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<コラム>新進気鋭R&Bシンガー=メイタ、各地のステージを踏み初来日公演へ



コラム

 ジェイ・Z率いる世界最高峰のレーベル<ROC NATION>所属の新進気鋭R&Bシンガー、メイタが満を持してビルボードライブのステージに登場。誰もが心奪われる美麗な歌声と、確立された存在感でスターダムを駆け上がるの彼女の貴重な初来日公演を目前に、ホットな作品をたどる。

 この記事は、2024年7月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.198 8月号』内の特集を転載しております。記事はHH cross LIBRARYからご覧ください。

Text: Shiho Watanabe

トラディショナルなR & B サウンドにアグレッシヴで燃えるようなリリックを乗せて

 彼女のデビューアルバム『When I Hear Your Name』のアートワークに映る表情は、一度見たら忘れられない。水平線の向こう側に赤い太陽が沈み、暗く濡れた砂浜の上に横たわるメイタ。キリッとこちらを見据える彼女の姿は、熱く火照ったグルーヴをクールダウンするような雰囲気を感じさせられるが、挑発的で魅惑的な美しさもあり、燃え上がるような情熱を感じさせる表情でもある。冷たくも熱くも、自由自在にグルーヴをコントロールするメイタの歌声は、限界を知らぬほどに高く突き抜ける。


 インディアナ州出身で、ヴィジュアル・アーティストの母とドラム奏者の父のもとに生まれたメイタ。歌手という夢への目覚めは早く、小さな頃から常にステージを目指していたという。インディペンデントなアーティストとして活動する傍ら、Instagramにカヴァー動画をポストしていた彼女だったが、その動画がアリシア・キーズやリアーナ、スノー・アレグラらを擁するRoc Nation(設立者はジェイ・Z)の重役の目に留まり、契約のチャンスを手にする。

 2021年には7曲入りのEP『Habits』をリリース。EPに収録され、ケイトラナダをプロデューサーに、ゲスト・ラッパーにバディを迎えた「Teen Scene」は、当時20歳だったメイタのストレートな恋愛観を歌い、ケイトラナダならではのクールなダンス・トラックに瑞々しいヴォーカルが乗る一曲で、メイタがありきたりではないソングライターであることを証明してみせた。



▲Maeta 「Teen Scene feat. Buddy & prod. by KAYTRANADA (Official Video)」

 同じEPの「Toxic」では、ジャマイカ出身のシンガー、ビームを招いてタイトル通り“有害な”恋愛について歌う。“あなたの注意を惹きたくて元カレと寝る”と、アコースティックな音色とは反対のアグレッシヴなリリックだが、彼女の流麗なヴォーカルで歌われると、さらに深いストーリー性が加わるようにも思う。一辺倒のヴォーカルやサウンド・プロダクションではなく、いつだってそこにフレッシュな切り口を提示するのがメイタ流と言えるかもしれない。同時に、感情を噴き出させるように歌う力強いヴォーカルはトラディショナルなR&Bシンガーの系譜にも並ぶもので、この緩急の付け方そのものが、彼女ならではのユニークさだろう。


▲Maeta 「Toxic ft. BEAM」

 そんな彼女が多くの期待を集めつつ2023年6月にリリースした待望のアルバム『When I Hear Your Name』は、まだ底知れぬ彼女の実力を十分に表現した内容だ。前述したアートワークも印象深いが、ジェイムス・フォントルロイ、ラッキー・デイ、タイ・ダラー・サイン、そしてレーベルメイトでもあるアンブレに、アンダーソン・パークらとの共演でも知られるフリー・ナショナルズら、フィーチャリング・アーティストらも眩しい。

 プロデューサー陣も申し分なく、ケイトラナダをはじめ、DJダーヒやDJ キャンパー、ザ・ドリームにオーク、OG パーカーなど、ビヨンセやH.E.R.、ケンドリック・ラマーらを手がけてきたトップ・プロデューサーらが集結。

 『When I Hear Your Name』を聴いていて、とても印象的なのが心地よい生音のバランスだ。アルバムの冒頭に収録され、これから始まる“何か”の予感を煽るような「Sexual Love」ではギターとドラムのサウンドがゾクゾクするような感情の装置にもなっており、これはコ・プロデューサーとして名を連ねるシンガー・ソングライターのシャーロット・デイ・ウィルソン(これまでにダニエル・シーザーやバッドバッドノットグッドらとの共演歴を持つ)による手腕も大きいのかもしれない。


▲Maeta 「Sexual Love (Live) ft. James Fauntleroy」

 ラッキー・デイとの「Clarity」は楽曲の終盤にストリングスが加わり、鍵盤の音が際立つサウンドで幕を閉じる。


▲Maeta 「Clarity (Live)」

 フリー・ナショナルズが参加した「Through The Night」は言わずもがな。スロウでミニマルなベースとギターの演奏で始まり、彼女のヴォーカルの奥行きを存分に堪能できる贅沢な一曲だ。


▲Maeta 「Through The Night (feat. Free Nationals) (Live)」

 一方で、「Anybody」のようなノスタルジックなダンス・ビート、ケイトラナダによる「Questions」など、豊かなグルーヴ感あふれる楽曲もまた、彼女が得意とするところ。今回の初来日公演にあたって、こうした楽曲がどのように再現されるのか、バンド演奏とメイタのコンビネーションにも期待が高まる。


▲Maeta 「Questions」

 個人的には、「F*** Your Friend」や「S(EX)」のような、メイタ節が光る赤裸々なリリックをライブで聴くことができるのも楽しみだ。


 2024年に入ってからはクリス・ブラウンのツアーにも同行しているメイタ。ツアーは8月上旬まで続き、まさに来日の直前まで全米各地にあるアリーナのステージを踏む予定だ。きっと格段にパワーアップしているに違いないし、ビルボードライブでのインティメイトな雰囲気の中で味わうパフォーマンスはきっと格別だろう。クールにもホットにも、その場の空気をコントロールしてくれるはず。来日公演を心待ちにしつつ、彼女の作品から放た れるグルーヴに身を委ねたい。

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