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<インタビュー>Raychell×小原莉子、バンドの自信が大いに表れた珠玉の14曲を語り尽くす――2ndアルバム『SAVAGE』
Interview & Text:一条皓太
Photo:筒浦奨太
次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』。同作に登場するリアルバンド・RAISE A SUILENが、6月12日に2ndアルバム『SAVAGE』をリリースした。
そこでBillboard JAPANでは、レイヤ役のRaychell(Ba.&Vo.)と、ロック役の小原莉子(Gt.)にリリースインタビューを実施。彼女たちにとって、約4年ぶりとなった新アルバムを紐解くべく、本作でフルサイズ初音源化を含む4つの新曲を中心に話を訊いた。
メンバー/キャラクター双方の成長と共に難易度が上がった楽曲について、いつか来るだろうライブ披露の機会を想像して恐れ慄いてもらいながら、各楽曲の聴きどころから、“メンバーのイメージソングを選ぶとしたら?”といった質問まで、和気藹々と盛り上がった取材の雰囲気が伝われば幸いである。
「“V.I.P MONSTER”は、RASの楽曲としてはかなりキャッチーな方」(Raychell)
――RAISE A SUILEN(以下:RAS)にとって、前作『ERA』から約4年ぶりとなるニューアルバム『SAVAGE』(読み:サヴィッジ)。まずは、このタイトルを聞いたときの感想から教えてください。
Raychell:とてもうれしかったです。なんたって、“SAVAGE”の意味は“めっちゃイケてる”。バンドとしての自信が大いに表れているし、そんなタイトルを付けてもらえるまでに頼もしく思ってもらえたのだなと。
アルバム『SAVAGE』
――今回は収録された全14曲のうち、フルサイズ初音源化を含む新曲4曲について色々と聞かせてください。はじめに、アルバムのスタートを飾る書き下ろし曲「V.I.P MONSTER」からどうぞ。
Raychell:「V.I.P MONSTER」は、RASとしてはかなりキャッチーな方だよね。ここ最近は展開の難しい楽曲が多い印象なので、個人的には耳にすーっと入ってくるくらい素直に聴けました。
小原:全体的にパーティ感があるし、ライブでバンドリーマーさんと一緒に楽しむところまで考えると、曲中の掛け声パートは特に盛り上がりそう!
Raychell:歌詞の言葉遊びも豊富だよね。チュチュ(CV:紡木吏佐/DJ)のラップパートの<ベロベロばぁ! ベロベロばぁ!>、レイヤが歌うサビの<千客万来! 歌えや踊れや アブラカタブラ>のあたりは特に、私たちのライブ空間や、みんなでワイワイ踊っているイメージが浮かんできたかも。
――サウンド面では、間奏部分が特に衝撃的でした。地鳴りのようなサウンドで頭が揺さぶられる感覚になったのですが、もしライブ披露の機会があったとして、あんな高難易度なパートを生演奏で弾き切れるものでしょうか……。
小原:あのセクションはギターを手で切りながら弾くのかな。レコーディングではエディットされているので、実際の演奏とはまた話が変わってくる部分もあるんですよね。Raychellさんのベースは?
Raychell:たぶん、普通に弾けると思う(笑)。それと、ライブ披露の際には、生演奏ならではのアレンジになる気もしています。なので足を運んでくださる方はぜひ、音源との違いも聴き比べてみてもらいたいですね。これから“化ける”楽曲になりそうですので……。
――新曲ながら、早くも進化の予感を感じていると。キャラクターが登場するミュージック・ビデオもとても素敵でした。よい意味で、彼女たちの瞳に光を感じないところがキュートだなと。
Raychell:ディフォルメ感が絶妙ですよね。パレオ(CV:倉知玲鳳/Key.)なんて、瞳がぐるぐるになっていて。あと、ロックは普通にかわいい。
小原:かわいいですよね。まぁ、ロックはいつだってかわいいんですけど。
Raychell:あ……そうでした(笑)。あと、アジアの着物っぽい衣装もすごく好みでした。今年3月には、台北と上海を巡る【RAISE A SUILEN ASIA TOUR 2024】も開催したので、その後のパワーアップした姿を描いてもらえたのかな。この衣装、いつか着てみたいです!
小原:着られたらいいな! 少なくとも『ガルパ』(バンドリ! ガールズバンドパーティ!)には実装されてほしい! 単純に私個人の願望です(笑)。
「V.I.P MONSTER」
彼女たちらしく前に進もうとしている(Raychell)
――ここからの3つの新曲はすべて『ガルパ』イベント曲としてフルサイズ音源化が待ち望まれていたものばかり。今度は、レイヤがフロントマンとしての決意を歌う「Ray of hope」のお話をお願いします。
Raychell:「Ray of hope」は、とある悩みを抱えたパレオに対して、救う手立てを見つけられないレイヤの葛藤を描いたストーリーがベースになっていて、レイヤの“私がバンドを引っ張らなきゃ”という気持ちがよく表れているなと。やっぱり、バンドとして一緒にいる時間が長いからこそ生まれるモヤモヤもあって。でも、彼女たちらしく前に進もうとしているんですよね。そうした意味で、私はこの楽曲がすごく好きです。
――ご自身の演じるキャラクターにスポットが当たるぶん、思い入れも強いと。
Raychell:その通り。<歌うことこそ 僕にとって「生きる」ということだった>という歌詞を見た瞬間は、もう鳥肌がたちました。私自身もひとりのアーティストとして、レイヤやRASの存在をリスペクトしています。
小原:曲調もミドルテンポに近くて、RASとしては珍しく落ち着いた雰囲気かなと。バラードまではいかないものの、ライブの空気を転換してくれる楽曲になりそうです。
――続いては、8曲目「BATTLE CRY」。個人的に、歌詞からヒップホップに近い精神性を感じました。たとえば<そもそも生き方がダセーんだわ (Say our name!!)>のフレーズだと、カッコいい奴らって、なにかと自分の名前を言わせたがるよな、とか(笑)。
Raychell:あるあるですね(笑)。とある理由から単独ライブのチケットが売れ残り、アウェイな会場に強気で挑むべく、“かかってこい!”の精神を前面に出していて、最強の5人らしい力強さを感じられます。
――サビのメロディの乗せ方が独特で、かなり新鮮な印象を受けました。“あ、そっちに進行するんだ”と。
Raychell:メロディが普遍的ながら、どこか変わっていて。“ん? いま、どんなメロディで歌ったっけ?”など、ちょっとした“クセ感”がありました。言葉数を詰め込んだ歌詞だし、Bメロも1コーラス目に比べて、2コーラス目の方が少し長いんですよ。歌っていて、構成面でも独特なんだと気づかされました。
――サビにいきそうで、いかない。ある種の“フェイント”があることで、聞き流しをさせないのでしょうね。楽器の話になりますが、やはりカッコいい楽曲はそのぶん、演奏の難易度も高いものでしょうか。
小原:「BATTLE CRY」を例にするならば、ハイテンポな楽曲はフレーズ一つひとつというより、全体を通してのギターの切り返しが大変そうだなと。あと、この楽曲はギター、ベース、キーボードのユニゾンパートがあるのですが、一人が少しずれるだけでも、全体の聴こえ方としてはぐちゃっとして目立ってしまいそうで。いざライブ披露するときには、このあたりの“合わせ”を意識しなきゃと考えています。
――なるほど。少し話は変わりますが、私自身、RASの楽曲を聴いていると、よい意味で“自分が強くなった”と錯覚できるところがとても好きで。これは『バンドリ!』に登場するほかリアルバンドと比較して、いわゆる“RASらしさ”を象徴する要素のひとつになりそうだと、勝手ながらに想像しています。おふたりも、自分たちの楽曲を聴いたり、演奏したりするとき、同様の感覚を覚えることはありませんか?
小原:逆に、その「強くなった感覚」についてすごく聞きたいです。精神的にってことですよね。どういうことですか?
――ドライブのときにスピードを出しがちになってしまう、などでしょうか。
小原:あ〜、強くなるってそういうこと!
Raychell:私も納得しました。でも、スピード出がちになるんだ(笑)。たしかにRASの楽曲には強い言葉が並んでいるし、楽曲の持つパワーも物凄いので、私自身も歌うときには負けじと強気にはなっちゃいます。それに、ライブのときは客席のバンドリーマーさんの熱量もものすごいので、“頭振れ!”とか“かかってこい!”とか自然と煽っていて。ただ、ここまで話してみて、私たちはあくまでプレイヤー側の視点からしか語れないなと。莉子ちゃんもそうだよね?
小原:そうですね。私もRASの楽曲を聴くときは、ライブになったとき、自分でどんな動きをするかに思考が持っていかれちゃう。とはいえ、私たちの音楽は気持ちのスイッチを入れたり、背中をバンっと叩いて、喝を入れてほしかったりするときにもってこいですよね。バンドリーマーさんからも“通勤通学でテンションを上げたいときに再生しています!”なんて声をたくさんもらうくらいです!
- このアルバムをもし、“通し”でライブしてくださいなんて言われた日には?(小原)
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このアルバムをもし、“通し”でライブしてくださいなんて言われた日には?(小原)
――13曲目「Life on the Lotus」はアルバム随一のエモーショナルぶりでした。
Raychell:この楽曲の基となるストーリーではレイヤがチュチュに投げかけた言葉がきっかけになって、そこからお互いの意見をしっかりと伝え合うようになり。結果的に、RASの仲がますます深まったんですよね。歌詞でいうと<もう一生 離してやんない>のフレーズがすごく印象的だし、サウンドも重厚感あるロックテイストでありながら、サビに入るとメロディが一転してエモーショナルになるところがお気に入りです。ギターのサウンドがとてもよく映える!
小原:この楽曲って、ジャンルとしてはなんて呼ぶべきなんですかね。サビはメタル調ですけど、メタルのギターは得てして難しいので、ライブで披露するとなると難しい顔になって弾いちゃうかも。そのときは、私の表情も込みで楽しんでいただけたら(笑)。
Raychell:(笑)。あの、たったいま気が付いたこと、話してもいいですか?
――もちろんです。
Raychell:私、ライブでは4弦と5弦のベースを持ち替えているんですけど、今回のアルバム収録曲でいうと、半分以上が5弦ベースの楽曲でした……。
小原:あら〜。このアルバムをもし、“通し”でライブしてくださいなんて言われた日には?
Raychell:いやいやいやいや、本当に無理! もはや難易度以前に、単純に……大変?(笑) 改めて眺めてみると「Embrace of light」「Light a fire」など、ゆったりめな楽曲は収録外になっていて、シングルカップリングで選ばれているのは11曲目「灼熱 Bonfire!」だけなんです。
小原:物理的に物凄く速く手を動かさなきゃならない問題で大変ですよね。体力が吸われまくる(笑)。
「灼熱 Bonfire!」(RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2021「BE LIGHT」追加公演より)
――おふたりの鬼気迫る顔つきから、普段のライブの壮絶さが伝わってきました。近年の楽曲では、ボーカリストとして求められているレベルもぐっと上がった気がします。
Raychell:デビュー曲「R・I・O・T」の頃から比べると、言葉数の詰まった歌詞を目にすることが本当に多くなったなと。
小原:横で見ていて「Raychellさんって、いつ息継ぎしてるんだろう?」と不思議に思っていますよ。
Raychell:本当にそう。「あれ、私ってエラ呼吸だったっけ?」ってたまに思う。
小原:あはははっ(笑)。
Raychell:だから、最近は新曲レコーディングの際には、ライブでも歌い切れるようにアレンジをさせてもらうことがありますね。
小原:それこそいまは言葉数を詰めるのが流行ですけど、また時代が変わったら、言葉と言葉の感覚が大きく空くような楽曲がたくさん聴かれるようになるかもしれないですからね。Aメロだけぼそっと一言だけ呟いて、あとはずっと演奏するようなスタイルとか。私たちの楽曲にも、そういう余白の多さや、コーラスだけで構成された楽曲があるといいな。
Raychell:すごく面白そう。私たちもいつかチャレンジしてみたい!
「さらに素敵な景色を見せられる機会へと繋げるために頑張りたい」(小原)
――取材終盤に差し掛かってきましたが、おふたりが今回の収録曲から、メンバーそれぞれのイメージソングを選ぶとしたら? この質問は『ガルパ』ストーリーなどの文脈は抜きに、キャスト個人の観点から“この楽曲はこの子っぽい!”という基準でお願いしたいです。まずは紡木さんから。
Raychell:紡木さんのイメージソングか〜。莉子ちゃんは決まった?
小原:「BATTLE CRY」一択! <俺様何様チュチュ様ダ★>なんて歌詞があるくらいだから、これはもうチュチュの楽曲だなって。
Raychell:たしかに。私が思い浮かべたのは「V.I.P MONSTER」。歌詞やメロディのパーティ感、楽しくて“ウェーイ!”みたいなノリが、紡木さんの人柄にもすごく近いなって。あと、彼女も途中に登場する合いの手みたいに<pon pon>ってよく言っているから(笑)。
――楽屋での紡木さんのご様子でしょうか(笑)。続いて、倉知さんはいかがでしょう。
小原:これはもうあの楽曲しかない! Raychellさんも一緒に、せーのっ!
Raychell&小原:「THE WAY OF LIFE」!!
小原:ですよね! なんたって、今回のアルバムで唯一、玲鳳ちゃんもボーカルとして歌っている楽曲だもん。
Raychell:そうそう。今回の収録外ですが「TWIN TALE」も、彼女のイメージにぴったりです。次は夏芽(マスキング役/Dr.)かな。夏芽らしい楽曲……「Repaint」とか?
小原:これは、ちょっと悩むぞ……。あ、決まりました! 「-N-E-M-E-S-I-S-」がいいなって思ったんですけど、もしかしたらRaychellさんと同じ理由かもしれないです。なんというか……ドラムがめっちゃ大変そう(笑)。
Raychell:あはははっ(笑)。
小原:ライブでドラムの方向から圧を感じるんですよね。とはいえ「Repaint」もドラムがずっと動いているな。
Raychell:それこそ、2022年2月に開催した【RAISE A SUILEN SPECIAL LIVE「Repaint」】で、Fear, and Loathing in Las Vegasさんとライブをさせていただいた際、この楽曲も披露したのですが、本番前に何度もリハをしていて。彼女が苦労しながら一生懸命にドラムを叩く姿が、この楽曲を聴くたびに蘇ってきます。
「Repaint」アニメーションMV(フルサイズver.) RAISE A SUILEN×Fear, and Loathing in Las Vegas
――汗と苦労が染み込んだ楽曲なんですね。それではお待ちかね、小原さんの楽曲をお聞きしましょう。
Raychell:小原さんはもう「灼熱 Bonfire!」。いつも明るくて、ゲラゲラと笑っていて、そして花火のような人柄は「灼熱 Bonfire!」そのもの。実は、私たち5人のなかで、いちばん“ぶっ飛んだ人”なんです。
――えっ、そうなんですか? そのポジションはてっきり紡木さんの専売特許かと。
小原:いや、「えっ、そうなんですか?」って言われちゃってますよ。お淑やかをウリにしているのに! 私のイメージを勝手に変えないでください!(と、Raychellを指さしながら)。
Raychell:人を指ささない!(笑) あ、「EXIST」でもハマるかも。
小原:むしろ「EXIST」を選ぶと思っていました! 恨みつらみを刻んだ歌詞がとても共感できるし……人生。もはや、人生の一曲です。
Raychell:割合的に「灼熱 Bonfire!」が4で、「EXIST」を6くらいにしておきましょうか。
小原:そういうことで(笑)。Raychellの楽曲はもう即決で「mind of Prominence」です。
Raychell:あ〜、同感(笑)。
小原:理由は単純。Raychellさんがライブのとき、歌い出しの<囚われた鎖解け mind of Prominence>を噛まないようにめちゃめちゃ意識しているから(笑)。でも実は、リハーサルだとちょくちょく噛んでいるイメージがあります。
Raychell:やっぱりバレてます?(笑)
小原:バレないように歌詞を濁しているところも伝わっています。だから「今日は噛むのか? 噛まないのか? ん〜、噛んだ〜っ!」って、密かに聞き耳を立てながらギターを鳴らしておりますよ。
Raychell:そもそもアニソンは歌詞の言葉選びが独特だし、テンポも速いしで難しいんですよ。<囚われた鎖>まではスムーズに歌えるのに、いつもその先が……。もう次からは歌いながら莉子ちゃんの方を見るね(笑)。
全員:(爆笑)。
「mind of Prominence」
――改めて、まだ『SAVAGE』の制作を終えたばかりですが、たとえば数年後に3枚目のアルバムをリリースするとしましょう。そのとき、RAISE A SUILENはどのくらい活動規模を広げていると思い描きますか?
小原:ここ数年間の活動で、バンドとしてやりたかったことにある程度は手をつけさせてもらえた感覚があって。だからこそ、今後はさらにその深度を求めて。全国ツアーで訪れたことのない都道府県を巡ったり、私たちのことを知ってもらえるタイミングを増やしたり。それが巡り巡って、応援してくださる皆さんに、さらに素敵な景色を見せられる機会へと繋がるように頑張りたいです。
Raychell:ワールドツアーもまた規模感を広げて開催したいよね。私たちの活動を通して『バンドリ!』をさらに広めるのは言わずもがな。そこからコンテンツの枠組みを超えて、今度は純粋にバンドアーティストとして、もっと多くの皆さまにRAISE A SUILENの存在を知ってもらえるようになりたい。……というか、そうなります!
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SAVAGE
2024/06/12 RELEASE
BRMM-10791 ¥ 3,850(税込)
Disc01
- 01.V.I.P MONSTER
- 02.mind of Prominence
- 03.Ray of hope
- 04.EXIST
- 05.Sacred world
- 06.-N-E-M-E-S-I-S-
- 07.DANCING DARING
- 08.BATTLE CRY
- 09.Domination to world
- 10.THE WAY OF LIFE
- 11.灼熱 Bonfire!
- 12.Repaint
- 13.Life on the Lotus
- 14.CORUSCATE -DNA-
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