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<インタビュー>GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ「幼馴染み感がある」盟友対談公開! 稀有な関係性やコラボ作『ニュアンスで伝えて』について語る



<インタビュー>GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ「幼馴染み感がある」盟友対談公開! 稀有な関係性やコラボ作『ニュアンスで伝えて』について語る

 GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ。実は長い付き合いとなる「幼馴染み感がある」盟友同士であるこの2組が『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』にて初の音源コラボレーションを実現した。心地良いシティポップサウンドと“自分らしさ”をそっと後押ししてくれる歌詞に、春から初夏にかけての潤いを感じるこの1曲が完成するまでのストーリーに加え、双方の魅力や個性を掘り下げながら、その稀有な関係性についても和気藹々と語ってもらった。ぜひご覧頂きたい。

<参加メンバー>

・GOOD BYE APRIL
倉品翔(vo,g,key)
吉田卓史(g)
延本文音 (b)
つのけん(dr)

・ヒグチアイ

<インタビュー>GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ「幼馴染み感がある」盟友対談公開! 稀有な関係性やコラボ作『ニュアンスで伝えて』について語る

▲左から:吉田卓史/延本文音/ヒグチアイ/倉品翔/つのけん

Interviewer:平賀哲雄|Photo:白井絢香

GOOD BYE APRIL×ヒグチアイの出逢い「私がナンパしたんだよ!」

--今回『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』でコラボレーションを実現したこの2組。まずはいつどのようにして出逢ったのか、教えてもらえますか?

ヒグチアイ:えーっと……遠征?

延本文音:私がナンパしたんだよ!

一同:(笑)

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▲左から:延本文音/倉品翔/ヒグチアイ

延本文音:アイちゃんと倉品ともう1組仲良いアーティストの弾き語りスリーマンライブがあって、私は遊びに行っていて。そこで初めてアイちゃんのライブを観て「同じ歳だと思えないぐらい説得力があるな。凄いなぁ」と思って。たぶん、まだ21歳ぐらいだったと思うんですけど。で、私、人見知りなんですけど、話しかけたんですよね。それで知り合いになって、そのあとバンドでアイちゃんと対バンを重ねていくようになったんです。

倉品翔:MAPLE HOUSE?(※学芸大学のライブハウス)

延本文音:そう!

ヒグチアイ:なつかし~!

倉品翔:どうやら過去に10回ほど対バンさせて頂いているらしい。

ヒグチアイ:うそ? やりすぎじゃない?

一同:(笑)

延本文音:定番のライブばっかりじゃなくてさ、長野の駒ヶ根のフェスで一緒になって、大雨の中でそれぞれライブしたこともあったよね。雨が降りすぎてさ、お客さんが3人ぐらいしかいなくて「何に向かってライブしているんだろう?」みたいな(笑)。

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▲延本文音

ヒグチアイ:10000人ぐらい入るところだったのに。ゆるキャラが全員屋根の下に入っていったりしてたよね?

延本文音:そうそう(笑)! で、寒すぎて風呂入って帰ったよね?

吉田卓史:あ、そうや! 風呂入った!

つのけん:ペンションみたいなところで飯食ったよね?

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▲左から:つのけん/吉田卓史

ヒグチアイ:ごはんも食べた。量が凄く多くなかったっけ?

倉品翔:多かった! ソースカツ丼とか食べた!

ヒグチアイ:あれって一緒に行ったんだよね。車で連れて行ってもらったんだよね?

延本文音:そう!

倉品翔:それが2015年ぐらいの話で。どうやら2013年の時点で僕らの企画ライブにお誘いしていて、そのあともライブを重ねているので、もう10年以上の付き合いになるんですよ。

ヒグチアイ:長いですね。

--吉田さんは出逢った頃のヒグチさんに対してどんな印象を抱いていましたか?

吉田卓史:そもそも僕がしっかりしていない人なので(笑)、こんなにしっかり芯のあるアーティストがいるんだなって。格好良い印象でしたね。「誰もこの人のマネはできへんな」感が凄かった。強いイメージ。

ヒグチアイ:恥ずかしい……

吉田卓史:俺もこんなん言うの恥ずかしいわ(笑)。

ヒグチアイ:こういう話をしたことないもんね。

吉田卓史:たしかにないね。

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▲ヒグチアイ

ヒグチアイ:(吉田は)街で見かける人でしかなかった(笑)。

吉田卓史:近所にたまたま住んでいた時期があったんですよ(笑)。あと、レコーディングのときに「私が歌っているときにどうせ喋ってたんでしょ?」みたいな。

ヒグチアイ:そうそう。「どうせ聴いてもないんでしょ」みたいな。

一同:(笑)

吉田卓史:それぐらいの感じの会話しかしてきてないんで(笑)。

延本文音:あんまりマジメな話をする機会ないもんね。

吉田卓史:だから、めっちゃ照れる!

ヒグチアイ:それぐらい幼馴染み感がある。

--ヒグチさんは、出逢った頃のGOOD BYE APRILにどんな印象を持たれていたんですか?

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▲GOOD BYE APRIL(左から:つのけん/吉田卓史/延本文音/倉品翔)

ヒグチアイ:「みんな、仲良くていいなぁ」って。自分はバンドという道を選べなかった人なので、それぞれに考えていることはあるんだろうけど、みんなでおんなじ方向を向いておんなじ音楽をやっている。それって凄いことだなって。あと、バンドって「あのバンドのベースの人、ギターの人」みたいな感じで、なかなかバンド名以外憶えられないんですけど、GOOD BYE APRILは唯一全員の名前を知ってるバンド。ちなみに、私、16年ぐらい音楽をやっているんですけど、他の人たちとはあんまり仲良くなれなかったんです。

一同:(笑)

--では、GOOD BYE APRILは希少な音楽仲間なんですね。

ヒグチアイ:なぜ仲良くしてくれているのか分からないんですけど。

吉田卓史:逆にこっちが知りたい(笑)。

--なんでこんなに仲良くなれたんですかね?

延本文音:まずアイちゃんの音楽がすごく好きなんですよ。それスタートですね、やっぱり。ミュージシャン同士が仲良くなるケースってよっぽど波長が合いまくるか「音楽が好きだから」っていう理由しかないと思うんですけど、私もアイちゃんのライブを観てすごく感動したからナンパしたわけで。人見知りなのに。

倉品翔:僕らも陰キャバンドなんで、全然友達がいないんですよ。

ヒグチアイ:うそじゃん!

倉品翔:いや、ほんとほんと。

ヒグチアイ:ライブの感じから見たら全然うそじゃん。

吉田卓史:でも、打ち上げはめっちゃ苦手(笑)!

つのけん:大体、端っこにいるよね。

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▲つのけん

延本文音:この4人が仲良いから、楽屋でもまわりがオシャレなバンドとか売れてるバンドとかになってくると、4人で固まっちゃうんだよね。だから、打ち上げも4人でずっと呑んでる(笑)。

倉品翔:そういうバンドなので、やっぱり音楽ありきじゃないと仲良くなれなくて。で、僕らは「歌モノバンドであろう」という意識が最初からあったんで、シンガーソングライターの方とライブで一緒になる機会が多かったんですよ。その中でアイちゃんの音楽を好きになったから仲良くなれたんじゃないかなと。

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「音楽の為に尽くす」という共通認識がある

--陰キャと仰っていましたけど、そんな4人がどうして仲良くなれたんですか?

ヒグチアイ:たしかに。

延本文音:ウチらは同級生で組んだバンドとかじゃないんですよ。EMIミュージックの育成バンドとして私と倉品は違うバンドで元々所属していて。それが同時期に解散して、そこの人に「延ちゃん面白いから上京しなよ」と言われて、それから音楽をする為に集まったのがこの4人なんですよね。だから最初は「音楽の為に頑張る」って割り切って活動していたんですけど、やっているうちに人間的にもお互いの踏み入れちゃいけないところとか分かるようになって、あんまりプライベートに首突っ込み過ぎないし、そんな感じで10年ぐらい経ったら程好い距離感になったみたいな。家族っぽいけど、友達でもない。バンド仲間としてすごく良い関係が築けていった。だから仲が良いのかも。

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▲左から:延本文音/倉品翔

つのけん:波長がすごく合うんですよね。遠征のときの車の中とかめちゃくちゃうるさいですし、しょうもないことで4人とも笑ってますし、どんどん良い関係性になれている感じがしますね。

倉品翔:元々はちょっとずつ違うところがあったと思うんですけど、4人とも我が強いタイプじゃなかったから、それぞれがちょっとずつ歩み寄れたというか。そうすると、だんだん感覚とかも共有できていって、今となってはみんなが何を考えてるか大体分かり合えるようになっている。なので、相性が良かったんでしょうね。

延本文音:ウチら遠征のこと「旅行」って言ってるもんね(笑)。

--良いバンドですね(笑)。

ヒグチアイ:うらやましい。

吉田卓史:年々、IQが下がっていってるだけです(笑)。

ヒグチアイ:絶対たのしいじゃん! 良いなぁ。

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▲左から:つのけん/吉田卓史/延本文音/倉品翔/ヒグチアイ

--ヒグチさんは音楽活動をしている中で「バンド組みたい」と思ったことってあるんですか?

ヒグチアイ:あります。でも、無理ですね。

--その理由は?

ヒグチアイ:人間性が。

一同:(笑)

ヒグチアイ:バンドをやっている人たちに対しては、まずバンドが出来ている時点で自分より上だと思っているんで。

延本文音:いやいやいや!

ヒグチアイ:本当に尊敬してる。バンドをやっているってことはちゃんと相手の話も聞くし、でも自分の意見もちゃんと大事にしているし、それをみんなが尊重し合っているわけじゃないですか。……私にはちょっと無理です。GOOD BYE APRILは今話していたような偶然が重なって、それで一緒に組んで、いろいろあったけど、今とても良い関係性になれている。時間の積み重ねがあったからこうなれたわけですよね。……来世でバンドします。

一同:(笑)

延本文音:私、音楽をやる前にずっと絵を描いていたから絵描きになりたかったんですけど、中学生ぐらいのときに無理だと思ったんですよ。絵描きってひとりで名前を背負って、ひとりでやり続ける仕事じゃないですか。だから、自分が詰まったら終わり。それは私には無理だなって。なので、私からしたらシンガーソングライターとか俳優とかソロで活動している人のほうが凄いなって。

倉品翔:めっちゃ分かる。

延本文音:バンドは困ったら誰かに任せられたりするじゃないですか。

ヒグチアイ:例えば、自分が詰まって誰かに任せるじゃん? で、その人がやってくれるとするじゃん? そのときに「私がやりたかったのにな」って思っちゃうタイプなの。

延本文音:あー、なるほどねぇ!

ヒグチアイ:それで「ありがとう!」ってなれることがまず凄いと思うんだよね。だから、人として尊敬しています。

延本文音:いやいや、逆も然り。すごく尊敬してる。格好良いよ。

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▲左から:吉田卓史/延本文音/ヒグチアイ/倉品翔/つのけん

--先程、GOOD BYE APRIL以外の人たちとはあんまり仲良くなれなかったと仰っていましたけど、その理由って分かります?

ヒグチアイ:もちろん「良いな」と思う人たちもいたんですけど、20代前半のときは自分も尖っていましたし、相手も尖っていたし。すごく好きだけど、完全に重なることはないなと思っていたんです。ただ、私みたいな音楽をやっている人がいたとしたら、それはそれで好きにはなれなかったと思うんですよね。そんな中でGOOD BYE APRILはすごく好きなんですけど、ライバルになることはない。そこがすごく安心できたところだったんですよ。

倉品翔:それこそ逆も然りです。

--本当に奇跡みたいな出逢いだったんですね。

ヒグチアイ:いや、本当に。今、出逢っていたとしてもここまで仲良くはなれなかっただろうし。年齢を重ねちゃっているから。でも「どういう風に先を見ていこう?」と思っていた時期に出逢えたことがすごく良かったんだろうなって思います。

--そんなGOOD BYE APRILとヒグチアイの共通点としては、どちらも音楽活動の幅が広いなと感じていまして。まずGOOD BYE APRILは4人それぞれに幾多数多のアーティストの楽曲制作やサポート業もやられているじゃないですか。

延本文音:それはそうせざる得ない状況があったからというか(笑)。自分から仕事を獲りに行ったというよりも、有難いことに各所からそういうお話が来て引っ張ってもらえたんですよね。私はアクセサリーのハンドメイドもやっているんですけど、それも「バイトしたくない。朝から出勤したくない」という強い気持ちから始めていて。

一同:(笑)

延本文音:なので、そうせざる得ない状況からバンド以外のお仕事は生まれているケースが多いかもしれない。

倉品翔:あと、このバンドの基本的なスタンスとして「音楽の為に尽くす」というコンセンサスがあって。それってある意味ドライな捉え方でもあると思うんですけど。僕のことで言うと、自分の声で歌う必然性がある曲はこのバンドでやるけど、別にそうじゃない曲が出来ちゃったら、誰かに提供したほうがいいなと思うんです。それは曲の求めていることに全部応えたいからなんですよね。という共通認識がある。それぞれのプレイもそうかもしれないですけど、自分のプレイが別の音楽で活きる機会があるなら、それはGOOD BYE APRIL以外の場所でプレイする。そういう気持ちで4人とも活動しているんだと思います。

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▲倉品翔

--その姿勢がシアターブルックみたいなバンドだなと思いました。メンバーそれぞれ錚々たるアーティストのサポートをやりながら、4人揃うと凄いライブをやる。そういうバンドってGOOD BYE APRILの世代では珍しいですよね。

倉品翔:そこまで凄いことはやれていないですけどね(笑)。でも、昔、はっぴいえんどが岡林信康さんのバックバンドをやっていたり、安全地帯が井上陽水さんのバックバンドをやっていたり、ああいう形ってバンドとして格好良いと思っているんですよ。「そうありたいね」みたいな話はずっとしていました。

--ボズ・スキャッグスに対するTOTOじゃないですけど、気付いたらバックバンドもスターになっていたみたいな。

倉品翔:そうです、そうです!

延本文音:そうなれたら格好良いよね。

--そして、ヒグチさんはシンガーソングライターとして自分自身のパーソナルな曲を歌いながら、様々なドラマや映画、アニメなどのテーマ曲も手掛けられています。

ヒグチアイ:自分のパーソナルみたいなものって出てこなくなるときがあるんですよ、16年も続けていると。最初の頃は、今日ムカつくことがあって、明日また違うムカつくことがあって、ずっとイライラしていたからそれを曲に昇華してこれたんですけど。でも、歳を重ねる中でだんだん落ち着いてきて、自分の気持ちをひとつ書いたら、それが次に出てくるのは半年後みたいな感じになる。要するに、自分の気持ちだけでは書けなくなってくるんですよね。そういうときにタイアップとかあると、誰かが0から1を創ってくれているというか、「絶対にこれは素晴らしい」と思って創っている何かがあって、そこから膨らませて曲を創っていけるから嬉しいんです。なので、別軸として楽しくやらせて頂いています。

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シティポップの流れが来たとき「GOOD BYE APRIL、やったね!」

--そうして創った楽曲のひとつ、TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part2』エンディングテーマ「悪魔の子」は世界規模の大ヒットナンバーとなりました。あの状況はどのように受け止めていたんですか?

ヒグチアイ:それに対しては、1回おかしくなりましたね(笑)。

延本文音:そうなの?

ヒグチアイ:私、長女だから責任感が強いんですよ。「ちゃんとやらなきゃいけない」みたいな気持ちが強くて。だから「これだけ聴かれているんだから、それに相応しいアーティストでいなきゃいけない」という想いがすごく強くなっちゃって。特にライブとか人前に出るときに。で、それがすごくイヤになっちゃって「ライブもやりたくないし、人前にも出ていきたくない」と。でも、それでもライブをしていく中で「目の前にいるお客さんが満足してくれれば良いんだな」と再確認することができて。無料で私の音楽を聴いている物凄い数の人たちよりも、お金と時間をかけてライブに来てくれている人たちを大事にすればいいんだなと思えるようになったんです。

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▲ヒグチアイ

延本文音:そうだったんだ。私もライブやりたくなくなったことある。コロナ禍明けのライブで、人前に出ることが久しぶりすぎて、30分間ずっと緊張でアガり続けていて。そのあとの久しぶりのワンマンライブもずっとアガり続けていたんですよ。しかもそれがコロナ禍にリリースしたフルアルバムを携えてのライブだったんで、初めてライブ演奏する曲もたくさんあったんです。それも相まってテンパっちゃって。まわりの人たちは「すごく良いライブだった」って言ってくれたんですけど、自分的には全然納得いかないし、ステージが怖くなっちゃって。あの時期はヤバかったですね。ライブにベース持っていくの忘れたし。

一同:(笑)

倉品翔:僕もライブが苦手だった時期はあったんですよ、20代前半の頃に。バンドを始めちゃったことを後悔していて。人間的にフロントマンが向いてなさすぎて(笑)。そもそも全然目立ちたがり屋じゃないし、メンバーを引っ張っていくメンタリティでもないので、こんな感じの奴が真ん中にいたら対バンに出ても勝てるわけがないんですよね。

延本文音:「手、挙げろ!」って言えなかったんもんね(笑)。

倉品翔:だからライブも当然盛り上がらないし、どうしても自信なさげになっちゃうから「なんでバンド始めちゃったんだろう」と思っていたんです。でも、自分が言い出しっぺだから何とかするしかなくて。

ヒグチアイ:でも、その時期の対バンで「負けた」と思っていたとしても、あそこが勝ち負けじゃなかったなと後々思うことっていっぱいあるよね。

倉品翔:たしかに、今となっちゃね。

ヒグチアイ:あの時期のバンドとか、私のまわりのシンガーソングライターとかの「勝った」って全然そのあとに繋がってないから、あのときの自分がそこに寄せなくて良かったなってすごく思う。そういう意味でも、GOOD BYE APRILが独自路線を突き進んでいったのはすごく良かったと思うよ。

倉品翔:諦めなくてよかった。

延本文音:当時はロックバンド全盛期というか、【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】に出ることが全バンドの目標になっているような時代だったんですよ。でも、ウチらはそれに染まれず、ライブハウスの人たちも私たちをどう扱っていいか分からなくて、それでだんだん呼ばれなくなったりしたけど……寄せられなかったね。「手、挙げろ!」も言えないし、もし言うとしたら「もし挙げたいのであれば、挙げて頂いても構いません」みたいなバンドだったので(笑)。それをちゃんとやってるバンドはバンドで格好良いんですけどね、どうしても出来なかった。

倉品翔:単純に似合わないことは出来ない。

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▲左から:吉田卓史/延本文音/ヒグチアイ/倉品翔/つのけん

--ということは、時代が次第にこっちを向いてくれたことによって、今のGOOD BYE APRILの良い状況があるわけですね?

倉品翔:それはめっちゃあります。

延本文音:感謝してますね、シティポップブームに。

倉品翔:僕らに関してはそういうシーンとかブームにハナから興味もなかったし、ハマったことも1回もなかったし、とにかく浮き続けていたので。どこに入っても異物っぽかったというか。でも、近年のシティポップのリバイバルブームで初めて「ちょっと居場所できたかも」と思えたんですよね。

延本文音:それをずっとやってきていた自負があって。AOR、ニューミュージック……シティポップって名乗る感じではなかったんですけど、しっかりその時代のオタクだったんで、そのブームが来たときに「誰よりも深堀りできる!」と思ったんですよ。ブームに乗っかってサウンドを真似している人たちもいるじゃないですか。それは悪いことじゃないんですけど、私たちはシティポップブームのガチヲタ勢として一戦を交えることが出来たんですよね。

--GOOD BYE APRILはその音楽が血となり、肉となっているわけですもんね。

延本文音:そうです。「こっちはそれをずっとやってきてるんだ!」みたいな。本気で好きだからこそ、私たちの場合はやりたいことを曲げたり、無理しなくても、シティポップブームにちゃんとした乗り方が出来るというか、楽しく乗ることが出来たんですよ。むしろ、私たちにとってはやりたいことをやりやすい状況になった感じなんです。

倉品翔:しかもアプローチの角度も、サウンドとかファッショナブルなところだけじゃなくて、初期から「歌が大事」と思って活動してきていたから、だからアイちゃんともシンパシーを感じ合えたと思うんですけど、そっち側からシティポップやジャパニーズの70's、80'sの音楽を好きで表現してきたから、他とちょっと違うんですよね。だから、自分たちなりの乗り方が出来ているのかなって思います。

延本文音:めっちゃマジメ。私たち、この手の話になるとめっちゃ早口になる(笑)。

ヒグチアイ:「すっごい自信あるんだな」ということが見ていて分かるから、私もうれしい。

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▲GOOD BYE APRIL(左から:つのけん/吉田卓史/延本文音/倉品翔)

--ヒグチさんは、時代やブームへの乗り方みたいなことって考えたことはありますか?

ヒグチアイ:全然ないです。「まったく私の時代は来てないな」って思ってる(笑)。女性シンガーソングライターが流行り出した時代ぐらいに私もシンガーソングライターをやり始めたんですけど……

--ギタ女ブームとかの時期ですかね?

ヒグチアイ:それはもうちょっとあとなんですけど、でもその流れにもまったく乗れてなかったし、まったく違う音楽だったんで……40年後ぐらいに期待しています。

一同:(笑)

ヒグチアイ:でも、シティポップの流れが来たときは「GOOD BYE APRIL、やったね!」って思いました。そんなブームが来るって誰も分からない中でそれを続けてきたわけですから。

倉品翔:ラッキーでした。

延本文音:「よく耐えたなぁ」って思う。

ヒグチアイ:そうだよね。でも、ブームが来なかったとしてもやり続けるじゃん。

延本文音:そうね! 来なかったとしてもやってたね。

ヒグチアイ:それがすごく分かるから、なんかすごく嬉しかった。

吉田卓史:やってることはずっと変わってないからね。ブームに乗ろうと思って乗ってないから、はしゃぐ感じでもないし。でも、シティポップ関連のイベントとかよく呼んでもらえるようになったし、ずっとやってきた音楽がこうやって受け入れられることによって、これからも好きな音楽をどんどんやっていけるわけで、それは嬉しいですね。

つのけん:昔から「音楽の為に全力を尽くす」ということを続けてきているので、これからもそれをずっと続けていけたらと思ってます。

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▲つのけん

--つのけんさんは、MR.BIGのパット・トーピーが大好きじゃないですか。シティポップのようにまたハードロックが流行って、MR.BIG的なプレイが出来るようになったらいいなと思ったりします?

つのけん:実はそれを以前やってるんですよ! アルバム『ニューフォークロア』の「ターナー」って曲があるんですけど、あれはMR.BIGの「テイク・カバー」を丸々オマージュしてドラム叩いてるんです。スネアもパット・トーピーモデルを使ったりしていて。そういう自分の「好き」をどれだけこのバンドに落とし込めるかというチャレンジは、毎回いろんな形でやれているので。今後またバカテクの曲をやれる可能性もありますし、フュージョンチックなアプローチも出来たりするかもしれないし。

--実は親和性ありますもんね。

つのけん:そうなんですよ。AORを聴いているとフュージョンの要素もあったりするんで。このバンドは根本的に変わらない音楽を続けているので、そこにどんどん各々の「好き」を詰め込んで、良いものが創れたらなと思っています。

--ちなみに、過去10回ほど対バンしていたり、倉品さんとヒグチさんは地元が一緒ということもあって一緒に曲を書いたこともあったそうですが、この2組の仲の良さはお互いのファンも知っているんですか? それとも意外な組み合わせと思う人たちもいるんですかね?

延本文音:当時は共通のお客さんが結構多かったんですけど、最近のお客さんは「え?」って思うかもしれない。

倉品翔:僕らは2020年あたりからサウンドがガラッと変わっていたりして、そこから新しく知って下さった方々からすると、もしかしたら意外だったかもしれないです。

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コラボ実現の理由「アイちゃんの声が脳内再生されていた」

--では、なおさら聴いてほしいですね。5月1日より配信リリースされる『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』。このコラボはどういう流れで実現に至ったのでしょう?

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▲GOOD BYE APRIL『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』

倉品翔:「春に次のシングルをリリースしよう」ということで、その中でなんとなくデュエットソングというアイデアも出ていたので、そういう着想で春に似合う曲のデモを創ったんです。で、延本の歌詞を乗せた段階でアイちゃんの声が脳内再生されちゃっていたんですよ。それで「お願いしたら歌ってくれるのかな?」と思ってアイちゃんに連絡したら「やりたい」「マジすか?」みたいな。よく一緒にライブをやっていたのが5,6年以上前なので、そこからはそれぞれの道を歩んでいたから、まさかこのタイミングに作品でご一緒できるというのは自分たちもビックリだったんですけど。でも、本当に曲に呼ばれたんですよね。

延本文音:デュエットソングというアイデアが出て、メロディーも出来ていたんですけど、最初はデュエット相手が決まってから歌詞を書こうと思っていたんです。で、私たちのジャンルで言ったらシティポップ系やソウル系のシンガーが良いのかなと思っていたんですけど、なんか決め手がなくて。それで「時間もアレだから先に歌詞書いちゃおう」と思って書き上げたときに「これはアイちゃんじゃない?」って。

--どんなところにヒグチアイを感じたんですか?

延本文音:私は困ったことがあったらアイちゃんに相談したくなっちゃうんですけど、アイちゃんのアドバイスって偉そうに聞こえないんですよ。母性を感じるというか。アイちゃんが今シンガーソングライターとして支持されているのも、そういうところだと思うんですよね。達観していることを歌っていても、同じ目線に感じる。説教くさくないんですよ、アイちゃんの言葉って。でも、決して甘い励ましや当たり障りのないアドバイスでもなくて。叱られているような気もするし、慰めてもらっているような気もする。すごく力強いんだけど、すごく優しい。そういう正反対のものを一緒に持っている人。で、この歌詞を歌う人はそういう人じゃなきゃいけない気がしたんですよね。

--それってGOOD BYE APRILだから叩き出せた最適解ですよね。他の人たちだったら「この曲調にヒグチアイを」って思わないじゃないですか。この関係性があったからこその最適解。

倉品翔:そうかもしれないですね。これまでいろんな曲調のシティポップを創ってきたんですけど、今回の曲は僕らの新しいチャレンジなんですよ。ネオソウルっぽい感じだったり。で、サビは弾き語りで創ったんですよね。純粋に弾き語りで歌ったときに「良い歌だな」と思えるメロディーにしなきゃダメだと思っていたので。そういう曲だからこそ、アイちゃんの歌声にもちゃんとリンクできたのかもしれない。アレンジの側だけで言うと、直接的には結び付かないかもしれないけど、歌詞やサビのメロディーという根幹の部分がちゃんとマッチしたからこそ、アイちゃんに歌ってもらえたのかなって思います。

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▲左から:吉田卓史/延本文音/ヒグチアイ/倉品翔/つのけん

--その曲と歌詞を受け取ったときは、どんな印象を持たれましたか?

ヒグチアイ:デュエットみたいな曲と聞いていたから「恋愛の曲とか来るのかな?」と思っていて。「倉品くんとかぁ……」と思ったんですけど(笑)。

--そこは良いじゃないですか(笑)。

ヒグチアイ:でも、実際に歌詞を読んでみたら全然違って。「そりゃそうだよね、私が間違ってた!」と思ったんですけど、同時に「この歌詞をヒグチアイに歌ってほしいと思ってくれたのか。分かるなぁ」と思って。ただ、曲を聴いたときは「このリズムの曲は歌えないかも?」って(笑)。こういうノリを今までやったことがなくて、自分の体にまったく流れてないリズムだったんですよ。あと、私の勝手なイメージだと、こういう曲調のフィーチャリングで入ってくる人って声に特徴があり過ぎないというか、結構サラッと歌う感じだと思っていたので、私がそういう風に歌えばいいのか。一体どうやって歌えばいいのか、すごく悩みながらレコーディングには挑みました。なので、すごく嬉しいのと、不安なのと、両方の気持ちがありましたね。

--結果、どのような流れでこの歌い方に落とし込んでいったんですか?

ヒグチアイ:実際に歌って「どっちのほうがいいか」みたいな話をして決めてもらったんですけど……

延本文音:最初は控えめに歌ってくれたんですよ。

ヒグチアイ:私のイメージのフィーチャリング。

一同:(笑)

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▲左から:つのけん/吉田卓史/延本文音/倉品翔/ヒグチアイ

延本文音:でも、アイちゃんもだんだん自我が出てきて(笑)。そっちのほうが良かったので、最終的にはいつものヒグチアイみたいな感じで歌ってくれて、それが本当にベストバランスだったんです。

倉品翔:アイちゃんの中ではもっと自分節で行こうと思えば行けるところもあったのかもしれないんですけど、そこは絶妙なバランスで仕上げてくれて。このビートにも乗ってくれたし、でもちゃんとアイちゃん節で。聴いててすごく新鮮でした。

ヒグチアイ:すごく難しいんですよ、歌い回しが。なんか……ヘンだよね?

一同:(笑)

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▲左から:延本文音/倉品翔

倉品翔:昔から言われるんですよ(笑)。

ヒグチアイ:「なんでここにこれを入れるんだろう?」みたいな。歌ってみないと、どうなってるのか分からない。

倉品翔:自分の中ではすごくポップなものを創っているつもりなんですけど、どこか捻じれちゃってるんでしょうね。メンタルが(笑)。

ヒグチアイ:それが出てる(笑)。

--でも、それが独自性に繋がっていくわけですからね。吉田さんは『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』の仕上がりにどんな印象を持たれていますか?

吉田卓史:2Aの「自分にだけ聞こえる風」が完全にヒグチアイなんですよ。昔からアイちゃんの曲を聴いてきた中で「これはアイちゃんだな!」って思ったんですよね。

ヒグチアイ:自分で言うのもアレだけど、分かる!

吉田卓史:その感じが嬉しかった。僕らの曲に全然違うクセが入っていて。サラッとして聴こえる曲かもしれないけど、そこがすごく新鮮というか。ライブでアイちゃんの曲を俺らが演奏させてもらったこともあるんですけど、そういうときにしか感じられなかったものが音源として残せたことも嬉しいんですよね。ここ、めっちゃ聴いてほしいです!

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▲吉田卓史

--そんな『ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ』、ぜひ2組揃った場で生でも聴きたいです。

倉品翔:やりたいですね!

ヒグチアイ:絶対やろうよ。

延本文音:旅行もしたいね(笑)。

--そうなってくるとツアーですね(笑)。

ヒグチアイ:私、1曲だけでいい?

一同:(笑)

ヒグチアイ:そしたら、めっちゃラク(笑)。でも、本当にこの4人とバンドやりたい。

吉田卓史:キレるかもしれへんで、車の中うるさすぎて!

ヒグチアイ:可能性あるね。私、そういうところがダメなんだよ(笑)。

--この流れで伺いたいのですが、今後この2組でまた何かやるとしたら、どんなことをしてみたいですか?

ヒグチアイ:私の曲をアレンジしてもらいたい。自分で創ったメロディーでああいうリズムには絶対ならないから。あと、GOOD BYE APRILのコーラスもすごく好きだから、みんなにコーラスも入れてもらいたい。

GOOD BYE APRIL一同:やりたい!

延本文音:あと、アイちゃんのバックバンドやりたいです。この4人で。去年もEPOさんのバックバンドをやらせてもらってすごく楽しかったんで、アイちゃんのバンドもやってみたいです!

ヒグチアイ:何曲かアレンジしてもらって、こっちがGOOD BYE APRILのライブゲストでそれがやれたらめっちゃ嬉しい。

吉田卓史:「ココロジェリーフィッシュ」とかやれたらマジヤバいよ?

延本文音:ヤバいな!

ヒグチアイ:それをアレンジしてやってもらいたいの。今、あのテンションで歌えないから。

一同:(笑)

延本文音:よし、やろう! 最近の曲もやりたいね!

ヒグチアイ:ぜひ、お願いします。

<インタビュー>GOOD BYE APRIL×ヒグチアイ「幼馴染み感がある」盟友対談公開! 稀有な関係性やコラボ作『ニュアンスで伝えて』について語る

Interviewer:平賀哲雄|Photo:白井絢香

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