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<インタビュー>Homecomingsが語る新体制以降の音楽モード、進化するストリングス編成で臨む初のビルボードライブ公演

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Text: Takuto Ueda / Photo: 新家菜々子

 Homecomingsが自身初のビルボードライブ公演を行う。
 2012年に京都で結成されたHomecomingsは、心地よいメロディ、日常の中にある細やかな描写を紡ぐような歌詞、耽美でどこか懐かしさを感じさせる歌声が高い評価を得て、2021年春にポニーキャニオン内の<IRORI Records>よりメジャーデビュー。2023年12月には神奈川・大さん橋ホールにてデビュー10周年イヤーを締めくくる、自身最大規模のワンマンライブを成功させた。

 今年2月、メンバーの石田成美(Dr)が卒業するも、バンドはサポートメンバーを迎える形で活動継続、新体制になって精力的にライブ活動を展開している。今回、ビルボードライブではストリングス・セクションを迎えた総勢8人の特別編成“Homecomings Chamber Set”でオンステージ。公演の開催に際して、このプレミアムなステージに向けた意気込み、そしてバンドの近況や現在の音楽モードなど、畳野彩加(Vo/Gt)、福富優樹(Gt)、福田穂那美(Ba)の3人に話を聞いた。

少しずつ自分の理想を作っていけている実感はある

――7月に東名阪のCLUB QUATTROを巡るツアーを完遂。その後、バンドの近況はいかがですか?

畳野:めちゃくちゃレコーディングして、今までにない忙しさがありますね。

福富:2月にドラムのなるちゃん(石田成美)が卒業してから、とりあえずライブをめちゃくちゃやろう、みたいな感じでした。いつもは月に多くて3~4本だったのを、思い切って10本ぐらいにしてみようって。なので、つい先日までめちゃくちゃライブをしていたのに、急に次の日から制作モードに入っていく感じで、それがすごく新鮮です。


――体制の変化はやはり影響が大きいですか。

福富:ありがたいことにライブのオファーはたくさんいただいていて、年間のスケジュールみたいなものがあるなかで、やっぱり4人で10年やってきて、メンバーが変わるというのはこれまでとは全然違うことをするような感覚なので、けっこう不安のなか始めたというか。だからこそライブをたくさん入れたみたいなところもあります。一度の練習と一度のライブじゃ経験値がまったく違うので。

福田:なるちゃんが抜ける実感は最後のライブの当日までなかったんですけど、サポートのユナ(ex-CHAI)と一緒にスタジオに入ったときにようやく実感して、すごく寂しさが襲ってきたんです。でも、たくさんライブに出させていただくなかで、ユナとか礒やん(礒本雄太/Laura day romance)との絆も育んでいけて、実際にライブも回を重ねるごとに良くなっていて。そのなかで今は制作もしつつって感じですね。

――現在、サポートメンバーとしてはユナさんと礒本さんが日によって変わる形でドラムを担当。まずはユナさんとの馴れ初めを教えていただけますか?

畳野:なるちゃんの卒業が決まって、次のドラムを探さないといけないときに「ユナが面白いんじゃない?」って話が出てきて。それで連絡したらCHAIが解散することを聞いて、たまたまタイミングが重なったというか。私たちが上京する前、まだ京都にいた頃からCHAIとは関係性があったので、なんか運命というか、そういうタイミングってあるんだなって感覚でした。


――礒本さんは?

畳野:礒本くんはLaura day romanceのドラムで、ボーカルの(井上)花月ちゃんとは遊んだりする仲だったし、バンドとしても深いつながりがありました。サポートはいろんな人に頼みたいと思っていたので、男性のドラムも経験したいという気持ちがあって。それで「一緒にやれないかな?」と声をかけた流れですね。

福富:なるちゃんが卒業したあと、誰かメンバーを加えて、新しい4人でやっていこう、みたいな考えは最初からなかったんです。礒やんとユナみたいな、友達のような距離感でやれる人がよかったし、叩くドラムはそれぞれ違っていい、なるちゃんとも違っていいと思っていました。


――制作もサポートを加えた新体制で?

福富:そうですね。しかも、その二人以外の人ともやったりしていて、次はけっこう面白いアルバムになる気がしています。その曲その曲に合う人とやっていけたらいいなって感じです。

――メンバー3人から見て、ユナさんと礒本さんはそれぞれどんな個性を持つドラマーだと思いますか?

福富:今のところライブはユナと一緒にやることが多いんですけど、そのライブ感が音源にも出ているなって、レコーディングしていても思いますね。礒やんはドラマー然としてるというか、スタジオドラマーみたいな感じの捉え方というか。エンジニアさんとのコミュニケーションとかも含めて。でもまあ、これからどんどん分かっていくんだろうなって気もしています。僕らはずっと同じメンバーでやってきて、自然とグルーヴができていったところもあるので、自分たちがドラマーに対して「こう合わせてくれ」ってところがあるわけでもないんですよ。とはいえ、僕らがそれぞれに合わせにいってるっていう感じでもなく自然とそこがぶつかってなにかが生まれていると思うので、ライブを見てくれる人のほうが違いが分かるんじゃないかな。とにかく今は毎回夢中で演奏してる感じですね、それを自分たちで楽しんでいるって感じで。


――ドラマー次第でグルーヴも変わるかもしれない。そこは今後、ライブの見どころになるかもしれませんね。

福富:そうですよね。今後はたぶん、一緒にアルバムを作ったことでその日のドラマーによってセトリも変わってくる、みたいなことが起こりうると思うので、またそれも一つ面白いことかなと思いますね。


――同じリズム・セクションとして、福田さんはお二人のドラムをどんなふうに見ていますか?

福田:ユナのドラムは推進力があるというか。速さとかの問題ではなく、どんどん引っ張っていってくれる勢いがあるドラムだなと思います。また違ったHomecomingsの良さを出してくれる。どちらかといえば礒やんは、ちょっとなるちゃんの雰囲気に近いかもしれないです。きっと私たちの演奏に合わせてくれているんだと思うんですけど。実際、まだライブは2回ぐらいしか一緒にやっていないので、もっと知りたいなって気持ちがありますね。私たちも礒やんの良さを引き出していけたらなって。


――楽曲制作も行っているとのことでしたが、最近のHomecomingsの音楽モードについて聞かせてください。皆さんは今、どんな音楽を探求していて、どんなことを表現しようとしているのか。

福富:アルバムでいえば、今は100あるうちの60ぐらいまでしか進んでいなくて。モードとしては、3月以降にやってきたライブの感じというか。けっこう今までと違うライブをやっている感覚が自分たちの中でもあるので、アルバムもそのモードやなって気がします。なので最近のライブを追ってくれてる方にはある程度どういう感じか予測してもらえるかな、とも思うんですけど、そこもまた裏切っていく感じもありつつ、という感じですかね。


――そういう意味では前作からの変化も大きそう?

福富:『New Neighbors』は4人ができることを持ち寄って、それぞれの矢印が外に向かって、全然違う方向に伸びていって、円が広がるようなアルバムだったと思っていて。なので、それぞれがデモを書いたり、僕も歌詞を書くときにはそれを意識したりしていました。私とあなただけじゃないし、4人だけでもない、社会のこととか、つながりのこととか。そういうことをすごく考えて作ったアルバムでもあって、Homecomingsとしてのステイトメントをアルバムというかたちで表現したようなすごく素敵な一枚になったと思うんですけど、次のアルバムはちょっと対比になるような、もうちょっと矢印が内に向いているものを作りたいと思っていて。昔から好きなアルバムでいうと、くるりの『THE WORLD IS MINE』とか、アジカンの『ファンクラブ』のような、内に向く瞬間というか、そういうアルバムが個人的にも好きで、音楽家として自分も作れたらいいなと思いながら制作中ですね。歌詞に関してはひとつ大きなテーマと言うかモチーフが自分のなかにあって、それをかたちにしながらそこに合う音を作っていってる感じですね。


――バンドのコアみたいな部分に立ち返っていくというか。

福富:そうですね。それがバンドのコアなのか、自分の個人的なことなのかどうかは分からないんですけど。もちろん基になっているものは一緒というか、『New Neighbors』も自分たちのルーツとか、やりたいことを形にすることがテーマでもあったので、表現の核みたいなものは同じなんですけど、表現の形や向いている方向が違うものになったらいいなって。

畳野:まだ60%ぐらいしか進んでいないので、もしかしたら全部が終わったとき、また違う印象になっているかもしれない。毎回、アルバムごとに新しいことには挑戦しているんですけど、今回はメンバーが抜けたことで、さらに吹っ切れているというか。でも、サポートメンバーと一緒にやっていることで、なんとなく自分の理想にめちゃくちゃ近くなる可能性がすごく溢れていて。はっきりと明確にはなっていないですけど、少しずつ自分の理想を作っていけている実感はあるかもしれないです。


福田:なるちゃん以外のドラマーと一緒にレコーディングすることが初めてだったので、最初は不安もあったんですけど、やってみたら全然そんな感じはなくて。新しいHomecomingsみたいな、そういう新鮮な気持ちでアルバムを作れているなって思います。

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ストリングス編成でのビルボードライブ公演に向けて

――そして、9月14日にはビルボードライブ公演が開催予定。会場に対してはどんなイメージを持っていますか?

福富:僕は大学生のときにSAKEROCKのDVDを買って、そこで初めてビルボードでのライブ映像を見ました。その頃はまだYouTubeでライブ映像がたくさん見れたり、配信があったりしたわけではないので。きれいな夜景のイメージが目に焼き付いています。


――今では事務所の大先輩ですね。

福富:そうですね。自分にとって憧れの存在。QUATTROとかLIQUIDROOMとかもそうですけど、自分が学生の頃に見ていたライブDVDの会場って「あの映像のところや!」ってテンション上がりますね。

畳野:私は何度か遊びに行かせてもらっています。テーブルにゆったり座って、ご飯を食べながら見れる。いろんなものがリッチですよね。ホテルの特別ルームみたいな場所で演奏を見ている感じ。でも、前にホセ・ジェイムズを見たとき、会場の熱量がぐっと上がる瞬間があって、座っていた人たちがみんな立ち上がって拍手していて、それにちょっと圧倒されちゃいました。きっとあの場所でしか味わえない特別な体験だったなって。それからビルボードでライブをすることがちょっとした目標になったので、こんなに早く実現できるとは思っていなかったし、いつも私たちのライブに来てくれる人たちには「ビルボードライブ、おいでよ!」みたいな気持ちですね。あの特別な体験をしに来てほしい。

福田:私はまだ行ったことがなくて、写真とかでしか見れてないんです。でも、うちの親ってまったく音楽に詳しくないんですけど、ビルボードでライブするって伝えたらすぐに「行きたい」と言ってくれて。音楽のことを知らない人でもすごいことって分かるんかなって。そんなところでライブできるのが嬉しくもあり、楽しみでもあります。


――今回はストリングス・セクションを加えた“Homecomings Chamber Set”での出演。この特別編成が初披露されたのは、2019年に行われた自主企画【SLOW SUMMITS】ですよね?

福富:ちゃんとしたワンマンでやったのは2019年が最初でした。でも、2018年に京都新聞のCMキャラクターを務めさせていただいたときに、同志社大学のホールでライブイベントを企画してくださって、数曲でしたけどストリングスの方々と一緒にやらせていただいのが一番最初のきっかけかもしれないです。それを拡張させて続けていった感じですね。


――そのときから“Chamber Set”を謳っていた?

福富:どうやったかな。同志社大学のイベントのあと、また京都新聞さんのイベントが京都府庁旧本館であって、そこで“Quiet & Chamber Set”と言ってやったのが最初だった気がしますね。アコースティックとストリングスでやりました。


――そもそもストリングス編成のアイデアはどんなところから着想を得たのでしょう?

福富:2017年に出したEP『SYMPHONY』に入っている「PLAY YARD SYMPHONY」で、初めてストリングス入りのアレンジをやってみたんですけど、ちょうどその頃アヴァランチーズが再結成して、あの感じをロックサウンドに落とし込めたら面白いんじゃないかと思っていたんです。で、音源でやったのでライブでもやろう、みたいな感じでしたね。J-POP的なストリングスというより、ダンス・ミュージックでサンプリングされるようなストリングスのイメージがありました。

――昨年末の神奈川・大さん橋ホール公演をはじめ、これまでに何度か披露されてきた“Chamber Set”ですが、演奏していてどんな手応えを感じていますか?

畳野:バンド4人で演奏しているときとはまた違う感情というか。すごく身を委ねられる感じ。自分が歌うんですけど、本当は外側で聴きたい気持ちも大きいです(笑)。それぐらいリラックスできる。


――むしろ緊張感があると思っていました。

畳野:そうですよね。自分がやっているのに客観的に聴いちゃう瞬間があって、「今、すごくきれいなんだろうな」って思いながら演奏するっていう、すごく変な感じではあるんですけど、だからこそ身を委ねられるというか、すごく気持ちがいい時間だったりします。

福田:私もけっこう同じような気持ちで、毎回、このステージの前にいる人たちと一緒になって聴いてみたいなって思いながら演奏しています。バンドをまた違った角度で底上げしてもらっているような気持ちで、すごく安心感がありますね。でも、そのぶん勢いだけじゃなく、より丁寧にというか、4人のときとはまた違ったアプローチでもあって。物理的に聴こえる音も増えるので、そういう面ではちょっと難しかったりもするんですけど、でも、やっていてすごく楽しいです。

福富:もしかしたら緊張はドラマーのほうが大きいかもしれない。指揮をしなきゃいけない感覚だと思うので。僕らはそれに合わせて気持ちよく演奏したら、目の前のスピーカーからいつもと違うめっちゃ素敵なフレーズが返ってくる感じというか。


――“Homecomings Chamber Set”としても進化している実感はありますか?

福富:毎回アプローチは違うんですけど、最初の頃は良い上着を羽織っている感覚というか。僕らはいつものジャーンって感じを抑えて、ストリングスがバーンって前に出るような。でも、最近のHomecomingsのモードは、ちょっと激しさもあるというか、ノリがどんどん大きく深くなってきている気がするので、そこにストリングスに入ってもらう感じ。そのままぶち当たって混ざるような感覚になる気がします。今までとはまた全然違ったストリングス編成になると思うので、ぜひ見に来てほしいですね。


――楽しみですね。当日は限定カクテルもご提供予定で、そういった部分も含めて特別なライブになりそうですが、最後に意気込みを聞かせてください。

畳野:オリジナル・ドリンクも楽しんでいただきつつ、ビルボードライブのポテトとチキンが本当に美味しいので、ちょっとご飯を食べに来るみたいな気持ちでもいいですし、気負わず楽しんでもらえたらなと思います。

福富:そうですね。とはいえ、演奏はバキバキにやろうと思っているのでその点も楽しんでいただけたらいいなと。


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