出てきて、集まったお客さんと一緒に踊るんです。いつも、最終的に「ダンサブル企画」以外の曲もかけて盛り上がって、フェスみたいになってますよ。ライブ前なのに(笑)。そういうところも、ある意味“イマーシブ”と言えるかな。
今人:そもそも、ストーリーや体感型のライブがフィットするアーティストさん自体少ないと思うんですよ。GRe4N BOYZが世代や性別問わずいろんな人を応援するアーティストだからこそ、この手法と世界観にすごく合っている。GRe4N BOYZだからこそ成立するライブの形だと思います。
HIDE:みんなで楽しめるアトラクション的なところを少し意識しているので。“イマーシブライブシアター”と名付けたのも、サーカスのように「“イマーシブライブシアター”が我が街に来るよ」みたいな感覚で来てほしいという思いがあるんです。
GRe4N BOYZへ改名という節目のツアーで、また一つ新たな扉が開いた気が
──絶賛開催中の全国ツアー【“The CUBE”〜何処かに広がる大きな声が〜】では、深いストーリー性と謎解き要素に惹き込まれました。反響は届いていますか?
HIDE:みなさん、すごく楽しんでくださっているのを感じています。僕自身もともと謎解きが好きだったんですけど、僕らのライブをさらに体験型にしたいと思ったときに謎解きがいいんじゃないかと思って取り入れました。ライブが終わったあともいろいろ反芻して楽しめるし、ネットと自分たちの生活とライブ会場を一体化させいくのも“イマーシブ”だと思っているので。今回みんなに楽しんでいただけたら、ちょっとずつ謎解きのレベルもあげていきたいなと企んでいます。
今人:ライブに謎解き要素が入ってきたことで、より体感型になったと思います。今回の脚本を最初に読んだときは、挑戦してるなと思いましたね。年々、映像表現を踏まえた上での脚本作りが進化している中で、飽きさせないようにどんな要素を入れるかが課題だったんですよ。そこで謎解き要素を取り入れると聞いて「さすがだな」と。僕が関わり始めてから何年かに1回、クリエーションの革命が起きるんですけど、今年のGRe4N BOYZへ改名という節目のツアーで、また一つ新たな扉が開いた気がしていますね。
HIDE:実際に会場に来て楽しむことは当然必要なことですけど、ライブ前も、観終わったあとも「あれはなんだったんだろう」とか「これ何?」って連動していくと面白いんじゃないかなと。グッズと連動した謎解きも仕掛けているんですけど、まだまだみんな楽しみ切れていないんじゃないかな?と思っています。ぜひ深掘りしていただいて。
──こっそりヒントを教えていただくとしたら?
HIDE:グッズの「6面ちゃん」は、いわゆるルービックキューブで、6面揃えて会場に持ってきていただくとステッカーがもらえます……というのは第一段階で、実は揃った面に印刷されているQRコードから飛んでいけるサイトがあって、そのサイトにも仕掛けがあります。あと、『"The CUBE"』ティザー映像にも仕掛けがあって、動画をスマホとかで撮影するとわかりやすいんですけど……(ネタバレのため以下略)
今人:えー、むずい(笑)!!
HIDE:最後まで辿り着いた人がどれだけいるか、そのサイトのアクセス数でわかるんですけど、1か月前ぐらいのデータで150人くらい(笑)。ツアーには数万人いらっしゃっているんですが……
今人:たったそれだけ!? ヤバ! これはどんどん言ったほうがいいですよ!
常に「みんなにとって面白いものは何だろう」と考えているんですよね
──ぜひ挑戦してほしいですね。もうひとつ、GRe4N BOYZのライブの大切な要素として、メッセージ性がありますよね。【"The CUBE"】でも、前回の【"The GAME"】から続いて「本当の自分はなんなのか」とか、自分探しのようなテーマを感じました。
HIDE:何度でもまたその場からスタートすればいい、何度でもまた知り合えばいい、っていうーー意図せず、ちょうど僕たちの名前が変わったタイミングと重なったわけですけど、「何度でもやり直せる」というメッセージは曲や演出に込めていて、それをもとにプロットを立てています。
──そういう普遍的なメッセージはずっと大事にしているポイントですか?
HIDE:そうですね。曲を作るときにメロディを考えてアレンジするのも大好きですけど、僕たちは歌詞も大切にしていて、そういうところが僕ららしさかなと思っています。まあ、「メッセージを届けたい!」ということが第一ではなくて、楽しみながら、何かハッと心に響く人がいたら、それはそれでよかったな、くらいですけどね。
今人:それが、毎回新しく取り入れる要素とちゃんとリンクしているのがすごいんですよ。今回も、謎解きという要素をただ付けただけにはなっていなくて、描きたいテーマとちゃんと親和性があるじゃないですか。HIDEさんは、何か新しいものがあったら必ず観に行ってらっしゃるし、新しく生まれたテクノロジーをどうにか自分たちの世界観に活かせないか常にアンテナを張っていて。誰もやっていない領域から、GRe4N BOYZのライブとの確実に相性が良いものを見つける天才ですよね。
HIDE:おお、ありがとうございます。
今人:それこそ、GReeeeNからGRe4N BOYZに名前が変わって、ファンの中にも少なからず変化が生まれている中、新たなことに挑戦したライブをやるのって難しいと思うんです。「とりあえず、例年通りのライブをしよう」という守りに入らず、「このタイミングが逆に重要だから」って挑戦されるのはすごいことですよ。
HIDE:絶対に新しいことをやりたいわけじゃないですけど、常に「みんなにとって面白いものは何だろう」と考えているんですよね。いわゆる古典的なものも、最先端のものも、両方のいいところを取り入れつつ僕らの表現と調和して面白いものが作れたらいいなって。
──なるほど。
HIDE:あと、今回のストーリーにおいては、キュミ鳥というキャラクターがすごくいい味を出していて。
今人:キュミ鳥が結構繋いでますよね!……まあ、あれは僕なんですけど。
──そうなんですね(笑)!
今人:ついにキュミ鳥役でデビューしました(笑)。あ、それで思い出したんですけど、コロナ禍に僕が一番貢献できたと思っている事案がありまして。声が出せない状況をどう打開しようか考えたときに、「ミ鳥(ミドリ)」という、「ペーッ!」って音が鳴るグッズを僕が提案して、それが採用されたんです。
HIDE:そうそう。あれはすごく盛り上がりました。
今人:お客さんに「ミ鳥で騒いでくれー!」と言って、みんなで「ペーッ!」って音を鳴らす空気感は、マジでGRe4N BOYZでしかありえないと思いますよ(笑)。そういうちょっとしたおふざけ要素やコミカルな要素も、真面目な要素も両方許容してくれる。そこが面白いんですよね。ひこひこのトークや大玉転がしのような企画で盛り上がったと思ったら、終盤のメッセージからのバラードでグッと来て。振り幅が広いからこそ、演出側もいろいろ考え甲斐があります。
来年にはNumber_iくらいの難しい振り付けをやらなきゃいけなくなるんじゃ
──いろいろな要素の真ん中に、GRe4N BOYZの音楽が軸として通っているから、すべてと違和感なく繋がるんだと思います。演出・振付師の目線で、今人さんはGRe4N BOYZの音楽の魅力をどういうところに感じますか?
今人:音楽にも、その時代が求めてるものにめちゃくちゃ敏感で常に新しいものを取り入れるんですよ。誰も傷つけず、同時にすべての人を後押しするっていうGRe4N BOYZの根本は変わらないんですけど、ビートや曲の運び方のトレンドにはすごく敏感。だからこそ、俺ら世代も GRe4N BOYZ 世代であると同時に、若い子世代にもGRe4N BOYZの音楽が刺さるんでしょうね。
HIDE:そういうことか! いや、色んな世代に「世代なんですよ」って言われるんですよ!
今人:ターゲットになってる世代がめちゃくちゃ広いんですよ。かれこれ10年ほどライブに関わらせてもらってますけど、常にリアルタイムの10代が最前列で踊ってるから。 「いつまで若者に刺さり続けるんだろう?」と思ってました。とんでもねぇぞって(笑)。
──振り付けもアップデートしていかないといけなくなりますね。
今人:そうそう。毎回チャレンジングな楽曲が来るので、挑戦を受けるつもりでやっています。俺が踏んだことのない、今流行りのステップとかも勉強して取り入れていかないといけない。曲がそういうものを求めてるから。来年にはNumber_iくらいの難しい振り付けをやらなきゃいけなくなるんじゃないですか?
HIDE:あ、すでにそういう曲ができてる。
今人:ちょっとぉ(笑)! じゃあ、ダンサブル企画でご本人も踊りましょう。
HIDE:うん、僕ら、ダンサーとしても頑張っていきたいと思ってるんで……(笑)。
今人:HIDEさん言いましたね(笑)? じゃあ、来年はぶちかましましょう!
HIDE:ハハハハ! ……というのは冗談で(笑)、僕らが作れるのはそこまでで、あとは皆さんやスタッフが作ってくださっている苦労の賜物ですから。いわゆる普通の音楽ライブとは少し違っても、こんなに長く続けられて、さらに進化できているのは嬉しいですね。今回は、初の台北公演もありますし。
まだまだ世の中には発見されていない方法があるんじゃないかな
──広がっていきますね。【"The CUBE"】はまだまだ続きますが、これからの公演に来られる方へメッセージをいただけますか?
HIDE:【"The CUBE"】も実はツアー初日からいろいろ変わっているので、1回来てくださった方も、是非また来て「全然違う!」と驚いていただけたら嬉しいです。まだ観たことがない方には、「我が街にサーカスが来た」とか「ちょっと時間があるから観に行こうか」くらいの気持ちで来ていただけたら、楽しい時間になると思います。いろんなことを知っていないと楽しめないライブでもないですし、最新アルバムを中心にやるアーティストも多いですけど、僕たちはみなさんが知っていて一緒に歌ってくださりそうな曲をちゃんと選んでますから。
──さらにその先の展望はどんなふうに考えているんですか?
HIDE:この【“THE”~】シリーズをどんどんパワーアップさせて、さらにイマーシブの裾野を広げていきたいですね。あと、来年1月に初のファンクラブ限定イベントをやります。【イマーシブライブシアターLABO 2025】というタイトルで、どうしたらもっとみんなが没入できる空間を作れるか実験しようと思っていて。それが成功すれば、来年の夏のツアーのLEDの組み方や演出の仕方が変わるかもしれない。たとえばラスベガスにできた「Sphere」という8Kの会場も、結局は映像表現のひとつの手法だと思うんですよ。だから、まだまだ世の中には発見されていない方法があるんじゃないかなと。
今人:今後なにか技術革命が起きたら、いち早く取り入れられるのはGRe4N BOYZだと思いますよ。だから、「これをやりたい」と言われたときにいつでも回答できるように、僕もアンテナを張り続けていきたいと思います。
HIDE:ありがとうございます!
ツアー情報
【GRe4N BOYZ イマーシブライブシアター 2024 “The CUBE”〜何処かに広がる大きな声が〜】
*チケット一般発売中
9月22日(日)青森・弘前市民会館
9月23日(月・祝)岩手・盛岡市民文化ホール
9月28日(土)広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
9月29日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール
10月5日(土)栃木・栃木県総合文化センター メインホール
10月12日(土)神奈川・鎌倉芸術館 大ホール
10月13日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
10月14日(月・祝)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
10月19日(土)愛知・Niterra 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
10月20日(日)神奈川・小田原三の丸ホール 大ホール
10月27日(日)茨城・水戸市民会館 グロービスホール
11月2日(土)大分・iichiko 総合文化センター iichiko グランシアタ
11月3日(日)鹿児島・川商ホール(鹿児島市民文化ホール) 第一ホール
11月9日(土)福島・けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)大ホール
11月10日(日)新潟・新潟テルサ
11月16日(土)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
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11月23日(土)台湾・Zepp New Taipei
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リリース情報
CDアルバム『あっ、ども。あらためまして。』
2024/11/20 RELEASE
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