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<コラム>XG “X-POP”を目指すグループがついに日本のテレビ初出演、その華麗なる歩みと独自の方向性



コラム

Text:まつもとたくお

 ガールズグループ、XG(エックスジー)の活躍が目覚ましい。表舞台に登場したのは2022年でキャリア的にはそれほど長くないものの、完成度の高いパフォーマンスと独創的なサウンドメイクが短期間で評判を呼び、国内外で多くのファンを獲得。日本では単独ライブ【XG 'NEW DNA' SHOWCASE in JAPAN】(2023年11月、神奈川・ぴあアリーナMMで開催)のチケットに20万件を超える応募があり、海外でもアメリカ、中国、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、アラブ首長国連邦などの大型音楽フェスに出演。楽曲「GRL GVNG」(2023年)はアメリカのチャートで躍進するなど、新人とは思えないほどの存在感を発揮している。

「(XGを手掛けるにあたって)K-POPかJ-POPか、かなり悩みました。メンバー全員が日本人ですが、K-POP式のトレーニングとシステムで磨き上げたグループであり、メッセージは世界のリスナーに届いてほしいと歌詞は英語にしました。ガールズグループとしての新しい方向性を探ろうとすると、ひとつのジャンルにカテゴライズする必要はないのではないか――。そんな終わりのない悩みをずっと抱えてきたんです」(XG公式YouTubeチャンネルのドキュメンタリーシリーズ『XTRA XTRA』より。以下のコメントはすべて同映像より抜粋)

 こう話すのは、XGの総括プロデューサーであるJAKOPS(SIMON JUNHO PARK)だ。過去にK-POPボーイズグループの一員だった時期があり、コンポーザーとしての実績も豊富な彼が「今までに見たことがないチームを作りたい」と思い、2017年に立ち上げたプロジェクト“XGALX”。これがXGの誕生への第1歩となった。


XG Documentary Series ‘XTRA XTRA’ EP X1


 同プロジェクトで、彼は10代の練習生たちを厳しく指導。「アーティストになりたいと切に願う気持ちと根性があるかどうか」を重要視してXGのメンバー候補を絞り込んでいく。そして“ダンス&ボーカル×グローバル”というXGALXのコンセプトに沿って最終的に選ばれた7人は、いずれもアーティストとしてのポテンシャルが高く、魅力的なキャラクターばかり。しかもグループとしてのバランスもよく、予想以上のケミストリー(化学反応)も期待できそうな顔ぶれとなった。

 ボーカルのトーンが素晴らしいHINATA、歌の途中でパワーが必要なところに欠かせないCHISA、強い精神を持ちながらも繊細でスマートなJURIN、キャラクターやボーカル、パフォーマンスの面で未知の可能性を秘めたHARVEY、天才的なグルーヴ感があるCOCONA、グローバルな感性でグループの成長を後押しするMAYA、世界屈指のディーバになるとJAKOPS(SIMON JUNHO PARK)が確信するJURIA。

 このような魅力的な7人で結成されたXGは2022年1月、ついにその姿を現す。しかしながらネット上で公開されたのは、アーティスト名とビジュアル、そして歌とダンスのみ。詳しい情報はなく、どこの国のグループなのか、いつデビューするのかさえもわからない。「まずは実力だけを見てほしい」と考えたからこその戦略だったのだろうが、メンバーらは多少の不安もあったに違いない。


XG MOVE #1


「失敗したら全部責任取るから。怖がらないで。むしろ楽しんで」。JAKOPS(SIMON JUNHO PARK)のそんな励ましを受けて無我夢中でがんばった彼女たちは、2022年3月にシングル「Tippy Toes」で待望のデビューを果たす。同曲のミュージックビデオは公開から24時間で80万回、10日で500万回以上の再生数を記録し、勢いづいたグループは、同年6月リリースの「MASCARA」で独自の魅力を鮮明に見せることに成功する。

〈絶対に私のマスカラを汚させない、これは私のパーティーだから私が泣きたいときに泣く〉。このような歌詞が印象的な同曲は、「女性の強さを世界の人たちに向けて音楽や言葉、行動で伝えたい」(MAYA)との思いをストレートに伝えるもので、女性を中心にリスナーの共感を獲得。ラップとメロウなフレーズが妖しく絡み合う展開もフレッシュに響き、Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”ではリリース後初週の2022年7月6日公開チャートで48位だったものの、特にストリーミング指標がポイントにして3倍近くもの伸びをみせ、翌週7月13日公開チャートでは15位までジャンプアップ。結果的に最高14位(2022年7月20日、8月3日公開)になるほどの勢いをみせた。

 グループの知名度は「MASCARA」で一気に上昇し、その後もスターダムに向かって快進撃が続いていく。2023年1月リリースの「LEFT RIGHT」では、前述したようなラップとメロウなフレーズの組み合わせがよりナチュラルになり、現在K-POP界隈で流行中の“イージーリスニング”に近いサウンドメイクも功を奏して、23年3月にはアメリカのラジオチャート“Mediabase Top 40 Radio Airplay Chart”の40位にチャートイン。なお同曲は、“世界で聴かれている日本の楽曲”をランキングするBillboard JAPANのグローバルチャート“Global Japan Songs Excl. Japan”にて登場以来39週(2023年9月14日~2024年6月6日)にわたってトップ35以内をキープしており、国外での安定した人気がうかがえる。さらに1stミニアルバム『NEW DNA』の先行配信曲「GRL GVNG」は、6月に米ビルボード“Hot Trending Songs Powered by Twitter”で初登場1位(2023年7月8日付)を獲得。秋には日本人ガールズグループとして初めて米『ビルボード』誌の表紙を飾るなど、特に海外でのトピックが目立ってくる。

 だが、JAKOPS(SIMON JUNHO PARK)はこうした状況に満足はしていなかったようだ。彼が次の一手として出した、2024年5月リリースの最新曲「WOKE UP」は、リスナーの予想をはるかに上回る仕上がりである。「MASCARA」ではガールクラッシュ(同性が憧れる同性)的なムードが漂っていたものの、「WOKE UP」では、性差にこだわらず、自分らしく堂々と生きる喜びを表現する。エスニックな笛の音色を取り入れたシンプルなトラックとアグレッシブなラップは、決してポップではない。にもかかわらず“JAPAN Hot 100”では初登場5位(2024年5月29日公開)となり、“Global Japan Songs Excl. Japan”でも初登場3位(2024年5月30日公開)、翌週6月6日公開の同チャートでは堂々の首位を獲得した。どちらもグループにとっては最高位で、世間の評価も上々である。

「本当にこんなチームはいないです。井の中の蛙みたいに思われるかもしれませんが、僕は客観的に見ているんですよ。ものすごく疑い深い性格なので、“まさかそんなはずがない、なんで7人とも完ぺきなんだ?”と思うときがあります。でもやばいんです、この7人は」


 育ての親であるJAKOPS(SIMON JUNHO PARK)もこのように驚くXG。日本のテレビ初出演となる、6月14日放送予定の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも、視聴者の想像の斜め上を行くパフォーマンスが期待できそうだ。いずれにしても、彼女たちが理想として掲げる、K-POPでもJ-POPでもない“X-POP”を知るにはこの上ない機会なのは間違いない。となれば見逃しは禁物である。



WOKE UP / XG


XG「WOKE UP」

WOKE UP

2024/05/21 RELEASE
NFCC-7 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.WOKE UP
  2. 02.WOKE UP (INSTRUMENTAL)

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