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<インタビュー>Ayumu Imazu 「Obsessed」のバズを受けて広がった、アーティストとしてのビジョン

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Interview:柴 那典
Photo:Yuma Totsuka

 今年1月にリリースされたAyumu Imazuの「Obsessed」が国内外で大きな話題になっている。

 リリース前にTikTokに投稿したデモ音源が注目を集め、ダンサー/振付師のタイガ考案の振り付けがミーム化。SEVENTEENなど韓国の人気グループが続々とダンス動画を投稿し、Billboard JAPANの“Japan Songs(国別チャート)”では韓国で首位、タイで最高2位を記録するなど海外で人気を広げている。

 Ayumu Imazuは2021年にメジャーデビュー、R&Bやエレクトロなど幅広い音楽性と、作詞、作曲、アレンジに加えてコレオグラフも自ら行う高いクリエイティビティで評価を集めてきた。ブルーノ・マーズに感銘を受け14歳のときに単身渡米、現在も日本とアメリカに拠点を置いて活動するグローバルなセンスを持ったアーティストだ。

「Obsessed」の反響について、そのことでアーティストとしてのビジョンがどう広がったかについて、話を訊いた。

「今はこういう時代なんだな」という気づきがあった

――まず「Obsessed」がここまで国内外、特に韓国やアジア圏も含めて大きく広がっている状況をどんな風に感じていますか?


Ayumu Imazu:最初の1、2か月間はずっと実感がなかったです。ニューヨークにいたので、僕が寝ている時間にアジア圏ではみんな投稿する時間なので、毎朝起きて、数字が伸びているのを見て「あ、また伸びている」みたいな感じでした。

――最初にTikTokで沢山の人が投稿しているのに気付いたのはいつ頃でしたか?


Ayumu Imazu:昨年の大晦日です。SEVENTEENさんが踊ってくれて、その時に「あれ? もしかしたら?」という気持ちでした。


@seventeen17_official

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♬ Obsessed - Ayumu Imazu

――この曲はどういうきっかけで作った曲なんでしょうか。


Ayumu Imazu:「Obsessed」はリリースの1年前くらいからできていた曲です。サビのド頭の歌詞とメロディーのフレーズが道を歩いてる時にポンと出てきて。家に帰ってギターでコードをつけて、そこから進めていきました。

――最初にデモを投稿したのは去年の10月でしたよね。なので、結構なロングスパンで曲が広まったわけですが、そのあたりはどうですか?


Ayumu Imazu:デモを出したのが10月で、リリース自体が3か月後の1月末だったので、リリースまでは「リリースしてから伸びなかったらどうしよう?」みたいな不安と心配は正直あったのですが、リリースされたことによってより広がったので、それも驚きでした。「Obsessed」に関しては驚きがいっぱいあった感じですね。

――他にはどんな驚きがありましたか?


Ayumu Imazu:例えば、一発目にデモを出した時にそれが伸びたってことも驚きでした。今までデモ曲を出すというのはあんまりなかったのですが、好きな曲だったので、特に何も考えずにTikTokに乗せた動画がグッと伸びた。「みんなこういう曲が好きなんだ」と思ったというか。驚きっていうよりは「こういう感じなんだ」とか「こういう時代なんだな、今は」という気付きがあった感じでしたね。

――これまでImazuさんが作ってきた曲には、こういうチルでベッドルームポップ的な曲はあまりなかったと思うんですけど、これを作ったことで自分の曲作りの幅が広がった感じはありますか?


Ayumu Imazu:めちゃめちゃ広がったと思います。そこは「Obsessed」が伸びて良かったなと思っていて。初めて全英語詞っていうのもありますし、良い意味で力を抜いた状態で気楽に作った曲がこういう風に広がって行ってくれたので。これからの曲作りに関して、あんまり気を張らなくてもいいんじゃないかっていうのも思いましたし。あとやっぱり英語詞の大事さにも気づきましたね。全部英語詞じゃなかったらここまでの他国の広がりはなかったんじゃないかと思うし。そこも感じてますね。

――全英語詞で書こうという発想はどういうところからだったんでしょうか?


Ayumu Imazu:デモが1サビ終わりまであって、その時が全部英語詞だったので、TikTokでサビがバズってフルを作ろうってなった時も、変に日本語を入れるよりも、絶対に英語詞でいこうと思ってました。TikTokには日本語に翻訳した歌詞を入れていて、それを見て共感してくれる人も多かったので。

――最初から全英語詞で作ろうと思っていたというよりは、TikTokでバズったことを受けてそう考えたということだったんでしょうか。


Ayumu Imazu:そうですね。日本語を入れるのは自分的にもちょっとしっくりきてなかったので、英語でやる方向で行こうと思いました。

――曲調についてはどうですか? こういうタイプの曲を作ったのは、どういうイメージから?


Ayumu Imazu:メロディーと歌詞が出てきた時にすごいふんわりしている感じだなと思っていたので。トラックも今回僕が結構ベースを作って、いつも一緒に制作しているA.G.Oさんというプロデューサーの方に最後に綺麗にしてもらった感じで。自分がトラックをここまで作ったのも初めてだったので、ある意味すごく自分の色が出ている曲だなと思っています。

――こういうタイプの、ガチガチにダンサブルな曲っていうよりは、ちょっとゆるい曲っていうのは、作ってみてしっくりくる感じはありました?


Ayumu Imazu:そうですね。ゆるい感じのR&Bは個人的に好きなジャンルでもありますし、そこを作ることに関しては全然違和感がなかったので。新しいことに挑戦しているというよりは、こういった曲をシングルとしてリリースするっていうことが新しかったなって感じです。

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TikTokはより多くの人に自分の音楽を届ける場所

――「Obsessed」の曲名や歌詞のモチーフはどういうところがきっかけなんでしょうか?


Ayumu Imazu:歌詞のテーマは「人をすぐ好きになっちゃう」というもので。自分もそういった経験があるし、恋愛ソングなんだけど、あなたのことが好きとか失恋とかでもなく、みんなが感じたことあるであろう気持ちを書きたかったので、そういうところから来ました。サビでも一番いいところに「Obsessed」って入ってるので、タイトル自体もずっと「Obsessed」でしたね。

――先ほどTikTokでこれがバズっていくのを見て、「今こういう時代なんだな」と感じたと仰ってましたが、その感覚ってどういうもの?


Ayumu Imazu:やっぱり冬前だったんで。家の中で僕がフーディーをかぶって、耳にヘッドホンをつけて、魚眼レンズで、マイク持って。ああいう雰囲気がやっぱり時代にあってたんじゃないかなっていうのもすごい感じました。今は、すごくダンサブルな曲よりはどっちかというとこういった系統の音楽の方がTikTokでは伸びやすいというか。これはSNSだけの話なんですけど、たくさんの人が「この曲好きかも」みたいな気軽な感じで好きになれたのは、こういうチルっぽい曲だったからなんじゃないかなっていう風に思っています。


@ayumu_imazu みんなは何回遊んだら好きになる?👀 #obsessed #ayumuimazu #newmusic #オリジナル曲 #dtm ♬ Obsessed - Ayumu Imazu


――昨年にはライブを意識した激しい曲、ロックな曲のリリースもありました。振り幅的には「Obsessed」と対極のように思えるけれども、でもそれはイメージしている場所がライブハウスなのかTikTokなのかみたいな、そういう違いだったりもする。


Ayumu Imazu:そうですね。去年はツアーに向けて書いた曲も多かったし、ダンスを見せるような曲も多かったので、「Obsessed」はどっちかと言うとイレギュラーな感じですね。こういうTikTokからの発信がなかったらシングルリリースは多分なかったと思うので。イレギュラーだったからこそ、これからの曲作りに対する姿勢だったりも変わっていくんじゃないかなという感じがします。

――TikTokは国境を越えるプラットフォームだし、いろんな人がいろんな風に音楽を使って遊んでいる場所でもあると思うんですけど、Imazuさんにとっては、TikTokやSNSって、自分の音楽活動の中で、どんな位置づけ、どんな場所と言える感じがありますか?


Ayumu Imazu:僕的には、TikTokはより多くの人に自分の音楽を届ける場所というくらいな感じです。「この曲をTikTokでバズらせたいから次はこういう曲を作る」みたいな考えは全くなくて。でも自分が作っているような音楽を好きと思える人にちゃんとリーチできるいいプラットフォームだなって思っているので。自分が自分の音楽を発信していく場所って感じです。



Ayumu Imazu - Obsessed [Music Video]


――3月20日にリリースされた「BANDAGE」についても聞かせてください。これはドラマ『恋をするなら二度目が上等』のED主題歌として書き下ろされた曲ですが、これはどんな風に作っていったのですか。


Ayumu Imazu:この曲は、自分が今こういう曲を作りたいと思って作った楽曲です。ドラマのエンディングの話が来た時に割とすんなりできたのですが、最初は歌詞の内容がドラマの世界観と合うかなって心配してたんですけど、向こうサイドからは、今の感じがいいと言われたので、2番もそういったイメージで書きました。

――「BANDAGE」の絆創膏というキーワードはどういうところから?


Ayumu Imazu:絆創膏をモチーフにして、絆創膏を剥がすの遅らせるほど、剥がした時に痛みが増すっていうのをテーマにして。溜め込まずに、言いたいことは言おう、やりたいことはやろうみたいな、そういったエールソング的な要素が入っています。

――この曲の曲調についてはどんなイメージがありましたか?


Ayumu Imazu:面白いなと思うのが、たぶん「Obsessed」をリリースしていなかったら、「BANDAGE」はキーを上げてたんじゃないかなって思っていて。前まではサビで高い声を出さないといけないみたいな考えがあったんですけど、「Obsessed」は座りながらで歌えるくらいゆるい感じで、そういった曲が評価されたんで。「BANDAGE」に関しても、無理にキーを上げなくても、自分が歌っていて気持ちいいくらいの音域の方がいい雰囲気が出るんじゃないかというのはありましたね。

――「Obsessed」が広がったことで、何がポップなのかみたいな、その辺の感覚が若干変わった感じがあった。


Ayumu Imazu:そうですね。「Obsessed」があって、今まで持っていた「これはこうあるべきだ」とか、そういった考えが少しずつ変わってきている感じがあります。その一発目が「BANDAGE」でした。キーを上げなくてよかったなって思います。

――他にも「Obsessed」きっかけで「こういうのもアリなんだ」って思ったことってありますか?


Ayumu Imazu:あとは歌詞ですかね。無理に日本語を入れなくても英語で良いんだって思いましたし、今までは曲を作る時に色々なことを考えて調整してたんですけど、ありのままの自分が一番いいと思うものを出すことがリスナーも求めてるんじゃないかなって感じ始めてますね。

――今後も全英語詞の曲が増えてきそうな感じがある。


Ayumu Imazu:全部英語でできちゃったら全部英語でいっちゃおうかなって思っていますね。前はそこにすごく抵抗があったんですけど、今は特になくという感じです。

――言葉が伝わるかどうかということよりも、メロディーとフロウの部分での心地よさみたいなところが重要なポイントなのかなっていうことも思ったりしました。


Ayumu Imazu:そうですね。そこを一番大事にしているというか。歌詞よりも音としてフロウで聴いてみて、一番気持ちいいと思うとこに言葉をはめていく感覚なので。それはやっぱり英語のほうがやりやすかったりするし。やっぱりここは歌詞を伝えたいというときは日本語のほうが書き安かったりということもあるので、そこはバランスを取りながらって感じです。


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グローバルに活躍するアーティストに一歩踏み入れた感覚

――「Obsessed」をきっかけに自分の目指すアーティスト像が変わったような感覚はありますか?


Ayumu Imazu:それはほぼ変わっていないです。やはりグローバルに活躍したいっていうのがあるので。そこに「Obsessed」で近づけたっていうのは一番嬉しいですし、前はどうしても手に届かないところっていう感じはあったんですけど、「Obsessed」があって、やっと片足踏み入れたかなみたいな感覚です。

――自分が思い描いてたところに向かう手がかりになる1曲が手に入ったみたいな。


Ayumu Imazu:そうですね。感覚的にはそれぐらいのイメージです。これでグローバルアーティストになれるみたいな感じでもなく、やっとヒントが出てきたかなみたいな感じですかね。

――そもそもAyumu Imazuさんがグローバルに活躍するアーティストを目指すきっかけになった原体験は?


Ayumu Imazu:憧れていたアーティストがブルーノ・マーズやマイケル・ジャクソンのような男性ソロアーティストで、本場アメリカとか世界で活躍しているアーティストだったので。世界で活躍したいというのは昔からずっと自然にありました。

――日本とアメリカの両方を拠点にしていることによって、その感覚もより自分の中でナチュラルに大きくなっていったような、そういうところもあったりしますか?


Ayumu Imazu:そうですね。今はアジア人アーティストもすごく多くなってきているし、ニューヨークに住んでいるからこそ、感覚レベルですけど、その人がどこの国出身なのかもボーダレスになってきている。それはすごく良いことだと思っているし、自分もそこにすごく共感するものがあったりするので。そういった感覚はやっぱりニューヨークに住んでいるからこそ、得られるのかなって思っていますね。

――アメリカの今のポップカルチャーの動きを見ていると、自分が日本人だというアイデンティティーよりもアジア人だというアイデンティティーが強くあるような、そういう感覚もある?


Ayumu Imazu:それは間違いないです。いわゆるアメリカ人から認識されているJ-POPというジャンルももちろんあるんですけど、自分はそこよりアジア人アーティストっていう括りの方がしっくりくるんじゃないかなっていうふうには感じています。

――「Obsessed」も韓国がひとつのフックになってアジア圏に広がっているわけですし、そことニューヨークにいて自分がアジア人アーティストであるというアイデンティティの感覚がつながっているようなこともありますか。


Ayumu Imazu:そうですね。まさにそうで、「Obsessed」をリリースした時も、「これ日本人が書いてたんだ」みたいなコメントもすごく多く見るんで、そういったところもありますね。

――TikTokでは韓国に行かれた時の様子も投稿されているわけですが、向こうでの受け止められ方とか、実際に行った時の感触はどんな感じでしたか?


Ayumu Imazu:「Obsessed」という曲があるから韓国に来ているんだって感覚はめちゃめちゃありました。そこですごく実感したというのもあります。あとは色々なアーティストの方とコラボ動画を撮ったのもありました。

――ライブについても聞かせてください。4月からホールツアーが始まりますけど、ツアーに向けては今どんなイメージを持っていますか?


Ayumu Imazu:シンプルにめちゃめちゃ楽しみです。自分の感覚的には、昨年の9月くらいに「RUN4U」というツアーがあって、それが初ツアーだったんで、そこからファンの人たちに直接会う機会がなくて。その間に「Obsessed」が大きく広がった行ったので。みんなに直接会って披露したい気持ちもあるし、ステップアップした自分を見せたいなっていう気持ちです。

――この先にやりたいことも広がっていると思いますが、そのあたりはどうですか?


Ayumu Imazu:まだ海外でライブをやっていないので、ライブは海外でもやりたいなと思います。

――コラボに関してはどうでしょうか。先日MAXがインタビューで「Obsessed」を聴いてImazuさんに連絡をとったという話をしていましたが。


Ayumu Imazu:そうなんですよ。「Obsessed」を出した時にMAXが連絡をくれて。理想中の理想の人というか、ずっと曲が好きで憧れているアーティストだったので、それはすごく自信に繋がりました。これからも、自分が格好いいと思うアーティストとコラボしていきたいなと思います。
※Ayumu Imazu 「Obsessed (feat. MAX)」4月5日(金)配信リリース

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