Billboard JAPAN


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<2024年上半期チャート首位記念インタビュー>Creepy Nutsが国内&世界で“想定外”の13冠――「想像していないもの」を楽しんでいく

インタビューバナー

Interview & Text:Maiko Murata


 2024年上半期のBillboard JAPAN各種チャート結果が発表された。計6指標からなる総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が総合首位を獲得。同曲は、24年1月より放送されたTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期オープニング・テーマに起用されており、アニメOPムービーの軽妙なダンスとともに、TikTokおよびストリーミングを中心に圧倒的な支持を集めた。その人気は日本国内にとどまらず、世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”では、同チャート史上最長となる19連覇を達成。こちらもダントツの成績で上半期首位に輝き、他チャートもあわせて、史上初の計13冠を達成した。

 国内外のチャートを駆け上がったその凄まじい勢いは、彼ら自身も予想すらしていなかったことだという。話を訊くと、ふたりに共通する「想像していなかったものを楽しむ」というマインドがくっきりと浮かび上がってきた。

ヒットは「あまり実感がない」「ピンとこない」

――「Bling-Bang-Bang-Born」が、Billboard JAPAN2024年上半期チャートにて“JAPAN Hot 100” “Global Japan Songs Excl. Japan”のほか、合計13のチャートで首位に輝きました。おめでとうございます。まずは受賞についての率直な感想をお聞かせください。

R-指定:全く想定していなかったので、驚きというか……あまり実感がないというのが勝っていますね。でも、ありがたい。嬉しいです。

DJ松永:俺もそうですね。完全にマイペースに「ゆっくり楽しく曲作るか」みたいなモードでやっていたところでのこれ(ヒット)だったので、より想定外というか。ちょっとありがたすぎてピンとこない、みたいな状態になっています(笑)。


――5月4日に放送されたNHK『ライブ・エール2024』ご出演時にも、ヒットの実感がないことに加えて「街中で聴いたことなんて一回もない!」とおっしゃっていましたもんね。

DJ松永:まだ街中で一回も聴いてないですね。自分のスマホの端末でしか聴いたことないですから。それって、(SNSの)アルゴリズムだから、素直に受け取れないじゃないですか(笑)。だから未だに信じられないですね。


――Rさんはどうですか?

R-指定:俺もそんなに街で遭遇したことなくて。ツアーで行った高松で、夜中に歩いていたらラーメン屋から聞こえてきたくらいですね。あとは、友達から「子どもがめっちゃ歌ってるわ」って動画が送られてきたりとか、先輩のラッパーから「ずっと子どもが歌ってる、勘弁してくれ」と言われたりとか、そういうのでちょっとずつ実感する……みたいな感じです。



Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」 × TV Anime「マッシュル-MASHLE-」
Collaboration Music Video



――チャートをみると、「Bling-Bang-Bang-Born」リリース前は、Creepy Nuts楽曲の“JAPAN Hot 100”最高位は「堕天」の35位(2022年9月14日発表)でした。その後「Bling-Bang-Bang-Born」で首位獲得後は、次作「二度寝」も最高9位(2024年4月10日発表)、その同週には「のびしろ」のチャート最高位も更新(58位)と、まさに「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットを機に、国民的な地位を確立されたように思えるのですが……。

DJ松永:そうなんだ! ……衝撃ですね。

R-指定:見える景色はまだ、自分の生活圏内の中ではそんなに変わってないですね。だから、(実感は)間接的にって感じです。こういうふうに賞をいただいたりとか、インタビューをしてもらったりとか、チャートを見たり、さっき話したみたいに友達とかから聞いたり……間接的に「あ、聴いてくれてるんやな、いろんなところで」とは感じるようにはなりましたね。


――Rさんの耳に入ってくるリアクションは、これまでの楽曲や予想とは違ったんでしょうか? たとえば、さっきお話しいただいた「子どもが歌っている」こととか。

R-指定:確かに、それはあんまり想定していなかったですね。子どもが聴いて楽しんでくれるタイプの曲ではないなと思ってたんで。自分らの好きなように作っていっただけなので、そういう楽しみ方の解釈をしてくれるんやっていうのも、めちゃくちゃ意外でしたね。

DJ松永:まあ、常にそうではあるけど、あんまり聴き手のことを想像しないというか。この曲に関しては特に、“自己満足”と言ったら語弊がありますけど、自分たちの制作欲だけというか……そこを喜ばせるためみたいな感じで、割とマニアックな作りにしたんです。だから作れた時点で満足という。リズムとかもだいぶシビアな曲だし、そもそも誰かが歌うことも考えなかった(笑)。だから子どもたちが歌ってるのとか、ちょっと衝撃ですよね。パロディー映像を観ているかのような気持ちです。


世界のどこにもないタイプの曲ができたときが、
いちばんふたりで達成感をおぼえるとき

――ラジオ『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』シリーズのレギュラー放送時には、「HIPHOPニュース」のコーナーで世界のラッパーのおもしろニュースをよくお話しされていました。国内外のラッパーへの意識が高いなあと感じていたんですが、正直、自分たちもいつかは彼らのように……!というような思いはありましたか?

DJ松永:あんま考えてなくない?

R-指定:そんなん考えてないからこそ、海外の話題でゲラゲラ笑えたというか(笑)。

DJ松永:ただのヒップホップ好きたちがプライベートでやってる、友達の間柄でラッパーをイジりながらゲラゲラ笑う、みたいな。いちばん無責任な状態(笑)。

R-指定:たぶん、意識は全くしてなかったですね。特に自分らのスタイルが――こと俺のラップに関しては超土着的な、日本の言語を知ってくれてるからこそ面白いと思えるタイプのラップかなと思ってた節はあるんです。もちろん、言語がわからなくても聴いてヤバいラップをしたい、というのはあるんですけど、とりわけ自分の肝は日本語やったりするなと思っていたんで。あんま海外に寄せに行こうとか、そういう意識はもともとそんなになかったですね。


――なるほど。Rさんのラップが今お話しいただいたように“日本的”とするなら、松永さんのトラックにもすごく“日本的”なところを感じるんですが、松永さんはどういうふうに思ってらっしゃいますか? 「Bling-Bang-Bang-Born」も、ジャージー・クラブのビートとしても、たとえばアメリカのトラックメーカーが作ってもこのような仕上がりにはならない気がするんです。松永さんならではというか。

DJ松永:そうですね……。「聴いたことがないのをつくろう」みたいな感じの認識なんですよね。それこそ、ミックスするときとかリファレンスがないから、エンジニアさんにイメージを伝えられないって現象がよく起きるんですよ。似てる曲がないっていう。


――それは「Bling-Bang-Bang-Born」以外もですか?

DJ松永:うん、以外も。「二度寝」とかもそうですね。



二度寝 / Creepy Nuts


R-指定:俺らの中で、作ってるときに「これは“ない”曲やな」っていうときがいちばん手応え感じるよな。

DJ松永:ほんとほんと。

R-指定:世界……もちろんUSにも、他の海外の国にもないタイプの曲ができたなってときが、いちばんふたりで達成感をおぼえるときですね。「また聴いたことないやつ出来たで!」みたいな。

DJ松永:それこそ、トラックの音色も自分の思いつきで作って……。ラテンとジャージー・クラブの組み合わせっていうのもあまりなかったし。プラス、取り入れてきたもの、インスピレーションを受けたものが、一曲の中にひとつじゃなくいくつかあって。それを混ぜて、自分の手癖もそこに合わさってくる。かつ、毎回作るときに“事故”(予想外の展開)待ちで何回もガチャガチャやるんです。コード感のあるジャージー・クラブは「Bling-Bang-Bang-Born」の他にもあるんですけど、それはずっと歌っぽくて、空間がもっと広いもののほうが多くて。あんなにリフがしっかりしているものはないんですよね。で、リフがしっかりしているものってなってくると、がっつりラップか、サンプリング系のジャージー・クラブばかり。しかも、もっと音が粗くて、自分が作りたいクオリティのものではない。他にはなかったんだよなあ。


――リリック面でいうと、「Bling-Bang-Bang-Born」も「二度寝」もそれぞれアニメ、ドラマのタイアップ作で、作品に寄り添った内容を含みつつ、それだけで終わらない内容にされているところが秀逸だなと思います。リリックはオファーを受けてから組み立て始めるんですか?

R-指定:基本そうですね。でも、今までの自分たちのタイアップ曲を振り返っても、結局ヒップホップというアートフォーム上、どうしても自分のことを歌うし、歌いたいし、そうじゃないほうが難しいってのがあるんで。結局「二度寝」も「Bling-Bang-Bang-Born」も、タイアップ元はあれど、最終的に俺の話になるようには書いてるってところは変わらずですね。むしろ、そういうタイアップがあったときに“寄せる”というより、お題や原作の世界観があったうえで「じゃあ自分はどうなのか?」みたいな問いかけになる。最終的には自分のこととして、最後まで背負っていけるようなリリックにするっていうのが、基本的には変わらないやり方です。


――タイアップだけで終わる曲ではないですもんね。

R-指定:そうですね。やっぱライブで、自分で歌うから自分のことを(歌う)、っていうのは最終的にはありますね。


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ライブでの反響は?

――ライブといえば、おふたりは今まさに全国ツアー【Creepy Nuts ONE MAN TOUR 2024】の真っ最中です。加えて、先日出演された【METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2024】では、特に「Bling-Bang-Bang-Born」でのコール&レスポンスの大きさに驚きました。

R-指定:どこで客席にマイク向けて歌わそうかなみたいなのは、その場の流れで決めてるんですけど……「Bling-Bang-Bang-Born」を初めてライブでやったときに、さっきの俺や松永さんの「あんま街で流れているのを聴かない」の逆説じゃないけど、「ほんまにみんな聴いてるって言うんやったら、じゃあ結構難しいところで向けても歌えるよな、お前ら?」みたいな感じで向けたら、全然いけてて(笑)。


――(笑)。そのリアクションで反響を実感されるってところも?

R-指定:「おお~、ちゃんと返してくれるってことは、めっちゃ知ってるやん」みたいな感じになりましたね。


――松永さんはどうですか? 「ここで音を切ってもレスポンス返せるんだ!」みたいな手応えはありますか?

DJ松永:まだ俺はちょっとわかってなくて。まだ切りきれてない感じです。側から見るともっと大胆に(観客に)渡しちゃっていいってところも、俺に関してはありそう。もうちょっと切ってもいいなと思った。

R-指定:でも俺も、色々いるラッパーの中で、客に歌わせない率めっちゃ高いラッパーやから。俺ももっと渡していいかもと思う。ライブ映像を観たラッパーの友達から、「あ、そこお前が歌うんや」みたいなことを言われて。

DJ松永:ああー。「そこ言わせないんや」みたいな?

R-指定:そうそう。〈Who's the best? I’m the best! Oh, yeah〉のところを、「客に言わすと思ってた」って。確かにな。あそこ、“大勢声”パートではあるから。

DJ松永:自分で作ってるとわかんないよね。どこが歌いやすいとか、みんなで歌えるとこなのかとか。

R-指定:わからんよな。



Creepy Nuts - Bling-Bang-Bang-Born / THE FIRST TAKE


――そうなんですね。「Bling-Bang-Bang-Born」のヒット後で、お客さんの反応や客層などに変化はありましたか?

DJ松永:スタッフさんから聞くんですけど、やっぱ、年齢層がだいぶばらけたというか。ファミリーっぽい人たちも来るようになって、若い子や年上の人も来るようになって、レンジがすごく広がった、みたいなことを言われることが多いかもしれないですね。


――確かに、Creepy Nutsのワンマンというと20代〜30代前後のお客さんが多い印象が強かったので、今うかがったファミリー層のお客さんは意外だなと思いました。

DJ松永:そうですよね。親子で来てらっしゃる方とかもいるって聞いて。確かに、普段自分たちが対峙している層と、また別のところに届いたからなのかなというのは思いました。


アワード受賞は「そんなわけないからなあ」

――その「普段の層と別のところに届いた」というのと繋がるのではと思うんですが、「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットをきっかけに、アワード【ASIA STAR ENTERTAINER AWARDS 2024】(【ASEA 2024】)での「ASIA HOT TREND」受賞や、YouTube『グラミー・グローバル・スピン』への出演など、これまできっと予想もされていなかった場所へ行く機会も増えられたのではと思います。それに関してはいかがでしょうか?

R-指定:そうですね……ほんまに予想してなかったから準備もしてないので、その場に呼ばれて行ってみて、焦るっていう。「何これ、こういう場所!?」みたいな(笑)。


――【ASEA 2024】では、メッセージボードをおふたりに向けて掲げている観客の方もいましたもんね。

R-指定:そうですね。あれはびっくりしましたね。全く……想定の範囲外なので(笑)。

DJ松永:あれは、作ってる人絶対ふざけてるだろと思いましたけどね(笑)。

R-指定:完全にそうやな。

DJ松永:完全にふざけてる(笑)。


――ほんとですか?(笑)

DJ松永:どうなんだろう。でも【ASEA 2024】は、あまりに(会場の)空気が映像越しの韓国の世界観すぎて。自分たちがその場に合わせた振る舞いとか、雰囲気とかでやり過ごすのは無理だなと思って、俺は早々に脱落して(笑)。普通にヘラヘラしちゃいましたね。

R-指定:うん。


――あの笑顔にはそんな裏側が……(笑)。

DJ松永:素で、真正面で受け止めることができなくて。神妙な面持ちで「うん」って聞けない(笑)。それであの数時間は無理!みたいな。

R-指定:わかるわかる。だって、「そんなわけないからなあ」って感じやから。


――フィクションの中にいる、みたいな感覚なんですね。

DJ松永:自分が側から見たら、あそこの場で、シュッと世界観に合わせた表情と立ち振る舞いで曲聴いて拍手とかしてたら、俺は絶対「嘘だろ」と思うから。「無理だな」って思いましたね(笑)。

R-指定:自分を見たら、ってことやろ? 自分が自分を見て、「みんなと同じ世界線で戦ってきましてん」みたいな顔でおったら、「嘘つけ!」って(笑)。

DJ松永:そうそう。それがいちばん嘘だから。


――なるほど。それも“リアル”ですからね(笑)。

R-指定:ふふふ(笑)。

DJ松永:そう(笑)。リアルなんで。


「クソッ、カニエの新譜と重なったー!」って思わない(笑)

――ちなみに、松永さんはご自身のSNSで毎週のチャート記録にこまめにリアクションしてくださっていますが、「Bling-Bang-Bang-Born」のヒット前から、Billboard JAPAN以外のものも含め、チャートは普段からチェックされていましたか?

DJ松永:いやー、チャートはあまり見てなかったですね。やっぱり、自分と縁のあるものじゃないっていう認識というか、チャートは身近にあるものじゃないなという感じだったから。楽曲をチェックするという目的でサブスクとかのチャートをチェックすることはありましたけど、まさか当事者意識をもってチャートを見ることになるとは、正直思っていなかったです。

R-指定:チャートはあんま無関係かなと思ってたし、実際「Bling-Bang-Bang-Born」が出たあとにチャートの動きとかを見せてもらったりしましたけど、「いや、アイコラじゃないの?」みたいな(笑)。

DJ松永:そんなエロいもんじゃねえよ(笑)。

R-指定:テイラー・スウィフトとか、21サヴェージとかの並びに自分らがおるっていうのが、「いや、中学生のラップ始めたての奴が考えた嘘やん」みたいな(笑)。


――米国ビルボードのグローバルチャート“Global Excl. US”で「Bling-Bang-Bang-Born」が2位に輝いた週では、5位がテイラー、6位がマイリー・サイラス、10位が¥$(カニエ・ウェスト&タイ・ダラー・サイン)[2024年2月24日付]でしたね。

R-指定:「アホやん!」って思いましたね。

DJ松永:ほんとに。「クソッ、カニエの新譜と重なったー!」って思わないよなって(笑)。

R-指定:思わん思わん。

DJ松永:「クソッ、競合相手にカニエが……!」みたいなの(笑)。

R-指定:そんなん言うてる後輩おったら、ちょっとたしなめるやろ?

DJ松永:たしなめる(笑)。「いやいや、落ち着け」と。

R-指定:ちょっと現実をね(笑)。

DJ松永:そんなわけないんだから(笑)。



――なるほど(笑)。それが、「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットによって、自分ごととして捉える意識へ変わったということでしょうか?

DJ松永:そうですね。あれはだいぶ、びっくりしましたね。異常事態ですから。

R-指定:うん。


――ファンの方もめちゃくちゃ驚いていましたもんね。

R-指定:あはは!(笑)

DJ松永:確かに、以前から知っていてくださった方も、きっと俺たちと同じくらいの驚きですよね。「どういうこと?」みたいな。

R-指定:びっくりですよね。


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今想像しているものじゃ“ない”もんが
できたほうが嬉しい

――本当にそうだと思います。先に述べた通り、「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットをきっかけに楽曲がどんどんチャート上位に登場するようになっていて、新曲への世間からの期待もどんどん高まっているように思うのですが、楽曲面での今後の展望はありますか?

DJ松永:次出す曲はもう出来上がってはいるんですけど。次から作る曲は……まあ、これは完全に自分たちの主観ですけど、挑戦的で、作ったときに「新しいやり方を覚えたな」「自分たちを更新できたな」とか、「これこそ、また世の中にない曲できたな」みたいなところを、より重視して作っていくのかなと思いますね。……これからどういう曲になっていくのかなあ。


――おお、松永さんも予想ができない。

R-指定:でも、そうなっていきたいですよね。今想像しているものじゃ“ない”もんができたほうが嬉しいので。

DJ松永:いや、ほんとにそう。想像したもの、頭で出来上がっているものをただ現実のものとして清書していくみたいなのって、あんま楽しくないよね。

R-指定:「えっ、こんなんなってもうた!」ってほうが楽しい。

DJ松永:ほんとそう。ふたりだと、キャッチボールでそれが絶対できるってのが、楽しいとこですよね。やっぱこう、自分で想像したものをトラックで作って、Rにもそれにはめてもらう、みたいなことはあんまりなくって。なんなら、自分のトラックも形にし切らない状態でRに投げたりとか。で、お互いにそういうキャッチボールをするから……しかもそれを、今はより意識的にやったりしてます。そこのラリーを大事にしているから。


――おおお。

DJ松永:俺は楽しみですね。きっといま想像してないものが(できる)……全曲そうなるんだろうなって。


ある程度いろいろ経験させてもらった今、
また最初からチャレンジできるのはありがたい

――Creepy Nutsは、8月には韓国・仁川でのフェス【Incheon Pentaport Rock Festival 2024】に出演が決定しています。「Bling-Bang-Bang-Born」ヒット後としては初の海外公演になりますが、期待していることはありますか?

R-指定:期待してることはそんなにないですけど、ちょっと頑張ろうみたいな、どうしようかな?みたいな感じですね。

DJ松永:たしかにね。でも、それがすごい楽しいなと思うなあ。Creepy Nutsをやり始めたときとか、全部アウェーだったじゃないですか。

R-指定:うんうん。

DJ松永:ユニット組みたてだった時は、自分たちの曲さえなかったから、どんなライブもアウェーで。その時に、あれこれ手を変え品を変えお客さんを掴んでいく、みたいな作業がすごくやりがいがあって楽しかったんです。で、今はありがたいことにいろんな場所に行って、もう踏んだことのある場所で、(自分たちの曲を)聴いたことのある人が一定数いるところでライブをすることが増えていたから、ある程度いろいろ経験させてもらったこのタイミングや年齢で、また最初からそういうチャレンジができるのはありがたいなってめっちゃ思いますね。



土産話 (Live at 日本武道館) / Creepy Nuts


――海外はやっぱり気持ちも変わりますか?

DJ松永:そうですね。ライブは、今までだったら国内でのワンマンやフェスがほとんどで、やっぱりみんなすでにウェルカムな状態というか。最近は自分たちを喜ばせてもらってる、楽しませに来てもらってる場所、くらいの感じになっていたんで。国も違う、踏んだことのない土地、楽しんでもらえるかわからないところに行くという、そんな気持ちですかね。それがいちばん楽しみですね。ミスっても、それはそれでやっぱ楽しい。いい思い出になる……なればいいですけどね。傷つく可能性もある(笑)。

R-指定:ほんまやな。

DJ松永:いい思い出じゃなくて、思いのほか深く傷ついてしまったとかあるかもしれない(笑)。

R-指定:な。あり得るよな。


――ライブ以外、たとえば食べ物とか、ほかに楽しみはありますか?

DJ松永:あー、全体的に楽しみかもしれない。新鮮な経験をたくさんできるっていうのは、すごいありがたいですよね。だから……ある種、期待とかもなるべく手ぶらで行くのがいいかもしれないな。そうすることで、より新鮮な経験になるかもなとは思いますね。


今後、海外含む活動への展望は?

――ちなみに、「Bling-Bang-Bang-Born」はグローバルチャート“Japan Songs(国別チャート)”における獲得ポイント数、つまり各国ごとの人気を数字で可視化したデータを見ると、チャート登場時からダントツでアメリカでの支持が高いことがわかります。また、6月16日に東京・国立代々木競技場 第一体育館で開催される、全国ツアー東京公演2日目の模様はグローバル生配信が実施されることも決定していますが、今後、より広く世界へ活動を広げていく意欲はありますか?

R-指定:行きたいっすね。いろんなところ、いろんな土地にライブしに行きたいし……そもそも、日常であんまり日本の外に出たことがなかったので、自分たちの音楽を携えて行けるってことで、自分らのところに返ってくるものがあるというか。自分らの表現するものがまた変わってきたりとか、どんなふうにそこで変化すんのかっていうのは、結構楽しみです。

DJ松永:ありますね。国内もそうですけど、海外のヒップホップをずっと聴いてても、ラップとDJでライブを魅せるみたいなアーティストって、最近ほんっとにいないじゃん。

R-指定:おらん!

DJ松永:いないのが本当に、俺らからしたらありがたいとしか言いようがなくて(笑)。だからそれを携えて、聴いたことのない人の前に出ていけるっていうのはやっぱりワクワクしますね。



Creepy Nuts - 生業 / THE FIRST TAKE


――では最後に。「Bling-Bang-Bang-Born」しかり、グローバルチャートで上位を記録している楽曲を見てみると“和洋折衷”というか、どこかに日本っぽい要素を感じる楽曲がすごく多いなと感じます。Creepy Nutsはまさに「日本語ラップ」というものにプライドを持って活動してこられたユニットだと思うのですが、改めてご自身の音楽において、日本語や、日本らしさみたいな部分にどう向き合っておられますか?

R-指定:向き合うというより、自然にやったらそうなるという感じかなあ。俺個人で言うと、いちばん最初に聴いたのが日本人のやってるラップで、そこから海外のヒップホップをまた聴いて……っていう感じではあったんで。たぶん、自分が自然に、最大限楽しくて気持ちいいもんをやろうとしたら、どうあがいても日本のテイストが出ざるを得ないというか。で、それを自分でもいいことやなと思っているんで、意識的に向き合ったりというわけではなく、どうしても溢れ出てしまう……この土地で生まれ育って、吸収してきたものっていうのが、そのままアウトプットされてるのかなとは思っていて。それがたぶん、他の影響をどんどん受けて変わっていくことによって、見たことないもんが生まれていくのかなあと期待してもいるんです。もちろん、いろんな言語を使いたいなとか、勉強したいなとかはあるんですけど、結局いちばん自分に合うのは自分の国の言語。ラップに関しては、そこはあんまり変わらないかなと思います。

DJ松永:日本のマーケットだけ見ると、ひな形がすごいあるじゃないですか。テーマ、サウンド、コード進行も、あらゆる面で“日本チャート仕様”というか、J-POPのひな形だけで曲を作っていくと、表現の幅がめちゃ限られるんですよね。しかもそれは、ヒップホップの音作り、曲の作り方と相反するものだったりするし。国内チャートで喜ばれるような曲を作るっていうのは、自分は完全に諦めているというか、放棄していて。かといって、海外のトレンドを完全にトレースすることもクリエイティブじゃないし、全然楽しくない。自分の感性、常に新しく吸収する何か、日本ならではのスタイル、海外のトレンド……全てをちゃんと使いたいですよね。国ごとにも“キャッチー”の感覚が全然違いますし。


――そうですね。

DJ松永:主にリズムやグルーヴを捉えてキャッチーだと感じるんでしょうね。日本の曲だと、よりメロディや抒情的な雰囲気が求められてる……今後やりたいのは、まあ全部ですかね(笑)。曲ごとにトラックとラップで分担の配分を変えながら、とにかく色んなものを作りたい。


――USのラップを聴くと、音に隙間がありすぎてびっくりするときありますもんね。

DJ松永:そう。でも、音数に関しては今めちゃくちゃ意識してて。音数はほんとマジで減らしてますね。「Bling-Bang-Bang-Born」もそうですけど。


――「二度寝」も最初聴いたとき、音数が少ないなと思いました。

DJ松永:楽器数をとにかく減らしてます。普段日本の曲を聴いていると、隙間に全て楽器が埋まってるというか。いろんな楽器が常に鳴っていることが多い。USの曲とか聴くと、音数は少ないけど音が太くて、ひとつの音にたくさん音のレイヤーがしてあって。だから音数は少ないけどめっちゃリッチ、みたいな。作りはめちゃくちゃ緻密だけど、情報がきれいに整理してある。その海外の音数のまんまで、日本のやり方で曲を作っちゃうと、たぶんしょぼくなる。ひとつの音色にそんな(レイヤーを)重ねて磨いたりとか、みんなしていないから。でも、音数が少ないほうがやっぱり、俺はキャッチーに聞こえるなあと思うんですよね。ラップを際立たせることにつながるので。何にせよ、俺はラップを聴いてほしいんです。音数を整理すると、相対的にボーカルがミックスで前に出せるから……でもそういうのって、よく考えたらめっちゃラップうまくないと勇気いるなって思うけど、まあRならそこは、あり得ないくらい踏み込めるから。


――(笑)。間違いないです。

DJ松永:俺もそうしたいし。まあ、声が結局いちばんキャッチーな楽器っていうのは、絶対そうだと思うんで。そこはもう……自分の今の至上命題って感じですね。それを前提に、トラックもめちゃくちゃ意識的に設計しています。


――お話をうかがって、Creepy Nutsの楽曲の和洋折衷感、どこか日本的な耳心地は、おふたりらしさの結晶なんだなというのをすごく感じました。

DJ松永:そうですね。まあ、Rの日本語を際立たせるっていうのは、やっぱりでかいかもしれないですね。Rはしっかり日本語をしっかり聞かせるラップをするから。それなのに、英語寄りに言語をめちゃくちゃ崩す人より、フリーキーなフロウが可能という。

R-指定:いろんな音の乗り方もしたいなあと思うし、いろんな日本語の遊び方みたいなのもしたいなっていうのはやっぱりあるんで。ラップはやっぱり、言語でどんだけ遊べるか?みたいなところもでかいから、無理してUSっぽい言い回しとかじゃなく、普通に生きてきた俺から見えるワードの操り方みたいなところで、いいのを作れたらなってのはずっとありますね。

DJ松永:そこを保ったまま磨き上げて、日本語とかまったく知らない人にどこまで刺さるか?みたいなところに、やりがいがあるなと思います。



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Creepy Nuts「たりないふたり」

2016/01/20

[CD]

¥1,650(税込)

サーカス・メロディー
DJ松永「サーカス・メロディー」

2014/10/15

[CD]

¥1,980(税込)

サーカス・メロディー
DJ松永「サーカス・メロディー」

2014/10/15

[CD]

¥1,980(税込)

セカンドオピニオン
R-指定「セカンドオピニオン」

2014/04/01

[CD]

¥2,750(税込)

DA FOOLISH
DJ松永「DA FOOLISH」

2012/05/02

[CD]

¥2,096(税込)