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THE 野党 『8:10 pm』インタビュー
新藤晴一(ポルノグラフィティ)、SHOCK EYE(湘南乃風)、若手サウンドクリエーター 篤志の3人からなる新ユニット THE 野党。アルバム『8:10 pm』でデビューを果たした彼らが、本作については勿論、ユニットを結成した理由、音楽や所属グループへの熱い想いを語ってくれました!
僕らが“野党”で、本体が“与党”だとしたら…
--まず、THE 野党を結成した経緯を教えて頂けますか?
新藤晴一:SHOCK EYEくんとは、何年か前からTV番組で会うことがあって、共通の趣味(ゴルフ)の話をしたり、飲みに行ったり。本当に遊び仲間だったんですけど、一昨年の忘年会で「せっかくだから何か一緒にやれたらいいね」って話をしたんです。で、篤志くんとはポルノグラフィティの作品制作の時に会って、自分の中でピースみたいなものが揃った。3人で何か出来るんじゃないかな?って。篤志くんはスキルも高いし、自分の好きな音楽も網羅しているし、何よりそのハッピーな性格があったので。
SHOCK EYE:晴一くんから話を聞いたときは、飲みやご飯に誘われる感覚とほぼ同じ温度でしたね。単純に「楽しみだなぁ」って。良いものが生まれるのか、生まれないのか。何をやるのかも分からないまま、パソコンだけを持って晴一くんのスタジオに行ったんです。
篤志:僕もここまで大きなことになるとは思っていなかったです。ポルノさんの制作現場で気負いまくっていて(笑)、それが終わって一安心していたし、「ここからは遊びで」という話しも伺っていたので、楽しめるといいなって感覚でした。
--ポルノグラフィティ、湘南乃風、それぞれのファンの中には「元々のグループ活動が疎かにならないか?」という不安を抱いている方もいるかもしれませんよね?
SHOCK EYE:僕らが“野党”で、僕らの本体(それぞれのグループ)が“与党”だとしたら、その2つは“2つで1つ”なんです。本体は大きな船で、責任とか使命とか今まで培ってきたものを大切にしながら、皆でスクラム組んで進んでいく。そこは戦いの場所でもあるし、自分の帰るホームでもあるし、なくてはならない場所なんです。それとは別に、THE 野党は自由に航海していく小さな船なんです。もちろん小船だけだと沈没してしまうわけですよ。だから本体という帰るビックシップがあって、そこには大切なクルー達もいっぱいいる。だから“2つで1つ”なんです。 本体に満足していないから、THE 野党をやっているわけではなくて、THE 野党では楽しい部分の延長を、気負わず背負わずに、3人がカッコイイと思えたものだけをやっていくんです。その楽しさが、それぞれの本体の元に“良い要素”として返っていくような活動をしようと。ただ、心配している方たちの想いは分かるので、その方たちには僕たちが一生懸命「心配しなくて大丈夫だよ」って説明していきます。なので、僕に道端で会ったら色々と質問してください(笑)!
新藤晴一:「湘南乃風、大丈夫?」って?(笑)
SHOCK EYE:1時間でも2時間でも答えますよ(笑)。本体は自分の人生なので、それがないと僕はただの30過ぎのオッサンですもん。っていうのは、自分でも分かっていますしね(笑)。 湘南乃風は、“色々な人の人生を救わないといけない”という使命感を持って活動しているので、キレイ事だけではやっていられない。凄くエネルギーを使っているから、楽しい・楽しくないの次元じゃないんですよね。生きがいというか、命だから。それがぎこちなくなる時もあるし、凄くパワーになる時もあるんです。でも、THE 野党には「命をかけて」とかはないんです。そういった湘南乃風とは違ったベクトルで音楽をやれたことは、僕にとって財産ですね。
新藤晴一:別プロジェクトをやると、技術的なこと以外に本体の有難さもよく分かるしね。僕で言うとポルノ、SHOCK EYEくんで言うと湘南乃風は、やっぱり愛されているんだと思います。心配する声も、愛してくれているからこそなんだろうし。だから、本体に背を向けて何かをやっているわけではなく、真摯に音楽と向き合っているつもりです。何より音を聴いてもらえば、THE 野党は本体を貶めるものではないことが分かってもらえると思います。
SHOCK EYE:音楽に元々垣根なんてないし、THE 野党は誰かを苦しめたり、陥れたりするための音楽はやっていない。誰かをハッピーにするための音楽しかやっていないので、それは絶対に悪いモノではないと思うんです。それに、晴一くんや篤志くんは、もう自分のファミリーなので、2人のことを好きな人のことも傷つけたくないと思っていて。だから、自分も音楽に対してはポリシーを持ってやらなきゃいけないと、1人の人間として感じています。ポルノも凄く応援しているし、湘南乃風は誰よりも愛しているので。
Interviewer:武川春奈
アルバム完成によって“THE 野党”の実態が出てきた
--アルバム『8:10 pm』の制作も、楽しく自由に進めていったんですか?
新藤晴一:THE 野党のコンセプトの一つが“何も背負わないでやる”なので、純粋に音楽を楽しめましたね。音楽を作る楽しさを実感しながら制作したので、いい意味でとっ散らかっているし、その辺が躍動感になっていると思うし、1stアルバムらしい1stアルバムになったと思います。やっぱり、楽しさは隠せないですね。
篤志:SHOCK EYEさんのストック曲をTHE 野党用に変更したものや、晴一さんが率先して思いついたことを具現化した曲、僕が勝手にベイビーフェイスになりきって作ったトラックなど、色々なパターンがあるんです。ただ、ざっくり言うと、ベーシックなものは常に3人で顔を付き合わせてジャッジして、進むべき方向を決めていきましたね。
--篤志さんの音楽的技術もかなり役立ったのでは?
SHOCK EYE:彼はマルチプレイヤーで、ギターやベースも弾けるし、打ち込みやPro Toolsでちょっとしたミックスも出来ちゃう。器用っていう言い方をすると安っぽいですけど、本当に頼もしいんですよ。
篤志:僕がこんなに活躍できるとは思ってもみなかったですね(笑)!! 普段は職人寄りの仕事がメインなので、常に需要があるから供給をさせて頂く立場なんです。表面上で見ればアーティストさんと仕事は変わらないんですけど、僕は常に裏方で需要を求めている。需要先のことを考えて判断しなければいけないんです。でもTHE 野党で聞かれる「どう思う?」は、僕個人がどう思うかなので、その立ち位置は新鮮で非常に楽しかったです。
新藤晴一:音って、ドラムの4小節だけがカッコイイ場合があるんです。理屈じゃなくて、とにかくカッコイイっていう。彼はそういう音を作れるんです。そこを元に良い音楽も作れると思うので、SHOCK EYEくんも言いましたが、凄く頼りになるパートナーですね。
--M-07「Download Her」など、アレンジに拘った楽曲も多いですよね。
新藤晴一:この曲は篤志くんがトラックを、SHOCK EYEくんがメロディを作った曲なんです。それを初めて聴いた時にイメージした“青白い光”を元に、僕が歌詞を書いていったらこんな世界観になったんです。
SHOCK EYE:(メロディは)全然違う世界をイメージして作ったんですけど、それを伝えず晴一くんに渡したら、こういう歌詞が出来ていて。でも世界観がよかったので、「書き直して」とかは一切なく、そのまま完成させていったんです。だから本当に合作ですね。これが僕らの作るサウンドなんだって発見しました。
新藤晴一:最初に「アルバムを作ろうぜ」ってなった時には想像していなかったタイプの曲だったりするので、アルバムが完成したことによって“THE 野党”の実態が出てきたんだと思います。他にもアルバムには、ど打ち込みの曲もあるし、歴戦の達人たちに楽器演奏を手伝ってもらったオール生音の曲もあるし、篤志くんが作り上げていったトラックもある。全く作り方を限定していなかったんです。PCの中で完結しているからこそ出来る音楽もあるし、達人たちのグルーヴがあるからこそ出来る音楽もある。色々なことにトライしてエラーしました。
Interviewer:武川春奈
音楽を始めた頃の初期衝動に出逢えた
SHOCK EYE:絶対にエラーはあるので、恐れずにやりましたね。それを恐れてしまうことの方がもったいないので。いっぱいエラーした分、いっぱいトライしたし、得たものは大きかったです。韻を踏まずに歌を歌ったことも初めてだったし、ディストーションギターのサウンドに歌を乗せたこと自体も初めてに近かったから、新しいこと尽くめでした。その中でまた音楽を始めた頃の初期衝動に出逢えたことは、僕の音楽人生にとって大きな出来事でしたね。あと、自分の中で課題も出てきました。それは宿命というか、どの作業をしていても永遠に付きまとうことなんですけど。次はこうしたい、ああしたい、という想いは既にあります。
--“トライすることの大切さ”は、M-02「WHO AM I ?」でも歌っていますね。
新藤晴一:この曲はSHOCK EYEくんが詞を書いたんですけど、熱いメッセージが込められていて、行く末の分からない今の時代に合っていると思いましたね。
SHOCK EYE:頭で考えるよりも行動に移した方がいいという自分の経験談と、“trial and error(試行錯誤)”という言葉を元に書いた曲です。今の時代って失敗すると駄目だみたいな風潮があるじゃないですか? 失敗を恐れる社会というか。それで、数ある選択肢の中から選択することも出来ずに時間だけが過ぎてしまって、そこへ飛び込んだ人の成功や失敗を外から傍観しながら、ああだこうだ言う。で、そんな自分にまたヤキモキしてしまう。そういった負のスパイラルから脱するには、行動するしかないと思うんです。例え失敗しても、取り返せるくらい人生は長いし、失敗を恐れて動けなくなることの方がもったいないと思うので。
--また、M-14「アンクルミュージック」はどんなコンセプトで制作したのでしょう?
新藤晴一:「中高生が鼓舞するような曲を」と思って、ハイスクールロックをイメージして作り始めたんです。でも結局はレゲエのマナーで展開していく、一味違ったハイスクールロックになって。それに、こういった曲は日本語だと乗りにくいんだけど、SHOCK EYEくんの声だから成り立った。それは凄く良い意味で“計算外”の組み合わせだったので、THE 野党というグループを表現した象徴的な曲の一つだとも思います。あと、この曲は絶対にライブで盛り上がる!
--では、今回のアルバムはどんな作品に仕上がったと思いますか?
SHOCK EYE:聴く人にとっても初めて出逢う味かもしれない。でも、噛めば噛むほど分かる味があると思うんです。コーヒーのように、最初は苦いと思っていても飲んでいたら病み付きになるかもしれないし。だから、食わず嫌いをしないで聴いて欲しいです。ビター感だったり、スウィート感だったり、酸っぱさだったり、色々なフレーバーを味わうことが出来る作品に仕上がっていると思うので。
--また、2月16日からはツアーが始まります。
篤志:間違いなく、見ているだけで楽しめるものが出来ると思っていて。これだけやりたいことを持っている2人が「ワーワー」言い出したら、しっちゃかめっちゃかになってしまうので(笑)、誤解を恐れずに言うと、どこまでそれを押さえられるかが勝負かなと思っています。どこまで上手く皆さんにお伝え出来るか、お見せできるかが勝負かと。
新藤晴一:アルバム制作の時もフォーマットがない状態でワイワイ作っていったので、ライブもそれぞれが培ってきたものをワイワイ出しあって作り上げていくと思うんです。定番の曲もなければ、衣装も、何の楽器を担当するかも決まっていない。それも含めて作っていくことが楽しみですね。
Interviewer:武川春奈
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