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<インタビュー>ナオト・インティライミ、創作意欲に満ちた10thアルバム『ファンタジスタ』から見えてくる“音楽と人の繋がり”

インタビューバナー

Interview & Text:高橋梓
Photo:SHUN ITABA


 “連続リリースおまっとぅりイヤー”だった2023年を駆け抜け、2024年に入っても精力的な活動を見せるナオト・インティライミ。2月28日に「にたものどうし」を配信リリースしたばかりだが、早くも4月10日には10thアルバム『ファンタジスタ』もリリースされる。同作は9thアルバム「アドナイン」から約9か月という短いスパンでリリースされるアルバムで、既存配信曲や、木梨憲武、meiyo、Novel Coreといったアーティストたちとのコラボ曲も収録。そこで、アルバムについてはもちろん、4月からスタートするツアー【ナオト・インティライミ LIVE TOUR 2024 SPRING】についてなどもたっぷり語ってもらった。

「僕の半分はやっぱりJ-POPでできていますから」

――まずは、10枚目のアルバム『ファンタジスタ』がナオトさんにとってどんな作品になっているかから教えてください。

ナオト・インティライミ:これ、「10枚目です」とポンッと言ってしまうと軽くなっちゃうんですけど、とんでもないことなんですよ。しかも1つのレーベルから10枚出しているんですね。ずっと一緒にプロジェクトをやり続けてくれるのはすごいこと。僕は3回デビューをしているのでなおさらそれを感じます。1回目のデビューは1枚のアルバムで終わってしまって、2回目のデビューはなんと0枚。そして3回目デビューで10枚。感慨深いですよね。しかも「10」って、切りがいいですから。改めて感謝できるタイミングになったと思います。10枚もアルバムをリリースさせていただけるくらいプロジェクトが続けられていること、応援してくださるファンの皆さん、そして周りのスタッフの皆さんに感謝を感じる作品になりました。


――しかも、前作からかなりスピーディーにリリースをされています。

ナオト「バカなの!?」っていう早さですよね(笑)。異常なペースだと自分でも思います。


――前作までと比べた時、特に今作ではこだわった部分などはあるのでしょうか。

ナオト:うーん、これまでリリースした200数曲、すべてこだわっていますからねぇ。歌詞のひと言ひと言の表現、音の一音一音、アレンジのストリングス、ドラムの音色、グルーブの裏拍の溜め……。自分で歌詞を書いて、メロディを作って、アレンジして、ミックス、マスタリングまで僕がハンドリングしてやっているという意味では、妥協なくやってきました。今作の10曲もすべてこだわり抜いた曲です。だって1曲目の「Funky Music」のミックスなんて、30回やっていますからね。


――30回!?

ナオト:厳密にはもっとかな。1回目のミックスにオーダーを出す、2回目のミックスにオーダーを出す…と30回やっていたので、オーダー数にしたら150くらいあったかもしれない。お前がやれよって話なんだけどね(笑)。



――まさに妥協なくやられているのですね。実は、Xで「海外での活動が多くなったからこそJ-POPの誇りを感じながら作った意欲作」というような投稿を拝見して。今作のどんなところに熱を注いだのか気になっていました。

ナオト:あぁ! なるほどね。でも、J-POPが愛おしくなったことは間違いないし、すごいなって思うよね。外国だとJ-POPみたいに緻密にやらないもん。どっちが良い、悪いじゃなくて。どっちも良さはあるんですよ。大味がいい海外の音楽、緻密できめ細かい日本の音楽。海外でやっている分、日本の音楽性が愛おしくなったし、やっていて楽しいと思うようになりました。そりゃそうだよね。不自由なスペイン語や英語で喋って、音楽はラテンのマナーに則ってやって。もちろん僕はやりたくて制限されている環境でやっているわけですけど、たまには日本語で喋って和食が食べたくなるわけですよ(笑)。それに僕の半分はやっぱりJ-POPでできていますから。それを表現できるんだという喜びは、今作に反映されているかもしれないです。


――一方で、海外の音楽の影響もより受けられたのかなと思うのですが、いかがですか?

ナオト:受けっぱなしですよ。82か国旅をしてきて、しかも食べ歩きツアーではないですから。聴き歩きツアー、弾き歩きツアー、飛び込み歩きツアーという(笑)。音楽に触れているから常に吸収はしています。でも、日本に向けてはJ-POPをやる、海外に向けてはラテンベースでやると、はっきり分けていて。成功するにはそれが必要だとわかったんです。海外で流行っているものを日本でやろうとしても、ただの海外かぶれになってしまって難しい。逆にJ-POPをそのまま海外でやろうとしても難しい。とはいえ、J-POPはすごいし、海外の音楽も面白い。だから、分けたほうがいいんだなって。活動名も日本では「ナオト・インティライミ」、海外では「Naoto」と分けているので、お互いに持ち込まないようにしています。


――なるほど。海外でも活動されている方の場合、一般的に「海外でインスパイアされたものを日本リリースの楽曲に込める」というケースも少なくないですよね。でも、ナオトさんの場合はあえてしっかり分けている、と。

ナオト:楽曲に込めたいという気持ちもすっごくよくわかります。僕もそう思ったこともありますから。ただ、J-POPを持って海外で戦おうとして難しかった話、実際のデータマーケティングの結果、逆に海外のスタイルを日本に持ち込もうとした失敗談など、データを全部取った中での僕のチョイスは「分ける」でした。「アメリカに移住しました。流行りの音楽を学びました。日本に帰ってきて、『僕の最新アルバムを聞いてください』と聞かせました。帰ってきた反応が『私たちが望んでいるのはこれじゃない』」という例も見てきちゃって。もちろん、そのアメリカナイズされた楽曲はかっこいいんですよ。でも、J-POPって特殊なんです。保守的なので、1曲流行ったらファンもメディアもそれをやり続けてほしいと思うものなんですよ。アメリカだったら、ビヨンセやテイラー・スウィフトが新しいアルバムを作る時に20代前半の若いプロデューサーをたてて、今の音楽に自分のアイデンティティを乗せるんです。でも日本だとそのアーティストごとにカテゴリーが決まっていて、その中でやってほしいと思う人が多いんですよね。



――昨年から若手アーティストたちとコラボをしているのは、そういった部分にインスパイアを受けていたりもするのでしょうか。

ナオト:そうなのかもしれません。音楽が好きで、日本の若者、世界の若者がどんな音楽をやっているのかは常に掘っていますし。あとはコロナ禍でSNSが大切だと気付いて、TikTok をフォロワー200人から57万人まで増やした過程で若いアーティストと交流をしてきたのもあるかな。自分だけで音楽を作っていても広がらないですし、いろんな人とタッグを組むことで「そのアプローチ、俺からは出てこんわ〜」と学ぶこともたくさんありますから。


――そうしてできたナオトさんらしい楽曲が詰まった『ファンタジスタ』のリードトラックは「にたものどうし」です。2月28日に配信リリースされていますが、どういった過程で制作された楽曲なのでしょうか。

ナオト:「First Christmas」という曲を作っていた時に、頭の向こうの方から違う曲が鳴ってきて。「うるさい、うるさい! 今、この曲作っているから」と消そうとしても、段々ノイズが大きくなってきたんです。「待て、待て。わかったから」ととりあえずバッと歌詞を書いてメロを吹き込んで、デモだけ作って。また「First Christmas」を作ったんです。その時の曲が「にたものどうし」。違う曲を作っているのに、別の曲のアイデアが出てくるという、ゾーンに入っている状態の時に出てきた曲です。





「にたものどうし」 リリック・ビデオ


――同曲をリードトラックに置いたのはどんな理由からだったのですか?

ナオト:もちろんチーム・インティライミの総意で決まったのですが、この曲のデモをみんなで聴いた時にちょうどよかったんですよね。今の若い層が聴くJ-POPに通ずる部分と、ティライミ節のバランスがいい塩梅だったんです。


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  1. 「モチベーションは……、『夢』ですね」
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「モチベーションは……、『夢』ですね」

――たしかにそう感じる楽曲ですね。そして、今回のアルバムにもコラボ楽曲が3曲収録されています。

ナオト:木梨憲武さん、meiyo、Novel Coreですね。Novel Coreは歌えるラッパーとして期待通り、いや、期待以上のアプローチで返してくれました。だからこそこの曲が完成したというか。僕1人で歌っていても面白くなくなっていたと思います。素晴らしい言葉、表現、声で花を添えてもらいました。meiyoは2人でスタジオに入って、ゼロから楽曲制作をして。「ナオト・インティライミってX民にイジられがち」みたいなトピックって自分では使えないですけど、meiyoと話をしていたら「meiyoとならできるかも」と思えてきたんです。そもそも、僕はイジられることがありがたいというのが第一にあって。だって、イジりを見て面白いって思ってもらえているって、僕を知っていないと成立しないじゃないですか。だから一見この曲は嘆きに見えますが、そうではないんです。meiyoとタッグを組んだことで、上手くエンタメに昇華できたと思います。

そして憲武さん。彼は僕が小学校の頃からのヒーローで、憧れの人。そんな方から「一緒に曲を作ろうぜ」と共同制作の話をいただきました。どんな曲にしようとなった時に、憲武さんが「俺とナオトがやるなら、やっぱサッカーでしょ」と。憲武さんはお茶の間とサッカー界を繋いで牽引されていて、僕も僭越ながらその次世代としてやらせてもらっていて。さらに憲武さんから「世界中旅しているんだからアフリカかラテンか、そういう海外の感じも入れよう」と言っていただいたんですね。スタジアム感溢れるアンセムと海外を感じられるリズムという話をしていた時点で、もう6割形になっていました。そこから憲武さんというとんでもない表現者を活かせるような歌詞を書いて、彼がかっこよく見えるようにプロデュースさせてもらったという感じです。



――それぞれにドラマがあるのですね。ちなみに、木梨さんから共同制作の話をもらったとのことですが、ナオトさんからオファーをするケースもありますか?

ナオト:meiyoとNovel Coreは僕から声をかけさせてもらいました。僕ね、音楽的にも人格的にも素晴らしい人と一緒にやりたいんです。どっちかが欠けてもだめ。両方持っている方にオファーをさせていただいているんです。さらに言うと、ツアーバンドやダンサー、スタッフもそう。技術と人間性が素晴らしい方ばかりと一緒に仕事をしています。その分、アーティスト、バンド、スタッフにも選ぶ権利があると思っていて。例えば僕が落ちぶれていってしまった時に、もっと割の良い現場を選んでもらってもいいんです。お互い常に緊張感を持って仕事がしたいなって。例えば、Novel Coreなんかは去年イベントで一緒になったのですが、初めましての時はもう少し怖いヤツなのかなと思っていたんです(笑)。でもあんなにも人懐っこくて気持ちが良くて。年齢やキャリア関係なく、久々にスッと入れた人でした。だからオファーをしたというのもありますね。そんな感じだったから、「なんか一緒にやれたらいいね」と話してからすぐにデモを送って、スタッフを一切通さずにやり取りをしたから、5分くらいで話がまとまりました。そういうスピード感もいいですよね。





「やんなっちゃうよな(with meiyo)」 リリック・ビデオ


――素敵な繋がりです! そして4月13日からはツアー【ナオト・インティライミ LIVE TOUR 2024 SPRING】もスタートします。ナオトさんのライブは「THEエンターテインメント」といったところですが、今回のツアーならではの見どころもあるのでしょうか?

ナオト:ネタバレになっちゃうから、まだ言えないことばかりだなぁ。面白いなと思ったのは、昨日リハーサルスタジオのスタッフさんに「いろんなアーティストさんに使ってもらっていますけど、こんなに長くスタジオを押さえてリハしているのはナオトさんだけです」って(笑)。聞いたら、僕、他の人の2倍の時間を抑えているらしいんですよ。なんでだろうと考えたら、1つ思い当たる節があったんです。音楽だけのリハだったら、たしかに2分の1の時間でいいんです。でも、僕の場合は茶番、つなぎ、エンタメ演出をずっとやっているので(笑)。だから2倍時間かかっているんだと気付きました。それをなくせば、スタジオ代がもっと安く抑えられるなって(笑)。来年からやめようかな……。


――いやいやいや、やめないでください! MCやエンタメ要素込みで楽しみなんですから(笑)。

ナオト:あはは(笑)。でも最近よく言われるんですよ。TikTokのMC集、すごく回っているねと。「MC集は150万再生ですよ!? こっちのMC集なんて240万再生いってます!」って。これはもう、さだまさしさん以来のMCおもしろアーティストでしょ(笑)。


@naotointiraymi お客さんにも高いクオリティを求めるナオト #ナオトインティライミ #今のキミを忘れない #ナオト ♬ オリジナル楽曲 - ナオト・インティライミ / Naoto

――今回も余す所なく楽しめるツアーになりそうですね。

ナオト:そうですね。僕のライブの持ち味は、ファンの方から1曲も曲を知らない方まで楽しめるところ。無理やり友だちに連れてこられたとか、代打で行くことになったとかでも大丈夫なんです。それに未就学のキッズから60〜70代のご夫婦まで、みんなが楽しめるエンタメショーを作り上げることにこだわってきました。

あ、あともう1つ面白いことがあって。先日ニューヨークでギタリストの友だちと久しぶりに会ったんです。彼はナオト・インティライミになる前の僕をよく知っているのですが、ナオト・インティライミになってからはあまりよく知らないんですよ。そんな彼が「ホールツアーを20本もやるの? 嘘でしょ。だってナオト、ヒット曲ないじゃん。動員どうやってるの?」って(笑)。でも、たしかにそうなんですよ。ヒット曲がないのに毎年ホールツアーができている奇跡と、もう少し戻ると『紅白歌合戦』に出て、ドーム公演を2回やっているんです。僕がドーム公演をやった時は、日本人男性ソロアーティストで6人目だったんですね。沢田研二さん、小田和正さん、桑田佳祐さん、福山雅治さん、平井堅さん、ナオト・インティライミ(笑)。この並び、おかしいでしょ! ありえないんですよ。それについてギタリストの友人と話をしていた中で気付いたのですが、やっぱりライブ一つひとつ、曲一つひとつ、アレンジ、演出、つなぎ、MC、アンコール……すべてを緻密に本気で作ってきたことで、ファンの方がライブで付いてきてくださっているんだなって。そのありがたさを再認識しましたし、こだわってきてよかったと思いました。



――それだけライブができるのも、かなり多くの楽曲をお持ちだからということもあると思います。今回のスピードリリースにも繋がりますが、常に楽曲制作をされているように感じていて。作り続けられるエネルギーの源はどこにあるのでしょうか。

ナオト:そうだよね。本当にずっと作り続けていると思う。特に去年の月1以上リリースはおかしいし、9か月スパンでのアルバムリリースもおかしいし、それにプラスして海外でやっていることもおかしいし。モチベーションは……、「夢」ですね。


――夢。

ナオト:小学1年生みたいな答えだね(笑)。でも本当にそう。夢がモチベーションになっていて、夢のためならどんなに大変なことでも頑張れる。睡眠時間を削っても、バカにされても、頑張れるんです。


――それが継続できているのがすごいです。

ナオト:音楽が好きなんでしょうね。正確には音楽と人が好き。音楽をやっている時が好きだし、音楽で人とつながることが好き。はじめはサッカーでワールドカップにでることが夢でしたが、それが音楽に変わって。まず日本で頑張って、いつかは世界に向けて音楽をやれるようにと思ってやってきました。まだ夢半ばだからこそ、クリエイターズハイをキープできているのかもしれないです。よく「なんで世界に挑戦するんですか?」って聞かれるのですが、もしその挑戦をしていなかったら今の僕はいないというか。ちょっと考え方が違っていたかもしれないです。世界を目指して走り続けているからこそ、創作意欲が沸いて、周りにひたすらありがたいと感謝ができているんだと思います。そのハングリーさと感謝がいつかワールドヒットに繋がると信じています。『ファンタジスタ』も、そのやる気が満ち溢れたアルバムになっていると思うので、ぜひ皆さんに聴いてほしいです!


ナオト・インティライミ「ファンタジスタ」

ファンタジスタ

2024/04/10 RELEASE
UMCK-1764 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.Funky Music
  2. 02.MoonLight
  3. 03.ミコラソン (feat.Novel Core)
  4. 04.First Christmas (Album ver.)
  5. 05.Level 44
  6. 06.にたものどうし
  7. 07.夕暮れノスタルジー
  8. 08.ジャイアントキリング (with 木梨憲武)
  9. 09.やんなっちゃうよな (with meiyo)
  10. 10.桜小町 (2024 ver.)

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