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<コラム>UNISON SQUARE GARDENが初のベストアルバムをリリース ロックバンド20年の歴史を彩るマスターピースをおさらい
7月24日、UNISON SQUARE GARDENが結成20周年を迎える。UNISON SQUARE GARDENは斎藤宏介(Vo. / Gt.)、田淵智也(Ba.)、鈴木貴雄(Dr.)からなる3ピースロックバンド。数々のタイアップ楽曲や精力的なライブ活動によって、その名前を知る人も多いはずだ。そんな彼らは、結成日にベストアルバム『SUB MACHINE, BEST MACHINE』をリリースし、さらには日本武道館で内容の異なるライブを3日連続で開催。より一層勢いを増す20周年という節目に、アルバム収録曲を軸にこれまでの歩みを辿り、さらなるバンドの魅力に迫っていきたい。 (Text: 高橋梓)
UNISON SQUARE GARDEN は、どのようなイメージを持たれているのだろうか。3人で演奏しているとは思えないサウンドを奏でるバンド、人気アニメの主題歌に欠かせないバンド……といろいろあるだろうが、「ライブが主戦場のロックバンド」であることは間違いない。過去を振り返ってみると、1年間でツアーを2本行なうのはもはや当たり前、年によっては3本やることも少なくないうえに、ツアーの間もイベントやフェス、自身のイベントを休む間もなく行なっている。いつかのライブMCで、斎藤は「自分たちはライブを止めることができない。回遊魚と一緒」というようなことを言っていたが、まさにその通りだ。
そして彼らにとっての“日常”であるライブは、結成20周年となる今年ももちろん行なわれている。2月から3月までファンクラブ限定ツアー【UNICITY Vol.2】、4月には【Revival Tour "Catcher In The Spy"】、5月に初ワンマンのリバイバルライブ【ワンマンライブ “流星前夜 -rebirth-”】を開催。6月から7月初旬まで対バンツアー【20th anniversary SPECIAL LIVE】も行い、結成日となる7月24日から7月26日までは7月24日を軸に日本武道館にて各日内容の異なる【20th Anniversary LIVE】、9月からは【TOUR 2024「20th BEST MACHINE」】の開催が決定している。
こうして休むことなくライブを続ける3人だが、今年は20周年とあって「日常(=ライブ)」だけでなくスペシャルなコンテンツも。7月24日に初のベストアルバム『SUB MACHINE, BEST MACHINE』をリリースするのだ。同作のDISC1はバンド結成初期からメジャーデビュー前後に制作された未音源化曲11曲と新曲「アナザーワールドエンド」、DISC2、3はシングル曲22曲が収録(一部再ミックス、再レコーディングあり)。さらに受注生産限定盤には、5つのライブ映像と「アナザーワールドエンド」のMVも付属するという贅沢さだ。正直、UNISON SQUARE GARDENはシングル曲以外にも秀逸な曲が多すぎるのだが、バンドのあらすじを知るにはもってこいの作品になるのではないだろうか。
例えば、ベストアルバムにももちろん収録される2015年5月20日リリースの「シュガーソングとビターステップ」。同曲はアニメ『血界戦線』のエンディング・テーマで、名実ともに彼ら最大のヒット曲だ。リリース当初より大きな話題になっており、ビルボードジャパンが発表する総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では、2015年6月3日公開チャート(集計期間:5月25日~5月31日)で1位を獲得。全国推定売上枚数、ダウンロード回数、ラジオ放送回数、ルックアップ回数(PCへのCD読み取り数)、ツイート数、ストリーミング数、YouTube再生回数と7つの指標を合算(※2015年当時)して生成されている中でも、特にダウンロードでの指標が好調な動きを見せており、ダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”でも、6月3日公開チャートから3週連続1位を獲得。さらに、5月27日 公開(集計期間:5月18日~5月24日)のシングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”では、初週で約3.6万枚を売り上げて、最高4位を記録したほか、総合アニメソング・チャート“Hot Animation”でも、5月27日公開以降で通算4回の1位を獲得した。さらに2015年のアニメ・チャートでは、5月20日の初登場以来、実に27回のチャートインを経て、約半年にわたって上位をキープし、年間首位を獲得。これは2015年にリリースされたアニメ楽曲の中で最多のチャートイン回数であった。
また同曲は、2024年現在においても全世界で約120万回のストリーミング再生をマークしている。日本国内で約79%、海外で約21%再生されており、海外の中でも韓国で約4.5%、次いでアメリカで約3%という結果に。アーティスト単位では、現時点において全世界で約360万人のリスナーを獲得しており、約86%が国内のリスナーであるのに対し、アメリカでは約2.5%、韓国では約2%となっている(※)。さらに楽曲単位で見てみると、上位曲のほとんどがアニメタイアップ曲であり、中でも「シュガーソングとビターステップ」の圧倒的なストリーミング再生数から、『血界戦線』をきっかけに楽曲が世界に広がっていったと考えられるのではないだろうか(※ルミネイト調べ:6月7日~13日集計分)。
さらに、UNISON SQUARE GARDENの公式YouTubeチャンネルにアップされている動画の中では、同曲のライブ映像が約6,200万再生、MVのショートバージョンが約5,200万再生、MVが約3,600万再生超えと、その数字は圧倒的だ。それだけでなく、アニメのエンディング映像でのキャラクター同様にダンスする「踊ってみた」のほか、「歌ってみた」、「演奏してみた」動画がSNSに多々アップされており、バンド、アニメファン以外の層にも広がっていった一曲であるとも言えるだろう。
そんな同曲は、ハッピーでキャッチーなメロディで耳馴染みがよい。『血界戦線』のために描き下ろされたため、作品の内容にインスパイアされた描写も多く、ストーリーにぴったりとフィットしている。
しかし、同曲は初の日本武道館公演やファンクラブの発足、10周年記念アルバムのリリースなど、バンドにとって節目となるタイミングでリリースされた楽曲でもある。それらを踏まえると、「『血界戦線』の曲」で終わらないメッセージが込められていることに気がつく。手前味噌で恐縮だが、一例として次のような考察もできそうだ。ブリッジ部分の〈Someday 狂騒が息を潜めても〉は「いつの日かバンドの人気が下火になっても」、〈Someday 正論に意味がなくなっても〉は「いつの日か一般的に受ける楽曲を作ることに意味がなくなっても」、〈Feeling song & step 鳴らし続けることだけが/僕たちを僕たちたらしめる証明になる、QED〉は「それでも今まで通り、自分たちが納得できる音楽をやり続けることがUNISON SQUARE GARDENがUNISON SQUARE GARDENである証明だ」。彼らにとって節目である年にリリースする楽曲がゆえに、自分たちが今後進むべき道筋をこの楽曲で示したのではないだろうか。このように、彼らの楽曲は咀嚼しても咀嚼しても新たな発見があるから面白い。
リリース情報
『SUB MACHINE, BEST MACHINE』
2024/7/24 RELEASE
関連リンク
・UNISON SQUARE GARDEN 公式サイト
・UNISON SQUARE GARDEN 公式X
・UNISON SQUARE GARDEN 公式YouTube
そんな「シュガーソングとビターステップ」を経て、彼らはますますアニメタイアップ曲でも名曲を出すことが増えていった。2017年放送のアニメ『ボールルームへようこそ』のオープニング・テーマ「10% roll, 10% romance」、『血界戦線』に続く新シリーズ『血界戦線 & BEYOND』のオープニング・テーマ「fake town baby」は、チャートにおいてそれぞれHot 100で最高4位を獲得(「fake town baby」はダウンロードで1位)。そして、アニメ『3月のライオン』第2シーズンのオープニング・テーマである2018年3月リリースの「春が来てぼくら」は、チャートでもHot 100最高9位と上位に食い込む結果を残している。
そして、2022年には『TIGER & BUNNY 2』オープニング・テーマの17thシングル「kaleido proud fiesta」をリリース。同曲は、『TIGER & BUNNY』オープニング・テーマである5thシングル「オリオンをなぞる」(2011年)、『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』主題歌の7thシングル「リニアブルーを聴きながら」(2012年)、『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』主題歌の9thシングル「harmonized finale」(2014年)に次ぐ4回目のタイアップであり、“タイバニ”=ユニゾンという最強タッグも生まれた。
さらに、18thシングル「カオスが極まる」(2022年)は『ブルーロック』オープニング・テーマに起用。近年ヒットチャートを賑わせているYOASOBIやCreepy Nutsなどを見ても、今やアニメのタイアップ曲は世界的ヒットにもなり得る。アニメが配信サービスを通して海外でも視聴されることによって楽曲も広がり、世界でのヒットが見込める。そんなポテンシャルを、UNISON SQUARE GARDENも持っているというわけだ。
タイアップの楽曲以外にもUNISON SQUARE GARDENには心が弾む楽曲が山程ある。例えば、メジャーデビュー曲「センチメンタルピリオド」。同曲は3人の演奏のみで構成された楽曲で、彼らが得意だと自負するタイプの曲でもある。勢いがあるのにサウンドも重く、3人のバランスがすこぶる良い。ファンからの人気も高く、今もなおライブで披露されることがある。そして、少年がこの先の未来にワクワクしているような歌詞もいい。この曲ができるまで、3人は様々な葛藤や方向性を模索してきたはずだが、その「センチメンタル」な気持ちに「ピリオド」を打つかのような内容に、聴いている方も心が明るくなってくるはずだ。
同曲のリリースから16年、絶えずUNISON SQUARE GARDENという小説を書き進めてきた3人の20年目が楽しみで仕方ない。2020年リリースの『Patrick Vegee』収録曲「101回目のプロローグ」に〈本当の気持ちを話すのは 4年ぐらい後にするよ〉という歌詞があるが、その4年後は2024年。7月24日の日本武道館が待ち遠しい。
20周年のコピーは、「ロックバンドは、やっぱり楽しい。」。
ファーストアルバム『UNISON SQUARE GARDEN』リリース当時のコピー「ロックバンドは楽しい。」を思うと彼らが歩んできたストーリーと、その思いがステージからビシビシ伝わってくるライブもぜひ一見してみてほしい。
リリース情報
『SUB MACHINE, BEST MACHINE』
2024/7/24 RELEASE
関連リンク
・UNISON SQUARE GARDEN 公式サイト
・UNISON SQUARE GARDEN 公式X
・UNISON SQUARE GARDEN 公式YouTube
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