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<インタビュー>薬師丸ひろ子×武部聡志、初のフルオーケストラコンサートへの意気込みを語る
薬師丸ひろ子初のフルオーケストラコンサート【billboard classics 「薬師丸ひろ子 Premium Orchestra Concert」〜 produced by 武部聡志】が、
6月11日 東京文化会館大ホールを皮切りに、6月18日 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール、6月30日 Bunkamuraオーチャードホールで行われる。
プロデュースは「あなたを・もっと・知りたくて」「ステキな恋の忘れ方」「紳士同盟」等、これまで数々の薬師丸の楽曲のアレンジを手がけてきた武部聡志。
指揮・編曲を担当する岩城直也率いる、若手が中心のNaoya Iwaki Pops Orchestraの演奏と、日本のポップシーンを牽引してきた“名匠”達が紡いだ数々のグッドメロディを歌う薬師丸がどう“響鳴”し、オーディエンスをどんな世界にいざなうのか楽しみが尽きないコンサートだ。
薬師丸と武部にこのコンサートへの意気込みを聞かせてもらった。
(Interview & Text:田中久勝 photo:石阪大輔)
今も変わらない唯一無二の歌声
── 80年代からのお付き合いで、武部さんは薬師丸さんのことを「やっくん」と呼ぶほどの親密さのお二人ですが、武部さんはこれまで薬師丸さんの作品を27作品アレンジしています。 最初に薬師丸ひろ子さんという“歌う女優”と、その声と向き合ったときはどんな印象だったか覚えていますか?
武部:今日は「薬師丸さん」で(笑)。 僕が最初に薬師丸さんの曲のアレンジをやらせていただいたのは、「あなたを・もっと・知りたくて」(1985年)で、もちろん以前から薬師丸さんの歌は聴かせていただいていましたが、当時こんなに歌がうまい女優さんがいるんだって驚いた記憶があります。 色々な女優さんが歌を歌っていましたが、その中でも薬師丸さんはずば抜けて歌唱力が素晴らしかったです。それとあの“鈴を転がすような”声。今も変わらない唯一無二のあの声に惚れました。 だからアレンジするときは本当に楽しみだったし、自分の作ったオケに薬師丸さんの歌、声が乗ることにすごく興奮しました。
薬師丸:武部さんが“鈴を転がすような”と言ってくださったり、以前、あるアーティストの方からは「変わった声」と、たぶん褒めてくださっていると思うのですが、そう言っていただいたこともあり(笑)、親に感謝しなければいけませんね。
── 薬師丸さんのその声に、日本を代表するメロディメーカー達がクリエイター魂を刺激され、たくさんの名曲が生まれてきたと思います。薬師丸さんはご自身の声について客観的に向き合うことはありましたか?
薬師丸:変わった声だから(笑)、武部さんをはじめ色々な作家の方が興味を持ってくださったとしたら幸せです。 以前ご一緒させていただいたオーケストラのある演奏者の方に、自分の出す音色と私の声が同じ響きで耳に返ってくると言っていただけたり、新しいアルバム『Tree』(2024年)と、前回のアルバム『エトワール』(2018年)でも作詞を手がけてくださった、 作詞家の方には、デモテープで私がラララって歌っているのを聴いていると楽しいと言っていただけて、嬉しかったです。
── 音源でももちろんその歌声は心の深くまで浸透してきますが、その歌がライブではさらに儚くも美しいエモーショナルなものになって伝わってきます。
薬師丸:皆さんの前で歌うことで歌が成長していくと思っています。 レコーディングの時は、新しい歌に取り組むという事でイメージも一つに集中している感じがあります。 でも演じるという仕事をずっとやらせていただいてきて、何かを表現したいという気持ちがお客様の前に出るとより強くなるのだと思います。 何か伝えたい、聴いてほしいという思いが、おっしゃっていただけたように自分の歌をよりエモーショナルにしていくのではないでしょうか。
── 武部さんは薬師丸さんの声を“鈴を転がすような声”と表現していますが、薬師丸さんは武部さんが作る音、アレンジにどんな印象を持っていますか?
薬師丸:ポップでそしてすごく温かみを感じます。 例えば少しファンタジーの要素がある曲は、その世界の中でさらに想像力を刺激してくれるというか。 そこにスキップするという歌詞がなくても、スキップしている姿が想像できたり、部屋で本を広げているシーンがあったとしたら、そこには書いていないけどコーヒーまで飲んでる絵が浮かんできたり、歌詞にないところの余白というか、行間にあるものを想像させてくれるんです。 どの曲もきれいな映像が浮かんできて、ポップでそしてとても温かみを感じます。
武部:僕は音楽を作っていく上で、一番大事なことは景色を描くことだと思っていて。やっぱりアレンジって、どういう情景や映像や絵を描くかということが役割として大きいと思います。 テクニカルなことよりも、聴いてくださった方はそこに漂う“ムード”に、ぐっときたり、泣けたり、元気をもらえたりするのではないでしょうか。
薬師丸:今もコンサートで武部さんがアレンジしてくださった曲と触れ合うことが多くて、例えば10代、20代の時の曲を歌っていても、自分があの歌の世界の主人公になれるというか、 その世界に引き戻してくれるというか、とにかく居心地がいいアレンジなんです。
初のフルオーケストラコンサートへの想い
── 今回初のフルオーケストラコンサートということが少し意外ですが、最初にこの企画を聞いた時はどう受け止めましたか?
薬師丸:今までコンサートの中で、オーケストラの皆さんとご一緒させていただいたことは何度かありましたが、全編フルオーケストラでのコンサートは初めてです。 これまでも、今回のような企画をやりませんかとお誘いしていただいたことはあったのですが、やはりハードルが高いものというイメージがあったので、なかなか一歩を踏み出すことができませんでした。 でも今回は武部さんがプロデュースをしてくださるので心強いです。武部さんとはこれまで色々な曲でご一緒させていただいて、その曲達がオーケストラサウンドによって新たな命を吹き込まれるのが楽しみです。
── 2月に『SONGS』(NHK)でフルオーケストラをバックに「探偵物語」「Woman “Wの悲劇”より」「きみとわたしのうた」を披露し、話題になりました。僕も観ていて歌とサウンドに本当に感動しました。
薬師丸:あの時は、今回のコンサートでも指揮・編曲を手がけてくださる岩城直也さんのオーケストアレンジで「探偵物語」を歌わせていただきましたが、もう出だしから新鮮で、こんなに世界観が変わるんだと驚きました。 歌い始めて40年以上経って、今またこの曲の新しい顔に出会える幸せを噛みしめました。 「Woman~」も松任谷正隆さんがオーケストラ用にアレンジしてくださって、2番の大サビに入っていくところは、本当にオーケストラならではの壮大さが気持ちよかったです。
── そしてあの時ピアノを弾いていたのが武部さんでした。武部さんは今回のお話を聞いた時は、まずどんなコンサートにしたいと思いましたか?
武部:今まで音楽番組などで、僕のピアノとストリングスという編成で、薬師丸さんに歌っていただいたことは何度かありましたが、その声質とクラシックな楽器とのマッチングがよくて、オーケストラとも親和性は高いと思っていました。 でもオーケストラって個の集まりだけど、人数と音の圧に圧倒されてしまうあの感覚は、僕も怖い時があるぐらいなんです。だから今回が初めての薬師丸さんはもっと怖いと感じているはずと思って、あの圧に負けないためにはどうすればいいのかを考え、若手中心のオーケストラでやるのはどうだろうって思いました。 それで今注目を集めている若手音楽家の岩城直也君に指揮と編曲をお願いしました。フレッシュさを感じる岩城君のオーケストラが、曲に新しい息吹を加えてくれると思いました。
── 岩城さんは昨年行われた武部さんの45周年記念コンサートでオーケストラ編曲と指揮を手がけられています。
武部:そうなんです。その時の気持ちよさが頭と心にすごく残っていて。 薬師丸さんの曲って、筒美京平さんや井上陽水さん、ユーミン、大滝詠一さん、松本隆さんをはじめ、日本のポップスシーンを代表する作家陣が作った、 まさに“横綱クラス”の名曲がたくさんあるので、そういう曲を若手の演奏家のみなさんとコラボすることで、キラキラした新しい色彩を加え、皆さんにお届けしたいというのが最初に考えたことです。
── “ベストオブ薬師丸ひろ子”的なセットリストになりそうですね。
武部:薬師丸さんは、今も全曲オリジナルキーで歌えるし、今はもっと高いところまで声が出ています。 その歌声はキャリア40年を超えてもまだ進化していて、少し前に、薬師丸さんのコンサートを東京国際フォーラムホールAで観たのですが、声と歌の力で満員のお客さんからスタンディングオベーションを勝ち取るのを目の当たりにして、 本当にすごいと思いました。今回のコンサートでもその歌を存分に楽しんでほしいですし、楽曲の彩りがどう変わっているか楽しみにしていただきたいです。
── 80年代からのお付き合いのお二人ですが、武部さんはこれまで薬師丸さんの作品を27曲アレンジしています。武部さんがアレンジした曲はもちろんですが、個人的にどの曲が一番好きですか?
武部:自分がアレンジしたものの中ではやっぱり「あなたを・もっと・知りたくて」は特別な存在で、筒美京平さんと松本隆さんという、当時のゴールデンコンビが一切手を抜くことなく本気で取り組んでいる珠玉のメロディだと思います。 そんな曲をアレンジさせていただけたことはアレンジャー冥利に尽きますし、アレンジャー人生の中でもすごく大切な楽曲です。 確か1985年5月にレコーディングをしたのですが、今でも覚えていますが、それが自分の結婚式の前日だったので、独身最後のアレンジ曲としても一生忘れないと思います(笑)。もう一曲は「Woman~」(アレンジ:松任谷正隆)です。 ユーミンが「他の人に提供した曲の中でベスト1」と公言している曲で、松本隆さんの歌詞とユーミンが書いたあのメロディを薬師丸さんが歌ったことで、大きな化学反応が起こって、松本さんもユーミンも想像していなかった世界ができあがった奇跡的な曲だと思います。
── 今回のコンサートでは初めて東京文化会館のステージに立ちます。
薬師丸:クラシックの殿堂と言われている素晴らしいホールで歌えるなんて、光栄です。なかなかクラシックコンサートに足を運ぶ機会がないという方も多いと思います。 いきなり東京文化会館というのは緊張感があるかもしれませんが、私も緊張しています(笑)。でも滅多にない機会なので、客席の皆さんと一緒に楽しみたいと思います。
武部:僕が久々に薬師丸さんのコンサートの音楽監督をやらせていただいたのが、35周年の時(2013年)で、今回もお世話になるオーチャードホールでのステージのことをすごく覚えていて。 ステージ上でピアノを弾きながら、薬師丸さんが「セーラー服と機関銃」を歌っているのを聴いたときに、もう震えるほど感動したことがすごく記憶に残っていて、またその思い出の場所でできるのが嬉しいです。
薬師丸:私の曲はもちろん全てリズム隊が入っていて、そちらの方がいいと思う方もいるかもしれませんが、今回武部さんと岩城さんの力をお借りして、オーケストラサウンドになった時、 今まで歌ってきた曲達に新鮮な空気が送り込まれ、新しい世界が生まれると思います。楽しみにしていてください。
公演情報
【billboard classics 「薬師丸ひろ子 Premium Orchestra Concert」 〜 produced by 武部聡志】
2024年6月11日(火) 東京・東京文化会館 大ホールOPEN 17:30 / START18:30
2024年6月18日(火) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2024年6月30日(日) 東京・Bunkamuraオーチャードホール
OPEN 16:00 / START 17:00
出演:薬師丸ひろ子
ピアノ:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
管弦楽:
【東京】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)
【兵庫】NIPO×大阪交響楽団
チケット:
全席指定12,000円(税込)
※未就学児入場不可
チケット販売スケジュール:
一般発売(先着)
2024年4月28日(日)10:00 ~
公演公式サイト:https://billboard-cc.com/yakushimaruXtakebe
公演に関するお問合せ:
【東京】キョードー東京 0570-550-799(平日 11:00〜18:00/土日祝 10:00〜18:00)
【兵庫】キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休)
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