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<インタビュー>多面的だからこそ人間らしい――にしなの現在のモードが反映された新曲「plum」



インタビューバナー

Interview&Text:金子厚武/Photo:矢倉明莉
Hair&Makeup:Eriko Yamaguchi/Styling:Erika Nakanishi
衣装:Denim overall[Mr.Clean]/Tank top(Blue)・Ring[BIGTIME 下北沢]
Quilt jacket[H (アッシュ)]/Necklace[soprano jungle]


 にしながアレンジャーにYaffleを迎えたデジタル・シングル「plum」をリリースした。Yaffleとは3月に藤井 風の『tiny desk concerts JAPAN』にコーラスとして出演した際に共演をしているが、「plum」のレコーディングにはそのときのバンドメンバーも参加し、オルタナティブな雰囲気をまとった極上のソウルナンバーに仕上がっている。自らの直感を信じて動き続け、11月からはZeppツアー【SUPER COMPLEX】が控えるにしなに、現在のモードを語ってもらった。

“やりたいことをやってみる”
Yaffleとの初タッグで制作された「plum」

――2024年は年明けに「bugs」のリリースがあり、2月から4月にかけて【Feeling】ツアー、「It’s a piece of cake」のリリースがあって、その間には藤井 風さんの『tiny desk concerts JAPAN』への出演もありました。ここまでをどんなふうに振り返りますか?

にしな:年の始まりにツアーがあったからか、すごく早い感じがしてます。ツアーのときはツアーに集中する分、特にギュッと短く感じるので、本当にあっという間だなっていう気持ちですね。でもデビュー当時の右も左もわからずに、いろんなことを決めるのに時間がかかった頃と比べると、自分で要領を掴んで、楽しく、軽快に過ごせてたなと思います。ツアー前後に曲作りもしてたんですけど、今は「このモード」みたいなのがあんまりなくて、いろんな雰囲気のものを、そのとき作りたいものを作ってた気がします。

――ツアータイトルが【Feeling】で、MCでも「根拠のないフィーリングや直感が大切だと思う」という話をされていましたが、今年は感覚的に、直感で動けてる?

にしな:そうですね。あんまり気負いすぎず、気軽なステップで(笑)、右左いろんな方向に行けてる気がします。ツアー自体もそういう気持ちで挑んだし、ツアーを通して、「やっぱりそうだよな」と思いました。これからどうなっていくのかは誰にもわからないし、だったら今やりたいことや行きたい方向に楽しく進んでみることが大切かなって、ツアーをやり切って、改めてすごく実感しました。

――新曲の「plum」もまずは自分のやりたいことをやってみるという中で生まれた1曲なのかなと思いますが、今回はアレンジャーがYaffleさんで、tiny deskでの共演がきっかけなのでしょうか?

にしな:いや、もともとこの曲のアレンジをお願いしていて、その後にtiny deskの話が決まり、結果的にはじめましての場所がtiny deskになったんです。

――そうだったんですね。Yaffleさんは以前からご一緒したい人の一人だった?

にしな:そうですね。いろんな楽曲を聴かせていただいて、すごく引き算が上手な方だなってイメージが私の中であって。曲の良さを最大限に出すのは足し算だけじゃないじゃないですか。Yaffleさんは引き算がとっても上手な方という印象があったし、R&Bっぽい雰囲気もすごく好きだったので、いつかご一緒したいなとずっと思ってました。

――Yaffleワークスの中で、特に好きな曲はありますか?

にしな:自分で音楽をちゃんとやるようになるまでは、アレンジャーさんという存在をあまり意識せずに音楽を聴いていて、デビューして、他の人の音楽もちゃんと聴くようになったときにYaffleさんの存在を知ったんですけど、その知ったタイミングがまさしく風さんで。風さんとYaffleさんはぴったりのタッグというか、お二人のワークスはずっとすごいなと思いながら聴いてました。

――藤井 風さんとは以前からお知り合いだったそうですが、Yaffleさんともtiny deskのときにいろいろ話しましたか?

にしな:そんなにたくさん話したわけではないですね。コーラスのことでわからないことがあったら聞くとかはあったんですけど、基本的には、風さんとYo-Seaさんと私で話すことが多かったです。ただバンドのリハではみんなでコミュニケーションを取っていくみたいな感じだったので、今振り返ると、そこでフィールできたのはよかったなと思います。たまたまですけどそこからの制作だったのは、とってもいい流れでした。

▲にしながコーラスで参加した「Fujii Kaze: Tiny Desk Concerts JAPAN」

――「plum」はもともとどういうイメージで作って、Yaffleさんとはどんなやり取りがありましたか?

にしな:「FRIDAY KIDS CHINA TOWN」のようにギターでスリーコードをずっと回しながら作って、それこそR&Bみたいな雰囲気もありつつ、ちょっとソウルフルなものにしたいなと思っていました。あとは詰めすぎないというか、抜け感みたいなものがとても大切な曲だなと思ったので、Yaffleさんともそういうことを共有しながら、打ち合わせでお話をさせてもらって、もうその日のうちにその場で叩きを作って、仮歌を入れて、みたいな感じで作っていきました。

――結構スピード感がある制作だったんですね。

にしな:そうですね。曲によっては一番だけしかない状態でアレンジを進めていくときもあるんですけど、この曲はもうツルッとできた状態でお渡ししたので、アレンジだけに集中して会話ができたこともあって、割とスムーズな流れで進んでいきました。

――バンドサウンドで、展開によってはギターも前に出ていて、低音もヘヴィだったりしますけど、もともとこういうサウンドのイメージがあったのか、Yaffleさんとやり取りする中でこうなっていったのか、どちらが近いですか?

にしな:もともとこういうイメージではありました。そこを打ち合わせの中ですごく話したわけではないんですけど、叩きの時点ですごくイメージ通りでしたね。もともと曲を作ってるときは気軽さとかラフさを意識しつつ、でも歌詞にはちょっと荒々しいところもあるから、そこが混在してるような曲だなって思ってました。あとはこの曲のけだるさも大切にしたくて、ソウルな感じとか、リズムをゆったりめに置くことも意識しつつ、でも「もっと乗れる方が、踊れる方がいいんじゃないか」みたいな客観的な意見もあったので、そこはみんなで議論しながらテンポとかを調整して決めていきました。

――最初はもうちょっとレイドバックしてるというか、今よりBPM的にもちょっと遅かったり?

にしな:いくつかパターンがありました。リズムの感じも微調整しながら、BPMはゆったりだけど、でもリズムがちょっと早く聴こえるようにしてくれたり、細かな調整をいっぱいやってます。この曲は自分がライブで歌うのも楽しみなんですけど、クラブとかで勝手に流れてくれたら素敵だなと思っていて、違う世界にも飛んでいってほしいです。

――ギターのサウンドが印象的で、これってtiny deskで共演したDURANさんだったりしますか?

にしな:DURANさんです。tiny deskの後の打ち合わせで、Yaffleさん的にも「最近はストーリーをすごく大切にしてる」みたいなことをおっしゃっていて、なのでレコーディングはtiny deskのメンバーです(ベースが勝矢匠、ドラムが工藤誠也)。みなさん素晴らしいですけど、DURANさんかっこいいですよね。レコーディングを横で見てて、すごいなと思いました。

――Yaffleさんからはボーカルのディレクションもあったんですか?

にしな:それはないですね。基本的には、デモの段階からこの感じでした。

――ヴァースの部分のリズムの取り方とか難しそうだなって。

にしな:意外と……ノリでできました(笑)。もともと好きな感じの歌い言い回しというか、自分では自然と出てきた感じではありますね。

――僕が以前取材をさせてもらった際に、ボーカルのレコーディングの仕方について模索しているという話をしてくれたのを覚えているのですが、最近はそこも感覚的にやれるようになってきた?

にしな:レコーディングのことはずっと悩み続けてはいたんですけど、ここ半年とか、そろそろ1年になるのかもしれないですけど、レコーディングのエンジニアさんを固定でお願いするようになったんです。GeGさんの「EDEN(feat. にしな&唾奇)」でご一緒した沢田(悠介)さんという方なんですけど、それまで自分の歌いやすい耳中は何なのかっていうのを上手く言語化して伝えるのが難しくて、なかなか整えられなかったのを、沢田さんが一緒になって探してくれて。なので、よりストレスなく歌えるレコーディング環境にはどんどんなってきて、それは昔と比べてすごく大きく変わったことで。今はレコーディングのことを知っていくのがすごく楽しくなってきたフェーズではありますね。

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