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<インタビュー>ワロウズが語る、よりシャープで自信に満ちた3rdアルバム『モデル』



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Photo:Aidan Zamiri


 米LAを拠点に活動するディラン・ミネット、ブレーデン・レマスターズ、コール・プレストンによるバンド=ワロウズが、3rdアルバム『モデル』を2024年5月24日にリリースした。クレイロをフィーチャリングしたヒット曲「Are You Bored Yet?」を収めた2019年のメジャー・デビュー作『ナッシング・ハプンズ』を手がけたジョン・コングルトンを再びプロデューサーに迎えた今作。キャッチーでほろ苦い「Your Apartment」からメロウなドリーム・ポップ・ナンバー「Bad Dream」など、先行シングルからも伺えるが、そのサウンドスケープを広げるとともに、一段と研ぎ澄まされた作品に仕上がっている。リリースを間近に控える中、3人が“これまでで最も耳心地がいいワロウズのアルバム”を目指したという今作の制作裏側やその意味深なタイトルについて語ってくれた。

これまでで最も耳心地がいいアルバムにしたかった

――ニュー・アルバム『モデル』がもうすぐリリースされますが、まず今の気持ちをお聞かせください。

ブレーデン・レマスターズ:わくわくしていて、ナーバスで、自信も感じている。みんなの反応を見るのが楽しみだね。

――アルバム・タイトルは少し謎めいていて、さまざまな解釈ができるように感じますが、このタイトルに決めたのは?

コール・プレストン:今、君が言ったことが理由の一つだと思う。“モデル”という単語は漠然としていて、いろいろな定義ができるから、自分ならではの意味を見出すことができる。そこがいいんだ。そういう意味では音楽にも合っていると思う。あと、『モデル』というタイトルを選んだ大きな理由の一つは、ひとつの単語だとステートメントのようにも聞こえるから。『モデル』って一度見ただけで、それが何なのかが認識してもらえると思うし、とても印象的だよね。

▲「You (Show Me Where My Days Went)」MV

――バンドにとって3rdスタジオ・アルバムとなる今作ですが、どのようなことを目標に掲げて取り組みましたか?

ディラン・ミネット:バンドとしてのゴールは一貫していて、もう少しライトに感じられるような作品にすることだった。一日のどんな瞬間にも、どんな人たちと聴いても、何をしながら聴いてもフィットするような、これまでで最も耳心地がいいワロウズのアルバムにしたかった。バンドやパフォーマンスにも自信が持ててきていると感じたから、それが歌詞にも反映されるといいなって。すべてのパーツをもう少しスマートに、シャープに仕上げたかった。それは達成できたと思う。それから、今度演奏するとわかっていた大きなショーを見据えた作品にすること。これらをきちんと表現したアルバムにしたかったんだ。

――よりライトに感じられる作品を目指したというのは意外でした。歌詞に関しては、うまくいかない恋愛関係、メンタルヘルスなど過去のアルバムと比べるとやや内容がダークなものもあったので。

ブレーデン:そうだね、歌詞に関しては半々という感じ。自分が歌っている曲のほとんどがそういう内容だから(笑)。でも、ディランが書いた歌詞の多くはとても楽観的で、ラブ・ソングもあるから、その対比が面白いんじゃないかな。今作は、人間関係、愛、失恋などにおける感情のさまざまな側面を扱っているように感じる。交際を始めたばかりの人にも、破局したばかりの人にも、いろいろなタイプの人に向けた曲がある気がするね。

――ちなみに、今作で特に気に入っている歌詞はありますか?

ディラン:好きな歌詞か……少し考えてみるね。誇りに思えるという点で、個人的に気に入っているのは、「Your Apartment」の「I want to speak, but you won't even talk to me / Not until you'd like to see all the things we could be and incentivize things that you internalize」(話したいのに、君は僕に話してくれすらしない / 君が僕たちの可能性を見つけ、内面化しているものに動機づけられるまで)という歌詞。自分でもひらめた時に驚いたよ。かなり長くて、かみそうだけど(笑)。

▲「Your Apartment」MV

――ジョン・コングルトンとアルバムをレコーディングするのは2度目ですが、どのように作業を進めていきましたか?

コール:ジョンは最高で、ワロウズの叔父さん的な存在。彼はとても正直で、メンバー全員とすごく仲がいい。彼と一緒にスタジオ入りすると、いつもジョークを言い合いながら、最高の時間を過ごしているんだ。同時に、バンドのベストを引き出すのに長けている。そこまでプロデューサーとしての色が濃くなくて、彼が手がけたレコーディングを聴いて、「ああ、これは明らかにジョンだ」と思えるようなスタイルではないよね。ワロウズらしいサウンドにするのが本当に上手で、できる限り最高の音楽を作るように、自分たちを凌駕するように巧みに促してくれる。ジョンとの仕事は本当に素晴らしかったし、作業スピードも速くて、スタジオにいた2か月間で25曲を形にして、27のレコーディングを行った。僕たちにとって完璧なプロセスだったね。

――先ほど、ディランがよりシャープにしたかったと話していましたが、過去2作に比べてもそれが見事に結実していて、簡潔なサウンドになっています。過度なプロダクションや制作に時間を費やしすぎる衝動をどのように抑えたのでしょうか?

コール:過去には、あらゆることを試して、それをすべて採用してしまったこともあった。10のギター・トラックやいろいろなものを詰め込んだ結果、トラック数が多く濃いレコーディングになっていた。今回は録音されたすべてのパーツ、曲のすべての要素に居場所があるようにしたかったんだ。その手助けをしてくれたのがジョンだったと思う。具体的にこういうサウンドを目指したいというのを定義して、僕たちはそれをトーン・クエストと呼んでいた。彼が、その作業をとても簡潔で素早くしてくれて、「じゃあ次に行こう。この曲では、また別のことをやってみよう」って言ってくれた。考えすぎる時間を与えないようにしたんだ。自分たちを信頼すること、そして自分たちに自信を持てるようにもなったから、何かクールなものを見つけたら、それに基づいた決断をして、「次に進もう、これでいいんだ」と思えるようになったと思うね。

――アルバム最後の曲「Only Ecstasy」がとても印象的だったのですが、この曲で締めくくることにした理由は?

ブレーデン:とてもアンセミックな感じがして、何か締めくくるような曲だと感じていた。最後の曲にするか最初の曲にするかの2択で、収録曲がすべて揃った時、アルバムのブックエンドにふさわしい曲だと思えた。「Your Apartment」で始まった場所から別の場所までたどり着いた気がしたから。アルバムの中で一番明るい曲だと思うし、自分にとっては眩しい光のような曲だ。まるでトンネルの終わりに到達したように。そういう意味では、これまでワロウズのレパートリーにはなかった、不思議だけど、ユニークな曲だと感じる。

 本当に自然と形になった曲で、それゆえにとても正直だと感じる。それはレコーディングにも反映されていると思う。ディランが書いた最高の歌詞の一つで、正直なところ、このアルバムで一番好きな歌詞の一つは、この曲の「Feeling like the time is through of acting like we never knew / And you are my only ecstasy」(もう僕たちが知らないふりをする時間は終わり / 君は僕にとって唯一の喜び)というもの。すごく気に入っている。

――ワロウズは幼馴染によって結成され7年近く活動していますが、友人たちと音楽を作ることを楽しむことと、アーティストとして成長することのバランスをどのように取っていますか?

ディラン:どのようにバランスを取るべきなのかというのもあるけれど、僕らに関しては(楽しさと成長を両立することに)慣れてしまっているんじゃないかな。長らく活動してきた中で、良いバランスを見つけることができた。このバンドに全員が情熱を持って取り組んでいるのも助けになっている。音楽で生活できるようなキャリアを築く前から、楽しみとインスピレーションのためにやってきた。そういったことを共に経験をすることで、すべての瞬間を本当に感謝し、楽しむことができると思う。ビジネス面に惑わされることなく、常にお互いに正直になりつつ、何が誠実で、何がそうでないかについて共通意識を持つ。そうすることは、ビジネスとして、そして友人としてヘルシーな関係を保つ上で、とても直感的でオーセンティックであり続けるのにかなり役立っていると感じるね。

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