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<インタビュー>Da-iCE 工藤大輝&花村想太が語る、「I wonder」に込めた工夫と“Da-iCEだから”できること
Interview & Text: 高橋梓
Photo: 興梠真穂
4月17日、Da-iCEが新曲「I wonder」を配信リリースした。同曲はTBS系火曜ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』の主題歌に起用されていることもあり、公式YouTubeにアップされている「Performance Video」は再生数237万回(※5月20日正午時点)を突破した。さらに4月29日放送のTBS系『CDTVライブ!ライブ!』で披露した際には、〈音が止まった〉という歌詞に合わせて楽曲とバックダンサーが止まってしまうというサプライズ演出も。話題に事欠かない一曲となっている。そんな同曲について、作詞を担当した工藤大輝と、作詞・作曲・振付を担当した花村想太にインタビューを実施。同曲について様々な角度から話してもらった。
「I wonder」は勝負曲、絶対に外したくなかった
――「I wonder」はおふたりの共作ですが、制作過程についてから教えてください。
花村想太:まず、いつも一緒に楽曲制作しているチームと僕とでデモを作って、コンペで選んでいただきました。その上で「I wonder」は勝負曲にしたいという思いがあって、チームで完結するだけではなく工藤大輝先生のお力をお借りしたいとお願いして。それで生まれたのが、〈音が止まった〉。このフレーズは大輝くんが出してくれたのですが、お願いしてから5分くらいで出てきて。その瞬間、「この曲はイケる、勝ったな」と思いました(笑)。
工藤大輝:あはは!(笑)
花村:そのフレーズを聞いた瞬間、「おもろい!」みたいな。ただ、ドラマの主題歌で〈音が止まった〉でスタートするって、使い方が難しいんじゃないかなって思ったりもしていて。でも、蓋を開けたら完璧に使ってくださっていました。人って、びっくりした時や恋に落ちた時、自分の思っていた方向と違うふうに物事が動いた時って、一瞬固まっちゃうじゃないですか。その固まりをドラマの中では無音で表現してくださって、「I wonder」が流れるんですね。それが印象的すぎて、ドラマの1話を見て「すごっ!」と思いました。
――ということは、曲の大枠は花村さんチームが作って、そこに工藤さんが加わられた、と。
花村:そうですね。デモの歌詞の方向性を汲みつつ、工藤先生節を加えてくれています。
――工藤さんは5分で〈音が止まった〉というキラーワードを出されたそうですが、楽曲を聴いた瞬間ひらめいたのでしょうか?
工藤:俺さ、そのくだりまったく覚えてないのよ。どういう感じだったっけ? 喋っている時だったよね?
花村:あのね、大阪のテレビに出演している時だったかな。たしか、『なにわんFES』の舞台袖で言われた気がする。
工藤:うわ、全然記憶ない!(笑)
花村:「〈音が止まった〉って歌詞で音を止めたらいいんじゃない?」「たしかに」って会話したと思うんですよね。そこから〈色が変わった〉〈ドラマみたいだ〉とふたりで話し合いをしたのを覚えています。
工藤:あぁ、そうだ!
花村:でもそれは、正式に共作することになる前かもしれない。大輝くんが「こうしたら面白くない?」って僕にアイデアをくれたんです。そこから正式にお願いして、タイトな時間の中で書いてもらいました。
工藤:たしか1日で書いたのは覚えていますね。
――1日! かなりタイトですね。
工藤:我々はいつも時間ないから(笑)。
花村:特に今回は制作スケジュールが押していたんですが、ドラマの放送時期が決まっているので、進行を遅らせられなかったんですよね。
――そんな中、工藤さんはどんな狙いのもとで歌詞を書かれたのでしょうか。
工藤:曲調が曲調ですし、恋愛要素に振り切ると甘すぎるなと思ったので、リスナーの年齢層はあまり下げないように意識しました。主題歌として使っていただくドラマの配役や、成長が描かれているストーリーなどを考えたりもしていて、僕は“人間的成長”という面を汲み取って書いて。想太とMEG.MEさんに違う要素を加えてもらったという感じですね。
花村:だいぶ大輝くんらしい歌詞でしたよね。
工藤:デモの歌詞がMEGさん節だったんですね。起承転結もあったし、音ハメもしっかりしていたし。なので「これは引っ張られる」と思って、なるべく聴かないようにしていて。見ていないふりをしながら書きました。
――土台がしっかりあるがゆえ、ですね。ちなみに前作の「A2Z」もお二人の共作です。制作過程の違いはありましたか?
花村:まったく同じです。「A2Z」も僕とチームで作っていたのですが、もっと知的に見せたくて。でもわかりやすさだけが先行してしまいそうだったので、工藤さんに入ってもらったという流れです。今回もそう。特に「I wonder」は勝負曲にしたくて絶対に外したくなかったので、工藤さんに一緒に責任を負ってもらおうと(笑)。
工藤:言い方よ(笑)。
花村:言い方はボケですけど(笑)、「CITRUS」の時のように、もう一度一緒にヒット曲を作りたいという思いがありました。
工藤:そうね。「CITRUS」は僕と想太だけで歌詞を交互に書いたんですね。でも今回は想太のチームの方々もいらっしゃるので、複数人で書いたというところが結構ポイントで。しかも、すごく有名なアーティストさんの曲を手掛けている、いわゆる職業作家として名がある方なので、極端な話、雑に書いても整えてくれるだろうという信頼があって。だから1日という短い時間で書けたというのもあります。チームが整えてくれることはわかっていたので、あまり気負わずに書けました。
花村:めっちゃわかる。僕もいつもそれです。Da-iCEで制作をする時はチームで作るのですが、Natural Lag(※花村が所属する4人組バンド)の時はひとりで作るんですよ。0から1を自分で考えなくてはいけないのですが、Da-iCEでぬるま湯に浸かっちゃっていて。大輝くんとは“雑”のレベルが違いますが、チームのみんなが、僕が雑に書いたものを直してくれるんですよね(笑)。だから、大輝くんみたいにひとりで完結できる曲数を増やしていかなきゃいけないなと思っています。
工藤:僕は今回とりあえずワンコーラスだけ書くということだったので、普段の想太とはまた違うと思いますよ。
――なるほど。そして「A2Z」「I wonder」と2曲続けて、2分半というコンパクトな楽曲が続いています。なにか狙いがあったりも?
花村:今年のDa-iCEの試みなのですが、実はライブバージョンというものを作っていて。「A2Z」と「I wonder」はライブバージョンになると2番が追加されるんですね。なのでライブに来ないと本当の「A2Z」と「I wonder」が聴けないという。もちろん2番がごっそり抜けても成立するように書いていますが、世には2分半しか出ないようにしています。
――以前、 工藤さんとごっこ倶楽部さんとの対談で「イントロを作る必要性」や「曲をコンパクトにしたほうが良いのかもしれない」という話をされていたので、そちらに舵を切ったのかな、と思っていました。
工藤:そういう話、しましたね。フル尺という概念をどうするかというところで、その考えはずっとあって。このSNS社会はいつでも音源が聴けてしまうわけですから、ライブに来てくれるということがどれだけ貴重かという話なんですよね。なので、本当のフル尺、5分の尺はライブにきてくれた方のみぞ知るという。逆に、世に出る音源はSNSで切り取られるわけですから、最初から短くてもいいのかなと考えてこういったスタイルを試しています。
花村:今年の楽曲は全部それでいこうかな、と。
――Da-iCEの楽曲は歌詞だけでも考察のしがいがあるのに、曲そのものにも仕掛けがあるという……!
花村:「A2Z」の時にじわじわ噂で広まっていって、「I wonder」も2分半だったのを見て、勘の良いファンの方はライブバージョンがあるんだって気づいていました。
工藤:こちらもヒントは結構出しているんですよね。「Performance Video」の映像をわざと不自然にカットしていたりして。どう見ても繋がっていないので、この間に何かあるんだなと分かる人はわかるはず。
「I wonder」Performance Video / Da-iCE
――ファンの方の察しの良さもすごいです。
花村:歌詞もおもしろくて。今回は1番を大輝くん、2番は僕が中心となって書いているのですが、シンクロしている部分があるんです。たとえば、大輝くんが「透明なパレットにニュアンスカラーで描いていく」というようなニュアンスで書いている部分を、僕は「相手を花色に染めていきたい」というニュアンスで書いていて。シンクロしつつも、書き手のスタンスの違いが表れているというか。
工藤:そうね。
花村:そういった違いもぜひ楽しんでみてほしいです。
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ドラマに寄り添いつつも、
僕が提示したかったDa-iCEの方向性を模索した
――サウンド的にはすごくポップでキャッチーですが、どういった狙いがあったのでしょうか。
花村:ドラマに寄り添いつつも、僕が提示したかったDa-iCEの方向性を模索した結果ですね。この楽曲って、一見するとポップでキャッチー、我々がワイワイかわいい感じで振り切ればそう見えるんです。でも、ドラマの“記憶喪失”という設定もあって、デモよりもコード進行をマイナーに変えていて、トラックだけ聴くとちょっと寂しく感じるんですよ。だから「ポップだけではない」という側面を強調するために、ミュージックビデオも明る過ぎないように作っています。
――コードはマイナーでありつつ、いろんなサウンドが入っていることがポップさに繋がっている要因のひとつかもしれないと感じました。
花村:豪華ですよね。例えば、最初の〈色が変わった〉の後に口笛が入っているのですが、あれは大輝くんのアイデア。どんな音色がいいかみんなで話し合って、口笛がいいんじゃないかという話になって。僕が口笛をレコーディングしてみたら結構ハマりました。それに付随して振付も浮かんだので、いけるかなって。
――振付も今回花村さんが担当されています。これはどういった経緯だったのでしょうか。
花村:2、3年前から、演出家のMASAOさんが「やりたいことがある人はやるべき」ということをよく言っていて。僕は振付に入ってみたいという気持ちがあったのですが、やっぱりパフォーマーを優先したかったので我慢していたんですね。「A2Z」も頭に振りが浮かんでいたのですが、(和田)颯に作ってほしい思いが強かったのでお願いしていました。でも「I wonder」は「これが最後のチャンスだ」と思うくらい思いを込めている楽曲だったので、後々後悔しないよう、責任を持つためにも手を挙げてみようと思って。颯にその思いを話して「一緒にやらせてほしい」とお願いをしたら、「それなら想太くんが作りたいように作ったほうがいいと思います」と言ってくれました。
工藤:想太は想太なりにトレンドを分析して、自分の理論に基づいた上で振りを作ってくれていたので面白い試みだと思いました。最近はスワッグ系のダンスが多いですし、世の中の流れ的にもヒップホップが流行っていますが、僕はそれだけじゃないよねとも思っていて。それに、これまで僕らはs**t kingzさんに振付をお願いすることが多かったですが、他のグループも彼らに頼むことが増えてきたこともあり、差別化をしたいという気持ちもあったんですよ。誰もが真似しやすい部分がたくさんある振付に振り切ったことは今までなかったですし、良いものができたのかなって。
花村:大輝くんがそう言ってくれるのは嬉しいですね。振付って、想像力だと思うんですよ。なので大輝くんが振りを作ったらすごく良いものができると思っていて。でも、それは最終兵器にとっておきたい。ここぞというところで工藤さんに本気を出してほしいです。
工藤:あはは!(笑)
花村:それに今回は、プロダンサーのShungoくんと一緒に作っていて、彼が土台を作ってくれて、僕はイントロ、サビ、Dメロ、間奏などを担当しました。なんですけど、〈音が止まった〉のインパクトが強すぎて、振りが全然出てこなくて。振りを考える時間は1日のみで、次の日の夕方にはメンバーに振りを教えることになっていたのですが、ギリギリまで考えて模索していました。結果、冒頭でテレビをつけてもらおう、と。テレビ番組で披露する時も面白いことができそうだなって。
――それでいうと、『CDTVライブ!ライブ!』でのパフォーマンスが話題になっていましたね。反響も大きそうです。
花村:「CITRUS」「スターマイン」以降、久々にiTunesのすべてのジャンルで200位以内に入ることができたので、反響が出てきているなと思っています。プラスして今回はTikTokにも力を入れているので、もっと広がってほしいです。まだまだ実感はないですけどね。
工藤:でも【JAPAN JAM】で披露した時はわりと歓声があったかな。僕、イヤモニを外して歓声を聞くタイプなんですが、知らない曲という感じのリアクションではなかったと思います。ドラマの主題歌でもありますし、想太がTikTokでたくさん踊ってくれていますし、耳にする機会が増えているんだなと感じています。
花村:TikTokには本当に力を入れていて。友だちに教えてもらったんですけど、人って7回同じコンテンツを見ると流行っていると思うんですって。それに、某グループさんは新曲が出るたびに踊り続けていて、毎回バズっているんですね。なので、僕もひたすら「I wonder」を踊っています。意味があるのかわからないですけど……。
工藤:あるよ!(笑)
花村:あと、今はSNSユーザー全員がクリエイターだと思っているので、「I wonder」を使ってくれている人ほぼ全員にいいねを押しています。それによって、もう1回アップしようと思ってくれたら嬉しいです。
「本当の自分」はどんな自分?
――この先の広がりにも注目ですね。ちなみに、「I wonder」が主題歌になっているドラマの公式サイトには「本当の自分を問われて、即答できますか?」という問いかけが書かれています。おふたりは、「本当の自分」はどんな自分だと思いますか?
花村:僕はメンバーや地元の友だちといる時が、いちばん“素”の自分だと思います。はじめましての方や後輩といたりする時って、人見知りしてほぼ話さないんですよ。
――意外!
花村:舞台の稽古現場なんて、本当にひと言も話さないくらい。でも、本当は幼少期からおしゃべりなので、メンバーと地元の友だちの前だとめっちゃ喋る(笑)。メンバーといる時なんかは思ったことを全部口に出しちゃう。これが子供の頃からの本当の自分の性格なんだろうなって。それが出ることで良いこともありますが、良くない側面もあるのでちょっと気をつけなきゃとは思います。
――工藤さんはいかがですか? ミステリアスなイメージもあります。
工藤:ミステリアスですか?(笑) 僕、このまんまなんですよね。キャラを作っているつもりもないし、ずっとこのテンション。
――大人ですね……。
工藤:違うんですよ(笑)。感情やエネルギーの出力を上げると、そのしっぺ返しがどこかでくると思っていて。精神的なダメージを抑えるために、なるべくフラットでいようと思っているんです。だから、番組に出演する時もこのまんま。それで嫌われようが、向いていないと言われようが、それで良しとしているんです。そういう場所が好きな人はアウトプットを上げてもいいと思うのですが、僕は迎合することもないかなって。昔はエネルギーを全力で出したほうがいいと思っていましたが、30代に入ってからはなるべくフラットでいようという考えが顕著になりましたね。
花村:いやぁ、大事ですね。
工藤:Da-iCEを組む前からそういう部分はあったかもしれない。だから全力でアウトプットできる方はすごいと思います。
花村:僕は、バラエティの時はめちゃくちゃチャンネル合わせに行っちゃう(笑)。
工藤:それはね、才能だよ。やっぱり関西育ちだし、トーン&マナーやノウハウが小さい頃から入ってるんだと思う。僕はどちらかというと後付けハードディスクタイプだし、無理やりやらなくても他のメンバーがやってくれるんです。
――おふたりは真逆ですね。
工藤:Da-iCEは5者5様ですね。だから適材適所。ここはこいつで、ここは俺が行こうみたいな感じで、いいバランスなんです。
花村:本当にそう。だって、(大野)雄大くんなんて本当に空気が読めないんですけど(笑)、それが正解になるんです。
工藤:そうね(笑)。事故が起きるけど、それが面白い。僕なら絶対その事故を起こせないんですよ。雄大にしかできないし、スペシャルなことだから本当にすごい。
――Da-iCEの皆さんで言うと、自分は花村さんタイプなのでお気持ちがわかるのですが、工藤さんがフラットでいられるのがすごいな、と。
花村:そう! 本当にすごい!
工藤:いやいや。大人数の前で何かをやってシーンと静まり返っても、もう何も感じません(笑)。
花村:僕はなんとかしなきゃって思っちゃう。シーンってなったら「なに、この空気?」と言って、ボケに逃げます(笑)。
工藤:それはもう関西の血! こういうのが5通りあって使い分けられるのも、我々の強みなのかもしれないですね。
花村:たしかに。真面目な番組の時、僕は空気に飲まれちゃうし、ボケられへん!
工藤:そういう時は他のメンバーを送り込むから大丈夫!(笑)
花村:今後もお願いします!
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